2026.08.09
なぜ「瞬間英作文」では、英語が話せるようにならないのか?
英会話のトレーニングとして、長くすすめられてきたものがあります。
「瞬間英作文」です。
日本語の短文を見たり聞いたりして、それをすぐ英語にするトレーニング。
たとえば、
「彼は私の家の近くに住んでいます。」
という日本語を見て、
He lives near my house.
と答える。
繰り返しているうちに、答えるスピードは上がります。
以前より英語も速く出てくるようになります。
ところが、
練習問題なら答えられるのに、実際の会話になると言葉が出てこない。
そんな壁にぶつかる人は少なくありません。
なぜでしょうか?
瞬間英作文に、まったく効果がないからではありません。
問題は、瞬間英作文で練習していることと、実際に英語を話すときに必要なことが違うことにあります。
日本語と英語では、「意味を出す順番」が違う
先ほどの文を、もう一度見てみましょう。
彼は私の家の近くに住んでいます。
日本語では、
彼は → 私の → 家の → 近くに → 住んでいる
という順番で意味が進んでいきます。
ところが英語では、
He → lives → near → my house
です。
意味の順番で考えると、
彼は → 住んでいる → 近くに → 私の家
となります。
日本語では最後に出てくる「住んでいる」が、英語では主語のすぐあとに来る。
それだけではありません。
日本語の「私の家の近くに」は、
私の家 → の近くに
という順番です。
英語では、
near → my house
つまり、
近くに → 私の家
と進みます。
日本語と英語では、たんに単語を置く位置が違うわけではありません。
意味をどんな順番で出していくのか、その流れ自体が違うのです。
瞬間英作文では、「完成品」と「完成品」を結びつける
では、瞬間英作文では、この違いをどう乗り越えているのでしょうか。
基本的には、
「彼は私の家の近くに住んでいます。」
という日本語を見て、
He lives near my house.
と答えます。
そして、これを繰り返します。
すると、
「彼は私の家の近くに住んでいます。」
→ He lives near my house.
という対応は、だんだん速く出てくるようになります。
しかし、ここには大切なものが抜けています。
なぜ、He の次に lives が来るのか。
なぜ、lives のあとに near my houseが来るのか。
つまり、
英語がどうやって前からつくられていくのか。
その過程です。
瞬間英作文には、日本語の完成文と英語の完成文があります。
しかし、その二つのあいだにある、「どうやって英語を前からつくるのか」という過程が抜け落ちています。
だから、「言える英語」と「言えない英語」が分かれる
同じ問題を何度も繰り返せば、
He lives near my house.
はすぐに出るようになります。
それ自体は、トレーニングの成果です。
問題は、実際の会話では、練習したことのある文だけを話すわけではないことです。
自分がこれまで英語にしたことのないことも、その場で話さなければなりません。
すると、
対応する英語が身についているものは、すぐ言える。
そうでないものになると、急に言えなくなる。
言える英文は、かなりスムーズに出てくる。
ところが、少し内容が変わっただけで、急に何も出てこなくなる。
英語を話していて、突然フリーズしてしまう。
これは、単語や文法といった英語の知識の問題ではありません。
覚えている英語を取り出すことはできても、その場で英語をつくる方法を身につけていない。
そこに問題があるのです。
英語には、「前からつくる」ロジックがある
では、実際に英語を話すとき、どのように英語をつくればいいのでしょうか。
たとえば、
「私は昨夜、妻とレストランに行きました。」
英語では最初に、「誰か・あるいは何か・が、何かをする・した」という発想をとります。
だから、まず、
I went …
「私は、行った」
と話し始めるのです。
ここまで言うと、次は「どこに行ったのか?」という疑問が生じます。
この情報の欠落を埋めるために、
to a restaurant
と続けるのです。
I went to a restaurant …
さらに、必要であれば、
with my wife
last night
と情報を足していく。
I went → to a restaurant → with my wife → last night
と、英語が進む順番に沿って、意味も前からつくっていく。
日本語の、
「私は昨夜、妻とレストランに行きました。」
という完成した文に対応する英語を探しているのではありません。
いま言ったことによって生まれた「まだ足りない情報」「足したい情報」を、その先で埋めていく。
これが、英語を前からつくるということです。
瞬間英作文には、いつも「完成形」がある
瞬間英作文では、
「私は昨夜、妻とレストランに行きました。」
という日本語が、最初から完成した形で与えられます。
そして、
I went to a restaurant with my wife last night.
という英語を答える。
ここには、最初からゴールがあります。
何を話すのかも、どこまで話すのかも、すでに日本語によって決められています。
しかし、実際の会話では、何を言うのかを日本語で与えてくれる人はいません。
自分が言いたいことを、その場で英語にしていかなければならない。
瞬間英作文では、出発点となる日本語が与えられ、そこには正解となる英語も用意されています。
だから、そこでどれだけ速く答えられるようになっても、それだけで、自分の言いたいことを英語でつくれるようになるとは限りません。
ここに、瞬間英作文と実際に英語を話すことの大きな違いがあります。
瞬間英作文には、意味がないのか
では、瞬間英作文はやめたほうがいいのでしょうか。
そういう話ではありません。
瞬間英作文には、できることがあります。
文法を確認する。
基本的な構文に慣れる。
学んだ表現を、速く取り出せるようにする。
こうした目的には使えます。
問題は、
瞬間英作文が速くできるようになれば、そのまま英会話もできるようになる
と考えてしまうことです。
実際の会話では、覚えている英文を取り出すだけではなく、その場で英語を前からつくりる力が必要になります。
この力がなければ、
言える英語は言える。
でも、言えない英語になると、まったく言えない。
という状態から抜け出すのは難しくなります。
「日本語に対応する英語」から、「自分でつくれる英語」へ
シノドス英会話では、英語を話せない原因を、単純に「単語力が足りない」「文法力が足りない」とは考えません。
まず見るのは、
あなたが英語を話そうとしたとき、頭の中で何が起きているのか。
です。
日本語を思い浮かべて、それに対応する英語を探していないか。
知っている英文なら言えるのに、少し内容が変わると止まってしまわないか。
英語の順番に沿って、意味を前からつくれているか。
同じ「英語が話せない」でも、どこで止まっているのかは人によって違います。
だから、必要なトレーニングも違います。
もし、
「瞬間英作文はずいぶんやった。でも、実際の会話になると話せない」
のであれば、足りないのは瞬間英作文の量ではありません。
必要なのは、英語をつくる方法そのものを身につけることです。
シノドス英会話の現状診断セッションでは、実際に英語を話してもらいながら、あなたがどこで止まっているのかを分析します。
そして、自分で英語をつくれるようになるためには、何を練習すればいいのか。
そこから、一人ひとりのトレーニングを設計します。
