岩手物語 第十三話 白い形代(かたしろ)
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第十三話 白い形代(かたしろ)
「ふざけやがって、この野郎!」
ガンさんは自分を置いて逃げようとしていた運転手を殴りつけた。
僕は木刀を構えながら、
「ガンさん!」
僕はガンさんの手元にある金属バットを指さした。
こいつらに木刀で何かできるのか分らないが、まともに戦えそうなのは僕とガンさんだろう。
すると、ガンさんはあろうことかコウジに向かって金属バットを放り投げた。
「コウジ!おっ、お前ヤレ!」
ガンさんが叫ぶと、コウジは一瞬眉間にしわを寄せたが、よろよろとその金属バットを拾い上げて構えた。
じりじりと再び周りを取り囲んだそいつらの数は先ほどと変わらない。
やがて、そいつらの肉体が実体へと変わってきた。
身長は百六十センチに足りないだろうか、
体はイモリのようで、目は大きく、金色の蛇のような眼をしている。
外箒のような、棕櫚(しゅろ)のような黒い髪。
口は大きく裂けていた。
しかし、なにか先ほどと様子が違う。
時折「キッ」と鳴き声を上げ、小刻みに首をかしげている。
なんだ……襲ってこないぞ。
すると、
鋭く、風を切る音とともに、僕の横を何かが飛び去った。
それは一枚の白い札。
__形代(かたしろ)。
「あ……」
声をあげる間もなく、その紙は僕の目の前二メートル位の高さで静止して、まるで意思を持っているようにくるくる回りだした。
怪物たちがギィギィと耳障りな鳴き声を上げ始めた。
一匹が恐怖に駆られたように川に飛び込ぶと、他のやつらも雪崩を打って続いた。
やがて遠くから、パトカーのサイレンが近づいてきた。
僕は、ほっとして崩れそうになる膝をこらえ、額の汗をぬぐった。
ふとコウジに目をやると、アスファルトに胡坐をかいてうつむいていた。
握った拳を見つめ、涙を落しているのが見えた。
その姿から虚しさが滲んでいた。
振り向くと、闇夜が迫ってきた橋のたもとに三人の男が立っていた。
その真ん中に居たのはミチザネのように見えた。
