わたしはこれも法則にしているのか?ーーー続・ゲシュタルト理論
みなみなさま、ごきげんさま。
今の時代に生きている人ならば、いや未来の人が読んでいる可能性もあるから、2026年の時代に生きている人ならば、その世界には人工物に囲まれ使う生活でしょうか、未来はもっと自然豊かに木々や花々、動物たちに囲まれ暮らしていますか。
であるのならば、人工物は貴重な存在なのでしょうか。あるいは自然との調和のとれた設計に形にデザインになっていることもあるでしょうか。
自然との調和がコンセプトの世界と勝手に未来を予想しただけのことで、どうなっているのかはわかりません。
しかし何かしらの目的でコンセプトなどはつくられ人工物という形になっています。
その人工物のデザインは「形は機能に従う」ことでできている話を前々回からしてきました。
人間の機能である、「視覚は物事をどう捉えているのか」それはゲシュタルトと呼ばれる法則のもとで人間の目と脳は物事を見ている話をしたのが前回です。
1つの大前提と4つの基本法則がある話です。
ゲシュタルト理論を知っているのといないのではデザインが大きく変わってきます。
その他にもゲシュタルトの法則はある、という話で終わりましたからその他の法則の話をしていこうと思います。
まずは、大前提と4つの基本法則をさらりとした感じでおさらいします。
大前提から、デンマークの心理学者エドガー・ルビン(Edgar Rubin)さんが1915年に「ルビンの壺」を用いて解説、提唱した図と地の法則(Figure-Ground Organization)です。
人間は何かを見るときに「手前にある主役(図)」と「後ろにある背景(地)」を無意識に区別して認識する。
(デンマーク語原題:Synsoplevede Figurer: Studier i psykologisk Analyse. Første Del.)
エドガー・ルビン 1915年
つまりは何らかの対象物を見るとき全体を平面で満遍なく見ているのではなく、カメラのピントを合わせるように主役を決め前面に残りは後ろにある背景のように捉えている、ということです。
ルビンの壺が、壺に見えたり、二人の向かい合う横顔に見えたりするのは、人間はどちらかを主役にしているからどちらとも同時には認識できません。
何かを見る時には、この大前提の法則があります。
大前提(図と地の法則)を踏まえ、心理学者のマックス・ヴェルトハイマー(Max Wertheimer)さんやクルト・コフカ(Kurt Koffka)さん、ヴォルフガング・ケーラー(Wolfgang Koehler)さんらが、人間には脳内で無意識に「グループ(ひとまとまりの塊)」として認識する特性があるとし、1912年〜1923年に論文を発表しました。
それがこの4つのゲシュタルトの法則です。
・近接の法則(Proximity)
距離が近いものがまとまって認識する。
・類同の法則((Similarity)
色や形が同じものがまとまって認識する。
・閉合の法則(Closure)
閉じた形になりそうな図形を見ると途切れている部分があっても、
脳が勝手に線を補って「完全な形」とまとまって認識する。
・連続の法則(Continuity)
点や線が直線的、あるいは滑らかな曲線でつながっている場合、
それらをひとつの連続した流れとして認識する。
(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』
マックス・ヴェルトハイマー 1923年
何も主役になる対象物が単体とは限りません、まとまり(グループ)として構成されたものとして物事を捉える、この法則を持っているものたちはグループ化され見える。
このグループ化をゲシュタルトの法則といいます。
主役(図)を決めると他は全て背景(地)と捉えます。ルビンの壺のように主役は背景に移るのもまた見える特性です。
つまりは背景が主役になります。
人物写真と文字で構成された広告ポスターを見ている場合、基本的にまず主役は人物写真、文字は背景として捉えます。次に文字(文字は文字のグループとして見ている)を読むときは文字が主役になり人物写真が背景となるわけです。
文字まで読んでいただければ、広告ポスターの役割は十分に果たせたと、これはまた別の話。
逆に言えば、そうつくっているともいえ、
このゲシュタルトの法則を手がかりにデザイナーはデザインをしています。
それをゲシュタルトの法則と認識しているかは、そのデザイナーにもよります。感覚的に技術として獲得したという人も多くいます。
主役の邪魔にならないように、主役を主役として見えるように文字をどこに配置するのか。しかし背景としてしか見られないのではいけません。
ポスターなどならば、主役(図)と背景(地)の構成はまだ複雑ではありませんが、これがパンフレットなどになると写真や文字などの情報が複雑極まりなくなり、ゲシュタルトの法則を駆使しなければなりません。
あちらとこちらは違うグループですよ。しかし、この部分は同じなんて複雑化していきます。
この4つでは心許ないなんて話でもありませんが、後に追加されたなどもあり、残りの法則もありますので、見ていきましょう。
・共通運命の法則(Law of Common Fate)
・共通領域の法則(Common region)
・接続性の法則(Element connectedness)
・対称性の法則(Law of Symmetry)
・過去の経験の法則(Law of Past Experience)
・同期の法則(Law of Synchrony)
などです。
とここまで前回、お話をしました。
より詳しく知りたいとお思いになられた方は、こちらからお読みいただけると幸いです。
では残り法則を少し詳しく見ていきましょう。
追加で、と、後々加えられたかのようにいってしまいましたが、
1923年にマックス・ヴェルトハイマーさんが発表した
『形態理論について(または ゲシュタルト理論へのアプローチ)
(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』(通称ドットの論文)の中で紹介されているものいくつかあります。
しかも「基本がこの4つで」とは、この論文では語っていません、後の人々が「これが基本だ」なんて勝手気ままに基本としてしまったのではもちろんありませんが、ゲシュタルト理論が確立していく過程で基本ということになりました。
全てを一度に把握するのは難しいものです、まず現代のゲシュタルト理論でも基本原則として、プレグナンツの法則をあげています。
前回、図と地の法則(Figure-Ground Organization)が大前提としました。もちろん大前提なのは変わりがありませんが、このプレグナンツの法則も大前提であったりもしてしまうからややこしく難しい。
そして何よりも、このプレグナンツの法則が人間の脳は、
シンプルなものを好むといっているから、シンプルに伝えたいのです。
「プレグナンツ(Prägnanz)」とは、ドイツ語です。
直訳すると「簡潔さ」「明瞭さ」「的確さ」「骨太さ」などの言葉です。
日本語では、「良い形の法則 / 簡潔性の法則」などと訳されることもあり、英語の表記では「Law of Good Form」となります。
1923年にヴェルトハイマーさんが発表したドットの論文から、時代が1935年に移り共同研究者で「共同創始者」の一人であるカート・コフカさんの大著『ゲシュタルト心理学の原理(Principles of Gestalt Psychology)』で語られています。
・良い形の法則 / 簡潔性の法則(Law of Good Form)
心理的な組織化(知覚のまとまり)は、与えられた条件が許す限り、
常に最大限『良く(good)』なる。
カート・コフカ Harcourt, Brace and Company (New York) 1935年
この良い形の法則 / 簡潔性の法則は、ドイツ語をそのまま使いプレグナンツの法則(Law of Prägnanz)とも呼ばれています。
人間(一部の動物(チンパンジーや鳥類など))の脳は、
「複雑な図形や曖昧な形を見たとき、脳の負担を減らすために、できるだけ無意識に『シンプルな秩序ある安定した形(構造)(=good)』にまとめて(組み合わせ)認識しようとする」視覚的な特性を持っています。
この考えは元々ヴェルトハイマーさんコフカさんケーラーさんたちも持っていました。
なぜそんな特性が人間や一部の動物の脳にあるのか。
前回のアフォーダンス(Affordance)とシグニファイア(Signifier)でも紹介した、認知負荷(脳の情報処理システム)が関係してきます。つまりは基本的に脳は省エネを好む。そして自然の中で生き残るために備わったともいわれています。
省エネを好むのは、内在的負荷(どうしようもない負荷。複雑な計算、長い文章を読むなど)に外在的負荷(無駄な負荷。どこを押せばいいか分からない、文字が小さすぎるなど)、そして学習関連負荷(適切負荷)(良い負荷。ゲームのチュートリアル、目的のある読書など)が影響しています。
脳は省エネでそんな内在的と外在的な負荷のかかることは好まない、という省エネとしての理屈はわかります。
しかし、それでは学習関連負荷(適切負荷)が説明できません。
省エネであるとするならば、誰もが文字を読みませんし文明は発展しません。この負荷のためならば脳をフルパワーで脳を動かすのが人間です。なんとも人間の脳には矛盾したものを内在しています。
しかし、できるだけサボりたい、いや、サボります。語弊がありますね。
という脳のシステム機能としてはさまざまな科学的に証明されている事実もたくさんあり、このプレグナンツの法則として人間がこのように情報をまとまりと認知しているのも事実です。
もうひとついわれているのが、生存競争で生き残るためです。
自然界で生きていくためには、目の前にあるものが「敵(肉食獣)の姿」なのか「ただの木々の影」なのかを瞬時に判断する必要があり、バラバラの視覚情報から、サッと「ひとつの意味あるまとまり(図)」を浮き上がらせる能力は、生物が生き残るために不可欠な進化の結果。
との進化論的なことです。
敵から逃げるためにスピードアップの情報処理です。逆の立場になると敵を見つけるためのスピードアップです。つまりはどちらも早く敵や獲物見つけるために塊としてぼんやりと対象物を捉える能力です。
この能力を持った種(しゅ)がたまたま生存しただけともいえます。
この能力が備わったから生き残ったのではなくただ結果として生き残った種にはこの能力があっただけとも。
魚釣りをする人ならば知っているかもしれませんが、それまで何年か同じ地域で同じ疑似餌で釣れていた魚が数年経つと釣れなくなるという現象が起きます。
ブーム的に同じ地域で何人もの人が同じような疑似餌で大量に釣ったから、魚がいなくなった。という説がありますが、目的の魚はいるみたいです。疑似餌ではなく本物の餌をつけて釣ると釣れる。
つまりは魚が賢くなった。
わけではなく、世代交代でその疑似餌を餌だと認識する種が淘汰された。種と大きく括りしましたがその性格の魚が生存競争から脱落したのです。
「いや、ブラックバスはたくさん何年も釣れているのでは」と、いわれますが基本的にキャッチ&リリースです。そして市場の大きなバス釣りは疑似餌自体が新たに改発されどんどん進化していっています。去年のそれとは違っています。
魚は一瞬のうちに疑似餌か獲物かどう判断しているのでしょう。
魚と人間を一緒にされても困るといわれそうですが、魚が進化して人間になりましたから、違うともいえなくもありません。
人間が認知する目的は、省エネなのか。たまたま認知している種が生存し生き残っただけなのかはその過程はわかっていません。いやただただ私が納得していないだけかもしれません。
シンプルに説明をしたかったのですが、なぜこのプレグナンツの法則はあるのかはシンプルにはできませんでした。
しかしプレグナンツの法則は、なぜだかわかりませんが人間には備わっています。
極力サボるためにまとめて認識する。
シンプルに説明ができているけれど、語弊があります。
ゲシュタルトの根本にこのプレグナンツの法則(良い形の法則 / 簡潔性の法則)にありそれに則り、近接や類同、閉合や連続の法則があるわけです。
シンプルに捉えようとするために、まとまり(グループ化)とする。
ただただシンプルに捉える法則がある。と。
とても、シンプルです。
強引に話をまとめ、
近接や類同、閉合や連続の法則、以外を見ていきましょう。
同じ著書の中で、コフカさんは、
・対称性の法則(Law of Symmetry)
他の条件がすべて同じであれば、非対称性が最小となるような体制化
(まとまり)が発生する。あるいは、部分という観点から言えば、
対称的な領域が『図』となり、非対称な領域は『地』となる。
クルト・コフカ Harcourt, Brace and Company (New York) 1935年
人間は、左右または上下に対称な形状をしている要素同士を、どれだけ距離が離れていてもまとまって認識、つまりシンメトリーのものは、まとまって見える。
他の条件が同じと前提はあるが、閉合の法則では(カッコみたい)ならば、
(左右非対称}な塊もまとまりに見えますが、[左右対称]のほうがよりまとまりと捉え図(主役)になります。
そして、図と地の法則でも要素としても対称性があるものが図になる。とありますから主役になりうる法則でもあります。プレグナンツの法則(簡潔さへの傾性)を達成するための法則ともいいかえられます。
近接や類同、閉合や連続と合わせて対称性の法則が、静的な要因となり、止まっているものを見た時にこうまとめて見ます。
ゲシュタルト理論には、
動いているものにも当てはめられることがわかっています。
時代が戻り、1923年の『形態理論について(または ゲシュタルト理論へのアプローチ)(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』で近接や類同、閉合や連続と一緒に発表された法則です。
・共通運命の法則(Law of Common Fate)
(共通運命の因子(Faktor des gemeinsamen Schicksals))
外部から要素に与えられる共通の運命(同時移動など)は、
それ単独で新しいゲシュタルト(まとまり)を生み出す力(因子)を
持っている。 ただし、それが元々脳内にあった別のまとまり(近接など
によるグループ)と衝突する場合、その変化が元の構造に沿っていれば
スムーズに受け入れられ元の構造に反していれば元々のまとまりを破壊
して新しいまとまりを再構築する(その際、認識に少し抵抗が生じる)」
(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』
マックス・ヴェルトハイマー 1923年
この論文でのヴェルトハイマーさんの主張は、「ただただ連続した線(良い連続など)において、その一部分に(共通の)変化を加えたとき、それが全体の構造を維持するように働くか、破壊するように働くか」という現象の性質として説明と考察でした。
1936年になり、ヴォルフガング・メッツガー(Wolfgang Metzger)さんが著書『視覚の法則(Gesetze des Sehens)』で「動くオブジェクトの知覚」という現代の定義へと動的実証によって理論的・科学的な裏付けを掲載しました。
・共通運命の法則(Law of Common Fate)
要素たちが静止しているとき、それらは互いにバラバラであるか、あるい
は「近接」や「類同」といった別の因子によってグループ化されている。
これらの要素のうち、特定のいくつかの要素が「同時に」「同じ方向と速
度で」動き出す。その瞬間、もともとのグループ化(旧来のまとまり)は
解消されるか、あるいは背景の迷彩から完全に分離し、「運動の共通性」
によって、新しく、より強力なグループが形成される。
ヴォルフガング・メッツガー
Verlag Waldemar Kramer(ヴァルデマール・クラーマー出版)1936年
静止空間を支配するのは「静的要因」(近接、類同など)でまとまりある状態を人間の視覚は捉えています。その状態から特定のいくつかの要素が単に動くだけでなく、「同時」かつ「同じ方向と速度で」という2つの条件があるとき、人間の視覚認識はそれを「1つのまとまり(グループ)」として捉えることを実証しました。
さらに時代が2000年代になると、大きな変化を迎えます。この共通運命が一般化されるわけです。ここでいう一般化とは、「定義(ルール)を、もっと広い意味に広げた」という学術的な言葉です。
認知科学者のアリソン・B・セクラー(Allison B. Sekuler)とパトリック・J・ベネット(Patrick J. Bennett)らによる研究(2001年)に、
雑誌『Psychological Science』(心理科学)
『Generalized common fate: grouping by common luminance changes』
(一般化された共通運命:共通の輝度変化によるグルーピング)で発表されました。
・一般化された共通運命(Generalized Common Fate)
物理的に全く動いていない点同士であっても、輝度が変化するタイミング
とパターンが一致しているだけで、明確に「ひとつのまとまり(グルー
プ)」として瞬時に認識できる。
『Generalized common fate: grouping by common luminance changes』
(一般化された共通運命:共通の輝度変化によるグルーピング)
アリソン・B・セクラー パトリック・J・ベネット 2001年
「同じ方向」へ「同じ速度」で移動する要素は、互いに同じグループとして知覚されるものだけと思われていたのを、
物理的な位置が移動していなくても、ある視覚的な特徴が『同時に、同じ変化のパターン』(輝度(明るさ)・色彩・点滅や不透明度の変化)を示せば、それを強いまとまり(グループ)として認識する。と拡張させたわけです。
「空間の移動」だけでなく、「輝度や色彩などの変化における移動」も同じメカニズムだということです。
80年くらいの時間とたくさんの人たちが携わりこの共通運命は法則を法則とたらしめたわけですが、共通運命にまとまったといえば綺麗でしょうか。
そして二人はこの論文の要約(Abstract)の中で、こうも述べています。
「これは(パルマー氏らが発見した、単に同じタイミングで何かが起きるだけの)『同期の法則(Synchrony)』とは区別されるべきものであり、ヴェルトハイマーのオリジナルの法則である『共通運命』の拡張(Extension)として捉えるべきである」
『Generalized common fate: grouping by common luminance changes』
(一般化された共通運命:共通の輝度変化によるグルーピング)
アリソン・B・セクラー パトリック・J・ベネット 2001年
次はその区別されされた
「同期の法則(Law of Synchrony)」を見ていきましょう。
その2年前、1999年に、スティーブン・E・パルマー(Stephen E. Palmer)さんが、著書『Vision Science』で提唱しました。
・同期の法則(Law of Synchrony)
完全に同時(シンクロ)に何らかの変化が起きたもの同士を、
距離や形が違っていてもまとまって認識する。
Stephen E. Palmer(スティーブン・E・パルマー)
The MIT Press(マサチューセッツ工科大学出版局) 1999年
動き・変化がつくことによって近接や類同の法則よりも、さらに強力にグループ化が働きます。同じ動き・変化をする違う色や形のモノも離れているモノもグループ化するということです。
どれほどバラバラに見える要素同士であっても、「同じ動き・変化」をした瞬間に、認知が一気に統合されます。
動きや変化がつくことで、まとまりが一気になくなり新たなまとまりとなる。なかったまとまりがあるように見えようになる。
タイミングが同じだと、動き方が違ってもひとまとまり(グループ)として認識する、ということです。
自由に泳ぐ魚たちが、敵から逃げるために同じタイミングで動き出すと、ひと塊に見えますからね。フラッシュモブなどがこの法則を用いたものです。
この2つの法則が動的・時間的なグルーピングです。
残す法則は、記憶的な要因です。
また時代が戻り、1923年の『形態理論について(または ゲシュタルト理論へのアプローチ)(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』にて発表された法則です。
・客観的構えの法則(Law of Objective Set)
文字や図形が一定の規則で並んでいるのを見進めていくと、脳の中に
「次もこう並ぶだろう」という客観的な予測のモード(客観的セット)が
つくられます。一度このモードに入ると脳は目の前にある物理的な事実が
変わっても、直前のルールを強制的に適用し続けてしまう。
(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』
マックス・ヴェルトハイマー 1923年
例えば、
赤と黒の出目のあるルーレットで次の出目を予測するゲームをするとします。
「赤・黒・赤・黒・赤・黒・赤・黒・赤・黒」と交互に出目が出れば、客観的な予測のモード(客観的構え)がつくられ、「次もこう出るだろう」と「黒の次は赤だ」「赤の次は黒だ」と予測(客観的構え)され黒黒と続いても、いや次は赤だ。となりなかなか直前のルールを抜け出せません。
「赤・黒・赤・黒・赤・黒・赤・黒・赤・黒」の単純だから予測のモード(客観的構え)つくられるわけではなく、ランダムな
「赤・黒・黒・赤・赤・黒・黒・赤・黒・黒」こんな出目だとしても法則性を見出し、黒・黒・赤が2度あるなんて法則性を勝手につくりだし予測のモード(客観的構え)になる「次は赤だ」となる法則です。
ギャンブル的なことだからそうなるのではありません。
何かイベントや行事などをしようとなり、仲間で集まった。野外のイベントだったのにたまたま雨が降った。何度かイベントはしたけれど、「あいつがいる時に雨が降らない?」なんてことを話したことはありませんか。
その人のことを「雨男や雨女」なんて冗談まじりにいったり、このたまたま偶然のことを予測のモード(客観的構え)をし、「あいつがくるなら次も雨が降る」と思ってしまう法則です。
なかなか難儀な法則です。
「いやいや、ほんまやって」とまるで事実のようにいう人がいますから困ります。
それが事実で本当の法則ならば、雨が降らずに困っている地域に全国の雨男に雨女の人が集まってそこに雨を降らせてあげればいいのではないでしょうか。そんなイベントをすれば喜ばれそうですが、どうなのでしょう。
続いて、1923年にマックス・ヴェルトハイマーさんが同じ論文で、
・過去の経験の法則(Law of Past Experience)
「ある図形(配置)が提示されたとき、それが『これまでに何度も目にして
きた馴染みのある特定の形(例:アルファベットの「W」と「M」な
ど)』の通りに並んでいるならば、脳はその見慣れた形の通りに要素をひ
とまとめ(グループ)にする。
ただし、これは『近接』や『類同』といった純粋に視覚的な(生まれつき
の)法則に比べて、極めて限定的で外的な(後天的な)要因に過ぎない」
(Untersuchungen zur Lehre von der Gestalt II)』
マックス・ヴェルトハイマー 1923年
どれほど曖昧で、バラバラな物理的には別の法則(近接や閉合など)が働いているような図形であっても、「過去の経験」があれば、脳はその経験を最優先して形を認識します。
「極めて限定的で外的な(後天的な)要因」と当時のヴェルトハイマーさんは消極的な論説となっています。先天的なものだけを法則性としたかったのかもしれません。しかし、そうなると文字を文字と認識する説明がつきません。紛れもなくこれは人が学習によって得たまとまりで過去の経験の法則によるものです。
現在では、過去に見たことのある形状、学習した知識、慣れ親しんだ文化的背景、経験などと一致するパターンがあればまとまって認識することがわかっています。
文字や記号を知っている学習できているものでも、経験が必要なもの、新聞を読むことや漫画を読むことは慣れ親しんだ人には簡単でも初見ではなかなか難しいともいえます。段数の文字の送りやコマの運びなど法則性があるようなないようなあるものです。
こんなにも法則があれば鬼金棒で、デザイナーにゲシュタルト理論。
しかし、まだまだこんなものもあるぞと、強固な武器、ピストルいや盾を授けてくれています。
1935年にマックス・ヴェルトハイマーさんと共同研究していたクルト・コフカ(Kurt Koffka)さんが著書『Principles of Gestalt Psychology』(ゲシュタルト心理学の原理)の中で、
・面積の法則(Law of Area / 小さい領域の法則)
重なり合う、または隣接する複数の領域があるとき、
「面積が小さい(狭い)方の領域」が手前の独立した物体(図)として認識し、
「面積が大きい(広い)方の領域」を背景(地)として認識する。
クルト・コフカ Harcourt, Brace and Company (New York) 1935年
視覚情報を整理する際、無意識に「主役(図)」と「背景(地)」を分離(図地分離)します。図と地の法則(Figure-Ground Organization)です。
このとき、視野を占める割合が小さい要素ほど、私たちはそれを「独立した物体」として捉えやすくなると決定的にしたのです。
図と地の法則の中で、5つの要素として、小さなものは主役(図)になりやすいとしていたが決定したのがこの法則です。
色や形ではなく面積の割合だと、決定しました。
ルビンの壺は、絶妙に50%対50%の割合で面積が割り当てられていますから、壺にも横顔にも見えるわけです。
主役として画面や紙面で捉えて欲しいと考えれば、
コントラストなどを工夫するよりも、まずは小さくすると前面で主役として捉えられる。ということです。
ならば小さければ小さいほどいいのか。といえば、次はプレグナンツの法則が効いてきます。つまりは認知負荷が作用し、小さすぎるとただのノイズなり背景になってしまいますから気をつけなければなりません。
1970年代に入ると、イタリアの心理学者でもあり芸術家であるガエタノ・カニッツァ(Gaetano Kanizsa)さんが、それまでのゲシュタルト理論は比較的単純な線や点の集まりで説明されていましたが、カニッツァさんは「面」の構成や「主観的輪郭(存在しないはずの輪郭が見える現象)」の研究を通じ、脳がどのようにして立体的・面的なまとまりを解釈しているかを証明し、その中の1つの法則として、凸面性を1979年の著書『Organization in Vision』にて発表します。
・凸面性の法則(Law of Convexity)
複雑な視覚情報を見た際、
「外側に膨らんでいる領域(凸面:Convex)」を「図(主役)」
として認識しやすく、
「内側に凹んでいる領域(凹面:Concave)」を「地(背景)」
として認識しやすい。
Gaetano Kanizsa(ガエタノ・カニッツァ)
Praeger Publishers Inc(プレーガー・パブリッシャーズ / 本拠:ニューヨーク) 1979年
実際に物理的な凹凸(三次元の立体)がなくても、完全にフラットな「平面・二次元」の状態で十分に効果を発揮し、広がって(手前に浮き出て)つまりは図(主役)として見えます。
ドロップシャドウ(影)やパース(遠近法)、立体的な奥行きなどをつけてやることで手前に浮き出て主役となるわけです。多くのものに影やパースをつけてしまうと、優先度はなくなり他の面積の法則などが選ばれ図(主役)となります。
心理学者のスティーブン・E・パルマー(Stephen E. Palmer)さんはもう1つ、いや2つあります、
1つ目はゲシュタルト理論(近接や類同など法則)を拡張する形で、
雑誌『Cognitive Psychology』(認知心理学誌)第24巻にて、
『共通領域:知覚的グルーピングの新しい原則』(Common region: A new principle of perceptual grouping.)(スティーブン・E・パルマー 1992年)に発表されました。
・共通領域の法則(Common Region)
複数の要素が「明確な境界線や背景(枠や色ベタなど)」によって囲まれ
ているとき、
それらの要素は「1つのまとまり(グループ)」として認識される。
『共通領域:知覚的グルーピングの新しい原則』
(Common region: A new principle of perceptual grouping.)
(スティーブン・E・パルマー 1992年)
たとえ要素同士の形が違っていても、あるいは距離が少し離れていても、「同じ箱(領域)の中に入っている」という事実が、他のどの要因よりも強力にグループとしての結びつき、1つのまとまり(グループ)として印象付ける。
ゲシュタルト理論では、近くにあるもの同士がグループに見える「近接の法則(Proximity)」があるが、共通領域の法則は「近接の法則よりも強力に働く」ことが実験で証明されています。
境界線を引くことで、距離が離れていても、強制的に同一グループとして認識させることが証明されたということです。
どんなに遠くに離れたものも線や背景の色などが同じところに入っていれば、近くの要素が同じものでも、その領域に入っているものがまとまり(グループ)として見えてしまいます。
赤と白の2種類の帽子を被った人たちが、クイズを出されAかBに分かれます。それまでは赤と白のグループに見えていたけれど、AとBの境界線を引かれた時点で、AとBのグループに見えてしまう。という感じです。
その2年後、1994年にもスティーブン・E・パルマーさんとイルヴィン・ロック(Irvin Rock)さんで共同研究論文で発表します。
・均一な接続性の法則(Uniform Connectedness)
明度、色、テクスチャなどの均一な特性を持つ閉じた領域は、
最初は単一のユニットとして知覚される傾向があることを示している。
(スティーブン・E・パルマー イルヴィン・ロック 1994年)
人間は、「物質的な繋がり(一本の線など)」を非常に強く意識する。
たとえ要素同士の形や色(類同)が全く異なっていても、また距離(近接)がどれだけ離れていても、「一本の線で結ばれている」ということが、他のすべてのゲシュタルト要因を圧倒して、最も強い結びつきとして1つのまとまり(グループ)に見えます。
□と⚫︎ が一本の線で結ばれたら、脳は瞬時に □ー⚫︎ を一つのグループと認識し、色や形の違いを無視します。
以上が、ゲシュタルト理論のデザインで活かせる法則だと思います。
この法則を知ってポスターやパンフレット、ホームページなどを見ると見え方が違って見えるかもしれません。
ただ、ゲシュタルトの法則は無意識時に発生するものです、意識してしまうとそちらの目的のほうを優先します、ルビンの壺を壺と見ることも二人の横顔と意識的に見ることができるように、大きなものを図(主役)として見ようと見れば図(主役)と見えます。ことも合わせて覚えておかなければなりません。
デザイナーの人は作り方が少し変わるお手伝いとしてお役に立てれば幸いです。
それではまたの機会に。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ここまでお読みいただけたならば、20分程度の暇つぶしの役には立っているはずです。約30kcalも消費していますから、プレーンヨーグルト(無糖)を50グラム、この間に食べていなければダイエット効果もきっとあるはずです。
まとめ
ゲシュタルト理論
【知覚の前提】
・良い形の法則 / プレグナンツの法則(Law of Good Form/
Law of Prägnanz)
・均一な接続性の法則(Uniform Connectedness)
【何が主役で、何が背景か】
・図と地の法則(Figure-Ground Organization)
・凸面性の法則(Law of Convexity)
・面積の法則(Law of Area / 小さい領域の法則)
【静的・空間的】
・近接の法則(Proximity)
・類同の法則((Similarity)
・閉合の法則(Closure)
・連続の法則(Continuity)
・対称性の法則(Law of Symmetry)
・共通領域の法則(Common Region)
【動的・時間的】
・一般化された共通運命(Generalized Common Fate) 2001年
・共通運命の因子(Faktor des gemeinsamen Schicksals)) 1923年
・共通運命の法則(Law of Common Fate) 1936年
・同期の法則(Law of Synchrony)
【記憶・心理的】
・客観的構えの法則(Law of Objective Set)
・過去の経験の法則(Law of Past Experience)
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