1996 / DESTINY 6
1996 / DESTINY 6
すでに時計は深夜を回っている、家に帰り駐車場に車を止め部屋に入ると
暗闇の中で奈緒子がテレビを見ていた。

月明かり。 波の音。
そして、深雪さんとのキス。
奈緒子は何も知らない。
それなのに 胸の奥で何かの歯車が
少しずつ狂い始めていた。
そして体の血の気が引いた・・・
「来てたんだ?」
と僕は、テレビを見つめている奈緒子に言った
「うん・・・」
と彼女は、テレビを見ながら答えた。
テレビの中では深夜のバラエティ番組が放送されていた
「明日は仕事なのに来るなんてめずらしいじゃん」
「昨日来れなかったし。。今日は買い物のあと暇になったから、
今日はどこに行ってたの?」
と彼女は僕に聞いた
「うん、今日は本を買いに行って、そのまま適当にドライブして
来たんだ、連絡しなくてごめん」
「それなら、誘ってくれればいいのに。。」
「うん、来週にでもまた行こうよ、とりあえず風呂入ってくる」
僕は湯船に浸かり、今日の事について考えていた。
綺麗な夜景だった、そして静かな砂浜だった 。。
本来ならば、奈緒子を連れていくべき場所だったと思う。
でも、僕の中の何かわからないものが、
それらの行動に対して何らかのブレーキを掛ける 。
それが何なのかは現時点ではわからない、
そして深いため息をついた。

でも、 頭に浮かんでいたのは 深雪さんのこと
ばかりだった。
眠る奈緒子の横で 僕は静かに目を閉じた。
その晩僕は久しぶりに彼女を抱いた。
でも、思い浮かべるのは深雪さんのことばかりの僕がいる。
最悪だ・・・
朝起きると彼女はもういなくなっていて、
すでに出勤したあとのようだった 。
いつもであるならば、駅まで彼女を車で送っていたのだが
彼女は僕を寝かせたまま行ったようだ。。
何かの歯車が次第に狂ってきている。
それは、自分が招いていることでもある、
逆に言えば
<わからない何か>
を求めている、
その答えを見つけるために今もがいている最中だ。
多分だけど、僕はこのまま親の跡を継ぐことになるだろう。
これはこれでいいことだと思う。
彼女もいるし、この先結婚をしたら
仲良く夫婦で仕事をするだろう。
でも、果たしてこのまま安楽な思考のままでいいのか?とも思うのだ。
もっと、やるべき何かがあるのではないか?
普通でいれる幸せがどうしても僕には受け入れづらい現実でもあった。
だからと言って、逆に動き出す勇気もなく
宙ぶらりんなままどこかをさまよっている、
そしてその自分に対する嫌悪感を奈緒子にぶつけている、
けっして彼女は何も悪くないのに。。
「自分大好きだよね」
頭の奥からバーで深雪さんに言われた言葉が聞こえたような気がした。
深雪さんに会いたい、また色々と話しを聞いてもらいたい。
彼女の前ではありのままの僕という人間を出すことが出来る。。
人数要因的なDestinyの出会い
数日後、
仕事を終えた夜 、
僕は深雪さんに会いに出かけたが彼女は仕事を退職していて、
もう既にそこにはいなかったのだ。
続く
湘南の夜。
月明かりの海と、静かな波の音。
あの夜、
運命のようなキスをした。
でも現実は、
何事もなかったかのように
朝を迎えてしまう。
眠る奈緒子の横で
僕はただ思っていた。
何かの歯車が、
静かに狂い始めていることを。
1996/ DESTINY6
