崎陽軒のシウマイ弁当を北海道で食べれば、あなたも勇者になれる
羽田空港から飛行機に乗る際は、高い確率で崎陽軒のシウマイ弁当を買う。
言わずとしれた、横浜の名物弁当だ。
「必ず買う」と言いたいところだが、別に、買わないといけないほど強迫じみているわけでもないので、ほどほどに買う。
どのへんが好きかについては今回あまり語らないことにするが、味を抜きにして一点だけ言うなら、飛行機がいくらひどい乱気流に巻き込まれても、手に持っていれば飛び散る心配が少ないのがいい。
包み紙をほどき、薄いフタをめくれば、馴染みのおかずたちが現れる。
この瞬間は、いつもとてもワクワクしている。
飛んでいるという非日常と、見慣れた弁当という日常を、同時にホールドしている感覚がとても好きなのだ。

手の中にあるありふれた弁当の景色を
おなじ画角に収める良さがある
さて。この記事を書くにあたり、記録の残る(つまり僕がiPhoneに買い替えた2013年からの)13年間で食べた、崎陽軒のシウマイ弁当の数を調べてみた。45155枚の写真から発見されたシウマイ弁当の写真は37個だった。(シウマイ炒飯弁当2回を含む)
少なくもないが、病的でもない。
年に3回食べるかな、くらい。一般より少し多めな熱量だということ。
「写真に撮っていないシウマイ弁当もあるのではないか」という声が聞こえてきそうだが、それはおそらく無い。シウマイ弁当を食べる前は、「いただきます」という発声の代わりに写真を撮るくらい、行動が体に染み付いている。これはなかなか信憑性の高い数字なのです、とお伝えしておきたい。
ところで、タイトルにした僕の気持ちについては、いくらかの説明が必要だろうと思う。
簡単に言えばこれは、自分という、わりとどこにでもいそうな人間に、唯一無二のオリジナリティを与えられる……ということ。

世の中は、頼んでもいないのに、いろいろなものに順位を付けたがる。
あなたは何番目。この人は、あなたより上。
そして、なんかの歌詞ではないが、とにかくナンバーワンを決めたがる。
しかし、ナンバーワンにはなかなかなれない。
学校や会社に行けば自分より優秀な人はごまんといるし、なにかにおいて「唯一」になるのはとても難しい。
それなら、自分が「唯一」となれそうな世界を、こちらから作ってしまえばよい。
そして、それはとても簡単に実現できる。
つまり誰もシウマイ弁当を食べていない地域で、シウマイ弁当を食べればよいのだ。その時点で「その土地でシウマイ弁当を食べている唯一の人」になることができるわけ。
なんでもない人間でも、異世界に行けばたちまちドラマティックになり、勇者として褒めそやされ、転生モノとして物語となる。それと同じような感覚なのだ。
多少苦笑いを誘発させているような気もするが、ひるんでいる時間はないので強引に進めさせていただく。
首都圏で一番売れている弁当は、おそらく崎陽軒のシウマイ弁当だろう。
こころみに、横浜で作られているこの「ナンバーワン」の弁当を、昼の12時半ごろ、同時刻に食べている人はいったい何人いるのかと、AIに計算してもらった。

昼の12時半なら「2900人くらいではないか」とのことだ。
続けて、その2900人のうち、飛行機に乗りながら食べている人の数はどのくらいかと聞いたところ、AIは、45人くらいではないかと答えた。
そう。崎陽軒のシウマイ弁当を上空で食べるだけで、27000分の45人のなかの1人になれてしまうのである。(フェルミ推定みたいな数値感で恐縮ではあるが)
では、さらに希少性を増やすために、そのシウマイ弁当を「飛行機が到着したあと、目的地に着いてから食べる人の数」について考えたらどうだろうか。AIに答えさせるまでもない。その数値は、ほぼ0に決まっている。
シウマイ弁当を買い、飛行機に乗り、北海道へと向かうとする。
機内では食べずに飛行機から降り、快速エアポートに乗って札幌に行く。
美味しいものがたくさんある北海道で、あえてそのシウマイ弁当を食べてみよう。するとどうだろう。あなたとそのシウマイ弁当は
(おそらく)「今現在、北海道に存在する唯一のシウマイ弁当」と「唯一それを食べている人間」になるのだ。
まさに、シウマイ弁当の無い世界に、転生された勇者そのもの。人は、こんな方法で簡単にオンリーワンになれてしまう。

札幌で、シウマイ弁当を酒のつまみとする
この写真は、機内で食べるのをこらえ、あえて札幌まで運んだシウマイ弁当だ。そもそも空輸して販売されることのない弁当なので、地方の物産展や駅弁フェアなどにも並ばない。
つまりおそらくその日、このシウマイ弁当は道内に存在した唯一の完全個体ではないかと思う。そう思うと、ひと味もふた味も違っていただくことができる。
雪降る北海道に一時的に現れた、弁当箱というほんのわずかな横浜の飛び地。貴重なシーンを逃すまいと、カメラが上空から自分に向かってフォーカスしてくるのがわかる。
「いま現在、道内でシウマイ弁当を食べているのは自分だけだろうな」……ほくそ笑みつつ、酒もすすむわけだ。
「ばかばかしい」と一笑に付していただいても構わない。
しかし、唯一になることは、こんなにささやかでも良いということ。
そんなささやかなものでさえ、それをいちいち楽しんでいきたいのが僕なのだ。
自分がオンリーワンだと思っていたら実はもうひとり同じことをしているやつがいた___
なんてことが今後あったら……その時はその時。
そんな人とはぜひ、友だちになりたい。
<おわり>
ここから先は、少しだけポートフォリオをどうぞ





「3代目社長メソッド」を愛用していた頃


その時期関東におらず、入手できずに悔しい思いをした
26/2/17 #わくわくする瞬間 コンテスト主催さんにご紹介いただきました!
ありがとうございます!
いいなと思ったら応援しよう!
サポートをいただけましたら
なるべく自分の言葉でメッセージをお返ししようと思います。
よろしくお願いいたします。うれしいです!