OU (オーユー) クリア感想
Nintendo Switch 版にてクリアしました。
本作は、幸田御魚(こうだ おさかな)さんが企画・シナリオ・アート等、多岐にわたって担当した作家性の強いゲーム。販売元である G-MODE のプロデュースにより開発が実現し、開発スタジオにはアンリアルライフ等を手がけた room6 を迎えての制作となっている。
以前、note でこのゲームの感想を書かれた記事をいくつか読ませていただきまして、私の琴線に触れる魅力があったので、いつかやってみたいゲームの 1 つとして考えていました。
そんなある日、立ち寄った某店舗にて、たまたまパッケージ版を見つけてしまったんです。よりにもよって、コレクターアイテムである愛蔵版を。実は以前、G-MODE 公式が上げてたサントラ視聴動画で音楽を聞いて気に入り、サントラ CD 欲しいなぁと漠然と思ってた中だったんで、こりゃ今すぐ買えとのお告げなんだと言わんばかりに衝動買いしてしまったんです。買い物下手すぎるから、この悪癖は治すべきなんだろうけどなぁ。
感想の内容としては、プレイ中とクリア後で印象がガラリと変わったってところです。プレイ中は不評、クリア後は好評といった感じ。また、幸田さんの伝えたいことをプレイヤーがどう受け止めるかによって、評価が分かれるんじゃないですかね。この部分は私は好きです。
つまり、ゲームとしては否、幸田作品としては肯、というのが前提となります。
プレイ時間は約 5 ~ 6 時間。サクッと感想を。
児童文学絵本のような物語
記憶を失くした少年がいた。彼は尻尾に火をつけたオポッサムのサリーに導かれ、自身を知るために不思議な世界・ウクロニアを巡り、やがて真実にたどり着く、というのがおおまかなあらすじ。

ちなみに、児童文学絵本と表現しましたが、その定義って何ぞやと思って調べると、かなり曖昧なジャンルみたいでした。童話じゃないの?って思ってたら、とにかく幅が広い。でも、制作陣は明確に児童文学を意識しているとのこと。
色んな機関がネット上でも児童文学の定義や概念について盛んに議論されてましたが、ひとまず日本での児童文学の歴史を知りたい人は、国際子ども図書館が紹介されているのを見つけたので、興味ある方は以下よりどうぞ。
なお、このゲームは周回する必要があり、最低でも 3 周することになります。この内容に言及した理由は、私が 2 周目までと 3 周目以降で印象がガラリと変わったからです。
2 周目までの印象

特筆すべきは、やはり全体的な美術ですね。アートのクオリティは元より、アニメのように滑らかなキャラの動き、こだわり抜かれた背景は一見に値します。何より、鉛筆で手描きしたような色褪せた絵本のような世界観は唯一無二。これを眺めるだけでも愛蔵版を買った甲斐があったというもの。画集にも手を出しそうな自分が怖い。さ、散財はほどほどにね・・・。



ただ、ストーリーが面白いかと聞かれると、私はうーんと唸って首を捻ってしまいます。正直、2 周目までのストーリーは、私はそんなに面白味を感じなかったんです。
理由は、ドラマ性がないから。少年は焦点の合わない目が人間味を感じず、無口なために余計に何を考えているか分からない。サリーは時たま詩的なセリフを発するほどに曖昧で抽象的なセリフが多く、何が言いたいのか分からない。目的地へ向かう以外にストーリーの主題が不明瞭で、3 周目まで引き延ばしてお預けをされている感じに思えました。



じゃあ、独創的な世界観に浸ればいいのでは、という話にもなるんですが、私は雰囲気ゲームとしても首をかしげてしまうんです。というか、浸れなかったんです。
いくら背景が独創的といっても、周回中だけでなく、1 周内でも何回か同じ風景を見るし、右から左に進む変化の乏しい淡泊なゲーム性もあって、飽きやすいんですよね。
何より、ドラマ性で指摘した部分も含め、ストーリー・キャラ・風景・背景設定にどういった繋がりがあるのか分からない。明確な「答え」があるストーリー故に 3 周目までぼかされるんで、目的を持って行動したい私は中々ゲームに没入できなかったんです。それこそ、私の視界にゲーム画面、モニター、コントローラーが収まるくらい、私とゲームとの距離が遠かった。

そして、雰囲気に浸れなかった 1 番の理由があります。1 周目と 2 周目で一字一句同じセリフを吐くシーンがあるんです。このゲームは周回ではあるのですが、ループ物のような感じでストーリーは地続きに繋がってます。なのに、何で同じ場面で、前回と同じ説明セリフをサリーに言わせたのか疑問が湧いたんです。
もちろん、ちゃんと 2 周目としてのセリフも追加され、変化はあります。それぞれの周回での結末も異なります。でも、ちょっと芸がないかな。私はこれでストーリーに対する熱が 1 回冷めてしまいました。

でも、それらは全て 3 周目で明かされる真実、背景設定、そして作者が伝えたかったことや表現したかったことが分かると、なるほどと腑に落ち、一気に OU の世界観が好きになりました。私の好きは、全部 3 周目に詰まってたんです。
3 周目からの印象

でも、語れない。ストーリーの根幹だから、語れないんだよぉ。
ここまで文句をわめき散らしたんだから、たくさん好意的な感想を書きたいのに、書いたらネタバレになってしまう。
では、一体何が好きだったかと聞かれたら、私は OU の世界観の設定が好きと答えます。
ウクロニアとは何か、周回した理由は何か、意味ありげなキャラクターたちの役割は何か、サリーの目的は何か、そして少年の正体は何か。全ての疑問は 3 周目で明かされるんですが、その内容が凄く興味深かったんですよ。そういう設定、私は大好物。まぁ、少々設定が小難しくて、全部を理解できたわけではないんですけどね。
同時に、そういう設定なら確かに 2 周目までの話では組み込みにくいから、本題をぼかすしかないよなぁとも思いました。まぁ、もうちょっとやりようはなかったんだろうかとも思いましたが。特に OU のベースとなった例の物語は、もうちょっと詳しく語っても良かったのでは。
ただ、OU は作者のメッセージ性が強すぎるために、人によっては拒絶反応が出るかもなぁ、というのも感じました。ここはキャラの個性・信念が不確か故に、特にサリーは作者の代弁者としてセリフを発しているように聞こえてしまうんですよね。私は気になりませんでしたが、どうでしょうかね。

ということで、私は OU のストーリーを見届けたっていうよりも、OU の世界観の設定を聞かせてもらえた気分で、それがいたく気に入ったっていうのが、最終的な感想となります。
サリーの物語
本編発売からしばらくして追加で配信されたストーリー。文字通り、サリーが主役のストーリーで、本編の後日談的な立ち位置。なので、本編クリア後推奨の内容となっていた。

でも、私はむしろこっちの方がストーリーは面白かったです。サリーは本編で 1 番喋るキャラであるが故に、他のキャラよりもある程度性格を知っている状態なのが大きいですね。自分の心情を吐き出すって大事だよね。だから、私はサリーに対しては少年以上に感情移入ができました。
30 分もあれば読み終える内容ですが、大団円っていう感じでスッキリと完結します。同時に、何か新しいものが始まりそうな印象も持ちました。そして、その予感は正しかったんだと、愛蔵版に同封されていたマンガを読み終わった今、そう感じましたね。ここらへんは後述します。
必要性を感じないゲームパート

一応、ふせんを対象に貼り付ける・投げて貼る、というのは良かったと思う。特定の箇所でふせんを付けると、何か詩のようなものが表示され、それが収集要素の 1 つとなっている。でも、ふせんの枚数制限がないために、最終的に虚空に向かって投げまくるだけの作業になってしまいましたが。



明確に褒められるのはこれくらい。その他のパズル要素やアクション要素なんて、あってないようなもの。あとはサリーの会話を聞きつつ、右から左に進むだけ。あまりに淡泊すぎる。
演出面も設定の意味は好きだが、見せ方が普通すぎる。私の好きな設定は、絵本を見開いたかのような世界の左端にたどり着いたら水に飛び込み、ロード時間を挟んで全く異なる風景の世界へ行くところ。それはまるで絵本のページをめくる動作を水に飛び込むことで表現したみたいで、私好みの演出。また、1 つの世界が絵本の見開き分くらいに収めているのも、雰囲気が出て良き。

でも、それだけ。世界観の演出は目を引くものがあるが、ゲームならではの演出がない。特にロード中の数秒の間を繋ぐ手法はあまりに普通すぎて、私の好きな水に飛び込む演出の意味すら普通に思えて好ましくなかった。また、私が気に入った音楽も無感情にただ垂れ流すだけなのも残念。これなら、アニメにした方が良かったのではと思ってしまう。
多分、2 周目クリアしたときの私の表情は少年のような虚ろな目をしていたと思う。あまりに淡々とした作業性だったから。その後、3 周目で幸田さんの世界観に刺激されて目の光りが戻ってきていたから、幸田さんの作品が好きなのは間違いないんだけど、ゲームはなぁ。
確かに、ゲームだからこそ実現できた企画かもしれない。でも、ゲームならではの体験が物足りない。それくらい刺激が少ないし、感情を揺さぶられる演出やドラマもほぼなかったのが残念だった。
愛蔵版の内容
ここまで好意的でない感想を多く述べましたが、愛蔵版に関しては非常に満足してます。というか、私は OU の世界観と幸田さんのアートはかなり好きだし、1 番の目的であったサントラ CD も入手できたから、ゲーム本編以上に嬉しい中身なんですよ。


ちなみに、私が購入の決め手となったサントラの視聴した動画は以下の公式のものから。ギターのみのパートが 1 番気に入ってます。
いやはや、今回は衝動買いで正解だったかもしれないんですよね。OU 本編の他に、後日配信された「サリーの物語」、通常のパッケージ版にも収録されている幸田御魚さんの過去作品「セパスチャンネル」、そして愛蔵版のみに封入されているコミック「OU オブシディアナ」と、OU 以外の作品が多く収録されていたんですよ。しかも、そのどれもが OU に繋がりがあるというね。
特にコミックは OU 及び幸田作品好きにはたまらない内容。一応、コミックに関しては WEB で閲覧できるんですが、愛蔵版にはその続きが描かれているんです。読後感はスッキリするんですが、未完であり、続きが描かれるかは不明です。でも、新作に対する期待を持たせるものでワクワクしました。・・・やっぱ幸田作品、面白いやん。
なお、コミックは絶対に OU 本編及びサリーの物語のクリア後推奨、てか絶対にそうしろって内容です。まぁ、未プレイの人が読んでも意味不明でしょうが。
そして、幸田さんの過去作品であるセパスチャンネル。これ、ファンサービスと思わせて、実は OU と繋がりを持たせちゃってるんですよ。ちゃんと収録理由があったんです。この 2 つは極めて近く、限りなく遠い世界ってだけなんですが、OU 本編で明確に関わりを持たせただけでなく、コミックではサプライズが用意されていました。

なお、セパスチャンネルは単品で購入できます。今、これを書いてる時点で私はセパスチャンネルをクリアしているのですが、ゲームとしては OU よりもはるかに面白かったです。RPG 好きにオススメ。その内容は、また別記事でまとめます。
いやぁ、何か、ゲーム本編の感想よりもはしゃいじゃいました。
インタビュー記事
幸田さんってどんな感じの人だろう、と思ったらメールでのインタビュー記事を見つけたんで貼っちゃう。
あと、G-MODE のプロデューサーのインタビュー記事も見つけましたので貼っちゃう。開発の経緯は中々興味深かった。
総評

ゲームとしてはあまり、というかほぼ褒めてませんが、幸田作品としては私は気に入ってます。唯一無二の世界観とアートは一見の価値ありです。そして、幸田さんのメッセージは非常に興味深い内容でした。購入の決め手となった音楽も、ギターの音色がずっと印象に残るくらい気に入ってますので、個人的にはサントラも同封されている愛蔵版を購入できて良かった。
いやはや、すっかり私も幸田作品の虜になってしまいましたよ。どんな形になるにせよ、もし新作が出るようでしたら、是非プレイしてみたいですね。

