第7回:冥王星射手座時代—— グローバル化と、異なる思想・文化の混ざり合い
冥王星は射手座へーーグローバル化による価値観の衝突
1995年、冥王星は蠍座の重く閉ざされた深淵を抜け、開放的な射手座へと移動しました(2008年まで運行)。
射手座は、異なる文化、遠くの土地、そして抽象的な「思想・哲学」を司るサインです。この時代、優生思想的なテクノロジーは、インターネットの普及とともに国境を越え、世界中の異なる価値観と激しくぶつかり合いながら、一つの「グローバルな課題」へと拡大していきました。
インターネットによる「知」の国境喪失
射手座は「情報の拡散」と「遠方への移動」を象徴します。
この時代、バイオテクノロジーや遺伝子工学の最新知見は、ネットを通じて瞬時に世界中へ共有されます。かつての優生思想は、特定の国家内での「閉じた政策」でしたが、射手座時代には「世界中の思想・文化が混ざり合う中での議論」へと変容しました。
1997年のクローン羊「ドリー」の誕生や、胚性幹細胞(ES細胞)の研究が進む中で、キリスト教的倫理、イスラム教的倫理、そして東洋の生命観などが激しく交差しました。また、ヒトゲノム計画(2003年完了)という人類共通の設計図の解読は、宗教や文化の違いを超えて、「人間とは何か」という根源的な問いを世界に突きつけたのです。
「生命にどこまで手を触れてよいか」という多様な思想のぶつかり合いそのものが、この時代の冥王星的なテーマでした。異なる文化背景を持つ人々が、それぞれの「正義(射手座)」を掲げて議論を戦わせたことで、優生思想はかつてのような単純な「悪」としてではなく、複雑な「倫理的ジレンマ」として再定義されていきました。
グローバル化がもたらした「混ざり合い」と「比較」
射手座は「旅」と「異文化」のサインです。この時代、自国で禁止されている代理出産や卵子提供などの生殖技術を求め、規制の緩い国へと渡る「生殖ツーリズム(不妊治療ツーリズム)」が本格化しました。
「ある国では倫理的にNGだが、別の国ではOK」という、異なる思想・文化の混ざり合いが起きたのです。このグローバルな流動性は、優生的な技術を止めることがいかに困難であるかを世界に知らしめました。
情報へのアクセスが容易になり、
どの国が進んでいるか。
どの文化が合理的か。
どの生き方が「洗練されているか」。
を、個人で比較・検討できるようになったのです。
ノーマライゼーション理念の普及
また、この時代にノーマライゼーションの理念が普及し、「自立支援」「就労移行」「社会参加」という言葉があちこちで聞かれ始めます。2006年、障害者の権利に関する条約が国連で採択されると、この流れは決定的となりました。
この条約は、
障害があること自体を問題にしない
社会の側が合理的配慮を行う
と宣言するもので、就労できる可能性があるのに社会が受け入れの努力をしないのは、人権を認めない行為だとみなされました。
一方、受け入れのために社会が用意した環境に適合できない存在は、想定から外れるものとして打ち捨てられていった、と訴える声もあります。
まとめ
冥王星射手座時代、人類は国境や文化の壁を越え、生命の可能性をどこまでも広げようとしました。多様な思想が混ざり合うことで、議論は深まりましたが、同時に「自由な選択」という名の新しい選別もまた、世界中に拡散していきました。
また、国際連合により人権の枠組みが整えられ、障害者の権利を「普遍的価値」として扱う流れが定着します。それと同時に、各国が「遅れている/進んでいる」と評価される構造も生まれました。
でも、この自由で抽象的な議論の時代は、2008年のリーマンショックを機に、突如として終焉を迎えます。
次回、「第8回:冥王星山羊座時代 —— 既存の社会システムの限界と、目に見える形での崩壊」へと続きます。
