松尾豊と孫正義:AI御用学者と投資帝国の虚像
第一章:真の開拓者・坂村健 vs. 御用学者・松尾豊
私の記事で最も読まれているテーマの一つが、意外にも『松尾豊』という人物に関するものだ。
彼の名前を知る日本人は1%に満たないかもしれないが、2019年に東京大学大学院工学系研究科の教授に就任すると同時に、ソフトバンクグループ(SBG)の取締役を兼務した。この兼務こそが、問題の核心である。
坂村健と松尾豊――両者の名を並べることすら、私にとっては違和感がある。なぜなら、坂村健は日本の情報化社会を『公共財』として設計し続けた真の開拓者であり、松尾豊は資本の論理に取り込まれた『御用学者』に過ぎないからだ。
工学系研究科の教授には通常、次の三本柱が求められる。
一、教育・研究指導、人材育成。研究テーマの推進や論文発表。
二、特許出願などの研究・開発。企業との共同研究や標準化活動。
三、大学発ベンチャーの立ち上げなど、産学連携・社会貢献。
松尾豊は、自身のベンチャー企業の失敗談や、教育・研究・開発が苦手であることを率直に語ることがある。だが、こうした『不得手さ』自体は大きな問題ではない。真の問題は、孫正義が彼を『日本のAI研究の第一人者』として広告塔に仕立て、SBGの取締役として利用している点にある。
孫正義にとって重要なのは、松尾豊の研究実績でも教育者としての資質でもない。必要なのは、国策や助成金を引き寄せるための『看板』だ。この構造こそ、SBGの体質を如実に物語る。
松尾は内閣府AI戦略会議の座長を務め、政府と産業界の双方に食い込んでいる。結果として、彼は『御用学者』としてAI倫理や社会的課題を骨抜きにする役割を担っている。
過去を振り返ると、その姿は、エイズ薬害事件で批判を浴びた元帝京大学教授・安部英に重なる。どちらも専門家としての知見が、国家と産業の都合のために使い潰され、批判的知性よりも権力の意向に従属してしまったのだ。
私は繰り返し、日本のAI政策において松尾豊が『御用学者』として社会的混乱を引き起こす危険性を指摘してきた。PV数は少なくとも、読者の高評価率は極めて高い。それは、事実を直視できる層にとってこの問題がいかに切実かを示している。
坂村健との決定的な違い
松尾豊の特異性は、同じく国策と深く関わった坂村健と比較すると、より鮮明になる。
坂村はTRONプロジェクトを通じ、『すべての人が情報技術の恩恵を平等に享受できる社会』を掲げ、技術を公共性のある社会インフラとして位置づけた。さらに日立・東芝・三菱電機など十三社を束ねながらも中立性を保ち、特定企業の利益誘導に加担しなかった。
これに対し、松尾豊は閉鎖的かつ自己利益に偏っている。AI研究者でありながら、技術哲学や社会的ビジョンは乏しく、ソフトバンクや助成金制度を巧みに利用する『広告塔』としての存在感だけが目立つ。
坂村が『技術の公共性』を追求したのに対し、松尾は『技術の資本化』を優先し、大学教授の肩書を資金集めと既得権益の防波堤にしている。
傀儡師・孫正義:AIと投資の虚像に踊る日本
メディアや一部の投資家は、孫正義を『コンピュータの天才』と誤解している。だが、彼の知識は専門家と比べれば素人レベルだ。
カリフォルニア大学バークレー校で経済学を学んだだけで、情報工学や電気工学を体系的に学んだ経験は皆無。シャープに翻訳機を売り、その資金で日本製ゲームを米国に輸出したのがソフトバンクの出発点であり、深い技術的知見は不要だった。
寧ろ、孫正義の人生は『借金を積み上げ、資金を回転させるゲーム』に費やされてきた。AIやプログラミングに関しては、レシピ本を一度読んだだけの初心者が『俺は三ツ星シェフだ』と豪語するのと大差ない。
投資帝国の虚像
SBGは投資会社として、膨大な数の企業に資金をばらまいてきた。通信事業やプロ野球チームは単なる表看板に過ぎず、背後では英Armをはじめとする企業群と複雑に絡み合っている。
資産管理スキームも『孫CGK』『孫AMG』などを筆頭に、国内外で節税と脱税の境界をうろつく構造が散見される。
特にビジョンファンド1号・2号は、合わせて500社近いポートフォリオを抱え、中にはわずか15分の投資判断で決めた結果、見事に破綻した案件もある。
『AI育成機関』の中身は、なぜ見抜けなかったのか?
SBG傘下のDeepCoreは『AIでアプリを自動生成する』とうたうプラットフォームに早期投資を行った。その代表例がBuilder.aiである。しかし、これは『AIがAIを作る』と称される次世代の自己進化型開発とはまったく異なり、実態は人海戦術に頼った人間エンジニアの大量投入が中心だった。――別名『インド奴隷プログラマー』である。
このBuilder.aiにステージAから出資していたのが、SBG100%出資のAI特化型ベンチャーキャピタル、株式会社ディープコア(DeepCore)である。
DeepCoreは2018年に設立され、『AIの産業実装』と『起業支援』を掲げていた。だが実態は、松尾豊を客寄せパンダに据え、SBGお得意のブラインドベットを繰り返すための賭場に過ぎないのだ。
『松尾派エコシステム』の盲点
AI人材育成や研究開発の領域では、松尾研出身者を中心とした一派が『本郷発ベンチャーの旗手』として持ち上げられてきた。
だが、Builder.aiの実態を見抜けずに巨額の損失を出した事実は、いまだ公表されていない。
さらに問題なのは、この失敗を隠したまま、松尾豊と孫正義が『次は成功する』とばかりに、再びAIがAIを作る領域へ投資を続けていることだ。
この無責任さは、SBGの博徒体質と松尾派エコシステムの盲信を象徴している。
『AIとは何か』を問う誠実さはあったのか
AIがAIを作るというフレーズは耳障りこそ良いが、実態は既存テンプレートの自動生成やノーコード化の延長線上にあるに過ぎず、イノベーションの本質とはかけ離れている。
Builder.aiの失敗は、過剰な期待とバズワード投資の愚かしさを如実に物語っている。
さらに、DeepCoreの公式サイトには孫正義の実弟・孫泰蔵の名も見られ、ファミリー資本主義の影が露骨に浮かぶ。
次回は『プログラムを作るAI』技術の実態と限界について詳しく解説する。特に、SBGや松尾派が次世代AIと喧伝する領域が、どこまで実用化可能で、どこからが幻想なのかを検証する。
松尾研出身で、自らをAIエンジニアと称するYouTuberの安野貴博氏が党首を務める政治団体『チームみらい』が、参院選比例区で当選確実となった。これは、まさにタイムリーなバズハッシュタグを象徴するニュースである。
武智倫太郎
