湘南から沖縄へ③「急がなくてもいい」島暮らし
「空いている」という豊かさ
――沖縄に暮らして変わった感覚
沖縄に住み始めてから、日常のストレスはかなり減った。
もちろん仕事や生活の細かい悩みはある。でも、本土にいた頃と比べると、身体のどこかに入っていた余計な力が抜けた気がする。
その理由のひとつは、「移動」に関するストレスが減ったことだった。
以前住んでいた藤沢市周辺では、移動そのものにエネルギーを使っていた気がする。
渋滞。
信号待ち。
人の多さ。
駐車場探し。
どこへ行っても、何となく急かされる空気があった。
自分の場合は車通勤だったため電車に乗ることは滅多に無かったが、道路上の混雑や移動のストレスからは常に影響を受けていた。
もちろん沖縄にも渋滞はある。でも、本土のような圧迫感や殺気立った感じが少ない。
町を離れると信号も減り、道路の空気もゆるくなる。
沖縄には南部の那覇周辺にモノレールはあるが、島全土を電車が走っているわけではない。
高速道路は本土よりかなり安い。島自体がコンパクトなので、感覚的には「だいたい一時間圏内」で動けてしまう。
最初の頃は、ゆっくり走る車にイライラしていた。
でも最近は思う。
この“低速車”にイライラしなくなった時、やっと島人になれるのかもしれないと。
誰もいない海が普通にある
沖縄へ来て最初に感動したのは、やはり日常に美しい海があることだった。
透明度の高い水。
日によって色を変える海。
島だから、車を走らせているだけで、視界のどこかに海が入ってくる。
そして、自分が本当に驚いたのは、「綺麗さ」よりも「人の少なさ」だった。
少し外れた海岸線の公園へ行くと、本当に誰もいないことがある。
湘南では、平日でも海沿いは人と車であふれていた。
でも沖縄では、「こんなに綺麗な場所なのに誰もいない」ということが普通にある。
駐車場も無料なことが多い。
空きを待って並ぶこともない。
この「空いている」という感覚は、自分にとってかなり大きかった。
それは単なる便利さではなく、心の余白みたいなものだった気がする。
冬でも身体が縮こまらない
移住前から期待していたことではあったが、実際に暮らしてみると、冬が寒くないことの影響はかなり大きかった。
神奈川の冬は、寒さで身体も心も縮こまりがちだった。
自分は厚着があまり得意ではない。
でも沖縄では、冬でも身体が緩む感覚がある。
乾燥しないのもありがたい。
三線を弾く時、冬になると爪が割れやすかった自分には、この湿度がちょうどいい。
植物も、本土とはまるで表情が違う。
ハイビスカスやブーゲンビリアが鮮やかに咲き、道端には当たり前のようにバナナやパパイヤが実っている。
季節ごとに色とりどりの草花が咲き、一年を通して濃い緑に包まれている。
その生命力の強さに、こちらまで元気を分けてもらっているような気がする。
南の島の暮らしの醍醐味がここにある。
「ちゃんとしていなくてもいい」空気
沖縄へ来て感じたのは、周囲の目をそこまで気にしなくていいことだった。
以前暮らしていた湘南には、近年どこか居心地の悪い空気を感じていた。
以前より人も車も増え、町が都会と変わらなくなっていた。
そして「湘南ブランド」という、お洒落さ。ライフスタイル。センスの良さ。
そういうものが、街全体にうっすら纏っていた気がする。気にしすぎかな?
その点、沖縄、特にうるま市には、あまりそういう気取りがない。
どんな格好でもいい。
肩肘張らなくていい。
少し雑でも、あまり気にされない。
その気軽さが、自分には合っていた。
もちろん、便利さや選択肢の多さでは本土には敵わない。
でも沖縄には、「急がなくてもいい空気」がある。
そういう小さな余白の積み重ねが、暮らしを少し楽にしてくれている気がする。
