岩手物語 第十二話 緑の浸食
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第十二話 緑の浸食
そいつらは、膝を曲げた猫背で、両手をぶらりと下げていた。
その両の手から水が滴っていた。
そして、透明だった体に、すこしづつ色がついてきた。
まるで内側から緑の餡が沸くように。
よろめいた僕を全く無視して、数体がガンさんに突進していった。
後ずさりしたガンさんは乗ってきた黒いワンボックスに、もがくように走った。
コウジの後ろ、男二人は何体かの襲撃に悲鳴をあげていた。
コウジはハンマーを振り回すと、襲ってきた一体の左わき腹にハンマーが当たった。
「ぐぎゃああぁ!」
そいつは、わき腹を押さえながら尻もちをついて天を仰ぎ、ばしゃんと音がして水に返った。
しかし、くい打ち用のハンマーは取り回しが重い。
左に振ったハンマーを右に返そうとしたコウジの腰に一体がタックルをすると、よろめいたコウジの右腕にもう一体がぶら下がる。
その横をガンさんが走り抜けた。
「え!?ガンさんっ!」
そう言ったコウジの口に更にもう一体が右手を突っ込んだ。
こいつらだ。
こいつらに、遠野で見つかった二人は殺されたんだ。
気が付くと僕はコウジにしがみついていた緑のやつを引きはがした。
コウジは咳き込むと、口から水を吐いた。
コウジと一緒に降りてきた一人は黒いワンボックスに逃げ込んだ。
乗っていたワンボックスの運転手がクラクションを鳴らしている。
逃げ遅れたもう一人の男は、その緑の奴らに両足を掴まれ欄干の方へ引きずられていた。
川に引きずり込む気だ。
「コウジ、立て!」
コウジに声をかけると、僕は川に引きずられそうな男に駆け寄った。
彼の腕を掴むと、そいつらと綱引きになった。
僕は二体の腕を蹴ると、
引っ張っていた勢いもあってその二体は川に転落していった。
「ひぃい、助かった。」
僕も勢いで尻もちをついた。
クラクションの鳴る方に目を向けると、ワンボックスにたどり着いたガンさんが運転席のドアを叩いていた。
黒のワンボックスはガンさんを置いて発進した。
車の前に居た数体を轢いて進んだが、車の側面や屋根に既に数体が貼りついていた。
そのうちの一体が車のマフラーに手を突っ込むと、車がボコボコと音を立ててエンジンが停止した。
僕ら3人はワンボックスへ向かった。
運転席とスライドドアが開くと、車中から信じられない量の水が流れ出た。
木刀や金属バットと共に、運転手ともう一人が車中から流れ出てきた。
僕は流れ出てきた若い男の体を横向きにすると、口から水を吐かせた。
「コウジ!心肺蘇生だ、胸を押せ。」
僕はコウジに指示を出すと、車中から流れてきた木刀を手に持った。
殺されてなるもんか。
