『思考の引き出し』とは何か?ーなぜ人は、考え方を増やし、整理し、手元に置いておく必要があるのか
【はじめに】思考の引き出しは、多い方がいい
私は、思考の引き出しは多い方がいいと思っています。
しかも、自分にとって気持ちのいい考え方だけでは足りません。
むしろ、自分には少し痛い意見。
耳が痛い見方。
「それは自分と真逆だ」と感じる考え方。
そういうものも、ちゃんと引き出しに入れておいた方がいいと思っています。
人はどうしても、自分に合う考え方ばかり集めたくなります。
その方が楽だからです。
読んでいて気分もいいし、自分が正しい気にもなりやすい。
でも、そればかりだと、思考はだんだん偏っていきます。
ものの見方が細くなる。
判断も鈍くなる。
私はそこがかなり怖いと思っています。
だからこそ、思考の引き出しは増やしておいた方がいい。
しかも、ただ増やすだけではなく、整理して、必要なときに取り出せるようにしておいた方がいい。
今日はその話を書いてみたいと思います。
【私がずっと感じていたこと】考えはあるのに、うまくまとまらない
私は若い頃から、自分自身のこと、経営のこと、組織運営のこと、地域のこと、政治経済のこと、死生観のことまで、思考を巡らせるのが好きでした。
仕事をしていると、数字だけでは見えないもの。
経営をしていると、正論だけでは動かないもの。
人と関わっていると、表面の会話だけでは分からないズレ。
私は昔から、そういうものが気になって仕方がありませんでした。
それで、自分なりに考える。
書く。
まとめる。
また考える。
そういうことを繰り返しやってきました。
ただ、正直に言えば、いつもきれいに整理できていたわけではありません。
考えれば考えるほど、頭の中ではつながっていく。
でも外に出そうとすると、散らばる。
自分では筋が通っているのに、人に話すと急に弱くなる。
そんなことが何度もありました。
私はもともと、好きなテーマになるとかなり熱中して話してしまうタイプです。ありがたいことに、それを面白いと言って付き合ってくれる友人もいました。「また面白い話を聞かせて」と言ってくれる人もいました。
けれど、それでもどこかで限界を感じていました。
自分の中にはたしかにある。
でも、語るだけでは届ききらない。
考えはあるのに、整理の仕方が足りない。
素人感がある、専門家とは違う。
今振り返ると、私はずっと「思考を引き出しに入れたい」言い換えると「独自の思考の体系を作りたい」と思っていたのだと思います。
【なぜ“引き出し”なのか】頭の中は、放っておくとすぐ散らかるから
私は、「思考の引き出し」という言い方は、意外と的をついているのではないかと思ってます。
なぜなら、人の頭の中は放っておくとすぐ散らかるからです。
感情の話と、事実の話。
価値観の話と、損得の話。
短期の判断と、長期の判断。
自分の好みと、現実の条件。
人間関係の違和感と、事業上の問題。
こういうものは、本来は分けて見た方がいいのに、すぐ混ざりがちです。
混ざるとどうなるか。
考えているつもりなのに、実はぐるぐる回るだけになります。
何が問題なのかも曖昧になるし、結局どこから手をつければいいかも分からなくなる。
だから私は、思考は引き出しに分けておいた方がいいと思っています。
これは感情の引き出し。
これは事実確認の引き出し。
これは違和感の引き出し。
これは経営判断の引き出し。
これは価値観を問い直す引き出し。
そうやって分けておくと、頭の中がかなり扱いやすくなります。
思考の引き出しというのは、知識をしまう場所というより、頭の中を散らかさないための工夫なのだと思います。
【自分に都合のいい引き出しだけでは危ない】耳が痛い考え方も、持っておいた方がいい
ここは大事なところです。
思考の引き出しは、自分が好きなものだけで作ってはいけないと私は思っています。
気分がいい考え方。
自分を肯定してくれる見方。
自分の正しさを補強してくれるロジック。
それだけで引き出しを作ってしまうと、ものすごく偏ります。
好きなものだけ集めるのは楽です。
でも、現実はそんなに甘くありません。
市場は自分に都合よく動いてくれない。
相手も、自分の期待通りには動かない。
組織も、きれいな理屈だけではまとまらない。
人生そのものも、自分の気分を優先してはくれません。
だから、少し嫌な考え方も必要です。
胸がざわつく意見も必要です。
「それは自分と真逆だ」と思う見方も、引き出しに入れておいた方がいい。
別に、その考え方に従えと言いたいわけではありません。
賛成しなくてもいい。
採用しなくてもいい。
でも、知らないままにしておくのと、知った上で選ばないのとでは、まったく違います。
私はここに、思考の深さの差が出ると思っています。
【同じことを違う言葉で持つ意味】言い換えが増えると、思考は強くなる
私は、同じ内容でも、違う言葉で持っておくことは大事だと思っています。
人は、いつも同じ入り口から考えられるわけではありません。
ある日は、理屈で入った方が整理しやすい。
ある日は、感覚の言葉で入った方が入ってくる。
仕事の場では実務の言葉が必要になる。
自分を見直すときは、少し柔らかい言葉の方が入ることもある。
つまり、中身が一つでも、入り口は一つではない方がいいのです。
これは単なる言い換えではありません。
角度を増やすことです。
見方を増やすことです。
引き出しを増やすこと、そのものです。
私はここをかなり大事にしています。
同じことを違う文章で持つ。
同じ考えを別の言葉でも持っておく。
そうしておくと、必要なときに取り出しやすくなります。
【思考はどう流れるのか】自分がいまどこにいるのか分かるだけで、だいぶ違う
思考の引き出しがあると、内容が整理されるだけではありません。
思考の流れも見えやすくなります。
私は、思考はだいたいこう流れることが多いと思っています。
まず観る。
次に感じる。
それから意味づけする。
そこで分岐が生まれる。
判断する。
決断する。
前に進む。
そして見直す。
言葉にすると単純ですが、実際はこの順番がぐちゃぐちゃになりやすい。
まだ観測が足りないのに、もう結論を出そうとする。
感情が整理できていないのに、決断だけ早くしようとする。
違和感の正体が分からないまま、前進しようとする。
こういうことは本当によくあります。
だから、自分がいまどこにいるのかが分かるだけでも、かなり違います。
いまは観測の段階なのか。
感情を見た方がいい段階なのか。
違和感を分解すべき段階なのか。
決断を保留すべき段階なのか。
前進していい段階なのか。
引き出しがあると、その見取り図が少しずつできてきます。
【思考の引き出しがあると何が変わるのか】観測の精度が上がる
私は、思考の引き出しが増えると、観測の精度が上がると思っています。
なぜなら、人は持っている道具でしか物事を見られないからです。
引き出しが少ないと、見えるものも少ない。
これは感情だな、で終わる。
これはただ嫌な気分だな、で終わる。
これは自分が弱いだけだな、で終わる。
でも、引き出しが増えると違ってきます。
これは事実と解釈が混ざっているのかもしれない。
これは感情に引っ張られているのかもしれない。
これは期待のズレかもしれない。
これは価値観の衝突かもしれない。
これはいま決めない方がいい局面かもしれない。
これは探索しながら前に進んだ方がいい問題かもしれない。
こうして見えるものが増えると、観測の精度が上がります。
観測の精度が上がると、判断も変わります。
【自己理解とメタ認知にも効く】引き出しがないと、自分を一段上から見にくい
私は、メタ認知のためにも思考の引き出しは必要だと思っています。
自分を一段上から見るには、見方が複数必要だからです。
いま自分は何に引っ張られているのか。
どこで混線しているのか。
どの引き出しが足りないのか。
どの思考パターンを繰り返しているのか。
こういうことは、ただ「考える」だけでは見えにくい。
でも、引き出しが増えると見えやすくなります。
私はこれをかなり大事だと思っています。
今解けない問題があるとき、努力が足りないのではなく、見方が足りないことがあります。
つまり、思考の解像度や階層を上げた方がいい場面です。
そのとき必要なのは、新しいロジックであり、新しい観測点であり、新しい引き出しです。
だから人は学び続けるのだと思います。
知識を増やすためだけではなく、考えるための道具を増やすために。
【終わりに】自分の引き出しを増やすことは、自分の世界の扱い方を増やすことだと思う
思考の引き出しを増やすというのは、単に知識量を増やすことではないと私は思っています。
世界の扱い方を増やすこと。
自分の感情の扱い方を増やすこと。
違和感の読み方を増やすこと。
判断の仕方を増やすこと。
前に進むための考え方を増やすこと。
そういうことだと思っています。
私は、引き出しは多い方がいいと思っています。
しかも、自分に都合のいいものだけではなく、自分には少し痛いものまで含めて持っておいた方がいい。
その上で、必要なときに必要な引き出しを開ける。
それができるようになると、人はかなり強くなるはずです。
だから私は、思考の引き出しを増やすことを大事にしています。
そして、そのための一つの方法として、これからもZ式構文を書いていきたいと思っています。
もしよければ、あなたも自分の思考の引き出しを、少しずつ増やしてみてください。
きっと、見えるものが変わってきます。
引き出しを増やす続けるために
ここまで読んでくださって、もし
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【Z式構文 連載一覧】
ここから先の『Z式構文』は、一つずつ読んでも使えますが、順番に読むとより立体的に入ってくるように組んでいます。
必要なところから読んでいただいても構いませんし、最初から順にたどっていただくのもおすすめです。
第1回
感情に飲まれる前に人生を立て直す
まず使うべき「事実分離構文」
第2回
事実を分けても、心はまだ揺れる
感情に飲まれず扱うための「感情観測構文」
第3回
違和感を放置すると、売れていても判断は狂い始める
ズレを見抜き、見方を正すための「違和感分解構文」
第4回
すぐ決めない力が、判断の精度を守る
誤決断を防ぐ「決断保留構文」
今後も『Z式構文』は、少しずつ増やしていく予定です。
違和感、判断、人間関係、経営、商品設計、組織運営など、現実の中で使える形に整理しながら積み上げていきます。
必要な場面で、必要な構文を思い出せるように。
この一覧も、ひとつの「引き出し」として使っていただけたら嬉しいです。
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