結論:内部監査に生成AIを使うと、監査計画書・ヒアリング設問・内部統制チェックリスト・監査調書要約・監査報告書ドラフトといった「文書作成の下準備」を大きく速められます。ただし判断・証拠評価・最終結論はAIに丸投げできません。
この記事の要点
- 要点1: 中小企業のAI導入率は業務分野別で「総務・管理部門」が68.3%と最多。バックオフィス機能である内部監査もこの流れの延長線上にあります(中小企業基盤整備機構調査、2026年3月)
- 要点2: 内部監査でAIが効くのは「監査そのもの」ではなく「監査業務の周辺にある文書作成・整理・下調べ」の部分です
- 要点3: 機密情報の外部送信・AI出力の未検証転記・監査証跡の欠落は、内部監査だからこそ致命的な失敗パターンになります
対象読者: 内部監査室・監査部門を担当する経営者、管理部門責任者、専任者1〜2名または他部署と兼務で監査業務にあたる方
読了後にできること: 今日の監査業務のどこか1つに、コピペで使える5つのプロンプトのうち1つを試せる状態になります
「うちみたいな小さい会社だと、内部監査って結局、総務の担当者が本業の合間に片手間でやることになるんですよね」
企業向けにAI研修をしていると、総務・経理・人事といったバックオフィス部門の担当者から、こういう相談を受けることが増えています。内部監査という言葉を聞くと「上場企業の専任部署の仕事」というイメージを持つ方が多いのですが、実際には中小企業でも内部統制の観点から監査業務は必要とされており、多くの現場では専任者1〜2名、あるいは他部署との兼務という体制で回っているのが実情です。
そうした少人数体制の現場でまず負担になるのが、監査計画書の下書き、ヒアリング項目の洗い出し、チェックリストの整備、監査調書の整理、報告書のドラフト作成といった「監査そのものではないが、監査を成立させるために必ず発生する文書作業」です。これらは判断業務ではなく、材料をそろえて形にする作業である以上、生成AIとの相性が良い領域です。
この記事では、内部監査の現場でそのまま使える生成AIプロンプトを5つ、コピペ可能な形で紹介します。あわせて、内部監査だからこそ注意すべき失敗パターンと、小規模な監査部門が無理なくAI活用を始めるための3フェーズの進め方も解説します。専門知識がなくても、今日からChatGPTやClaudeで試せる内容にまとめています。
なぜ今、内部監査にAIなのか — 中小企業のAI活用の実態
まず、日本の中小企業全体でAI活用がどこまで進んでいるかを確認しておきます。独立行政法人中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」(調査期間:2025年11月17日〜12月12日、調査対象:全国の中小企業10,000社、実施:株式会社東京商工リサーチ)によると、AIの導入率(全社導入+一部業務導入の合計)は20.4%、導入を検討中の企業を合わせると39.0%が前向きな姿勢を示しています。

特に注目したいのが業務分野別の内訳です。「総務・管理部門」が68.3%で最多、次いで「営業・販売・サービス部門」60.3%、「経営・企画部門」58.5%、「製造・生産部門」34.9%という順になっています。内部監査は業務分類上、総務・管理部門や経営・企画部門に近い位置づけで語られることが多く、この2部門だけで導入率が6割前後に達しているのは、監査業務にとっても無関係な数字ではありません。
また同調査では、AI導入済み企業が使っているAIサービスのうち「生成AI」が82.6%と圧倒的に多く、2位の「音声認識・音声対話AI」(29.8%)を大きく引き離しています。導入目的は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%で最多、導入効果としても「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%でトップという結果でした。内部監査の現場で負担になりやすい文書作成業務は、まさにこの「効率化」が効きやすい領域です。
もう一つ押さえておきたいのが、監査業務そのものの国際基準の変化です。内部監査人協会(IIA)が策定した「Global Internal Audit Standards」の2024年版(2025年1月9日から適用開始)では、監査部門の責任者(CAE)に対して「内部監査プロセスを支える技術を確保するよう努めなければならない」「使用する技術を定期的に評価しなければならない」という要求が明記されました。データ分析やAIを監査に取り入れることは、もはや「余裕があればやること」ではなく、基準上の努力義務に近い位置づけになりつつあります。
同じ調査では、AI・IT活用に関する社内の課題感も明らかになっています。「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」と回答した企業はわずかで、「不足している」と回答した企業が83.3%にのぼりました。「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」についても、不足していると回答した企業が79.8%です。つまり、多くの中小企業は「AIを使いたいが、何から手をつけていいかわからない」状態にあります。内部監査部門も例外ではなく、この記事のように「具体的に何をどう入力すればいいか」という粒度の情報が求められています。
内部監査の全体像や周辺のバックオフィス業務でのAI活用については、総務部門の生成AI活用ガイドでも取り上げていますので、あわせてご覧ください。中小企業がAI導入を進める際の全体的な考え方はAI導入戦略の完全ガイドにまとめています。
内部監査×AIで効率化できる5つの業務

内部監査の業務全体をAIに任せることはできません。しかし、監査プロセスの中には「判断が必要な工程」と「材料をまとめる工程」がはっきり分かれている部分があります。生成AIが力を発揮するのは、次の5つのような「まとめる工程」です。
| 業務 | AIが得意な部分 | 人が必ず担う部分 |
|---|---|---|
| 監査計画書 | 過去計画・監査基準を踏まえたドラフト生成 | 監査範囲・リスク優先順位の最終決定 |
| ヒアリング設問 | 業務フローに沿った質問リストの叩き台 | 回答の真偽判断・追加質問の即興対応 |
| 内部統制チェックリスト | 業務規程・過去指摘事項からの項目洗い出し | 統制の有効性評価・重要度判定 |
| 監査調書・エビデンス要約 | 大量の資料・議事録の要点整理 | 証拠の十分性・信頼性の評価 |
| 監査報告書 | 指摘事項・改善提案の文章化 | 結論の承認・経営層への説明 |
この整理をせずにAIを使い始めると、「AIが出したチェックリストをそのまま提出資料にしてしまう」「AIが要約した調書を根拠の検証なしに報告書へ転記してしまう」といった、次の章で説明する失敗につながります。まずは「AIは下書き担当、最終判断は人」という役割分担を、部門内で言葉にして共有しておくことが最初の一歩です。
すぐ使える内部監査AIプロンプト5選
ここからは、実際にChatGPTやClaude、Copilotなどにそのままコピペして使えるプロンプトを5つ紹介します。角括弧「[ ]」の部分は、自社の状況に合わせて書き換えてください。
プロンプト1:監査計画書のドラフト作成
あなたは内部監査の実務経験が豊富なアドバイザーです。
以下の条件で、監査計画書のドラフトを作成してください。
【監査対象部門】[例:経理部の支払承認プロセス]
【監査の目的】[例:不正な支払いの防止体制が機能しているか確認する]
【監査範囲】[例:直近1年間の支払実績、承認フロー、証憑管理]
【想定スケジュール】[例:準備2週間、実地監査1週間、報告書作成1週間]
出力形式:
1. 監査の目的と背景
2. 監査範囲
3. 監査手続き(サンプリング方法を含む)
4. 実施スケジュール
5. 想定されるリスクと重点確認ポイント
※本プロンプトには実在の社名・個人名・金額など機密情報を入力しないでください。
出力はあくまでドラフトです。最終的な監査範囲・手続きは監査責任者が確認・承認してください。プロンプト2:ヒアリング設問の設計
あなたは内部監査のヒアリング設計に詳しい専門家です。
以下の業務プロセスについて、ヒアリング対象者から実態を引き出すための質問リストを作成してください。
【業務プロセス】[例:在庫の受発注業務]
【ヒアリング対象者】[例:倉庫管理担当者2名]
【確認したいリスク】[例:発注権限の逸脱、在庫の水増し計上]
以下の3つのカテゴリに分けて、それぞれ5問ずつ質問を作成してください。
1. 業務の全体フローを確認する質問
2. 例外処理・イレギュラー対応を確認する質問
3. 統制(承認・チェック体制)の実効性を確認する質問
※誘導的な質問や、回答者を萎縮させる表現は避けてください。
出力された質問はあくまで叩き台です。実際のヒアリングでは相手の回答に応じて臨機応変に深掘りしてください。プロンプト3:内部統制チェックリストの作成
あなたは内部統制評価の実務に詳しいコンサルタントです。
以下の業務について、内部統制の評価チェックリストを作成してください。
【対象業務】[例:経費精算プロセス]
【関連する規程・マニュアル】[例:経費精算規程、稟議規程]
【過去に指摘された問題(あれば)】[例:領収書の原本確認漏れが過去にあった]
以下の観点でチェック項目を洗い出してください。
1. 職務分掌(承認者と実行者が分離されているか)
2. 証憑の保管・確認ルール
3. 例外処理の承認プロセス
4. 定期的なモニタリングの仕組み
各項目には「確認方法」と「不備があった場合のリスク」も併記してください。
※このチェックリストは一般的な統制の観点をもとにした叩き台です。
自社の規程・業界特性に照らして、監査責任者が項目の過不足を必ず確認してください。プロンプト4:監査調書・エビデンスの要約
あなたは監査調書の整理を支援するアシスタントです。
以下のヒアリング議事録・資料のメモを、監査調書の形式に要約してください。
【入力する資料】
[ここにヒアリングメモや議事録のテキストを貼り付ける]
出力形式:
1. ヒアリング日・対象者・目的
2. 確認できた事実(客観的な内容のみ)
3. 確認できなかった点・追加確認が必要な事項
4. 監査人としての所感(事実と分けて記載)
※「確認できた事実」と「監査人の所感」は明確に分離してください。
AIの要約に含まれる推測や解釈は、必ず元資料と照合してから調書に採用してください。
機密性の高い個人情報・取引情報は、必要に応じて匿名化してから入力してください。プロンプト5:監査報告書のドラフト作成
あなたは内部監査報告書の作成を支援するアシスタントです。
以下の監査結果をもとに、報告書のドラフトを作成してください。
【監査対象】[例:営業部の交際費精算プロセス]
【確認された事実】[箇条書きで貼り付ける]
【指摘事項】[箇条書きで貼り付ける]
【改善提案(あれば方向性のみ)】[例:承認フローの見直し]
出力形式:
1. エグゼクティブサマリー(3行程度)
2. 監査の概要(目的・範囲・期間)
3. 確認された事実
4. 指摘事項(重要度:高・中・低で分類)
5. 改善提案
6. 監査人の総合所見
※重要度の判定基準や最終的な指摘内容は、監査責任者が確認・承認したもののみ報告書に反映してください。
AIが生成した文章は、事実誤認や誇張がないか必ず原資料と突き合わせてください。【要注意】内部監査でAIを使う際の失敗パターンと回避策

内部監査は他の業務以上に「情報の機密性」と「判断の説明責任」が問われる仕事です。AI活用でよくある失敗を4つ挙げます。
失敗1:機密の監査資料を外部AIサービスにそのまま入力する
❌ よくある間違い:取引先名・従業員名・具体的な金額が入った資料を、無料版のチャットボットにそのまま貼り付けてしまう
⭕ 正しいアプローチ:法人向けプランやセキュリティ設定を確認したうえで、固有名詞や金額は仮名・概算に置き換えてから入力する
なぜ重要か:内部監査の資料には、他部門の資料以上に機微な情報(不正の疑い、人事評価に影響する内容など)が含まれます。研修の場でも「どの範囲までAIに入力していいか」という質問は、監査・法務・人事の担当者から特に多く出ます。
失敗2:AIの出力を検証せず監査報告書にそのまま転記する
❌ よくある間違い:AIが要約した内容を、元の議事録・証憑と突き合わせずにそのまま報告書に貼り付ける
⭕ 正しいアプローチ:AIの出力は必ず一次資料と照合し、事実と所感が混ざっていないか確認してから採用する
なぜ重要か:生成AIは事実に見える文章を自然に生成しますが、根拠のない推測が混じることがあります。監査報告書は経営判断や場合によっては懲戒の根拠にもなるため、この検証を省略できません。
失敗3:プロンプトと出力の監査証跡を残さない
❌ よくある間違い:AIとのやり取りを都度消してしまい、「その結論をどう導いたか」を後から説明できない
⭕ 正しいアプローチ:使用したプロンプト・出力・修正内容を監査調書の付属資料として保存するルールを決めておく
なぜ重要か:内部監査は「誰が・どの根拠で・どう判断したか」を説明できることが前提の仕事です。AI活用を理由に、この説明責任が弱まってはいけません。
失敗4:異常検知の結果を鵜呑みにして根拠を確認しない
❌ よくある間違い:「AIが異常と判定したから不正がある」という前提で調査を進めてしまう
⭕ 正しいアプローチ:AIの異常検知はあくまで「確認すべき対象の絞り込み」に使い、最終的な事実認定は人が行う
なぜ重要か:異常検知系のAIツールは統計的な外れ値を示すだけで、それが不正か正当な理由のある例外かは判断できません。関係者への確認を飛ばして結論を出すと、誤った指摘によって現場との信頼関係を損ないます。
小規模内部監査部門が始める3つのフェーズ

専任者が1〜2名、あるいは他部署との兼務で監査業務にあたっている場合、いきなり大掛かりな監査DXツールを導入するのは現実的ではありません。まずは無理のない範囲で、次の3フェーズで進めることをおすすめします。
フェーズ1(1ヶ月目):個人利用のルール整備
最初にやるべきことは、ツール導入ではなく「何を入力してよくて、何を入力してはいけないか」のルール作りです。機密情報の範囲、使用してよいAIサービス、承認が必要なケースを1ページ程度の簡単な文書にまとめ、監査部門内で共有します。
フェーズ2(2〜3ヶ月目):定型業務へのプロンプト適用
この記事で紹介した5つのプロンプトのような、比較的リスクの低い定型業務(ヒアリング設問の叩き台作成、調書の要約など)から試していきます。実際に使ってみて、自社の監査スタイルに合わせてプロンプトを調整していく期間です。
フェーズ3(4ヶ月目以降):監査DXとしての本格運用
プロンプトの型が固まってきたら、監査計画書のテンプレート化、過去の指摘事項データベースとの連携など、より業務プロセスに組み込んだ形での活用を検討します。この段階では、監査証跡の記録方法やAIツールの利用範囲について、経営層・情報システム部門とも合意を取っておくと安心です。
与信管理やリスク評価など、内部監査と隣接するバックオフィスのAI活用についてはAIで与信管理・取引先信用調査を行う実践ガイドでも解説していますので、あわせてご参照ください。
事例区分: 想定シナリオ
以下は100社以上の企業向けAI研修・コンサル経験をもとに構成した、専任者1〜2名規模の監査部門で起こりやすい典型的な流れです。実在の特定企業の数値ではありません。
専任者1〜2名の監査部門でよくあるのは、「監査計画の立ち上げに毎回時間がかかり、実地でのヒアリングや証拠確認に十分な時間を割けない」という悩みです。プロンプト1・2のような計画書・設問の下書きをAIに任せることで、担当者が本来注力すべき「現場での確認作業」に時間を回しやすくなります。前述のSMRJ調査でも、AIの導入効果として「業務効率化/作業時間の短縮」(83.2%)に次いで「付加価値創出」(22.3%)がITの導入効果(7.4%)を上回るという結果が出ており、単なる時短だけでなく、監査の質そのものを高める余地があることが示唆されています。
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内部監査AIツールを選ぶときに確認したい3つの視点
前述の調査で「ベンダー・製品選定の情報不足」を課題に挙げた企業が約8割にのぼったように、ツール選びは多くの現場で悩みの種です。汎用チャットAI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)を使うか、監査業務に特化したツールを導入するか迷う場合は、次の3つの視点で判断すると整理しやすくなります。
| 視点 | 確認すること |
|---|---|
| ①データの扱い | 入力した内容がAIの学習データに使われない設定になっているか。法人向けプランで契約しているか |
| ②監査証跡の記録 | プロンプトと出力のやり取りを後から追跡・保存できるか。手元でログを残す運用にできるか |
| ③既存業務フローとの相性 | Excelや既存の監査調書フォーマットにそのまま組み込めるか、別ツールへの入力し直しが発生しないか |
最初から専用ツールを導入する必要はありません。まずは自社が契約している法人向けの汎用AIサービス(ChatGPT Team/EnterpriseやClaude Team、Copilotなど)で、この記事のプロンプトを試すところから始めるのが現実的です。専任者が少ない体制であれば、新しいツールを覚えるコストそのものが負担になるためです。
なお、IIAが公開している資料でも、監査人に今後必要なスキルとして「データ分析」「AI」「サイバーセキュリティ」「プロセスマイニング」が挙げられています。ツール選定と並行して、監査担当者自身がAIの基本的な使い方に慣れておくことも、中長期的には欠かせない準備です。
内部監査AI活用で押さえるべき3つの指針

内部監査でAIを使う際、押さえておきたい指針は大きく3つです。
1. IIA グローバル内部監査基準(2024年版)
前述の通り、内部監査人協会(IIA)の新基準(2025年1月9日適用開始)では、監査部門の責任者に対して「監査プロセスを支える技術の確保」と「定期的な技術の評価」が求められています。上場企業ほど厳密な運用が求められますが、中小企業でも「技術活用を検討した形跡を残しておく」という発想は取り入れておくと良いでしょう。
2. AI事業者ガイドライン(第1.2版)
総務省・経済産業省が2026年3月31日に公表した「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを利用する事業者全般に向けた指針です。内部監査部門が単独で守るものではありませんが、全社的なAI利用ルールを整備する際の土台として、監査部門も内容を把握しておく価値があります。
3. 業界別の規制・ガイドライン
金融業界であれば、金融庁が2026年3月に公表した「AIディスカッションペーパー(第1.1版)」のように、業界固有の論点整理が示されることがあります。医療・保険など規制の強い業界に属する場合は、内部監査部門としても業界団体や所管官庁が出す最新のガイダンスを個別に確認しておく必要があります。
なお、日本内部監査協会が内部監査業務に特化したAI活用の公式ガイドラインを2026年8月時点で公表しているかどうかは、今回の調査範囲では確認できませんでした。全社的なAI利用ガイドラインの設計自体については、生成AI利用ガイドライン10項目と運用・改定の設計術も参考にしてください。
よくある質問
Q. AIを使った内部監査とは、具体的に何をするのですか?
A. 監査そのものをAIが代行するのではなく、監査計画書やヒアリング設問の下書き、資料の要約、報告書のドラフト作成といった「文書作成の前段階」をAIに手伝ってもらう使い方が中心です。最終的な監査判断・証拠評価・報告内容の承認は、引き続き人が行います。
Q. 監査対象部門の従業員データを入力しても大丈夫ですか?
A. 個人が特定される情報や機密性の高いデータは、原則として入力を避けるか、仮名化・匿名化してから入力してください。利用するAIサービスの利用規約でデータが学習に使われない設定になっているかも、事前に必ず確認しましょう。
Q. 小規模な監査体制でも導入する価値はありますか?
A. むしろ専任者が少ない体制ほど、文書作成の負担軽減効果を実感しやすい傾向があります。ただし最初から大掛かりなツールを導入するのではなく、この記事で紹介したような無料〜低コストのプロンプト活用から始めることをおすすめします。
Q. 監査調書や報告書の最終責任はどうなりますか?
A. AIを使った場合でも、監査調書・報告書の内容に対する最終的な責任は監査担当者・監査責任者にあります。AIはあくまで下書きを速く作るための道具であり、事実確認や重要度判定といった専門的な判断は人が担う前提を崩さないことが重要です。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること:プロンプト2「ヒアリング設問の設計」を、直近で予定している監査対象業務にあてはめて試してみる
- 今週中:監査部門内で「AIに入力してよい情報・いけない情報」の簡単なルールを1ページにまとめる
- 今月中:フェーズ1〜2の内容を参考に、監査業務のどこか1つの工程にAI活用を組み込んでみる
次回予告:次回は、内部監査と隣接する「経営企画・リスク管理部門」でのAI活用について、より実務的な視点で取り上げる予定です。
参考・出典
- 中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月) — 独立行政法人中小企業基盤整備機構(参照日: 2026-08-19)
- Global Internal Audit Standards(2024年版) — The Institute of Internal Auditors(参照日: 2026-08-19)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版) — 総務省・経済産業省(2026年3月31日公表、参照日: 2026-08-19)
- AIディスカッションペーパー(第1.1版)の公表について — 金融庁(2026年3月公表、参照日: 2026-08-19)
著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。
SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。
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