岩手物語 第十一話 水の音
この記事に目にとめた方、お目が高い。
お試しで第一話、(あらすじもありますよ。)どうでしょうか。 ▼
第十一話 水の音
それは、コウジにバイトメンバー集めを指示していた先輩。
__ガンさん!?
この道は車が2、30分に一台通るかどうかなのに、考え事をしていて気が付かなかった。
橋の向かい側に黒いワンボックスがハザードを焚いて止まっていた。
手動のスライドドアが開く音がして、三人の男がガンさんの後を追ってぞろぞろと出てきた。
黒ずくめで、何人かは頭に目出し帽を乗せている。
1mはある、くい打ち用のハンマーを道路に引きずってきた男。
……コウジだ。
僕はガンさんから少し後ずさりして身構えた。
ガンさん含め四人。
ガンさんが口を開いた。
僕を向いているが、後ろのコウジに怒鳴るように問いかけた。
「オイオイ、本当にこいつか。」
体重100キロの男の凄いでかい声。
僕は怖くて震えあがった。
「じじいも殺せねぇし、コウジ!」
「オウ!」
ガンさんが吠えると、平手が飛んできた。
びりびりと頬に電気を受けたような痛みが走った。
今度は右から拳が飛んできた。
ガードしたが、凄い力だ。
よろけて車道側に転げた。
襟を掴まれると欄干に飛ばされた。
「弱っちいじゃねぇか。
ああ?コウジ!」
すると、コウジが言った。
「いや、だから、そいつじゃなんですよ。」
こいつらだったんだ。
僕の家を襲ったやつらは。
「いったい何の目的だ。」
言うや否や、ガンさんの右が僕の顔面をとらえた。
「金に決まってんだろ。」
僕は襟元を掴まれ、欄干に顔面を打ち付けられた。
僕は欄干にもたれかかると、水面に鼻血が落ちた。
「お前のジジイ殺すと、金貰えるんだよ。」
蹴りが僕の尻に当たる。
また、川に僕の鼻血が落ちていった。
すると、落ちた鼻血が川の流れを遡っていく。
水面がざわざわと変化しだした。
「お前はついでなんだよ。」
「ガンさん!」
コウジが叫んだ。
襟元を掴まれていた僕はその力がゆるんだのを見逃さず、ガンさんに右の拳を当てた。
全く効いた素振りも見せないガンさんの視線は僕を見ていなかった。
ガンさんが呟いた。
「な、なんだ、こいつら……」
ガンさんの腕を振りほどいた僕は、周りに気配を感じた。
びちゃびちゃと音を立てて橋の欄干を伝って、そいつらが登ってきた。
人の形をした水。
20人、いや30体か?
そいつらが僕らを取り囲むように対峙していた。
