アップデート疲れ|#氷河期世代 #ポピュリズム #反知性主義
起|AIのVerアップだってよ
ワクワク感(2025)→倦怠感(2026)
Grok 4.5が出た。コーディングが強化された汎用モデルらしい。Grok BuildでComposer 2.5をリプレースするというが、実力は未知数だ。
私の制作途上の各プロジェクトは、AGENTS.mdを素に戻して共同作業をする中で灰汁を出し切って組み直しだ。通常の会話もカスタム指示を一旦外して特性把握のような作業からリスタートになる。
4.3の惨状を考えればバージョンアップ歓迎の側面もある。しかし、数カ月おきに構築した環境の互換チェックを強いられる[1]のはここ半年以上ワンパターン化していて「またか」という倦怠感がある[2]。
私は新しいモデルよりも、自分が時間をかけ知恵を絞って構築した環境をもっと使い続けたい。

[1] ソース例:
The Semver Lie: Why a Minor LLM Update Breaks Production More Reliably Than a Major Refactor [tianpan.co]→「バージョンアップは全方位的なデグレリスクを孕んでいる」
MUSCLE: A Model Update Strategy for Compatible LLM Evolution [apple.com]→ベンチスコアが向上する一方、特定の応答が悪化する現象を「negative flip」と命名
[2] 「AIが職を奪う」とは、三カ月おきに新人AIが入ってきて我々が絶えず教育し直すのを強いられることだったのか?

承|高頻度更新が正義という風潮
更新頻度>利用頻度は無価値の証明
この状況、あれに似ている。私のスマホアプリのキープ基準だ。
インストールしたアプリから、ほぼ毎日アップデートの通知が飛んでくる。使用頻度よりも更新頻度が高いアプリやサービスは、使える状態をキープしたり通知を確認する作業が、使用回数そのものを上回っている、ということになる。

よって、該当するものは即アンインストールをマイルールにしている。必要になればまた探せばいい。
ハイメンテナンス指数 = アテンション要求 / アテンション投与
右辺の単位は任意(回数、人時間)、分母分子で揃えること。
【基準例】
1以上:切り捨て // 更新頻度>利用頻度
1未満0.1以上:注視
0.1未満:キープ // メンテと利用比率はオーダー1つくらい違って当然この比率の式、汎用性がある。
アプリ以外にも、頻繁な通知の割に見に行かないSNSのフォロー解除、メルマガ・ダイレクトメールの解約判定の基準になる。シニカルな現代人は人間関係の整理にも似たような指数を使用している・・・かもしれない。

人を高頻度更新へ突き動かすもの
Noteの新規クリエイター向け記事でしばしば「毎日更新がフォロー拡大の早道」とアドバイスしているものを見かける。新規投稿はアルゴリズムによって一定数拡散が保証される。だから種をまき続けることが重要という理屈だ。

前項の例も似たような駆動力が働いていると想像がつく。アプリアップデートやメルマガは活動アピールや客呼び、AIの頻繁な更新は投資家へ向けたやってます感の演出だろう。

近年のスポーツ分野では、プロ野球やMLBのスペシャルユニフォーム、MLBのバブルヘッドデー[3]、F1の特別リバリー(塗装)[4]など、特別企画が年に1~2度だったかつてに比べて特別感がなくなるほど頻発している。

大して書くことがなくてもNoteを毎日更新せねばというメンタルと、特別感無き特別ユニフォームやリバリーを頻繁に企画するプロスポーツのメンタルは完全に同じだろう。
共通しているのは、外向けに圧を発し続けなければ埋没してしまうという現代的な強迫観念で、売り手側は明日には忘れ去られる話題をせっせと作って自己の存在を世界に宣言している。その一方で消費者、ユーザー、ファンにはシラケが蔓延し、アテンション・コストが増大する。
いかなる価値の創造も市場や投資家の認知に帰結される資本主義が生み出した歪な構造である。
[3] 先日の大谷翔平のバブルヘッドデーで、地区首位を走る人気チームのホームゲームにもかかわらず定員割れで4000体以上が余ったという。
これは大谷選手の人気低下ではなく、そもそも一選手につき年間一回あるかないかの希少イベントだったものを、年に何回もやる球団が価値を貶めた結果だろう。
How the Baseball Bobblehead Craze Got Started and Will it End [jugssports.com]→1999年にSFジャイアンツが復刻イベントとして一試合限定、20000人を対象に開催したのがブームのきっかけとされる。そこから2018年までに全チーム間で140イベントに増大した。
Why Bobblehead Giveaways Thrive in MLB but Lag in Other Leagues [sponsorunited.com]→"In 2025, the Los Angeles Dodgers alone scheduled 21※ bobblehead nights… brand-sponsored bobblehead giveaways have grown 55% over the past three years, with 230 participating brands in 2024." ※ホームゲーム81試合の4分の1はバブルヘッドデーという計算になる。もはや希少性も有難みも皆無だ。
[4] F1特別リバリーの乱発に対する批判と増加傾向のソース:
Is there a need for so many special liveries in F1? [nss-sports.com]
OPINION: The FIA needs to do something about F1’s one-off liveries [goodwood.com]
以上の通りファンにとって有難みのない企画でも、実施すればニュースが拡散されることを重視しているのだろう。企画者が見ているのは余った4000体ではなく、ファン満足度でもなく、SNSの投稿数の瞬間最大風速のなのだ。
転|安定性・安住性とエンドユーザーの謀反
AIのアップデートペースに翻弄されて構築した環境が崩壊する現象と似ているのが、Googleのサービスだ。
同社は突然のサービス終了で信頼してタスクを全依存していた個人や会社の梯子を外すという悪名が高い[5]。新規性で人を集め、一通り行動データを取り終われば話題性のないものは開発継続が億劫になるのだろう。だから私は遊んではみてもそこへは引っ越さないことにしている。

このように継続性が不安定だったり、アテンションを頻繁に要求する割に見返りの少ないサービスやコンテンツは、コスパが悪いという現代的な基準で拒絶されるべきだろう。遮断、切り捨て、無視が高頻度更新主義への中指だ。
我々が求めているのは目新しさでもベンチスコアでもやってる感の演出でもなく、上に何かを積み上げられる安定した土台であり、地盤だ[6][7]。
[5] Google Reader (2013)、Google Domains (2023)、Stadia (2023)など。Googleが終了したサービス一覧:
[6] AI会社はWindowsのLTSのような長期サポート安定版を準備しなければB2Bで信頼は得られないだろう。AIを導入している会社ではバージョンアップの度にシステムテストと修正の内部コストを払っているのではないか?
The Risks of Ignoring AI Debt [gartner.com]→"AI debt… the accumulated cost of past decisions…that favor short-term gains in AI-related work over long-term sustainability"
The Real Cost of AI Agents: Maintenance, Model Drift, and Hidden Ownership Costs [searchunify.com]
AI fuels a new wave of technical debt [informationweek.com]
自然言語ベースの難しさはあるが、世代管理やクライテリアの策定へ向けた動きがあってもよさそうなものだ。
[7] ハード環境が前提になるが、シリアスな環境構築は現時点では責任なきオンラインAIモデルよりもオフラインモデルの方が適している。
結|アップデート拒否権発動
ビジネスや社会の都合で個人が頻繁にアップデートを強要され、振り回されるのは現代病ではないだろうか。

10年単位でコンプラだの、資格だの、SDGsだの、EVだの、多様性だの、虹色の旗だの、猫の目のように我々にアップデートを要求してくるではないか。実にコスパが悪いが、外圧や利他的な変化をレッテル貼り(「昭和」など)で誤魔化して必然性を演出しているだけである。
Aと言われて育ったものがいきなりBに変わる。Bを習得したらC。価値観の梯子が外される。土台が崩される。これが戦前→戦後の大反転からの高度経済成長やバブル経済に乗っかれたのならまだいい。
氷河期世代はどうだ?X世代は?あれこれアップデートを要求され続けてきた割に、リターンが未だに振り込まれていないではないか。こちらがアップデートしたところで、自己主張の強いアプリの如く、次の日にはまた通知が飛んでくるんだろ?
アップデートせぬ者は取り残されるのみ、(翻訳:時代について行っている俺カッコイイ)と弱肉強食の自称・強食側は言う。だがこれは「お布施を払い続ければいつか解脱が来る。辞めれば地獄へ落ちる」というカルトと何が違うのか?そこには契約も保証もなく、バズワードやビジネス用語を借りた信心と信仰による統制でしかない。

だから私はそのようなものからもサブスクを解除する。
保守?旧い人間?サンクコスト?いや違う。実に現代的な『コスパ』観点で許容できないというだけだ。
了

AIクレジット
編集相談:Claude Sonnet 5 (Anthropic)
画像考案:Eurybia Harlow-Vexley (Perchance)
画像生成:Grok Imagine (SpaceX), Perchance
