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20代・30代の『SNS疲れ』に悩むあなたへ、心理師からの処方箋

「最近、SNSを見ていると、なんだか心がざわざわする」。そんな感覚を覚えたことはありませんか。情報を追いかけるほど疲れてしまう。誰かの投稿と自分を比べて、なんとなく落ち込んでしまう。そうした声を、私は医療の現場で少なからず耳にしてきました。実は今、思春期の子どもたちの脳にも、大人の心にも、SNSが静かに、けれど確実に影響を及ぼしていることが、最新の研究でわかりつつあります。今日は公認心理師としての視点を交えながら、SNSと心の健康について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。


SNSが思春期の脳に残す「見えない変化」


SNSというものは、便利な道具である一方で、使う人の心に思っている以上に深く入り込んでくるものだと、私は感じています。特に思春期の子どもたちへの影響は見過ごせません。

2023年、米ノースカロライナ大学などの研究チームが、当時11歳から14歳だった子どもおよそ170人を対象に、3年間という長期にわたる追跡調査を行いました。SNSの利用状況についてのアンケートと、脳の働きを可視化するfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を組み合わせたこの研究は、世界中の注目を集めることになります。結果としてわかったのは、SNSを頻繁に使う子どもほど、脳の「報酬系」と呼ばれる部分の反応が年々敏感になっていくという事実でした。

報酬系というのは、簡単に言えば「嬉しい」「もっと欲しい」という感覚をつかさどる脳の仕組みです。この部分が過敏になるということは、他人からの「いいね」や反応に対して、心が振り回されやすくなるということでもあります。使えば使うほど、承認されたときの喜びも、拒絶されたときの痛みも大きくなっていく。まるで、甘いものを食べるほど、もっと甘いものが欲しくなる感覚に似ているかもしれません。

孤独感、そして「痩せたい」という願い


日本国内でも、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)の研究チームが、東京都内在住の未成年を対象に同様の追跡調査を行っています。ここでは「一度使うと止められない」「使っている最中にイライラする」といった状態を「不適切な利用」と定義し、心への影響を調べました。

その結果は、決して軽く受け止められるものではありませんでした。不適切な利用が多い女子は、そうでない女子と比べて「孤独感」が6.5%、「痩せたいという願望」が実に10.8%も高まっていたのです。NCNPの成田瑞室長は、この「孤独感」と「痩せ願望」の増強が、メンタルの悪化に直結していると分析しています。一方で男子への影響は、孤独感が2.5%増、痩せ願望が0.9%増と、女子ほど顕著ではありませんでした。詳しい仕組みはまだ解明されていない部分もありますが、社会とのつながりの感じ方に、男女で違いがあるのかもしれません。

なぜ思春期はこれほど影響を受けやすいのでしょうか。東京都医学総合研究所の西田淳志氏は「思春期の脳は十分に成熟しておらず、依存状態になりやすい」と述べ、「一度依存の回路ができると消えにくい」と警鐘を鳴らしています。だからこそ、依存は起きてから対処するのではなく、起きる前に備えることが何より大切なのだと、私も臨床の知見から強く感じています。

大人だって、SNSに疲れている


ここまでは思春期の話でしたが、では大人は無関係かというと、そうではありません。調査会社クロス・マーケティングが2026年6月に全国の20代から69歳、3000人に行った調査によると、「SNS疲れ」を経験したことがある人は20代で47.9%にのぼりました。「距離を置きたい、休みたい」と感じた経験がある人は全体で44.6%、女性は47.5%、男性は41.7%と、女性のほうがやや高い傾向にあります。

疲れを感じる場面として最も多かったのは「情報量が多すぎるとき」で39.5%。次いで「同じような情報ばかり流れてくるとき」が30.3%、「嫌なコメントや空気を感じたとき」が26.2%と続きます。さらに世代ごとの違いも興味深く、20代では「他人の投稿を見て気持ちが疲れる」「やめたいのに見続けてしまう」という声が目立つのに対し、30代では「他人と比較してしまう」が上位に入っています。実際にSNS利用を控えたことがある人は全体で43.9%、20代ではほぼ半数の49.5%。最大の理由は「無駄に時間を使っていると感じたから」でした。

ちなみに、生成AIによるSNSコンテンツについては、47.6%が「見たことがある」と回答した一方で、26.2%が「信用しにくい」と感じているというデータもあります。便利さと不信感が同居している、今の時代らしい結果だと感じます。

世界が動き始めた、規制の波


こうした状況を受けて、世界各国では法整備が急速に進んでいます。オーストラリアでは2025年12月、子どものSNS利用を規制する法律が施行されました。フランスやデンマークでは子どものアクセスそのものを禁止する法案の審議が進み、インドネシアでは2026年3月から16歳未満の利用を段階的に制限する取り組みが始まっています。英国でも年齢制限の検討が進められています。

企業側の責任を問う動きも強まっています。2026年3月、米カリフォルニア州の地方裁判所は、メタとグーグルに対して「依存性のあるプラットフォームを設計した」として計600万ドルの賠償を命じました。ニューメキシコ州でも、SNS上での性被害への対策が不十分だったとして、陪審団がメタに賠償を求める評決を出しています。

日本国内でも危機感は高まっており、クロス・マーケティングの調査では80.8%が「家庭や学校でのルールを含めて制限をすべき」と回答し、56.1%が「法律での規制」まで支持しています。世代が上がるほどこの意見は強くなる傾向にありますが、最も利用に近い20代でも72.5%が制限の必要性を認めているのは、注目すべき点だと思います。

それでも、私たちにできること


ここまで少し重い話が続きましたが、大切なのはここからです。私がお伝えしたいのは「SNSをやめましょう」ということではありません。SNSとの付き合い方を、少しだけ見直すチャレンジをしてみませんか、ということです。

一つ目は、疲れを感じたら「我慢」ではなく「離れる練習」だと捉え直すことです。意志が弱いから見てしまうのではありません。脳の仕組み上、そう作られているだけなのです。ここを取り違えて自分を責める必要は、まったくありません。

二つ目は、比較してしまう自分に気づいたら、それを「悪いこと」ではなく「人間らしい反応」として受け止めることです。他人の投稿は、その人の人生のハイライトにすぎません。波の上澄みだけを見て、自分の凪いだ日常と比べても、正しい比較にはならないのです。

三つ目は、子どもと接する立場にある方は、規制やルールを「禁止」としてではなく、「まだ発展途中の脳を守るための、思いやりのある約束」として伝えてみることです。頭ごなしに取り上げるのではなく、なぜ大切なのかを一緒に話す時間そのものが、実は一番の予防になります。

終わりに


今日お伝えしたことを、あらためて整理します。SNSは思春期の脳の報酬系を過敏にし、孤独感や痩せ願望を強めうること。大人の世代でも「SNS疲れ」は決して珍しい現象ではなく、情報過多や比較がその引き金になっていること。そして世界中で、依存を防ぐための法整備がすでに動き出していること。この3つです。

一度できた依存の回路は消えにくい、だからこそ予防が大切だという専門家の言葉を、私は重く受け止めています。けれど同時に、気づいた今この瞬間から、付き合い方は変えていけるとも思っています。あなたが今日感じた小さな違和感は、きっと変化への入り口です。どうか自分を責めず、できるところから、少しずつで大丈夫です。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。今日の記事が、皆さんの明日以降の一歩を考えるきっかけになればうれしく思います。

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