OpenAIに6兆円投資? それ、まだ払ってません:ソフトバンクとAI覇権の行方
日経新聞の『OpenAI、SBGなどから6兆円調達 AIインフラに巨額投資』報道を受けて、『OpenAIが総額400億ドル(約6兆円)の資金調達をすでに完了した』と誤解している方を、SNSなどのコメントで多く見かけました。そこで、本記事では、この報道が指し示す内容を改めて整理し、解説します。
まず、記事タイトルだけを見た場合、金融やスタートアップ投資に詳しくない方の中には、『孫正義がサム・アルトマンに6兆円を気前よく一括で支払った! 孫さん、やっぱり大金持ちだ!』といった印象を抱くかも知れません。しかし、実際にはソフトバンクグループ(SBG)が、6兆円すべてを支払ったわけではないのです。
資金調達ラウンドとは?
『投資ラウンド(資金調達ラウンド)』とは、企業が資金を調達するために段階的に行うプロセスのことです。スタートアップやハイテク企業では、成長に応じて複数回(シリーズA、B、Cなど)のラウンドを重ねて資金を調達するのが一般的です。今回のOpenAIへの出資も、2段階に分かれた大型の資金調達ラウンドとなっています。
出資スケジュールの詳細
OpenAIが現在進めている資金調達ラウンドは、以下のように2段階構成で実施されています。
ソフトバンクグループ(SBG)
1回目:75億ドル(約1.1兆円)
・すでに支払い手続きが進んでいるとされます。
2回目:225億ドル(約3.4兆円)
・OpenAIが2025年末までに営利法人(for-profit entity)への完全移行を完了することを条件に支払われる予定。
合計:300億ドル(約4.5兆円)
・ラウンド全体の75%をSBGが担う見通しで、OpenAI史上最大の出資者となる見込みです。
その他の投資ファンド
1回目:合計25億ドル(約3750億円)
2回目:合計75億ドル(約1.125兆円)
合計:100億ドル(約1.5兆円)
・残りの25%を他のファンドが分担する形です。参加が報じられているファンドには、マグネター・キャピタル、コートゥー・マネジメント、ファウンダーズ・ファンド、アルティメーター・キャピタルなどがあります。
OpenAIの企業価値と背景
この調達ラウンドによって、OpenAIの企業評価額は約3000億ドル(約45兆円)に達し、2024年10月時点の1570億ドルからほぼ倍増しています。特にSBGの出資比率が際立っており、孫正義氏がAIインフラ領域への積極的な投資姿勢を明確に示していることがうかがえます。
また、SBGはOpenAIおよびオラクルと共同で、米国における超大型データセンター構築プロジェクト『スターゲート計画(Stargate Project)』にも参画しており、総額5000億ドル規模の投資が計画されています。
投資への懸念とAI市場の競争
OpenAIは、ソフトバンクグループ(SBG)主導の下、総額400億ドル(約6兆円)の資金調達を進めています。しかし、AI業界ではOpenAIに匹敵する、あるいはそれ以上の性能を持つ低消費電力のAIモデルが、米国のみならず中国でも多数登場しています。たとえば、中国のスタートアップであるDeepSeekは、最新の大規模言語モデル『DeepSeek-V3』を発表し、推論やコーディング能力において顕著な向上を示しています。
さらに、フランスのMistral AIはオープンソース開発を通じ、DeepSeekを凌駕することを目指しており、巨額の資金投入なしに強力なAIモデルを構築する戦略を採用しています。実際、オープンソースのAIモデルも台頭しており、AI学者で起業家の李開復は、OpenAIがオープンソースモデルとの競争で苦戦する可能性を指摘しています。
リスクと市場の反応
これらの状況を踏まえると、ソフトバンクグループ(SBG)がOpenAIへの巨額投資を行うことは、同社の経営リスクを一層高める可能性があります。特にAI市場は日進月歩の進化を遂げており、新興企業やオープンソースモデルが次々と台頭するなかで、特定の企業に多額の資金を集中させる投資手法には、リスク分散の観点から慎重な検討が求められます。
実際、SBGの信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は急上昇しており、こうした巨額投資の実現性や財務への影響に対する市場の懸念が色濃く表れています。
『ソフトバンク vs. 楽天』と聞くと、野球の試合を思い浮かべる方が多いかも知れません。しかし現在、金融・証券業界で話題となっているのは、『ソフトバンク vs. 日産』のどちらの信用リスクがより高いかという熾烈な争いなのです。
私のnote読者の皆さまであれば、日産がいつ破綻しても不思議ではない企業であることは、すでにご存じかも知れません。その日産とSBGが、信用リスクの尺度であるCDS保証料率において、東証一部上場企業の中でトップ争いを演じているという、非常に危険な状況が現実に起きているのです。
巨額投資に懸念
一方で、ソフトバンクGの信用リスクを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が急上昇している。スターゲート構想について、実現性と財務への影響に懸念が生じているためだ。
トレーダーへの取材によると、3日午前8時50分時点で、5年物CDSのミッドスプレッド(ビッドとオファーの中間値)は約235ベーシスポイント(bp)と、24年8月以来の高水準となっている。
SBGのOpenAIへの巨額投資は、AI業界の競争激化と技術革新の速さを考慮すると、SBGの経営リスクを増大させる可能性があります。今後の市場動向や技術革新を注視しつつ、投資方針を慎重に検討する必要があるでしょう。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品等への投資を勧誘または推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、読者ご自身の責任で行ってください。
武智倫太郎

