イカれたイヤフォンで動画製作をさせられていた
千歳の障害者就労継続支援B型事業所に通所していたとき、動画製作を学んでいた。
そこの指導員からひどい言葉を浴びせられて鬱期に突入して退所したことは前に書いた(『障害者B型事業所を辞めた〈職員の傲慢な態度で鬱期突入〉』)。
動画製作といっても素材の動画がほとんどなく、仕方なくネットから画像を持ってきたり、AIで画像を生成し、つなげて動画らしきものを作ることが多かった。
最初はネットにアップされている他人のショート動画の模写をさせられた。
次に、指導員から課題を与えられて、それに従って、やはりネットやAIで画像を用意し、それをつなげて動画らしきものを作った。
そのうち指導員に負担を与えたくなくて、自分で課題を考え、それでショート動画を作った。
それらの過程で、不思議なことが何度も起こった。
最初にテキストでストーリーを作り、それでナレーションを作り、短時間の動画になるかどうか確認した。
ショート動画になると判明したら、使用する画像をネットで探したりAIで作った。
それら画像をナレーションに合わせて並べていき、その画像の上にテロップを入れていく。
だいたいできたら、BGMや効果音を入れ、画像やテロップにエフェクトを入れたりして完成させる。
それを何度も見直し、備えられているイヤフォンを付けて聞き直す。
テロップとナレーションが合っていれば指導員に見てもらう。
指導員は、なぜか自分専用の高そうなヘッドフォンを持ってきて私の使っているパソコンにつなぎ、ヘッドフォンを耳に押し付け、私の作った動画を見る。
するとほぼ必ず、「テロップとナレーションがずれている」と指摘してくるのだ。
指摘されて私はイヤフォンを付けてもう一度見直し聞き直す。
けれど、テロップとナレーションがずれているようには聞こえない。
テロップもナレーションも画像も、動画製作ソフト上ではブロックになっていて、それを積み重ねている。
その始まりが縦一直線になっていれば、テロップとナレーションと画像が同時に始まるはずである。
私が使っていたイヤフォンでは、「ずれ」は感じられなかった。
けれど、指導員が自分専用のヘッドフォンで聞くと「ずれている」というのだ。
「どうしてなのか?」とずっと疑問だった。
「俺の耳はおかしいのではないか…」とずっと悩んだ。
この事業所を辞めるとき、自分のUSBメモリに、それまで作った動画ファイルをすべて保存して持ち帰った。
そうして、事業所で使っていた動画作成ソフトをダウンロードし、これまで自分の作った動画を見てみた。
ソフトはフリーなので、書き出ししないのであればタダで使えるのだ。
そのときはイヤフォンをしなかった(持っていなかたので)。
すると、テロップとナレーションがずれているのがはっきりわかった。
テロップとナレーションのブロックは縦一直線にちゃんと並んでいる。
なのに、テロップの始まりとナレーションの始まりがずれている。
事業所で私が使っていたパソコンの調子が悪かったのかソフトに問題があったのかはわからないが、ブロックをちゃんと積んでも「ずれ」が生じていたのだ。
それでも、私の使っていたイヤフォンで聞くと、「ずれ」は感じなかった。
しかし、指導員が自分専用のヘッドフォンで聞くと「ずれ」ていた。
まったく不思議である。
パソコンかソフトの調子が悪かったせいもあるのだろうが、それでも指導員がヘッドフォンで聞くと「ずれ」を感じ、私がイヤフォンで聞くと「ずれ」が感じられない。
それで思った。
事業所で私が使っていたイヤフォンがイカれていたのではないかと。
そんなイヤフォンを与えておいて「音がずれている」はないだろうにと思った。
あの指導員は、私が使っていたイヤフォンがイカれているのを知っていて、それで自分用のヘッドフォンをわざわざつないで私の作った動画を見ていたのかもしれない。
考えすぎかもしれないが、それもあり得るかもしれないと思ってしまう。
ひどい言葉を浴びせられて精神が木っ端微塵になっている今の私は、そんなふうに考えてしまうのだ。
あのままあの事業所にいたら、イヤフォンの不具合に気づくこともなく、私はますます追い込まれていただろう。
辞めてよかったと、あらためてそう思った。
