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「みんなが言ってる」の"みんな"って、いったい誰のことですか?

ちょっと思い返してみてください。
「ネットでみんながそう言ってるから」「あの話、知ってる?すごく広まってるよ」——そんな言葉で情報を受け取ったこと、ありませんか?

実はこの"みんな"という言葉、フェイクニュースや陰謀論の世界では非常に巧妙な「罠」として使われています。私は医療現場で日々働く中で、人が情報をどう処理するかを心理学的な視点からずっと気にかけてきました。今日はそのメカニズムを、できるだけ平易な言葉でお伝えしたいと思います。


「証拠」より「いいね数」が信用される時代


ラッセル・ミュアヘッドらの著書『A Lot of People Are Saying(多くの人が言っている)』は、現代の情報操作の核心を鋭く突いています。かつて何かを主張するには「根拠」が必要でした。でも今は違う。「どれだけ多くの人が支持しているか」が、事実かどうかの判断基準にすり替わってしまっているというのです。

これは論理学でいう「衆人に訴える論証」という詭弁の一種です。「多くの人が言っているから正しい」というのは、本来なんの証明にもなりません。でもSNS上では「いいね」やリツイートの数が目に見える形で並ぶため、私たちの脳は直感的に「これだけ支持されているんだから事実なんだろう」と錯覚してしまう。

さらに深刻なのは、専門家や科学的なデータよりも「ネットのみんなの声」を上位に置く態度、いわゆる「認識論的ポピュリズム」が広がっていることです。これは事実の価値を根本から崩す考え方で、私は職場でこうした情報の歪みが患者さんにも影響している場面に遭遇することがあります。

「全員がそう言ってる」という感覚は、幻影かもしれない


「ネットでみんながこう言ってる」という感覚——これ、実はプラットフォームが意図的に作り出した"幻影"であることが多いんです。

SNSでは自分と似た意見を持つ人を自然にフォローし合うため、閉鎖的なコミュニティ(エコーチェンバー)が形成されます。その中で同じような情報を繰り返し目にすると「ネットでみんながそう言っている=事実」「全員が彼を嫌っている」という誤った確信が生まれ、それが「世の中の常識」だと完全に思い込んでしまう。

もう一つ見落とせないのが、ネット炎上の構造です。炎上は最初、ごく少数の熱狂的な人々から始まります。それがSNSで拡散し、テレビなどのマスメディアが「ネットの声」として取り上げた瞬間に、社会全体の世論かのような錯覚が完成します。実態は「ごく少数の声」なのに。

なぜ普通の人がフェイクを拡散してしまうのか


心理学には「ハーディング効果」と呼ばれる現象があります。他者の行動や周囲の空気を気にする「同調志向」が強い人ほど、偽情報を信じやすく、また他者に広めやすい傾向があるというものです。

そしてここで思い出してほしいのが、「スマイリーキクチ中傷被害事件」です。無実の人がネット上で殺人犯に仕立て上げられたこの事件、加害者の多くはごく普通の市民でした。彼らの多くが語った動機の一つが「みんなが書いていたから、自分も書いていいと思った」という言葉です。

これが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の心理です。他の人が先に発信しているという状況が「自分には責任がない」という根拠のない感覚を生み出し、個人の倫理観や批判的思考を麻痺させてしまう。その結果、フェイクニュースはどんどん加速していきます。

「多数決」は真実を決めない


フェイクニュースを広める側の常套句があります。「みんなが疑っている」「多くの人がもう気づいている」——これは受け手に対して「真実に乗り遅れるな」という同調圧力をかける、計算された言葉です。

「たくさんの人が言っているから正しいんだろう」とふと感じた瞬間こそ、脳の認知バイアスが働いている危険なサインです。

民主主義において多数決は「意思決定のルール」として機能します。でも「何が真実か」は多数決では決まりません。これは絶対に混同してはいけない。

情報空間で「みんなが言っている」という言葉を見かけたとき、一度立ち止まって問い直してください。

——その"みんな"って、具体的に誰のことですか? 客観的な根拠はどこにありますか?

この問いを持つだけで、あなたの情報リテラシーは大きく変わると思います。医療の現場でも情報に踊らされることは命取りになります。日常のネット空間でも、冷静な「疑う目」を忘れないでいてほしいと思います。

#フェイクニュース #メディアリテラシー #SNSの罠 #認知バイアス #情報リテラシー


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