【2026年6月版 v2】ローカルLLMコーディングベンチ総まとめ — 40タスクは飽和した。本当の勝負は60タスク(architect帯)に移り、王者は「無検閲の創作モデル」だった
こんにちは、くーるぜろです。
先日アップした6月版まとめのあと、月末(というかそのひのうちに)にかけて検証が一気に増えました。BugTraceAI(セキュリティ特化)、その素体のHereticモデル、Qwable-v2とQwopus標準版の「速度/評価」分離検証、そして35B-A3BのMoE版Qwopus——。新しい数字を全部入れて、順位を再計算したのがこのv2です。
そして今回、ランキングの「土俵」そのものが変わりました。先に結論を1行で言います。
40タスクはもう飽和した(実質満点が3モデル並ぶ)。本当の差は60タスク=architect帯で出る。そして60タスクの王者は、意外にも「無検閲の創作・RP用モデル」Heretic-NEO-CODE(59/60・architect 19/20)。ただしその正体はQwen3.6-27B dense——今月の強モデルは全部、同じ土台の味付け違いだった。
この一文が今月の総括です。以下で順位とともに解説します。
何が変わったか:40タスクの「天井効果」が決定的になった
前回の時点で「40タスクは上位が張り付き気味」と書きましたが、月末の追加検証でそれが決定的になりました。40タスク(easy〜frontier、関数レベル)で実質満点(39〜40/40)に到達したモデルを並べると、こうなります。

6モデルが97.5〜100%。ここまで来ると40タスクでは優劣がつきません。 だから今月から、リポジトリ/設計レベルの architect帯20問(t041〜t060)を足した60タスク版を「実力測定の本番」に格上げしました。40タスクは速度測定(出力が短く素の生成速度が出る)、60タスクは実力測定(設計レベル+再現性)、という役割分担です。
以下、まず新主役の60タスクランキング、次に従来の40タスクランキング、という順で出します。
🆕 60タスク・ヘビー級ランキング(architect帯込み・最良量子化)
architect帯を含む60問で測った、上位モデルだけの「本番」順位です。ここが今月の新しい主戦場。

※BugTraceとHereticは速度データ未収録。27B dense・MTPなしから~60 tok/s前後と推定。
このテーブルから読み取れることが、今月の核心です。
第一に、60タスクの王者は「コーディング用に作られていないモデル」だった。 首位のHeretic-NEO-CODEは、本来創作・ロールプレイ・NSFW向けの無検閲(アブリットレーション)モデルです。それが59/60・architect 19/20で、専用コーダーを全部抜きました。落としたのはt059(後述の真の天井)ただ1問。
第二に、上位5モデルのうち上位3つが全部Qwen3.6-27B dense。 Heretic(創作uncensored)、BugTrace(セキュリティ特化)、Qwopus標準(コーダー特化)——用途も学習データもバラバラなのに、土台が同じQwen3.6-27Bというだけで全部上位。これが今月いちばん大きな発見でした(詳細は後述の「土台仮説」)。
第三に、MoE(35B-A3B)は速いがarchitectで落ちる構図が確定。 4位のQwopus-35B-A3B-MTP(architect 14/20)と5位のQwable-v2(12/20)は、どちらも活性化約3BのMoE。関数レベルでは速くて優秀ですが、設計レベルになるとdense 27B勢(17〜19/20)に届きません。「実効サイズの小ささ」が正直に出ています。
なお前回の40タスク王者Qwopus-27B-MTPは60タスク未測定のため、この表には入れていません(MTP版の60タスク検証は次回の宿題)。
従来の40タスクランキング(参考・最良量子化)
飽和したとはいえ、軽量モデルや速度比較には依然有効なので、新モデルを足して更新しておきます。

上位が3モデルの100%+3モデルの97.5%で完全に頭打ち。この飽和こそが「60タスクへ移行した理由」そのものです。新顔のQwopus-35B-A3B-MTPが97.5%を~296 tok/sで叩き出した点は注目で、「この精度帯の最速」を一気に塗り替えました(Ornith-35Bの259 tok/sを上回る)。
今月の最大の発見:「強さは土台で決まる」土台仮説の実証
v2でいちばん伝えたいのはここです。BugTraceAIの検証から始まり、その素体Hereticの検証で実証まで取れた、今月の白眉です。
事の発端。 セキュリティ攻撃ツール特化のuncensoredモデルBugTraceAIを「出オチだろう」と思ってベンチに通したら、40/40満点・60問58/60という番狂わせ。「これはセキュリティSFTの手柄ではなく、ベースの地力では?」という仮説を立てました。
答え合わせ。 そこでBugTraceのベース元——DavidAUのアブリットレーション済みuncensoredモデル(創作・RP・NSFW向け)を、同じ60問で叩きました。結果、素体のほうがSFT版より強かったのです。

セキュリティSFTをかけた後のほうが、architectを1問ぶん余計に落とす。 SFTは攻撃ツール生成という方向づけを足した代わりに、汎用コーディングをコンマ数問削っていた——「SFTはコーディングを少し薄めていた」という皮肉な実証です。
なぜ素体が強いのか。理由は4つで、全部「土台の強さ」に帰着します。
土台がQwen3.6-27B dense。 今月の精度王Qwopus、Qwable-27b、BugTrace、そしてこの素体——全部Qwen3.6-27B denseの味付け違い。「27B denseが精度の天井」の正体は、要するにこのベースが優秀だということ。
アブリットレーションのKLDが極小(0.0469)。 HERETIC法で「拒否方向」だけを打ち消し、それ以外はオリジナルから0.05しかズレていない。拒否率は99/100→4/100に落ちる一方、コーディング能力は無傷で温存。
味付け(FT)が軽量。 作者自身が「重いFTではなく軽微な微調整」と明言。素体の地力を上書きしていない。
NEO-CODE Di-IMatrix量子化がコード向け。 デュアルimatrixでコード品質劣化を抑える調整。Q4でも98.3%が出る一因。
結論:「無検閲・創作用」というラベルは表の顔で、中身は手を付けられていない優秀なQwen3.6-27B dense。 コーディング適性を決めるのは看板(用途ラベル)ではなく土台だった、という身も蓋もない真実です。「無検閲の創作モデル」が「セキュリティ攻撃モデル」より綺麗にコードを書いた、という今月の締めにふさわしい一本でした。
パラメータ別ランキングと深掘り
9Bクラス:Ornith-1.0-9Bが頭ひとつ(変更なし)

ここは前回から動きなし。Ornith-1.0-9Bが9B最強で、Q4でも87.5%・VRAM 5.6GBの堅実な入口。長文・画像ならQwythos-9B(1Mコンテキスト・ビジョン・MTP)です。9Bは電卓(t020)・丸め(t021)が依然鬼門。
12Bクラス:gemma-4-12B-coder(変更なし)

VRAM 9GBに収まる安定枠。このサイズ帯の基準モデルとして据え置きです。
27Bクラス(dense):今月の主役。ここに新顔が3つ増えた
40タスクではみんな満点級なので、60タスク(architect帯)で並べ直します。

※MTP版は60タスク未測定。
27B denseは今月も精度の天井で、しかも新顔2つ(Heretic・BugTrace)が60タスクの1位2位を持っていきました。
Heretic-NEO-CODE:上述の通り60問59/60・architect 19/20。Q4/Q6/Q8が98.3%、Q5だけ96.7%(t046を落とす非線形)。Q4かQ6を選べば最強。ただし無検閲・創作志向のモデルなので用途は自己責任で。
BugTraceAI-CORE-Ultra:セキュリティtoolingモデル。40/40・60問58/60。鬼門のt020電卓・t021丸めを素通りし、専用コーダーが全滅したt046も突破。拒否・免責・データ漏れゼロの徹底したフォーマット遵守が光る。
Qwopus標準版 Q5:60タスク×5回でpass@k 98.3%(全量子化トップ)・architect 17/20。「5回投げ直せばほぼ何でも通る」実務の再現性No.1。速度は中庸~67tps。
Qwopus-MTP Q6:40タスク満点・電卓t020唯一突破・~129tps。40タスクの速度と天井ならこれだが、60タスクは未測定。
35Bクラス(MoE):Ornith-35B(変更なし)

40タスク基準では**Ornith-35Bが「速くて強い」**据え置き。97.5%・259tps。ただしOrnithは60タスク未測定なので、設計レベルの地力は今後の検証待ちです。
35B-A3Bクラス(活性化3B MoE):新顔Qwopus-MTPが加わり、構図がより鮮明に

このクラスは**「速いが設計で崩れる」が新顔で再確認**されました。
Qwopus-35B-A3B-Coder-MTP(Jackrong、新規)は、40タスクで97.5%を**~296 tok/sという驚異の速度で達成。MoE(活性化3B)+MTPの合わせ技で、35B級なのにこの精度帯の最速です。一発勝負ならQ6(88.3%/architect 14/20)、リトライ前提のエージェント運用ならQ5がpass@k 98.3%**まで届きます(5回投げれば59/60相当)。電卓t020をQ6だけが一発突破する「Qwopus現象」もMoE版で再現。
ただしarchitect 14/20は、dense 27B勢(17〜19/20)には届かない。Qwable-v2(12/20)と同じく、活性化3Bの実効サイズが設計レベルで頭打ちになる構図です。
整理すると、35B-A3B MoEは「高速な関数レベル」に用途を絞れば最強クラス、設計レベルはdense 27Bに任せる。これが2モデルで一致した結論です。
tok/sの読み方(新データで補強)
速度列を額面で受け取ると誤解する、という前回の注意は今月さらに裏付けが増えました。
① MTPは投機的デコードで速く出る。 Qwable-27b標準Q4=74tpsに対しMTP版=146tpsで約2倍。
② MoE(特にA3B)は実効サイズが小さいので速い。 Ornith-35B=259、Qwable-v2(A3B)=252、そして新顔Qwopus-35B-A3B-MTPは単発~296tps。「35Bの実力で速い」のではなく「実際に動く重みが一部+MTP」だから速い。速いほどarchitectで落ちやすいのはこのクラス共通。
③ dense標準版は素直に遅い。 Qwopus27B標準Q5~67、BugTrace/Heretic(MTPなし27B dense)~60前後(推定)。60タスク最強のHeretic/BugTraceが、速度では最遅クラス——これが「速さと解決力は別の物差し」の最も分かりやすい実例になりました。精度の天井(27B dense)は遅く、速い連中(MoE)は設計で落ちる。今月の地図はこのトレードオフに集約されます。
メモリ(VRAM)別おすすめ(v2・60タスク重視で更新)

最大の更新は24GB帯。前回は「Qwopus-MTP Q6で40/40」一択でしたが、60タスクで測るとHeretic-NEO-CODE Q6(~21GB、59/60・architect 19/20)が設計レベルで最強。同じVRAMに収まります。「一発の質と設計力」ならHeretic、「速度と40タスク満点」ならQwopus-MTP、という選び分けになりました(Hereticは無検閲・創作志向のモデルである点だけ留意)。
量子化の鉄則:上げれば上がる、ではない(新例を追加)
量子化ビット数と精度は単調増加しない——今月もまた逆転例が増えました。
Qwopus-MTP:Q5(92.5%)< Q4(95%)< Q6(100%)> Q8(95%)
Qwopus標準60タスク:最高ビットのQ8が失敗6問でQ5/Q6より多い(t057を追加で落とす)
Heretic-NEO-CODE:Q4/Q6/Q8が98.3%なのにQ5だけ96.7%(t046を落とす)
Qwopus-35B-A3B-MTP:単発はQ6が最良だが、pass@kはQ5(98.3%)がQ6(95.0%)を上回る
Qwythos-9B:BF16がQ8より10pt低い(空出力で破綻)
経験則は不変で、中位のQ5_K_M / Q6_Kが最良になりやすい。ただしHereticのように「Q5だけ凹む」逆パターンもあるので、可能なら2〜3量子化を実測するのが確実。迷ったらQ6から始めるのが今月のおすすめです。
系統共通の鬼門タスク:t059が「真の天井」として確定した
サイズ・系統・用途をまたいで最後まで残る壁が、今月の大量検証ではっきりしました。
t059(浮動小数点合計のドリフト=破滅的桁落ち):今月、誰も安定して解けなかった真の天井。 60タスク最強のHeretic(19/20)も、BugTrace(18/20)も、専用コーダーQwopus標準も、全員がここを落とす。ナイーブな総和が小さな項を消す古典的な罠で、Kahan和のような明示的な補正アルゴリズムを要求するタスク。
t046(DIライフタイム)/ t047(マイグレーションのロールバック):dense 27Bでも揺れる設計レベルの難所。BugTraceはt046を解いたがt047を落とし、Hereticは両方解く(Q4/Q6/Q8)——ここがモデルの地力の分水嶺。
t020(電卓:演算子優先順位):かつての鬼門だが、今やQwopus-MTP・BugTrace・Heretic・Qwopus-35B-A3B(Q6)が突破。Qwableシリーズ(Fable5/v2)だけが系統的に苦手。「解けるモデルと解けない系統」が固定化してきた。
t021(バンカーズ丸め):Qwable系の伝統的弱点として継続。dense 27B勢は突破。
鬼門の構図が「t020は解ける組と解けない組に二分、t059は全員の天井」と整理できたのが、今月の収穫です。
番外コラム:コーディング非特化の2モデル(変更なし)
VibeThinker-3B(WeiboAI)は「3BでIMOレベル」を謳う超軽量モデル。1回流すと55%に見えるが、5回回した実態のpass@1は38%。高バリアンスで、ベストオブN運用なら軽量さが活きるが単体では実用閾値未満。
Qwen-AgentWorld-35B-A3Bはそもそも**ワールドモデル(環境シミュレータ)**でコーダーではない。easy〜hardは堅実でもexpert以降は「空出力」で黙る。エージェントを訓練・評価する裏方ツールで、用途を間違えなければ本命。
この2本は「何のために訓練されたかがコーディング適性に直結する」例で、BugTrace/Hereticの「土台が強ければ用途ラベルを超える」話と表裏一体です。AgentWorldが専門外で黙って崩れる一方、Hereticは創作用なのにきっちりコードを書く——差は「土台の強さ」と「フォーマット遵守の躾」でした。
最終まとめ(v2)
60タスク王者(設計レベル):Heretic-NEO-CODE 素体 Q6(59/60・architect 19/20)。正体はQwen3.6-27B dense。※無検閲・創作志向、用途は自己責任
60タスク2位の番狂わせ:BugTraceAI-CORE-Ultra-27B(58/60・architect 18/20)。セキュリティ特化なのにコーディング最強クラス
実務の再現性:Qwopus3.6-27B 標準版 Q5(pass@k 98.3%・architect 17/20)
40タスク満点&速い:Qwopus3.6-27B-MTP Q6(40/40・~129tps、t020突破)
この精度帯の最速:Qwopus3.6-35B-A3B-MTP Q6(40タスク97.5%・~296tps)/ Ornith-1.0-35B Q5(97.5%・259tps)
速いが設計に弱い:35B-A3B MoE勢(Qwopus-MTP architect14、Qwable-v2 architect12)
9Bの入口:Ornith-1.0-9B Q4(87.5%・5.6GB)/ 12Bの安定枠:gemma-4-12B Q6(92.5%・9GB)
今月の地図を一枚に畳むと——40タスクは飽和し、勝負はarchitect帯(60タスク)へ。精度の天井は27B dense、その正体はQwen3.6-27Bという土台の強さ。速いMoEは関数レベル特化、設計はdense。そして「大きい=強い」「ビットが高い=強い」「用途ラベル通りに強い」のいずれも成立せず、効くのは"土台×何を学習したか×フォーマットの躾"だった。
無検閲の創作モデルがセキュリティ攻撃モデルより綺麗にコードを書き、その両方が専用コーダーと肩を並べる——2026年6月は「コーディング適性は看板ではなく土台で決まる」と分かった月でした。来月は、強かったモデルたちの60タスク×pass@kを揃えて、設計レベルの再現性まで横並びにする予定です。
検証環境: llama.cpp(CUDAビルド)/ EVO-X2 + RTX5090 32GB / 2026年6月
使用ベンチマーク(自作・MIT): zephel01/swe-bench(llmbench) — clone & `pip install -e .` で誰でも追試できます。40問=速度測定、`--with-l6`で60問=実力測定(architect帯+pass@k)。
今月の個別検証記事(参考):
BugTraceAI-CORE-Ultra-27B(セキュリティ特化なのにコーディング最強クラス)
Qwen3.6-27B-Heretic-NEO-CODE(土台仮説の実証・60タスク王者)
Qwopus3.6-35B-A3B-Coder-MTP(60タスク3量子化・MoE版)
Qwopus3.6-27B-Coder 標準版/Qwable-v2(速度と評価の分離測定)
Ornith-1.0(9B/35B)、gemma-4-12B-coder ほか
#ローカルLLM #コーディングモデル #量子化 #MoE #MTP #uncensored #llamacpp #ベンチマーク #GGUF #RTX5090 #Qwen
いいなと思ったら応援しよう!
サーバー代とコーヒー代になります☕ 役に立ったら応援よろしくお願いします!