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デジタルタトゥーを消したい|アマノ文筆クラブ

「どういったご依頼でしょうか」
若い担当者が、パソコンから顔を上げずに聞いた。慣れた口調だった。

「写真です」
「なるほど。流出したものですか」
「いえ。自分で載せました」

担当者の指が、一瞬止まった。

「十年前です。ブログに」

画面をこちらに向けてもらう。
検索窓に、私の名前。一番上に、それは出てくる。

四人が写っている。私と、妻と、子どもが二人。
海辺だ。下の子はまだ小さくて、私の腕の中だ。

全員、笑っている。

「……こちらの、どのあたりを」
「全部です」

担当者は、しばらく黙った。それから、事務的に尋ねた。

「差し支えなければ、理由をうかがっても」

理由。

写り込んだ人に迷惑がかかるわけではない。誰かを傷つけたわけでもない。私は何も悪いことをしていない。

ただ、名前を検索するたびに、これが出てくる。
仕事で調べられても、これが出てくる。同窓会の名簿でも、これが出てくる。

私は今、ひとりで暮らしている。それは私の落ち度で、誰のせいでもない。
そのことは、もう、受け入れている。

受け入れているのに、これが出てくる。

「消したい過去、ということですね」

担当者が、書類に何か書きながら言った。

過去。

そう。過去なのだ。

「はい」
私は言った。

作業には三か月ほどかかるという。転載されたものを一つずつ辿って、削除を依頼していく。完全には消えないかもしれません、と担当者は言った。

「それで構いません」

帰り道、電車の中で、もう一度検索してしまった。

四人が笑っている。下の子は、カメラを見てはいない。何か違う方を見て、口を開けている。何を見ていたのだろう。

指で、拡大してみる。

——三か月後には、これができなくなる。

それ以上拡大することは、もう、できなかった。





甘野充さんの、アマノ文筆クラブに参加します。

▼三部作です。

もう一編、



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