第8回:冥王星山羊座時代—— 既存の社会システムの限界と、目に見える形での崩壊
冥王星は山羊座へーー社会のサステナビリティが問われ始める
2008年、リーマンショックという世界規模の経済破綻とともに、冥王星は「社会の土台・実益・権威・伝統」を司る山羊座に入りました。
山羊座は、目に見える成果や、国家の制度、ピラミッド型の組織を象徴するサインです。
この時代、優生思想は実利主義の中に潜り込み、命は有用かどうかで判断されるようになりました。それはコロナ禍の医療トリアージ現場や、リーマンショック後の緊縮財政による生活保護・障害者支援等の削減、ハリケーンカトリーナ災害時の救出判断の場面で露骨に見られ、人々の心に深い分断を植え付けました。
優生思想は過去のような「新しい理論」としてではなく、「社会の持続可能性(サステナビリティ)」という切実なシステム上の課題として、私たちの目の前に突きつけられたのです。
「役に立つか、立たないか」という実利主義の先鋭化
山羊座は「無駄を省き、結果を出す」ことを重んじるサインです。この時代の冥王星は、少子高齢化や経済停滞に悩む現代社会に対し、残酷な問いを突きつけました。
「この社会システムを維持するために、誰がコストを負担し、誰が生産性を上げるのか」
この実利主義的な空気感の中で、優生思想は「生産性」という言葉に姿を変えて再浮上しました。2016年に日本で起きた相模原障害者施設殺傷事件などは、その極端な一例です。「社会の役に立たない命は不要である」という山羊座的な効率主義が、冥王星の破壊的なエネルギーと結びついたとき、システムの限界が「暴力」という形で露呈してしまったのです。
制度の疲弊と「新型出生前診断(NIPT)」の定着
山羊座は「制度」を司ります。この時代、2013年から日本でも始まった新型出生前診断(NIPT)は、公的な「管理」と個人の「選択」の境界線を曖昧にしました。
かつての優生学が「国家が強制するもの」だったのに対し、山羊座時代は「社会の厳しさ(経済的不安やサポート不足)」という現実に直面した個人が、自ら「選別」を選ばざるを得ない状況に追い込まれる、という構造が顕著になりました。
「この不透明な社会システムの中で、障害を持つ子を育てていけるのか」
という現実的な恐怖が、制度の不備を個人の選択で埋め合わせるという、本意ではない選別を促したのです。
自己責任論の崩壊
また、2000年代後半~2010年代にかけての社会移動性(intergenerational mobility)に関する国際的研究(アメリカ、北欧、イギリス、日本など)で、
親の学歴 × 子の学歴
親の所得 × 子の所得
居住地域 × 生涯年収
教育投資額 × 健康寿命
これらに強い相関があることが明らかにされました。
日本では、「親ガチャ」という言葉が生まれます。学歴社会や雇用の硬直化、再挑戦の難しさ、失敗に厳しい当時の風潮などが重なり、「一度つまずくと戻れない社会」「生まれがすべてを決める」という感覚は、個人の被害妄想を超え、社会の構造的実感となりました。
まとめ
冥王星山羊座時代、優生思想は制度の持続可能性、財政の限界、少子高齢化、社会保障の疲弊という現実的で切実な問題の中に溶け込み、「誰を守り、誰を後回しにするのか」という運用上の判断として姿を現しました。
それは遺伝による選別ではなく、出生条件、経済力、環境、支援体制といった初期条件による選別と言ってもいいかもしれません。
そして2024年、冥王星はついに「国家」や「システム」という枠を超え、真の多様性が問われる未知の領域へと足を踏み入れます。
次回、最終回、「第9回:冥王星水瓶座時代 —— 『多様性の光と、AI・ゲノム編集による「選別」の影」。140年にわたる旅の終着点と、これからの未来について考えます。
