手塚史上最も容赦ない問題作!タイムパラドクス近親相姦!タブー連発でビビる!
今回は手塚作品屈指の問題作「ガラスの城の記録」をお届けします。
この作品の事は知らない方の方が多いんじゃないでしょうか。
というのも本作は未完ですし
内容も表立って傑作とは言い難いですし
なによりエグイ!
これ本当に手塚治虫が描いたの?
マジで「鉄腕アトム」と同じ作者が描いたの?
と思えるほどに手塚治虫のヤバイ面が炸裂しちゃっている作品なので
あまり世間では受け入れられない作品となっていました。
内容は凄まじいイカレた一族の「殺人」と「セックス」のタイムパラドックスSFサスペンスです。
とにかく超ド級の問題作をなぜご紹介しようと思ったのか?
それは以前「火の鳥望郷編」をご紹介しましたが
その「望郷編」と非常に似ている点が多く
これは「望郷編」のモデルなのでは?ないかと思っているからです。
そんな手塚治虫のヤバイ作品
そして火の鳥「望郷編」のモデルとも思われる傑作をご紹介いたしますのでぜひ最後までお付き合い下さい。
火の鳥「望郷編」を見られていない方はぜひそちらをご覧になってください。こちらを見ることで本編を10倍楽しめます。
連載時期
本作「ガラスの城の記録」の連載時期が1970年~1973年。
そして火の鳥「望郷編」は1976年~1978年
連載が中断した一番最初の幻の望郷編連載は1971年~1972年で
この「ガラスの城の記録」のちょっと後なんですね
この時系列を踏まえて「ガラスの城の記録」を見ていくと
「あれ?もしかして」同じ?
これ絶対参考にしてるよね。って思えると思います。
それでは本作がどのような作品かあらすじを追っていきましょう。
ストーリーは
コールドスリープで20年を失った一家の話です。

莫大な資産を増やすために一人を残して
一家揃って冷凍睡眠に入り20年の眠りにつきます
眠っている間の管理のため
一人残された四郎とその娘以外は歳をとりません。
そうして20年後に家族が冷凍睡眠から出てくるのですが
20年という時間差の家族がそこには存在してしまいます。
おばさんは18歳、兄さんは生まれたての2歳
のような奇妙な家族関係が存在してしまいます。
誰が何歳で家族相関図が理解できないくらい
ぐちゃぐちゃになっちゃいます。

そして頭がおかしくなった親父は孫娘を犯そうとするし
長男は四郎の娘を犯したり驚愕の近親相姦劇が展開します。
親父の命令で冷凍睡眠に入った家族は空白の20年により
ドロ沼で血みどろの争いに発展します。
良心を失った人間の暴走と欲望が交錯する異様な展開
一体この後どうなってしまうのか?
というところであえなく未完のまま終了となっております。
望郷編との類似
どうですか。
なんか似てません?
冷凍睡眠で親子の年齢がおかしくなったり
近親相姦したり「望郷編」の冒頭にすごく類似してますよね。

この作品は「望郷編」の前に描かれたものです。
実は「望郷編」は掲載誌の廃刊により中断せざるを得なくなり一時未完となっています。その後、連載再開されるも以前の続きではなく全く異なったストーリーとして連載が再開されました。
その中断されていた期間中に連載された作品が「ガラスの城の記録」です。
その「ガラスの城の記録」も掲載誌、廃刊により中断。
事実上の終了となっています。(未完)
これはあくまでボク個人の推察という事をお断りしておきますが
この未完になったネタが手塚先生も気に入っていてどこかで復活させたいと思っていたんじゃないでしょうか。
そしてそのリメイクの場が火の鳥「望郷編」だった。
実際このタイムリープものは生命のタブーを描いており
生命倫理を語る「火の鳥」の題材として移植されても違和感なく且つ、面白い異色作になるのではと考えても不思議ではないと思います。
つまりボクは「ガラスの城の記録」は火の鳥「望郷編」のモデルになった作品であると見ています。

設定についても「望郷編」は人間の強欲が国家を破滅に導く展開に
なっていきますが、本作でも後半は人間の醜い面が、
より破壊的、破滅的に描かれており大枠のテーマも似通っています。
本作「ガラスの城の記録」の終盤にかけての血みどろさといったら
手塚治虫の中でも屈指のグロさです。
まさに異常事態です(笑)

しかしネタとしては非常に面白いんでね
手塚先生も未完になってしまっては勿体ないとして「望郷編」として
使ったんじゃないかなぁ…。
恐ろしすぎる狂った設定
「火の鳥」とは異なる本作の最大の特徴は
冷凍睡眠の弊害によって人格が崩壊していく設定
故に冷凍睡眠はこの世界では法律で禁止されているということ
冷凍睡眠は脳に支障をきたし人格が歪み徐々に狂っていくことから
冷凍睡眠はタブーとされているのが「望郷編」とは大きく違う点です。
特に秀逸な設定は
冷凍睡眠に入っているだけで貯金の利子も増えていくという長寿法
これは現代の銀行の利子ではあり得ないので若い方には理解できないかもしれませんが、昔は銀行にお金を預けておくだけでお金が増えていくという時代が確かにありました。

そんな当時の経済成長期を物語る手塚先生の警告にも見えます。
所得隠し、税金逃れといった社会的背景や
人格崩壊などによる倫理的問題により
冷凍睡眠は使っちゃダメということになっています。
さらにこの物語を盛り上げる設定のもうひとつのカギが
「殺人法」という法律
これが本作で最も怖い、身の毛もよだつ設定だと思います。
この時代、戦争が世の中からなくなった代わりに、
人々には欲求不満が溜まって
「他人を殺したがる」といった欲求が増大していきます。
そんな「人を殺したい」という欲求不満を解消するべく制定された法律が「殺人法」

怖すぎ!
ドエライ設定ですよ。これは。
このドストレートなネーミングからして凄まじさが漂ってきますよね。
これは
刑務所が死刑囚に対し死刑を執行するのではなく、
民間人が死刑囚を殺してもいいという法律です。
そして死刑囚は、10年逃げ切ることができれば時効になる狂った設定
人間が人間に「狩られる」という最恐に恐ろしい法律
考えただけでも怖すぎる。
この異様ともいえる世界観、完全にぶっ飛んでますね。
もう放送禁止レベルです。ほんとに。
人が人を裁くといった倫理感
奇しくもこの後「ブラック・ジャック」では全く逆のセリフが出てきますが
このような思想、または発想は手塚先生の中ではずっと持ち続けていたテーマなんでしょうね。
これを発想した手塚先生はまさに狂気ですよ。
完全に常軌を逸脱した精神状態と言えます。

でも上っ面だけを追ってしまうと
手塚治虫の狂気の面ばかりに目を奪われてしまいがちですが
これは人間性を失う危険性についての警告、警鐘ともとれます。
ただ闇雲に強い刺激だけを与える薄っぺらいマンガは
手塚先生自身も嫌っていましたし
何かしらの意図があって描いているのは間違いありません。
世間のタブーとされている側面にゴリゴリに切り込んだ
巨匠の意欲作なのではないでしょうか。
だってね、
こんな狂ったマンガに需要があるって
これ描いてて売れると思って描いてたのかなぁ…
と思えるくらい狂った設定なんですよ(笑)
…と言っておきながら
売るために描いた訳ではないような気がしなくもないですけど…。
手塚治虫ならやりかねん。
だって何回も言いますけどマジで、ぶっ飛んでますから(笑)
自身の保身のために家族同士殺し合い
近親相姦と殺人が繰り返される超絶にして破滅的な精神崩壊劇
欲に溺れまくる人間の末路を描き
加えて最も恐ろしいものは人間性を失った人間そのものであることが
本作の登場人物たちの異常行動を見ているとよくわかります。
暴走した「性欲」と「殺人」を組み合わせた危険極まりないヤバさです。

そして
このあとどんな展開になるんだろうと思った矢先に
あえなく掲載雑誌が廃刊となり、
そのまま連載終了となってしまった曰く作
この先に手塚先生が描きたかった人間の末路…めっちゃ気になります。
手塚治虫の未完作は数多く存在しますが
その中でもこれはベスト3に入るくらい続きが気になる作品です。
如何でしたでしょうか。
超絶に狂った手塚治虫の問題作、収録は
『ボンバ! オリジナル版』にて読むことができます。
こちらは『ボンバ! オリジナル版』に
『ガラスの城の記録 オリジナル版』と
『時計仕掛けのりんご オリジナル版』が収録されております。
しかも扉やカラーページは連載時のものをそのまま使用されており
雑誌連載時の状態に極力、近づけた形でのこだわり。
初掲載時の形で堪能できる唯一の短編集となっています。
加えて短編『地下壕』も単行本としては初めて収録。
さらに
『ガラスの城の記録 オリジナル版』には『COMコミック』での
連載第8~10回分の48ページもB5版単行本では初めて収録となっておりますので非常に貴重な1冊となっています。
同時収録されている「ボンバ」も「時計仕掛けのりんご」も
手塚治虫の闇を抱えていた時の作品なので非常にダークな短編ですが
見たこともない巨匠の姿が見ることができるのでおすすめです
ぜひご覧になってみてください。。
本編執筆時の手塚治虫は「古い」「時代遅れ」のように散々こき下ろされていた時期ですが「ガラスの城の記録」においては逆に先進的すぎましたね
なんせ50年前ですからね、50年前にこの発想。
はい、時代が全くついてこれなかったんですよ。
今でも十分に先進的なのでまだあと50年くらい寝かさないと
このマンガの本当の面白さはわからないかもしれません(笑)
手塚治虫が描く完全無秩序の世界、ぜひ体験してみてください。
