【学び】なぜ「お願い」が丸投げに変わるのか|コミュニケーションのズレを構造から考える
はじめに
今回は、
「お願いが「協力」に見えるときと、「丸投げ」に見えるときの違いは何なのか」
という問いについて、今回の出来事から見えてきた構造を整理してみたいと思います。
答えを出すというよりも、似たようなことが現場で起きたときに立ち戻れる視点として残しておきます。
学び①|表面的な問題から依頼すると、途中の思考が抜け落ちる
今回の始まりは、
「コンテンツの集客がなかなか伸びない」
という課題でした。
そこで、
「もっとお客様へ声をかけてほしい」
と他のセクションへお願いする。
一見すると自然な流れです。
しかし、ここにはひとつ抜けやすい部分があります。
それは、
課題からお願いに至るまでの思考過程
です。
お願いする側では、
集客が少ない
↓
お客様との接点が足りない
↓
各セクションからも案内してもらいたい
というつながりがあります。
しかし、相手に最後の
「案内してください」
だけが届けば、
「なぜ?」
という部分が残ります。
この空白が大きくなるほど、相手は自分の経験や立場から意味を補います。
その結果、
「こちらに仕事を振っているだけではないか」
という解釈が生まれることもある。
コミュニケーションのズレは、言葉が足りないというより、
言葉と背景が切り離されたときに生まれる
とも考えられそうです。
学び②|自分たちが何をするのかが見えないと「丸投げ」に感じやすい
もうひとつ今回大きかったのが、
「お願いする側は何をするのか」
が見えにくかったことです。
たとえば、
「皆さんも声をかけてください」
だけなら、受ける側からすると単純に仕事が増えます。
一方で、
「こちらでは予約状況を共有します」
「オーバーブックにならない仕組みはこちらで整えます」
「案内しやすい情報も準備します」
「そのうえで、お客様への最後の声かけをお願いできませんか」
という形であれば、少し構造が変わります。
自分たちの課題を相手へ移すのではなく、
自分たちも責任を持ったうえで、足りない部分を協力してもらう
という関係になるからです。
同じ「お願い」でも、自分たちが何を担うのかが見えているかどうか。
ここは、丸投げと協力の境界のひとつになりそうです。
学び③|背景共有は、相手が判断するための材料になる
背景を伝える意味は、相手を説得するためだけではないと思います。
むしろ、
相手自身が考えるための材料を渡すこと
なのではないでしょうか。
「集客が少ないのでお願いします」
ではなく、
「現在これくらいの利用状況です」
「今はこういう打ち手をしています」
「ただ、ここに接点がなく課題を感じています」
「そこで、この部分で力を借りられないかと考えています」
と共有する。
そこまで見えると、相手側からも、
「それなら、このタイミングで声をかけられそう」
「この方法なら負担が少ない」
「逆に、ここは難しい」
と意見を出せるようになります。
お願いされた人から、一緒に考える人へ。
背景の共有には、そんな役割もあるのだと思います。
学び④|「伝える」だけでなく「問いかける」と、関係が変わる
今回のテーマと重なったのが、エドガー・H・シャインの『問いかける技術』でした。
本書は、仕事をお願いしたいときを含めた人間関係の場面で、「話す」だけではなく「問いかける」ことの重要性を扱っています。
出版社の紹介には、
「人間関係のカギは、『話す』ことより『問いかける』こと」
という言葉があります。
これは今回の出来事にもつながります。
「これをしてください」
だけなら、コミュニケーションは一方向です。
しかし、
「今こういう課題があります」
「こちらではここまで考えています」
「皆さんから見るとどうでしょうか」
「もっとやりやすい方法はありますか」
と問いが入ると、相手にも考える余白が生まれます。
シャインが扱っているのも、単なる質問テクニックというより、問いかけることで関係を築いていく考え方です。
仕事をお願いするときほど、
「ちゃんと説明しなければ」
と思って話す量を増やしがちですが、説明の量を増やすことと、相手と認識を合わせることは同じではありません。
説明したあとに、
「相手にはどう見えているのか」
を知ろうとする。
そこまで含めて対話なのだと思います。
学び⑤|信頼関係は、必要になった瞬間につくるものではない
そして最後に感じたのが、普段の関係性です。
セクションが違えば、働く場所も時間も違います。
日常的に顔を合わせない相手ほど、コミュニケーションが、
「お願い」
「確認」
「共有」
だけになりやすい。
すると、関係そのものが「業務」でしかつながらなくなります。
だからこそ、
顔を合わせたら挨拶する。
少し雑談する。
相手の仕事を知る。
困っていればこちらから声をかける。
そんな一見すると仕事の成果には直接関係なさそうな関わりが、後から効いてくるのだと思います。
信頼関係があれば何でもお願いできる、ということではありません。
ただ、
「この人たちは、こちらの状況も分かったうえで相談してくれている」
という感覚があるだけでも、同じ言葉の受け取り方は変わります。
今回の構造を整理すると
今回の摩擦は、こんな流れだったように思います。
集客が伸びない
↓
目に見える対策を考える
↓
他セクションへお願いする
↓
背景や自分たちの打ち手が十分伝わらない
↓
相手側で「丸投げなのでは」という解釈が生まれる
↓
モヤモヤが残る
一方で、今回の出来事から見えてきた別の流れは、
課題を共有する
↓
自分たちができることを整理する
↓
相手の立場から見えることを聞く
↓
役割を一緒に調整する
↓
共通の目的へ戻る
というものです。
重要なのは、後者が唯一の正解ということではありません。
現場には時間もありますし、毎回丁寧な相談ができるわけでもありません。
ただ、複数のセクションをまたぐ仕事ほど、
「何をお願いするか」
だけではなく、
どんな前提を共有したうえでお願いしているか
を見る必要がありそうです。
リーダー・組織へ転用するなら
今回の出来事は、集客だけに限らないと思います。
「これをやってください」
「このルールを守ってください」
「もっと連携してください」
「これからはこちらでお願いします」
組織では、いろいろなお願いが生まれます。
そのときに、
・なぜ必要なのか
・今どんな課題があるのか
・自分たちは何を担うのか
・相手には何を期待しているのか
・相手が考えられる余白があるか
という部分が抜けていないかを見る。
これは、単なる「伝え方」の問題ではなく、
仕事を誰の課題として扱うのかという、関係性の設計
なのかもしれません。
まとめ|コミュニケーションとは、情報を渡すことだけではない
今回の出来事から改めて感じたのは、
コミュニケーションを円滑にするためには、単にわかりやすく伝えればいいわけではないということです。
自分たちの背景を伝える。
自分たちができることを示す。
相手の立場から見えるものを聞く。
そして、どこを一緒に担うのかを考える。
そこまでやって初めて、
「お願いする側」と「お願いされる側」
という関係から、
「同じ課題を考える人たち」
という関係に少し近づいていくのかもしれません。
ただ、これも簡単ではありません。
忙しい現場では、つい結論だけを伝えたくなります。
だからこそ今回のようなモヤモヤが起きたとき、相手の姿勢の問題にする前に、
どこで前提が切れていたのか。
どこから相手にとって「自分たちの課題ではないもの」になったのか。
そんな構造を一度見直してみることが、大切なのだと思います。
▼この内容のきっかけになった問いはこちら
摩擦を、構造に。
問いを、資産に。
Yuta
