【物語のあるスイーツ】~春夏秋冬のおやつレシピ&エッセイ~
みずみずしい苺がぷつりと乗ったショートケーキ。サクサク食感がたまらないクッキー。どこか懐かしいプリンア・ラ・モード。週末に作り置きしたパウンドケーキ。
あまーいスイーツが食べたくなるのは、どんな時ですか?
私が一番甘いものを欲するのは、身体や心がクタクタに疲れている時、かもしれません。糖分を補給したいというのもあるけれど、スイーツは、ただそこにあるだけで人を幸せにする力があると思っています。見た目が華やかで、キラキラしていて、繊細で、宝物みたいなもの。最近は手軽に買えるスイーツも増えましたが、ホールケーキを見れば誕生日パーティーやクリスマスを思い出したり、綺麗にラッピングされた焼き菓子を見ると、誰かにプレゼントしたくなったり。やっぱり、どこか特別感のある存在です。
幼い頃から甘いものが大好きだった私が、作ることにハマり始めたのは高校生の頃でした。運動部に所属しながら、週1の休みに家庭部でお菓子を焼いて、先生にアドバイスをもらい、また次の週に試して。毎週、ひとつずつレパートリーが増えることも、完成度が上がることも嬉しくて。気づけば、当時勉強ばかりしていた私にとって大切なひとときになっていました。
あれからずっと、大人になった今でも、お菓子作りをコツコツと続けています。
「忙しいのに、どうしてお菓子を作るの? 買った方が早いでしょ!」と言われることもあります。それはもちろんそうなのですが、お菓子作りの時間は、私にとってひとつの癒しであり、頭の中を整理する時間でもあり、何より、おいしいお菓子を食べたい私のためでもある!のです。
自分を幸せにするためにお菓子をつくってきた私ですが、家族や友人にプレゼントすると、喜んでもらえることもすごく嬉しいんです。このほっこり嬉しい気持ちが、もっと回りまわって行けばいいなと思っています。
そんな気持ちを込めて。今回は、今まで作ってきたスイーツの中から特におすすめしたいレシピを、季節に合わせて2つずつ、計8つセレクトしました。ほんの少し、エッセイのようなお茶菓子も添えて。
スイーツは、食べるその瞬間だけでなく、ショーウィンドウの前でどれにしようかな、こっちもいいな、いや、こっちも食べたい…ぐぬぬ……と、選ぶ時間も含めて幸せだなと思っています。そんな風に、今日はどれにしようかな?と、スイーツを味わい、楽しんでいただけると嬉しいです。写真も、新しく撮り直しています。テキストだけ読んだり、写真を眺めたり、つまみ食いも大歓迎です。
毎日、頑張っているあなたへ。
ささやかな甘いひとときを、ぜひおすそ分けさせてください。
Spring Sweets

春は、物事のはじまり、新しい出会い。
少しずつあたたかくなる空気と、元気な草花の香り。やわらかな陽射しにさそわれて、買ったばかりのカーディガンを羽織ってみたりして。
つい外に出たくなってしまうこの季節は、味も見た目も、ほっとやさしい気持ちになれる2つのスイーツをご用意しました。
recipe1. 桜のメレンゲ

ふわりと桜の気配を感じると、春が来たのだな、と思う。
毎年、花見をしようと意気込むのだけれど、忙しなく過ごしていると2週間であっという間に散ってしまう。散った後の木々を見ると、どこかもの寂しさを感じてしまうこともあります。
そんな寂しさを埋めるために、桜のおやつをどうぞ。ふわりと軽やかなメレンゲは、口の中でしゅわりととろけます。ひとつぶ口に含むと、柔らかな春の色が体に染みて、なんだかぽわっとあたたかくなるようです。



ころんとした桜の粒たちは、並んでいるだけで、なんだか可愛い。桜の口金で優しく絞るのがポイントです。今回は、大きい桜と小さい桜、2種類絞ってみました。

メレンゲはとても繊細で、口の中に入れるとすぐに蕩けてなくなってしまいます。それが癖になって、ついもうひとつ、もうふたつ、と食べてしまう。この優しい甘さと儚さが、なんだか桜と似ているなあと思うんですよね。
recipe2. ウィークエンド・シトロン

「ウィークエンド・シトロン」は、その名の通り"週末に食べる"スイーツ。フランス生まれの焼き菓子で、家族や大切な人たちと週末に一緒に食べる、という意味が込められているのだそう。
レモンのアイシングでたっぷりコーティングされた見た目は爽やかで、青春みたいでキュンとします。一切れ食べるごとにパワーが湧いてくるのは、華やかなイエローカラーのおかげかも。




小ぶりのスリムパウンド型は、焼くだけでオシャレに仕上がります。ピスタチオダイスのトッピングは、春のイメージにもぴったり。他にも、細かくしたナッツをトッピングしてもおいしいです。

誰かとの週末のためにつくる「ウィークエンド・シトロン」も素敵だけれど、私は少し忙しい平日のために、時間のある週末に焼くことが多いです。平日、一切れずつ食べる。頑張った日は、二切れ食べていい。小さなルールをつくるだけでも、ちょっと楽しくなる。
楽しみは、自分でつくっちゃいましょう。
春のお茶菓子エッセイ
ベランダの横顔
Summer Sweets

夏といえば、甲子園、花火大会、音楽フェス……
個人的には好きなものがぎゅっと詰まった季節。汗だくになりながら冷たいアイスを食べるなんて、もう最高のひととき。一方で、夏の空気はどこかセンチメンタルな雰囲気も纏っていて、心が揺さぶられることも多い。そんな気がします。
夏が好きな人も、ちょっと苦手な人も、見るだけでエナジーチャージができるような、爽やかな2つのおやつをご用意しました。
recipe3. ひまわりサブレ

ひまわりの英語名は、sunflower。見た目が太陽に似ていることもありますが、陽の動きを追うようにまわっていく、まさに太陽の花。
幼い頃に祖母に連れて行ってもらったひまわり畑の光景が、今でも忘れられません。
あの時の憧れを忘れたくなくて、鮮やかな黄色のサブレにしました。




3つのパーツで型抜きをすると、1枚で色々な味を楽しめます。薄力粉だけでも良いですが、個人的にはアーモンドプードルを入れたレシピの方が好き。香ばしさとコクが加わり、見た目以上にサクッと軽い食感で、何枚でも食べられちゃいます。

黄色の焼き具合が、ちょうど本物のひまわりの色に近くなるところもお気に入りのサブレ。夏は特にお菓子作りが難しい季節ですが、慌てず焦らず、クッキー生地はその都度しっかり冷やしてから型抜きしましょう。生地を冷凍しておけば、いつでも焼きたてのサブレが食べられますよ!
recipe4. 流れ星のゼリー

初めて流れ星をみた夜のことは、きっとこの先忘れることはないだろうと思う。想像以上に一瞬の出来事で、でも想像以上に綺麗だった。ただひとつ驚いたのは、特に流星群でもない夏の夜、ぼーっと見上げた空に見えたということ。
流れ星は、すごく特別な現象で、決まった日にしか見られないと思っていたけれど、そんなことなかった。私たちの日常にあるものなんだ。それを見ているか見ていないかなんだな、って。
そんな夏の夜空を、アガーを使ってカップゼリーに閉じ込めました。



ゼラチンを使ったゼリーに比べ、アガーはぷるんっとした食感と透明感がアップするので、夏におすすめ。常温で型崩れしないところもポイントです。
今回のレシピは、スプーンですくった時にまだ少し柔らかさが残るようにしていますが、アガーの量を増やすと、より固い仕上がりになります。

透明なゼリー、青いゼリー、濃い青いゼリー。重ねてグラデーションをつくると、横から見た時より鮮やかに。
バタフライピーとレモン汁の量を調整すると、紫〜ピンク色のゼリーを作ることもできます。ぜひ、色々な空をアレンジしてみてください。
夏のお茶菓子エッセイ
ひまわりのビール売り
Autumn Sweets

スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋、読書の秋。秋の楽しみは数え切れないくらいあるというのに、どうして毎年こんなに一瞬なのだろう。
いも、くり、かぼちゃ。ほっこりした美味しいものを楽しめるのも、この季節ならでは。そんな貴重な秋を、めいっぱい感じられるおやつをつくりました。
recipe5. マロンフィナンシェ

昔、親戚からもらった栗を隠れて食べて、こっぴどく叱られたことがある。というのも、数粒どころではなく大量に食べてしまったから。少し味見しようと思っただけなのに、気づけば止まらなくなってしまう…それほど魅惑的な、秋の栗たち。
栗のお菓子といえば、栗饅頭やきんとん、栗羊羹など和菓子も良いけれど、今回は香ばしさとサクサク食感を楽しめる、フィナンシェのご提案です。



焼いている時からキッチンがマロンの香りに包まれるのがもう、幸せ。
焦がしバターとアーモンドプードルがポイントのフィナンシェに、濃厚なマロンクリームをたっぷり使いました。卵白が余ってしまった時のお助けレシピとしてもおすすめです。

フィナンシェは17世紀にフランスで生まれたお菓子で、多忙な金融マンが手を汚さずに食べられるように作られたそうです。四角い形が多いのは、金塊の形をイメージしているからだとか。今回はマロンのイメージに近いものをと丸いカップを使用しました。同じレシピでも、形を変えるだけで雰囲気がガラッと変わるのは、焼き菓子の面白いところですね。
recipe6. かぼちゃのプリン・ア・ラ・モード

洋菓子店やコンビニ、スーパー、秋になると色々なところにかぼちゃのスイーツが並びます。その中でも1番の推しが、かぼちゃプリン。そして、プリンの王様といえば、やっぱりプリン・ア・ラ・モード!この最高な2つを組み合わせたらどうなるんだろう?……わくわくしながら作ってみたら、最高の一品ができました。
ホクホク感もしっかり感じる、かぼちゃプリンのレシピをどうぞ。




プリンア・ラ・モードは、メニューにあるとつい頼んでしまう、特別感のあるスイーツ。今回のこだわりは、少し高さのあるプリンカップを使用したこと。富士山型のぽてっとした見た目のプリンも可愛いですが、高さがあるとスタイリッシュに盛りつけできます。生クリームのほかに、黄桃、キウイフルーツ、バナナ、ミックスベリー、さくらんぼ、チョコレートを添えました。

プリンは、固すぎず柔らかすぎない、絶妙な食感。かぼちゃから作ったペーストを使用しているので、ひとくち食べるとぶわっと秋の風味が広がります。ほろ苦いカラメルソースとの相性も抜群。
更に、レトロな器やガラス製のお皿に盛りつければ、"昔ながらの喫茶店"にタイムスリップできるはず。数種類のフルーツを用意して生クリームを添えるだけで、いつものおやつタイムが更に豪華になります。友人を自宅に招待したり特別な時はもちろん、頑張った自分へのご褒美にも、ぜひどうぞ。
秋のお茶菓子エッセイ
ミルクコーヒーとクロワッサン
Winter Sweets

ハロウィンが終わると、あっという間にクリスマスシーズン。大きなツリーやカラフルなラッピングボックス、少し歩けばイルミネーションのきらきらした世界に導かれてゆく。
もうすっかり大人なのに、もしかしたらサンタが来るんじゃないか?とソワソワしたり、いつもと違うことをしてみたくなったり。
その後に続く年末年始やバレンタインも含めて、冬は1年で1番、誰かにプレゼントを贈りたくなる季節だと思う。冬は、そんな気持ちに寄り添う、とっておきのスイーツをセレクトしました。
recipe7. クリスマスショートケーキ

特に何も予定がなくても、街を歩くだけでワクワクするクリスマス。1人で過ごす人も、大切な人と過ごす人も、家族で過ごす人も、やっぱり欠かせないのは主役ケーキ。チョコレートケーキやチーズケーキ、アイスケーキ。専門店からコンビニまで、年々選択肢が増えて迷ってしまうけれど、おうちでつくる王道のショートケーキは、幼いころのクリスマスの記憶を思い出させてくれます。



つやっと光るターキーレッグに、レタスとトマト、ブロッコリーのサラダ、あたたかいスープ。お腹は満たされているけれど、最後にホールケーキを人数分カットしてシェアするのがクリスマスの食卓のイメージ。
ちょっと不揃いないちごもご愛嬌。丁寧にクリームを絞り、プレートやチョコレートを添えると豪華なホールケーキになります。

スポンジケーキは、シンプルな材料でなつかしい味。甘酸っぱいいちごと控えめのクリームとも相性が良く、さらっと食べられてしまうのが怖いところ。レシピも材料もシンプルな分、丁寧につくると仕上がりがグンと変わります。カラースプレーをトッピングしたり、いちご以外のフルーツを添えても良し。ベストなケーキができたら、また来年もつくろう!と思えて、それだけで自分だけの”特別感”が増してくるはず。
recipe8. チョコチップカップケーキ

初めて好きな人に告白したのは、中学生の頃。誰かのためにお菓子を焼いたのは、きっとあのバレンタインが初めてだったはず。王道はチョコレートだけれど、何を作れば良いのか、何日も何週間も考えて。気持ちを伝えるのはすごく緊張したけれど、それ以上にバレンタイン前の、相手を思って作っている時間が1番楽しかったのかも。
今回は、本命にも友チョコにもぴったりなカップケーキのご紹介です。



生地にはココアパウダーとたっぷりのチョコチップを使用し、バレンタインにぴったりのスイーツに。少しくすんだピンクのカップで、小ぶりに焼き上げました。本命ギフトに添える手紙の絵柄と合わせたハート柄のピックで、よりキュートにおめかし。

焼き上がりのビター&スイートな香りは、告白前の気持ちを思い出して少しむず痒くなります。あれほど緊張していたのに、相手に何をあげたかまで覚えていなかったり。でも、大人になってから本人が詳しく覚えていてくれると、結構嬉しいものです。甘いものを好きなひとに贈るって、やっぱり素敵。大人になっても、好きな人には甘いスイーツと一緒に、感謝の気持ちを伝えられますように。
冬のお茶菓子エッセイ
私だけのサンタクロース
幸せの方程式
大人になると、昔に比べて余裕がなくなったり、責任が重いことを任されたり、家庭や体の事情、面倒な関わりが増えたり。自分だけではコントロールできない、難しいことが増えてくるように思います。
それなりに頑張ってきたつもりでも、「どうして自分はこうなんだろう」「こんなはずじゃなかった」「あの時別の選択肢を選んでいれば」と思うこともたくさんあります。
そんな時、私は大好きだった祖母の言葉を思い出すようにしています。
「例え辛い状況にあっても、自分が笑顔でいられる選択をしなさい。人生を通して、自分で自分を幸せにする責任があるからね。笑顔は伝染して、周りの人にも少しずつ広がっていく。幸せの方程式みたいなものだよ」と。
私は世界のスーパーヒーローでも、大金持ちでもない。一瞬で、世界で困っている大勢の人を救うことは難しい。でも、自分が笑顔になれる選択なら、きっとできる。そして、自分が良いな、幸せだな、と感じたことを、家族や周りの人に少しずつおすそ分けしていきたい、と思っています。
休日に食べるケーキも、仕事の合間に食べるサブレも、夜中につまみ食いするパウンドケーキも、悔しい時に涙を流しながら食べるチョコレートも。スイーツは、どんな時でも私にポジティブなパワーをくれます。
めまぐるしい日常の中で、小さな幸せを見つけるのも大変な時はあるけれど、この記事を読んでくださった方にとって、この一皿が、少しでも心休まるひとときになっていることを願っています。
さいごに。
ここまで読んでくださったあなたのこれからの人生が、最高に甘くて、ハッピーなものになりますように!
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