障害者就労継続支援事業所と職員のあり方
障害者就労継続支援事業所という施設が全国各地にたくさんある。
A型とB型があり、A型は全国に1,652、B型は全国に8,035もある(平成25年5月)。
A型は障害者を雇用し時給で給料を払う。
B型は障害者と雇用関係を結ばず、給料は工賃というひどく安い金額しか払わない。
しかしB型の場合、事業所に丸一日(といっても4時間)いなくても「通所」したことになり、工賃は「1日いくら」と事業所ごとに決められているので、事業所は1時間しかいなかった利用者(通所する障害者)にも1日分の工賃を払う。
またA型は65歳で定年になるが、B型に定年はない。
障害者就労継続支援事業所は厚労省が作った障害者総合支援法に基づくもので、しかし運営は民間に丸投げしている。
障害者を通所させる障害者就労継続支援事業所には、国が多額の給付金を支給する。
A型は時給で障害者を働かせるので、何名の利用者がひと月に何時間働いたかで給付金の額が決まる。
B型は前述したように1日に1時間しかいなくても「通所した」ことになるので、利用者がひと月に何回通所したかで給付金額が決まる。
障害者を囲えば丸儲けできると、この施策が発表されると多くの民間人が障害者就労継続支援事業所を開設し、求人広告などで多くの障害者を通所させた。
まるで障害者狩りのようだった。
しかし障害者のほうでもこれらの事業所の開設を歓迎した。
障害があるというだけで多くの障害者は働く場を得られず、生活が困窮していたからだ。
当初の事業所では、A型でもB型でも、障害者に折り紙をさせたりごく簡単な作業をさせるところが多く、事業所の経営は国からの給付金に頼っていた。
この実態を知った弁護士などが動いて問題提起し、それを受けて厚労省は、全国の障害者就労継続支援事業所を監査し、問題のあるところは認定を取り消した。
認定を取り消された事業所はA型ばかりだった。
A型事業所の目的について厚労省はこう示している。
「通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う」
対象となる障害者は以下の通りである。
① 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③ 企業等を離職した者等就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
折り紙などでは、「就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練」にはならない。
しかも折り紙などをさせるだけでA型は利用者に給料を払っている。
これでは障害者支援にならないし、国からの支給金を不正利用しているということで、厚労省は多くのA型事業所の認定を取り消したのだ。
そして、残ったA型事業所に対して、「利用者への給料は利用者の働きでまかなうように」と指導した。
一方、B型事業所で認定を取り消されたところはなかったようだ。
B型事業所の目的について厚労省はこう示している。
「通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う」
対象となる障害者は以下の通りである。
① 就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
② 就労移行支援事業を利用(暫定支給決定における利用を含む)した結果、本事業の利用が適当と判断された者
③ ①、②に該当しない者で、50歳に達している者、又は障害基礎年金1級受給者
④ ①、②、③に該当しない者で、協議会等からの意見を徴すること等により、一般就労への移行等が困難と市町村が判断した者
B型は、「就労が可能である者」を対象とするA型に対して「就労が困難である者」を対象とした事業所なのである。
そのため厚労省では、B型については、利用者に折り紙等のどうでもいい作業をさせていても大目にみたのだ。
B型は利用者にごくわずかな工賃しか払わなくてもいい。
その工賃の額は事業所が自由に決めたようだ。
その額、1日なんと300円というところもあった。
A型でもB型でも、国から支給される金にそれほどの差はない。
となれば、利用者に時給で給料を払わなければならないA型よりも、安い工賃しか払わないで済むB型のほうがはるかに儲かる。
それでB型事業所のほうが圧倒的に数が多いのである。
私は、札幌と千歳で、A型とB型の両方の事業所に通所した。
札幌のA型では私は手びねり陶芸をしていたのだが、私がホームページも作れると知ると、経営陣は私に事業所のホームページ作りを命じてきた。
同時に「手びねり陶芸もやれ」と言う。
障害者就労継続支援事業所の勤務は1日4時間までと定められていて、その事業所は4時間勤務だった。
私は午前中2時間をホームページ作成にあて、午後2時間を手びねり陶芸にあてた。
それでいて私は迅速にホームページを作り、陶芸班の誰よりも多くの作品を作った。
ホームページを作るに当たっては写真がどうしても必要なので、経営陣に「デジカメかスマホを買ってほしい」と頼んだが却下された。
それで仕方なく自分のスマホで写真を撮り、スマホのアプリで加工して使った。
私が作ったホームページはその事業所で作っている全商品を紹介するものだった。
その数、200点くらいはあったと思う。
それらの写真を正面から撮るだけでなく、横、裏、細部と何枚も撮り、正面から撮った写真をホームページに載せる。
それら商品画像をクリック(またはタップ)すると、複数の写真が一枚にまとめられたものが小窓で表示されるようにした。
そのため撮影する枚数は膨大なものになり、私のスマホは容量オーバーになった。
特に陶芸班が作る陶器は、1ヵ月か2ヵ月にたくさんの製品を一度に窯入れして商品にするので、そのたびに100個くらいの商品を新しくアップさせなければならなかった。
その作業に私は忙殺された。
その上に経営陣は陶芸班に「電動ロクロでも陶芸をやれ」と言ってきて、精神科のデイケアで電動ロクロによる陶芸の経験のあった私に「みんなに教えろ」と言ってきた。
手びねり陶芸しか知らない古参の利用者は、「あんなのは観光地で観光客でもやってるじゃないか」と電動ロクロによる陶芸を馬鹿にしきっていて、私が教えようとしてもろくに話を聞かなかった。
実は電動ロクロのほうが難しいのだ。
ロクロの上に粘土を置き、ロクロを回しながら水を付けた両手で粘土を左右から圧縮していって上に向かって粘土を山の形にする。
その山が、ろくろを回転させても静止しているように見えたら「芯が出た」という。

つまりロクロの中心に粘土がきちんとセットされたということだ。
芯が出ていないまま器などを作ろうとしても失敗する。
観光地で観光客が電動ロクロで作品を作ることができるのは、あらかじめ職人が芯を出しているからである。
電動ロクロを馬鹿にしていた古参たちに芯を出させてみると誰もできなかった。
芯を出せるようになるまでは、相当の練習が必要なのである。
それで古参たちは電動ロクロに近づこうともしなくなり、私の立場は微妙なものになった。
さらに職員にパワハラされた。
そういうこともあったしオーバワークもたたって私はその事業所を辞めた。
その後、千歳に引っ越し、今度はB型事業所に入った。
本当は千歳で隠居したかったのだが、札幌に比べて千歳の冬ははるかに寒く、暖房費がびっくりするような額になった。
それで生活していけなくなり、やむなくB型事業所に入ったのである。
もう65歳を過ぎていたので、A型には入れなかったのだ。
そのB型事業所では、有名菓子店のクッキーを入れる箱を作っていた。
箱を作るといっても、厚紙に印刷して断裁し、折るところには溝をつけたものをテーブルの上で折って畳んでいくだけの作業である。
そんな面白くもない作業を私は始めた。
そのうち、ひとりの利用者が職員とふたりきりでレザークラフトをしていることに気づいた。
「私もあれをしてみたい」と事業所の責任者に言った。
聞き入れられ、私は箱作りではなくレザークラフトをするようになった。
職員の中に基本を知っている人がいたので、まずその人からごく基本的なことを教えられた。
しかしその職員はすぐ辞めてしまった。
それからは自分で考えてレザークラフトをするようになった。
約1年間のうちに40種類以上の商品を考えだして作り、メルカリに出品するようになった。
レザークラフトをするには集中しなければならないので、私は別室で作業するようになった。
箱作りをしている利用者たちは大声で私語をしながら作業するので、迷惑に思っていた私が責任者に頼んで別室で作業させてもらうようにしたのだ。
レザークラフトをするには材料と器具などが必要である。
それらを私は自宅のパソコンで検索し、商品名などをスマホに移し、事業所に行って職員に頼んで注文してもらった。
その「注文数が多すぎる」と職員から言われた。
無駄なものは何も注文していないのに、レザークラフトのことを知らない職員は、そうは思わなかったようだ。
そしてこうも言ってきた。
「仕事しないでください。作業してください」と。
私が私語することなく集中して“仕事”をしているのを、職員たちは快く思っていなかったのだ。
他の利用者がワアワア騒ぎながら作業しているのに、私だけ“仕事”しているのはまずいと思ったのだろう。
メルカリに出品する際に必要になる画像とコピーは私が自宅で作った。
そんなこともあって、「そんなに頑張られると困る」とでも思ったのかもしれない。
この間、私のメガネのレンズが激しく傷つけられるという事件が起きた。
昼休み、昼食を食べ終えたら私はスマホゲームをすることが多かった。
ほかの利用者は職員と一緒になってギャーギャーとうるさくゲームなどをしている。
彼らはたいていひとつのテーブルに集まってゲームをする。
私は離れたテーブルにひとりで座り、スマホゲームをする。
その際、メガネを外してテーブルに置く。
トイレに行きたくなると、スマホとメガネをテーブルに置いたまま席を立つ。
これがいけなかった。
トイレから戻ってくると、スマホに異常はなかったが、メガネのレンズにとんでもない異常があった。
デスクに置くタイプのセロテープ台に付いているギザギザの金属部分で3方向からガリガリガリと削ったような激しい傷がついていたのだ。

そんな傷が自然につくわけがない。
その前に転んだりメガネを擦ったりしたこともない。
だいたい、もしそうだとしても、3方向から削るような傷なんてつくはずがない。
利用者の誰かがイタズラをしたのだ。
私は責任者にメガネを見せ、事情を話した。
すると責任者は「うちにはそんなことする利用者はいません! 職員がちゃんとチェックしてます!」と強い口調で言った。
職員はゲームに夢中でチェックなんてしてなかったよと言おうと思ったがやめた。
障害者施設で犯人探しなどをし、それが世間や警察に知られたら大きな問題になる。
事業所の管理不行き届きで認定を取り消される恐れがある。
一瞬のうちに責任者はそう考えたのだと思う。
そう察した私は、これ以上話しても無駄だと思って話を続けるのをやめたのだ。
それで私の「メガネ事件」はうやむやにされた。
この事業所の責任者は、私というひとりの利用者に犠牲を強い、事業所を守ったのだ。
責任者は社長にも職員の誰にもそのことについて黙っていた。
どこからか話が漏れるのを完全に防ごうとしたのだろう。
それはともかく、さらに経営陣は私に、「レザークラフトの作業手順書を作ってほしい」と言ってきた。
それは言われなくても作るつもりだったので私は承諾した。
しかし事業所はパソコンを貸してくれなかった。
作業手順書はスマホでは作れないと思ったので、パソコンのエクセルで作ろうと私は思っていたのだが、事業所がパソコンを貸してくれないのでは自宅のパソコンで作るしかなかった。
それで仕方なく作業手順書は全部、自宅のパソコンで作った。
そのことを事業所は知っていたのに、今度は「仕事しないでください」とは言ってこなかった。
あきらめたのかもしれない。
作業手順書は、項目・商品ごとにA3版一枚にまとめた。
それで基本編6枚、商品編40枚を作り上げた。


その途中、責任者が「作業手順書は作らなくていいです」と言ってきた。
混乱した私は鬱期に突入し、1ヵ月ほど事業所を休んだ。
私は双極性障害(躁鬱〈そううつ〉病)なのだ。
復帰して作業手順書を完成させると、責任者が不満をあらわにした。
責任者が想定していた作業手順書は冊子で、だから私の作った作業手順書に不満だったのだろう。
「冊子ではページをめくりながら作業しなければなりません。一項目一商品一枚であれば、それを正面の壁に張るかして、それを見ながら作業できます。だからこのほうがいい」と言っても責任者は聞く耳を持たなかった。
そんなことがあって、「辞めどきだ」と思ってその事業所を退所した。
しかし、それでは冬を越せなくなる。
それで別のB型事業所に移った。
その事業所は利用者に仕事をさせてくれるところだった。
隠居したいのが本音だが、どうせ事業所に通うなら、ちゃんとした仕事をしたいと考えていた私にとっては願ったり叶ったりのところだった。
ポスターやチラシや動画などのデザインものを手掛け、注文があれば受け、利用者がそれを作る。
私はグラフィックデザインとコピーライティングはしてきたが、動画は一度も作ったことがなかった。
それで「動画をやってみたい」と責任者に言った。
こうして私はその事業所で動画製作をするようになった。
初めて使う動画ソフトに戸惑いながら、職員から与えられた課題に沿って動画を作る練習を続けた。
私が作ってみたいいと思っていたのは映画やドラマのオープニング動画だったのだが、そんな注文はないとみえ、やらされるのはショート動画ばかりだった。
これも基礎づくりのためだと自分に言い聞かせて頑張った。

しかし、不思議なことが何度も起こった。
1分間とか1分間半というショート動画を作る際には、私はまずストーリーを考え、脚本を打った。
それにしたがってナレーションテキストを作り、それを使ってまずナレーションを作った。
そのナレーションが指定された時間内に収まれば、次に、必要な動画や画像を集め、うまくつなげ、テロップと効果音を入れていく。
最後に動画や画像やテロップにエフェクトを入れ、動画が映えるようにして完成。
ところが、職員にその動画を見てもらうと、「ナレーションとテロップがずれている」と指摘されるのだった。
私が備え付けのイヤフォンで聞くと「ずれ」てはいない。
職員は自分専用のヘッドフォンを装着して聞く。

すると「ずれ」ているというのだ。
不思議な話だった。
そんなことが何度も続いて頭にきた私は、ショート動画ではなく10分程度の記録映画的な動画を最後に作った。
結果的に11分の動画になった。
これで「ずれてる」と言われたら、自分の耳はおかしいから動画製作には向いていないのだとあきらめるつもりだった。
完成した動画を見てもらおうとしたら、「11分? そんなの見てられない」と職員に一蹴された。

「そんなの」というひどい言葉を浴びせられて私はまた鬱(うつ)期に突入し、その日のうちに退所した。
辞めるその日、それまで作った動画ファイルとそれが収められているフォルダすべてを、私のUSBメモリに保存して持ち帰った。
そして自宅のパソコンでそれら動画を再生してみたら、音が「ずれ」ているのがはっきりわかった。
なのに事業所のイヤフォンで聞くと「ずれ」は感じなかった。
おそらく私の使っていた動画ソフトに問題があり、「音ずれ」が生じていたのだろう。
けれど、備え付けのイヤフォンで聞くと「ずれ」ているようには聞こえなかった。
職員がヘッドフォンで聞くと「ずれ」が聞こえた。
ということは、備え付けのイヤフォンが壊れていたのだろう。
※この件については以下のページを参照。
長々とこんな話を書いたのは、障害者就労継続支援事業所の中には、障害者の扱いが不適切な人間がいることを知ってもらいたいからだ。
彼らは、「ノーマライゼーション」と「エンパワメント」という障害者支援の基本さえ知らないのではないか。
障害者支援の根本には、「ノーマライゼーション」と「エンパワメント」というふたつの大切な思想があるのである。
ノーマライゼーションとは「障害があっても当たり前に街で暮らすこと」である。

エンパワメントとは「本人が本来持っている力を引き出すこと」を意味する。

そのため、「できないこと」に注目して職員が先回りして利用者の世話をするのではなく、本人の「できること(強み)」を活かしていく視点が欠かせない。
また、障害は個人にあるのではなく、不便な環境や偏見といった「社会の側」にあるという考えが重要であり、その社会にある壁を、利用者と一緒に取り除いていくことこそが職員の役割なのである。
障害者就労継続支援事業所に、この原則を守っている職員がどれだけいるか、これまでの経験から私には疑問なのだ。
どう見ても不適格な職員がいる。
障害者虐待と言ってもいいようなことをしたりするのは人間として失格であり、障害者就労継続支援事業所の職員だったら罪に問われることだと思う。
厚労省は、その点も監査すべきだと思う。
福祉事業は民間人がやるよりも行政がやったほうがいいと思う。
というのも、福祉で金儲けするというその心理が私にはわからないからだ。
金儲けのために障害者を集め、利用者に無理をさせたり虐待したりパワハラしたりするような事業所などあっていいはずがない。
行政が民間に丸投げするのは人員が少ないからだろうが、それでも福祉事業は行政がやるべきだと思う。
数千の事業所に毎月何百万円もの給付金を出す財力があるなら、福祉事業を行政でできないとは思えない。
どうしても無理だというのであれば、各事業所に権限を持つ役人を出向させるだけでもいい。
それもできないのなら、障害者就労継続支援事業所への給付金を減らすべきだ。
現在の給付額はあまりにも多すぎる。
