『破綻シナリオ』を無視するな──ソフトバンクG決算前に警戒すべき5つの現実
1.継続的な社債発行と資金繰り不安
ソフトバンクグループ(SBG)は近年、大型の社債を連発しており、これが資金繰り逼迫の兆候ではないかと懸念されています。実際、2025年4月には個人投資家向け社債を過去最大規模となる総額6000億円発行し、5年債の利率は年3.34%に設定されました。
超低金利の日本市場で3%超の利回りは異例の高水準であり、SBG債は『預金に比べて投資妙味が増している』として個人マネーの旺盛な需要を集めています。もっとも、高利回りは裏を返せばそれだけSBGの信用リスクが織り込まれていることを意味します。
SBGがこれほど巨額の社債を発行する背景には、既存債務の返済と新規投資資金の調達があります。上述の6000億円調達も、2025年4月に償還期限を迎える国内社債(5000億円)および外貨建て社債(約724億円)の返済資金に充当し、残りを2023年8月にSBGがソフトバンク・ビジョン・ファンド1から買い取ったArm株の支払いの一部にあてる計画です。
つまり、新たな借入で古い借入を返済しつつ、過去の投資案件の精算費用を賄っている状況で、いわゆる自転車操業的な資金繰りとも言えます。実際、SBGの発行済み社債残高は約7兆円にも達し、年間を通じて複数回にわたり起債を行うことで巨額債務のロールオーバーを図っているのが実情です。2024年にも、3月に個人向け5500億円、4月に機関投資家向け1000億円、6月に再び個人向け5500億円の社債発行を行うなど、短期間で連続的に資金調達を行っています。
信用格付けの面でも、SBGの財務の脆弱さがうかがえます。日本国内の格付機関ではSBGに対し比較的高い格付(例えばJCRはA:安定的)を付与していますが、グローバル格付機関による評価は投機的等級(ジャンク債相当)に留まっています。例えば、ムーディーズはSBGをBa3(見通しポジティブ)と評しており、S&PもBB+(安定的)に過ぎません。これは投資適格等級より明確に低く、SBG債が機関投資家にとって敬遠されるリスクがあることを示唆します。そのためSBGは国内個人マネーに活路を求め、高めのクーポンを提示して大量消化している構図です。
以上を踏まえると、SBGの資金繰りは社債発行に大きく依存しており脆弱です。社債市況が良好なうちは低格付けでも調達が可能ですが、万一本業の投資事業の損失拡大や市場環境の悪化で投資家離れが起これば、新規社債発行で返済資金を調達するモデルは行き詰まりかねません。
現在のところ旺盛な需要に支えられているとはいえ、高水準の負債(有利子負債合計はグループ資産の25%以下に抑える方針で、2024年12月末時点でその比率は12.9%)を抱えるSBGにとって、資金調達コスト上昇は慢性的な重荷です。社債利回りは着実に上昇傾向にあり(例えば2023年には個人向け社債の仮条件が年1.45~2.05%でしたが、現在は3%超)、利払い負担も増加しています。総じて、SBGが今後も社債市場に依存し続ける限り、資金繰りリスクへの警戒は解けないと言えるでしょう。
2.MicrosoftおよびAmazonによるAIデータセンター計画『一時停止』の真偽と背景
昨今報じられた『マイクロソフトやアマゾンがAI向けデータセンター計画を一時停止している』という情報は事実です。
その背景には、AIインフラ投資に対する需要予測の不透明感とコスト高騰への懸念があります。まずMicrosoftですが、同社はここ半年ほどの間に、合計2ギガワット規模にも及ぶ米国および欧州でのデータセンター建設計画を中止ないし延期しました。
2GWというと原発2基分にも匹敵する巨大な電力需要に相当し、本来は同社のクラウドやAIサービス向けに見込んでいた容量でした。それを停止した理由は、『現在の需要予測に対して供給過剰ぎみ』であると判断したためで、要するに将来的なAI需要見通しに陰りが出てきたことを示唆しています。
一方、Amazon(AWS)も同様の動きを見せています。アナリスト報告によれば、Amazonは主に海外市場(欧州など)で進めていた一部の大規模データセンターのリース契約交渉を『短期的に停止』しました。米クラウド最大手のAWSが新規データセンター案件を慎重姿勢に転じたことは、経済環境の不確実性や、巨額のAIインフラ(とりわけ高価なNVIDIA製GPUなど)に対する投資回収の不安を反映しています。
実際、ウェルズ・ファーゴ証券は『(AWSの)停止の規模は不明だが、最近のマイクロソフトの動きと似通っている。積極的に契約してきた案件を整理する段階のようだ』と指摘しています。
なおAmazon側は『通常の容量調整であり、計画に根本的な変更はない』と火消しに努めていますが、少なくとも現時点でクラウド各社がAI特需を当初見込みより慎重に捉え始めたのは確かです。
このような動きの背景には、投資家の視線の変化もあります。昨年から今年にかけて、生成AIブームを受けて各社が巨額の設備投資を打ち出しましたが、そのコストに見合う収益が見えていないことへの市場の懸念が強まっています。例えば、中国の新興企業DeepSeek(深蹟科技)が西側企業より遥かに低コストで高度なAIモデルを開発・公開したとの報道は業界に衝撃を与えました。
これにより『大規模な計算資源を投じなくてもAI競争で戦える可能性』が示唆され、従来型の巨額投資路線への疑問が生じています。この『ディプシーク・ショック』もあって、ウォール街では米IT大手によるAI投資の巨額さに対する懐疑的な見方が広がり、株価にも影響しました。
『MicrosoftとAmazonがAIデータセンター計画を一時停止している』という報道は概ね事実であり、その理由は先行き不透明な需要と投資負担へのリスク回避です。
これはSBGが注力するAIインフラ戦略にも暗い影を落とす材料です。業界トッププレイヤーでさえ慎重姿勢に転じていることは、AI分野への投資に対する過度な楽観を戒めるシグナルと捉えるべきでしょう。
3.ソフトバンクGの『スターゲート計画』頓挫リスク
ソフトバンクGが打ち出した『スターゲート計画』は、OpenAIやオラクルと組んで米国に巨大なAIインフラ基盤を構築するという壮大なプロジェクトです。2024年末から2025年初頭に発表された内容によれば、まず米テキサス州アビリーンに大規模データセンターを建設し、それを皮切りに今後4年間で全米に5~10か所の拠点を設ける計画です。初期投資額は1000億ドル(約15兆円)、最終的には総額5000億ドル(約77兆円)規模にまで投資を拡大するとされています。
ホワイトハウスで開かれた記者会見にはトランプ米大統領(当時就任直後)が同席し、孫正義やOpenAIのサム・アルトマンCEO、オラクルのラリー・エリソンらが並んで『米国のAIインフラへの歴史的投資』であると発表しました。スターゲートは単なる民間プロジェクトではなく、『米国と同盟国の安全保障を守る戦略的能力』とも位置づけられており、国家的な後押しすら得た計画と言えます。
SBGは、このスターゲート計画において筆頭出資者であり、財務責任を担う立場にあります。共同事業体『Stargate Project』の初代会長には孫正義が就任し、資金調達をSBGが主導、運営をOpenAIが担当するという役割分担がなされています。参加企業を見ると、OpenAI、SBG、Oracleが初期出資者として名を連ねているほか、Microsoft、Arm、NVIDIAなどが技術パートナーとして加わっています。
さらに中東のAIファンド『MGX』もSBGとともに出資に加わる予定と報じられました。要するに、AI時代の『アポロ計画』とも称される空前規模の共同プロジェクトがスターゲートなのです。
しかし、この計画には頓挫するリスクも大いに孕んでいます。主な懸念点を挙げると以下の通りです。
巨額すぎる資金需要:4年間で5000億ドル=約77兆円という投資計画は、民間主導のプロジェクトとして史上例がない規模です。SBG自身、全額を拠出するわけではないとはいえ、仮にその一部でも負担するとなれば自社の財務規模を遥かに超える資金を外部から調達しなければなりません。現状、SBGは社債市場で数千億円単位の調達がやっとであることを踏まえると、計画を遂行するためには他の出資者の拡大や公的支援なしには到底資金が足りないでしょう。中東ファンドの参加表明(MGX)や、トランプ政権の後押しはその糸口かもしれませんが、仮に政治情勢が変わったり他の出資者の腰が引けたりすれば、資金繰りの面から計画が立ち行かなくなる懸念があります。
市場環境の変化(需要見通し悪化):前述のように、主要クラウド事業者ですらAI需要の先行きに慎重になりつつあります。Microsoftは2GW分ものデータセンター建設を見送り、Amazonも新規契約を一時停止する状況です。つまり、当初見込まれたような爆発的な生成AI需要に陰りが見え始めている可能性があります。スターゲート計画が想定するような巨大インフラを構築しても、肝心の需要が伴わなければ施設が遊休化し投資回収が困難となります。特にOpenAI自身、コスト高に喘いでいるとも伝えられ、必ずしも大規模計算資源の拡大だけが解ではないとの指摘もあります。これまで積極投資を歓迎していた投資家も、状況次第では『計画縮小すべき』と圧力をかける可能性があります。
技術トレンドの不確実性:AIインフラへの大投資を正当化する前提は、『より大規模な計算能力=より高度なAI=大きな収益』という図式ですが、これに疑問を呈する動きも出ています。MITテクノロジーレビューは、スターゲート発表と前後して起きたDeepSeekによる高性能LLM公開を引き合いに、『環境負荷の大きいデータセンター競争を本当に拡大すべきか』という業界の根本問題が浮き彫りになったと指摘します。
要するに、必ずしも巨大インフラを新設しなくてもAIを進化させる余地があるのではないか、という視点です。もしこのような効率的手法が台頭すれば、スターゲートのような伝統的手法(とにかく大量のGPUと電力を投入する)への評価は相対的に低下し、計画縮小を余儀なくされる可能性があります。
ソフトバンクG自体の財務懸念:仮に市場環境や技術面の問題がクリアされたとしても、SBG自身の体力不足が計画継続のボトルネックになりえます。すでにSBGは他の投資案件でも巨額資金を投じる動きを見せており、例えばOpenAIへの大型出資(約300億ドルとも報じられる)も進めている状況です。自社株買いや債務削減ではなく攻めの投資に舵を切っている今、もし投資先の評価損や債券市場の信認低下でSBGの資金繰りが悪化すれば、スターゲートへのコミットメントを維持できなくなりかねません。実際問題、SBGが引き受けたArm株買い取りの支払いでさえ社債調達に頼っている状況であり、77兆円規模の投資に耐えうる財務基盤かという点に大きな疑問符が付きます。
以上の点から、スターゲート計画には相当の頓挫リスクがあると考えられます。現時点ではテキサス州で第1号データセンターが着工済みであり、SBGおよび関係各社は『米国のAIで主導権を握る』という大義名分の下で突き進んでいます。しかし、計画発表直後から既に『スターゲートは過剰投資ではないか』という冷静な見方も出ています。
市場環境(金利動向・景気)や競合状況(他社の投資戦略)が、今後4年でSBGに不利に動けば、この壮大なプロジェクトが看板倒れ(大幅縮小や中断)に終わるリスクは否定できません。SBGにとってスターゲートはAI戦略の中核ですが、同時に自社の財務リスクを大きく高める両刃の剣であり、投資家としてはその不確実性を強く意識する必要があります。
4.SBG保有株式(アリババ、Tモバイル等)の価格変動リスクと評価損益への影響
ソフトバンクGの財務は、保有する株式資産の価格変動に大きく左右されます。特に注目されるのが、中国のアリババ(Alibaba)と米通信大手T-Mobile USの2つです。かつてSBGに莫大な含み益をもたらしたアリババ株は近年下落基調となり、代わって米国のTモバイル株がSBG資産の重要な位置を占めるようになっています。
アリババ株のリスクとSBGの対応
中国当局のIT企業規制強化や米中対立などを背景に、アリババの株価は2020年末の高値から大幅に下落しました。SBGは長年アリババ株を筆頭資産として抱えてきましたが、この下落により保有株式価値は2021年6月末の約32兆円から2023年3月末には約15.9兆円へと半減し、実に16兆円超もの目減りとなりました(この減少の大半がアリババ株の下落によるものです)。こうしたリスクに対応するため、SBGは保有するアリババ株式のほぼ全てを売却処分する方向に転換しました。
2023年に入ってから約72億ドル(約9600億円)相当のアリババ株を金融機関との前払いフォワード契約を通じて処分したと報じられており、事実上SBGはアリババへのエクスポージャーを極小化しました。SBG広報はこの株式売却について『事業環境の不透明感の高まりに対処する守りの姿勢への転換だ』と説明しており、背に腹は代えられない状況だったことが窺えます。 アリババ株売却により、SBGは巨額の売却益を計上する見込みです。実際、2024年7月には『2025年3月期個別決算においてアリババ株の売却益約5461億円を特別利益計上する』予定であると発表されています。
この数字からも分かるように、SBGの決算は投資先株式の売買による一時益・一時損に大きく影響されます。アリババ株に関して言えば、売却という選択によって短期的には利益を得たものの、保有し続けていれば巨額の評価損に苦しみ続けた可能性が高く、SBGとしてはリスク資産の縮小を優先した形です。
しかし、アリババ株を処分したからといってSBGの評価損益リスクが無くなったわけではありません。T-Mobile US(TMUS)株が新たなカギを握ります。SBGは2020年のスプリントとT-Mobile合併の結果、T-Mobile株をまとまった割合で取得しました。当初は持ち分比率を徐々に下げていましたが、2023年末に状況が一変します。
合併時の契約条件が満たされたことにより、SBGが追加でもらえる権利のあったT-Mobile株約4875万株(時価約76億ドル=約7.6兆円相当)を無償取得すると発表したのです。この取引によりSBGのT-Mobile持株比率は従来の3.75%から7.64%へと倍増しました。SBG株主にとっては、減少していた有力上場株(アリババ)の穴を埋める格好で、米国の有力通信株がポートフォリオの中核に躍り出たことになります。
T-Mobile USは、米国携帯市場で好調な業績を維持し、株価も堅調に推移しています。2024年末時点で株価は220ドル前後、時価総額はおよそ2,500億ドル規模に達しました。ソフトバンクグループ(SBG)が保有する持分7.6%は、ざっと2兆円から3兆円相当の価値に相当します。
──もっとも、孫正義氏に言わせれば『2兆、3兆は誤差のうち』です。実際、株主総会の場でそう豪語してみせた彼にとっては、T-Mobileの巨額持分も、所詮『誤差』扱いに過ぎないのでしょう。
とはいえ、現実問題としてこの持分はSBGの純資産価値(NAV)において無視できないウエイトを占めており、その株価変動はSBGの評価損益に直結します。幸いにも、現時点ではT-Mobileの業績は堅調で、SBGにとっては追い風となっています(なお、持分増加により、SBGによるスプリント投資の内部収益率(IRR)は25.5%に達したとの分析もあります。)
しかし、通信業界は成熟産業であり、大きな成長は見込みにくい反面、景気後退局面や金利上昇時にはディフェンシブ銘柄として資金が逃避しにくい強みもあります。とはいえ金利動向や市場センチメント次第では株価が下落するリスクも当然あり、その際にはSBGの保有評価額も目減りします。
SBGは保有資産を担保に融資を受けたり資金調達の裏付けとするケースもあるため、株価下落は評価損に留まらず財務戦略の自由度低下(担保余力喪失や追加担保差し入れ)につながる可能性もあります。
まとめると、SBGの業績は保有株式(アリババ、T-Mobile、そして上場したArm株など)の値動きに大きく影響される状況です。
近年はアリババ株の処分で中国リスクを減らしましたが、その過程でも業績は巨額の評価損益に振り回されました。一方で浮上したT-Mobile株も、安定株とはいえマーケットリスクがゼロではありません。SBGは投資持株会社であり本業の安定収益が小さいため、保有資産の評価益で黒字にもなれば評価損で巨額赤字にも転落するというボラティリティの高い収益構造が続くでしょう。
アナリストがSBGの株価純資産倍率(PBR)の大幅な割安を指摘しても、市場がなかなかSBG株を評価しないのは、このような資産変動リスクの大きさに起因しています。したがって、SBGが安定成長する企業だと考えるのは難しく、保有資産の分散やヘッジが不十分な限り評価損益の乱高下リスクと付き合っていかざるを得ません。
5.為替変動(特にドル円相場)の財務・業績への影響
ソフトバンクGの財務指標は円相場、とりわけドル円レートの変動によって大きく揺さぶられます。グローバルに投資を行うSBGは、資産サイドでは米ドル建て資産(米国株式、ビジョンファンドの投資先など)が多く、負債サイドでも外貨建て借入・社債を相当抱えています。そのため、円安・円高の振れに対して両刃の剣とも言える影響を受けます。
円安局面の影響:円安(ドル高・円価値下落)はSBGの円建て資産評価を膨らませる一方で、円建て負債評価も膨らませるため、プラス要因とマイナス要因が混在します。具体的には、保有するドル建て資産(例えば米国株のT-Mobile株や、米ドル評価の未上場株式群)の円換算価値が上昇し、NAV(純資産価値)を押し上げる効果があります。SBGによると、実際に2022年前半の四半期にはドルベースで約160億ドル(約2兆円)NAVが減少したにもかかわらず、円安のおかげで円ベースNAVは横ばいに保たれたといいます。
孫正義は決算説明会で『会計上は円安で8200億円の為替差損を計上したが、NAVでは2.2兆円助けられた。私は会計益よりNAVの方が重要だと思っており、そういう意味では今回は為替に助けられた』と述べています。
この発言が示す通り、急激な円安はSBGのバランスシート上は資産超過を拡大させるためプラスに働く面があるのです。しかし同時に、円安はSBGの外貨建て負債の円換算額を増大させます。SBGやその子会社が発行したドル建て社債や外貨借入金の残高は、円安時には円評価額が膨らむため、為替差損が発生します。
先の孫正義の発言にもあったように、2022年度には円安により約8200億円もの為替差損を計上しています。この為替差損は主に負債サイドの評価替えによるもので、会計上はSBGの純利益を大きく押し下げました。ただし、それでもNAVが守られたことでSBG経営陣は『NAVの方が重要』と強調しているわけです。
つまり、SBGは為替による帳簿上の損益ブレよりも、実質的な資産価値の方を重視する姿勢をとっており、ある程度の円安リスクは容認していると解釈できます。
円高局面の影響:一方、円高(ドル安・円価値上昇)は上記と正反対の効果をもたらします。ドル建て資産の円換算額が縮小するためSBGの資産評価を押し下げ、NAVが目減りする圧力となります。例えばドル円が大幅な円高方向(現在の145円/$水準から120円/USD台など)に触れた場合、T-Mobile株やビジョンファンド投資先の評価額が円ベースで減少し、含み損の拡大や評価損の計上につながるでしょう。その代わり、外貨建て負債の円評価額は減るため為替差益が出ますが、SBGは純資産超過の企業ですから資産側の目減り額の方が負債側の減少額より大きくなりがちです。したがって円高はネットではSBGにマイナス要因と考えられます。加えて、海外資産売却時に得られる現金も円転すれば目減りするため、資金繰り面でも円高はSBGに不利に働きます。
為替変動リスクへの備え:SBGは為替ヘッジについて明確な方針を示していませんが、上記孫正義の発言から察するに為替変動をある程度受け入れてNAV重視で経営しているようです。ヘッジをすれば為替差損益は抑えられるものの、そのためのコストや流動性制約も生じます。SBGほど巨額の外貨建て資産・負債を持つ企業が完璧にヘッジすることは現実的でなく、結局のところ為替の影響は業績数字に表れてしまいます。実際、SBGの四半期決算を見ると為替差損益が収支を大きく振らすケースが散見され、為替レートの読みづらい現在の相場環境ではSBGの業績予想も困難です。
将来米国の景気後退などで急激な円高が進めば、SBGにとっては帳簿上の為替差益は出るものの、保有資産評価の減少という痛みを伴います。極端な円高はNAV棄損からLTV悪化⇒追加担保要求といった連鎖も招きかねず、為替変動はSBGの財務健全性を揺るがしかねない外生要因です。
総じて、ドル円相場の変動はSBGの業績に大きなインパクトがあります。円安時にNAVを底上げして救いとなる反面、会計上の損失を拡大させたり利払い負担を増やすリスクがあり、円高時にはその逆となります。SBGはグローバル投資企業ゆえにこの為替リスクを避けられず、投資家はSBGを評価する際に為替前提にも注意を払う必要があります。
結論:楽観シナリオへの警戒
以上5つの視点から批判的に検証したように、ソフトバンクグループの財務・事業を取り巻く環境には多くの不安要素が存在します。社債への過度な依存、AIインフラ投資の不確実性、保有資産価値のボラティリティ、そして為替リスク――いずれも一歩間違えばSBGの業績や株価に大打撃を与えかねないファクターです。
このような綱渡り経営の現実にもかかわらず、市場の一部には『Arm上場で含み益が増えたから大丈夫』『生成AIブームでSBGの投資先企業が復活する』など楽観的な株価予想も散見されます。しかしこれらは上記リスク要因を度外視した見方と言え、鵜呑みにするのは危険でしょう。
特にスターゲート計画のような大型ビジョンは魅力的に映りますが、実現までのハードルは高く、『絵に描いた餅』に終わるリスクも無視できません。
同様に、ArmやT-Mobileといった有望資産も、市場変動や政策・競合要因で評価が揺らげばSBG決算は簡単に悪転します。孫正義は『常に楽観的』で知られますが、投資家としてはむしろ悲観シナリオに備える姿勢が求められる局面でしょう。
間もなく発表される2025年3月期本決算では、SBGがこれら懸念にどう対処しているかが問われます。社債残高の圧縮策や、スターゲートの進捗・計画修正、保有株式ポートフォリオの健全化(あるいはさらなる売却益計上)、為替変動への対応方針などについて、経営陣から具体的な説明があるか注目されます。仮にこうした点への言及が乏しければ、たとえ単発の決算数字が良好でも市場の不安は払拭されないでしょう。
『孫マジック』で描かれた未来図と現実のギャップに冷静な目を向け、慎重なスタンスでSBGの行方を見極める必要があると言えます。
たった23ページでも出版できるKindleの影響力
拙著『破滅への賭博:孫正義の幻想と日本経済の崩壊』──タイトルだけ見ると、何やら大仰な内容に思われるかもしれませんが、実はたったの23ページです。
『え? たったの23ページで580円の価値があるの?』と思われる方もいるでしょう。しかし、もしこの23ページが、孫正義が率いるソフトバンクグループの『投機的経営』が、リーマン・ブラザーズ破綻と同等の経済的衝撃をもたらす可能性に気づくきっかけになったとしたら、どうでしょうか?
リーマン・ブラザーズが破綻した2008年当時、サブプライムローン問題が深刻化していたにもかかわらず、同社の格付けは依然AAAでした。破綻が表面化した瞬間、金融の専門家、アナリスト、マスメディアのすべてが『誰も予期できなかったリーマン破綻』と口を揃えたのです。
いま、ソフトバンクグループ(SBG)の実態に目を向ければ、海外の格付け機関では既にジャンク債並みの評価を受けており、投資不適格のハイリスク企業と見なされています。それにもかかわらず、日本の格付け機関だけがSBGに『A』を付与し、5000億円の借金返済のための6000億円の社債が即日完売するという信じがたい状況が起きているのです。さらに株価は7000円超え。この異常な光景に、警鐘を鳴らす声は少ないままです。
この23ページに込められた『気づき』は、リーマン・ブラザーズの破綻を『予期できなかった』と語っていた当時の専門家たちと同じ過ちを繰り返さないためのヒントです。言い換えれば、もし今、投資ポジションを一時的にでも引き下げたり、依然としてリスクが高い東京電力を避けて、他の電力・ガスといったディフェンシブ銘柄に乗り換えるなどの行動が取れれば、2008年のように暴落後の市場で、日経225やTOPIX、S&P500、NASDAQといったインデックス投資を通じて大きな成果を得るチャンスが再び巡ってくるかもしれません。
ましてや、巨額の有利子負債を抱え、AIや海外株式といった不安定なポートフォリオに依存しながら、国内の個人投資家を相手に高利回り社債を連発しているような企業の債券を、今あえて買い込むなどは正気の沙汰ではありません。それは、ブレーキの効かない特急列車に『席が空いているから』と飛び乗るようなもの。五年以内に何が起きても不思議ではない銘柄に手を出すことこそが、最大のリスクなのです。
投資リスクを『把握する』とは、誰かの夢物語に酔いしれることではありません。そこに潜む嘘を見抜く力です。口先だけの虚業家、生成AIに劣るアナリスト、手数料目当ての金融機関や格付け機関の『ポジショントーク』に踊らされないための唯一の防衛手段が、本質的な情報なのです。
そしてその情報とは、決して量ではなく質。俳句や短歌のように短くても、時に膨大な価値を持つものなのです。
そんな本質情報をたったの23ページに凝縮したKindle本──それが『破滅への賭博:孫正義の幻想と日本経済の崩壊』です。
しかも、2025年4月25日~29日の5日間は無料キャンペーン実施中。この記事と重複する内容も多く、あえて購入いただく必要はありませんが、この機会にぜひKindleで無料DLして、活字の世界を楽しんでみてください。
最後に闇深・ヤンデレ・ツンデレで一言。
『べ、別に…あんたに読んでほしいなんて思ってないよ? でも……
もし読まないなら――どうなっても、知らないからね。
あんたのために書いたんじゃないけど……
私の言葉、無視したら……泣くかも。壊れるかも。
……ほら、無料なんだから、ちゃんとダウンロードして。ね? 今すぐ……♡』


武智倫太郎

