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岩手物語 第十九話 不穏

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第十九話 不穏

地震で台所が凄いことになっていたが、
じいちゃんの無事を確認して、阿部と外に出た。

恐怖におびえる阿部を説得して、巨大な胎内石、
アラハバキ(胎内石)のある丹内山神社に行くことにしたのだ。

阿部を疑うわけじゃないが……。
にわかに信じられる話ではない。

このへんは、町から外れている。
暗く、途中にぽつんぽつんと街灯がぼんやり灯っている。

二人で自転車を押してしばらくすると、
神社の方向から誰かが同じように自転車を押して来た。
暗闇から灯りに照らされたその人……。

女子弓道部の坂上先輩だった。

「坂上先輩!」

「コウ、ユミが……。」

話しかけた坂上先輩だったが、
じりりと後ずさりをした。

「阿部……あんた……。」

阿部は歩くのを止めていた。
僕は阿部を振り向いた。

「阿部?……」

「違う、俺じゃない。」
恐怖におびえる表情を浮かべる阿部は、首を横に振った。

「私、神社で逃げるユミを追いかけるあんたを見たんだから!」

「えっ阿部、おまえ、」

「違うよ、消えたんだ!アラハバキの岩の割れ目で、光に包まれて……」

そういえば……神社の後ろの斜面に胎内石、アラハバキ。
その割れ目は、人ひとり通れるほどしかない。

……なにか変だ。

目撃するとして、阿部は何処で見たんだ?

「私、お父さんに言ってあんたを締め上げてもらうわ!」

阿部は泣きじゃくった。
「や、やめて、先輩の父ちゃん、自衛隊だろ、俺、死んじゃうよ。」

僕は更に考えを巡らす。
……阿部は何故、僕の部屋の押し入れに隠れていた?

「阿部……おまえ、まさか俺に嘘ついたのか。」

「違う、だって、誰が信じてくれるんだよ、あんなこと!」
阿部は泣きながら訴えた。

「ユミ先輩がアラハバキの中で光って消えたんだ!」

「その話、聞かせてもらおうか。」

「はっ!」
阿部が振り向いた。

街頭に照らされる阿部の明かりの端に誰かが立っている。
いつの間に阿部の後ろに立っていたのだろう。
足元だけが明かりに照らされていた。

「誰!」
僕は身構えた。

阿部が腰を抜かして転がった。
頭を抱えて丸まって震えている。

目を凝らすと、明かりの中にその男の姿が現れた。

「__ミチザネ!」



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