岩手取材の旅、底知れぬ岩手の魅力 その2
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遠野市立博物館。
今回は「赤いレクサスの老人」という怪異に会った話です。
さて、怪異の話の前に……。
前回のお話ではオシラサマについても触れましたが、「黄泉のツガイ」の作者様もひょっとして取材に訪れたりしてるのかなと感じたり……。
第一話で主人公、ユルが村から群玉県に向かう時、立ち寄ったPAはどう見ても菅生PA上りだったし。


マヨイガのお話も「遠野物語」に出てくる。
たぶん、ユルが住んでいたあの村は、早池峰山か、六角牛山(ろっこううしさん)、石上山のどれかに在るのだろう。
そう勝手に想像した。


そうか、河童を探しているのだな。
さて、カッパを探しています、という事なので、遠野市立博物館を後にしてカッパ渕に行こう。

ここで、アクシデント発生。
博物館は図書館と共有の駐車場だが、10台分しかない。
僕の小さなマニュアル車のFIATの真後ろ、
駐車禁止スペースに横づけ駐車する赤いレクサス。
僕と奥の白いエスティマは完全に閉じ込められた形になっていた。
別の縦置き2台駐車スペースには、
「奥の車を動かしたい場合は図書館職員にお話頂ければ館内放送致します。」
と書いてあった。

僕の車の前は図書館の建屋と他の車。
(実際には建屋は車幅の半分以上の位置でした。)
まぁ、高齢者を示す紅葉マークも付いている車だし、仕方ないなぁと思いながら、図書館員に状況を話すと、たまたまその受付に本を5冊抱えたご老人。
「ああ、それ、おいった。(俺のです)」
ああ、すぐ本人が見つかって良かった。
僕は笑顔で、
「移動おねがいします。」
「おーおう。」
すると、職員と一緒に建屋前に向かった。
車に乗り込んで待っていると、
はて、ご老人が乗り込んだレクサスがいつまでたっても動かない。
すると、ご老人が僕の車のウィンドウを叩いて言った。
コンコン。
「動かせる?」
「?動かせますよ。」
僕は自分の車のギヤをバックに入れて、後ろを振り返った。
「?」
赤いレクサスはそのままだ。
「違う、違う、なにやってんの、おいの車よ、動かせるか?」
いったい、なんのことを言っているんだろう。
「どういう意味ですか。」
「押せって言ってんだよ。」
嫌な予感がした。
東北の遠野、関東より涼しいとはいえ、この日の気温は34度。
「はぁ?なんで?」
僕は少しイラついていた。
「なんでだとぉ!見ぃで見ろ。」
僕が車を降りると、ご老人が自分の車に乗り込んで、スタートボタンを押して見せた。
「カチ。」
運転席の前あたり、ボンネットからカチっと鳴ったきりだ。
エンジンが掛からない。
たぶんバッテリー切れだな、この暑さで、エアコンバンバンかけて、チョイノリばかりしていたんだろう。
エンジン始動どころか、始動させるためのセルが全く回らない。
すこし年式の古いレクサスだから、他も壊れているかもしれない。
「おめぇ、代わりにやってみたらいいさ、動かねぇから。」
このご老人。
開き直るにしても早すぎである。
駐車禁止のスペースに車を止め、自分の車の故障に対しての対応を、俺に任せてもダメなものはダメだから、押さないならお前が動かしてみろと言う。
この車の後ろの道路は車一台分の幅しかなく、左側の道は少し上りで、すぐ行き止まり。
右側にハンドルを切ると、道を塞いで終わりになる可能性が大だ。
それにしても、僕より先輩とはいえ、なんという態度だろう。
開館時間に入館するため早朝に家を出てきて、この後の予定もあるけれど、このご老人にお付き合いする形になるのか。
たぶん、JAFを呼んだら足止め2時間コース。
僕がレスキューすると1時間半コースだ。
う~んと考えて決心をした。
僕の車なら8回切り返せば出せるかもしれない。
妻は降りてご老人と職員さん数名と話しているが、構わず僕は車を操作し始めた。
動かすたびに職員さんと妻がきゃぁきゃぁ言っているが、9回切り返した時に脱出することが出来た。
やはりこういう時、小さな車は良い。
職員さん達が4人ほどお詫びに出てきた。
いや、職員さんたちは悪くないですよ。
「あのかたは?」
そう聞くと、
「スマートフォンを家に忘れたと言って、居なくなりました。」
……完全に行方をくらましていた。
何処に電話するにせよ、図書館に借りたらいいだろうに。
僕は自分の車を出したので、レクサスに乗り込んでニュートラルにして移動させて、手持ちのブースターケーブルで助けようとも思ったのだが、やめにした。
ご老人は僕の妻に対しても、
「おれの車、動かせねぇのか、動かしてみろ」
と言っていたらしい。
僕はこう思った。
煙のように消えた、
あまりにも無責任なあの老人。
「赤いレクサスの老人」という
怪異に会った。
そう思うようにして、博物館を後にした。
*久しぶりにお出かけの際は、タイヤ空気圧、バッテリー点検、ガソリン残量など、お車の点検を忘れずに。
