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【パートナー研究者コラム:ライフ】仕事/育児/研究を両立する作業療法士の挑戦と学び

現在A-Co-Laboには、分野・年齢・所属もさまざまな研究者や技術者が約300名登録しています。
そんな多彩なパートナーたちが「キャリア/ライフ/雑学」の3つのテーマから1つを選んで執筆する連載企画、「パートナー研究者コラム」をスタートします!

今回のテーマは「ライフ」。
作業療法士として活躍されているパートナーの武田智徳さんに、仕事・育児・大学院の両立と、そこから得た学びや気づきを綴っていただきました。




自己紹介

 私は大学卒業後、作業療法士として大学病院で働き始めました。現在は、地方の市中病院で勤務しています。大学病院では「超急性期」と呼ばれる、病気を発症して入院し手術や高度な治療を要する方を対象としていました。現在は、高度な治療を終えた高齢者が主な対象になっています。
大学病院に在籍時から、心臓や血管に病気を持つ方へのリハビリテーションである「心臓リハビリテーション」に携わってきました。当時、作業療法士で心臓リハビリテーションに関わる人材は全国的に大変少なく、教えてくれる人もいなかったため、日々手探りで仕事をしていました。多くの患者さんと関わるうちに「どうしたら担当した患者さんをよくできるだろうか?」と考え、論文や参考書で勉強し始めました。それでもまだ明らかになっていないことが多いと気づき、そこから「毎年1回は学会発表をしよう」と決めて研究活動を始めました。



仕事・育児・大学院の両立のはじまり

 数年経つと、同僚たちが大学院に進学するようになり、なんとなく私も大学院に行きたいと考え、入職7年目に進学しました。ちょうどその年に長男が誕生し、仕事・育児・大学院の両立が始まりました。ここで感じた両立の難しさは2点あります。

 1点目は、通常業務と大学院の両立で精度の高さを求められることです。当然ですが、大学院に行っているからといって仕事量を減らせるわけではありません。通常業務をこなした後や自分の休みを利用して、埼玉から群馬まで週1~2回通っていました。先輩たちが通常業務をこなしながら大学院に通って業績を積み重ねていた分、私にも「大学院に通っているのだから通常業務も頑張れるよね?」という風潮があり、精神的に大変苦労したのを覚えています。

 2点目は、育児と大学院の両立です。実はこれが一番大変だったかもしれません。大学院で家を不在にすることが多く、できる限りのことはしましたが、妻に育児の負担をかけていたと思います。家に帰ってくると育児が中心となるため、研究は夜の遅い時間から取り組むことが多く、その間も夜泣きの対応、ミルク、おむつ交換などもしなければならず、まとまった時間を確保することが難しい状況でした。私も妻も疲弊しており、いら立ちから子どもにきつい口調になってしまい、自己嫌悪に陥ることもありました。「大学院なんて行かなければよかったのかな」「結婚なんてしなければよかったのかな」「子どもがいなければもっとできるのに」など、今思えば最悪な思考に陥っていました。
こうした思考に陥っていることに気づき、なかなか同僚に相談できなかったため、妻に相談しました。そのとき妻から「そんな半端な気持ちで大学院に行くならやめればいい」と強烈な一言を言われました。しかし、それは正しく、大学院は自分で決めたことですので、最後までやり切ることの重要さを妻から教えてもらいました。


葛藤を経て実践・工夫していること

 そこで生活習慣を見直しました。まずは思い切って子どもの寝かしつけと同時に一緒に寝て、できる限り睡眠時間を確保しました。そのころには夜泣きもなくなっていたので、一緒に寝ることで翌朝まで眠ることができました。起きる時間は4~5時でしたが、睡眠時間は7時間以上確保できていたため、さほど眠くありませんでした。
早起きによって出勤までの約2時間を研究に集中できるようになり、夜に取り組んでいたときよりも効率が上がりました。朝のうちにタスクをある程度こなせるため、帰宅後は子どもと遊んでも精神的に追い詰められることがなくなりました。この精神的な安定が、生活習慣を変えて最も良かった点です。この朝型の習慣は現在も継続しており、成果も出るようになってきたため、今後も続けていくつもりです。

 また、コロナ禍以降は夜に研究のオンライン会議が入ることが増え、妻にお願いして参加していました。その分、私の朝型生活を生かして休みの日は子どもの朝ごはんを用意するなど役割分担しています。(とはいえ、妻からするともっと家事をやってほしいと思っているかもしれませんが……)。

 さらに、妻も研究職ではないもののスキルアップを望んでいるため、勉強会や研修会がある際は積極的に参加してもらっています。大学院から現在まで研究で好きにやらせてもらっている立場ですので、妻のスキルアップには大賛成で、お互いに高め合える関係でいたいと考えています。現在は博士課程を修了し、ありがたいことに講演や執筆の依頼も増えてきました。それに伴い同時期に複数のタスクを抱えることも増えましたが、締め切りや内容に応じて優先順位をつけつつ、複数のタスクを少しずつ並行して進めています。そうすることで思考が煮詰まりすぎず、別の作業をしているときに「あの論文に使えそうだ」といった新しい発想が生まれることもあり、個人的におすすめです。



両立の葛藤から生まれた気づき

 仕事・育児・大学院の両立を経て、最も重要だと感じたことは【他責にしないこと、でも程よく他者に頼ること】です。
大学病院時代も現在も、臨床業務をしながら研究を行っている人は多くありません。そのため「自分はこんなに頑張っているのに認められない」「どうして周りはもっと頑張らないのだろう」と思う時期もありましたが、他人に不満をぶつけるより、自分と向き合い、変えられることはあるか、自分の長所や短所は何かを見つめながら自分事に集中することが大切だと気づきました。ただし、一人では研究はできません。共同研究者、家族、同僚にお願いできることはお願いし、精神的な安定を図りながらコツコツ研究を進めることが重要だと感じました。


まとめ

 仕事・育児・研究活動の両立は確かに大変です。しかし「両立できない原因は何か」「どうすれば解決できるか」といった研究的な思考は、私生活にも応用できると思います。現時点での最適解を導き出せたとき、研究者としての楽しみも増します。大学院に通っていたときは大変でしたが、当時行動していなければ今のように臨床研究を続けることはできなかったと思いますし、今から大学院に行こうと思っても体力的に難しいと思います。
もし仕事・育児・研究活動の両立に不安を感じ、進学を迷っている方がいれば、ぜひ勇気を出して一歩踏み出してみてください。気づかなかった自分の長所や短所、人の優しさに気づけることが多くあります。また、これまで会えないと思っていた雲の上のような研究者の方と一緒に仕事をする機会が得られるかもしれません。その勇気ある一歩が、多くの人を救う研究につながる可能性もあります。

 これからも私は仕事・育児を楽しみながら、心臓リハビリテーションの領域で研究を進めていくつもりです。この文章が、一人でも多くの方の勇気ある一歩につながれば幸いです。



武田智徳さんのnoteはこちらから



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