このまま一人でいるつもりだった私が、とんでもない人に捕まった話【尊敬と違和感編編】
出会って3ヶ月が経った頃、私たちの関係は新しい段階に入ろうとしていた。恋愛面でお互いを理解し合えるようになった私たちが次に話すようになったのは、仕事のことだった。
「俺もやりたい!一緒に事業しようよ」
私が仕事の話ややりたいことを話していたら、彼がそう言ってくれた。将来的にね、くらいのノリで。でも、その頃から小さな違和感が芽生え始めていた。
わたしたちの出会いが気になる人はこちらかた読んでください。
尊敬していた彼の仕事への姿勢
彼は人材関係、採用、コーチングの仕事をしていて、いつも「人の人生に向き合う仕事をしているし、俺は向き合ってる」と言っていた。仕事にプライドを持ってやっている姿勢に、私は刺激を受けていた。
フリーランス1年未満の私にとって、数年のキャリアを持つ彼はまさに先輩。紹介営業がメインで、求人媒体なんて使わずに仕事が回っているなんて、きっと仕事ができる人なんだろうなと思っていた。
だからこそ、最初の違和感は見過ごしてしまった。
最初の小さなほころび
出会って2ヶ月の頃、彼のメインとなっていた案件が契約解除になった。理由は予算の関係らしい。確かに急に契約解除になることはフリーランスにはよくあることだけど、彼の反応が気になった。
落ち込むのはわかるけれど、クライアントの愚痴ばかり。そして「ほんとにあのクライアントは仕事ができなかった。」という言葉。
フリーランスなら契約解除のリスクはつきものだからこそ、契約時の条件はすり合わせが必要で、3年目ならそのへんはある程度理解しているはず。なのに、なぜこんなに感情的になるのだろう。
「次の案件、どうやって取るの?」と聞くと、「うーん、求人媒体とかみてみようかな」という答えが返ってきた。
見えてきた知識の薄さ
紹介がない時期になって、彼はクラウドソーシングや求人媒体から応募をし始めた。でも、採用関連の仕事をしているなら求人出稿の仕組みや媒体の特徴くらいは知っているはずなのに、意外と知らないことが多かった。
「この求人媒体から応募してみたら?」と私が提案すると、「なにそれ、知らない」と返される。採用業務に関わっているなら、企業側がどの媒体を使っているかくらいは把握しているものじゃないのかな。
「私はこれ使ってるよ!」と教えると、シンプルに参考にしてくれた。年下だから知らないこともあるだろうし、知らないなら教えてあげればいいと思っていた。
でも、彼の提案文を見た時の違和感は大きかった。
スキルアピールばかりで、クライアントの課題に全く触れていない。採用に関わる人なら、企業の課題を汲み取る力があるはずなのに。なにより。それが重要なことくらい知っているはず。また、敬語やビジネスマナーも気になる部分があった。
「応募してみたけど返信ない。返信が遅い」と彼が言うので、「全部が全部返信くるわけじゃないよ」と答えると、「え、そうなの?」と驚かれた。
心の中で「今まで返信きてなかったのに何を言ってるの」と思ったけれど、口には出さなかった。
不思議だったのは、案件がないはずなのに、スカウトが届いた案件を断ったという発言もあったことだった。
報酬もそこそこよくてありかも!なんて言って面談したけど、断った!…と。「なんで断ったの?」と聞くと、「安かったから」「なんか話が通じなかった」という答え。
案件に困っているなら、まずは条件交渉をするか、小さくても実績を作ったらいいのに。
プライドを持って仕事をしているし、実績があるからこその判断だと思っていたけど。今考えたら、見送りにされていたのかなあ、と思う。
恋愛フィルターで見過ごしてしまう心理
違和感はあった。でも、恋愛フィルターがかかってしまっていた私は、すべてを甘く見てしまっていた。
「まあ、フリーランスだから色々なやり方があるのかな」 「年下だから、わからないなら教えてあげよう」 「今まで紹介営業だけで生きてきたなんて、やっぱり仕事ができる人なんだろうな」
そんな風に自分に言い聞かせていた。彼への尊敬の気持ちと恋愛感情が混在していて、客観的に見ることができなくなっていた。
でも冷静に考えれば、紹介営業だけで数年間やってきたなら、むしろ営業の基本やクライアントとのコミュニケーション能力は高いはず。
なのになぜ提案文がこんなに粗雑なのか、なぜ業界の基本的な知識がないのか。
フリーランス1年未満の私が、先輩フリーランスの彼に仕事を教えるという状況も、なんだか不思議だった。でも「知らないなら教えてあげる」という気持ちの方が勝っていた。
法人化への挑戦と、決定的な発言
出会って7ヶ月が経った頃、彼は法人化を決めた。物流関係の事業、採用、営業代行、コンテンツ販売の4つの事業をやると言っていた。
一気にこんなに色々な事業を?と正直思った。物流と採用って全然違う業界だし、それぞれ専門知識も必要なはず。
普通は1つの事業で安定してから多角化するものじゃないのかな。
「3人それぞれに強い人を集めたから」と彼は言っていたけれど、立ち上げ段階でそんなに人件費をかけて大丈夫なのかな。
売上が立つ前に資金が底をついてしまいそうだし、そもそも物流、採用、営業代行、コンテンツ販売ってターゲット顧客も市場も全然違うのに、リソースが分散してしまわないのかな。
でも、彼なりに考えがあるのだろうし、彼の意欲を応援したかった。
「法人化に人生かけてる!俺は支えてくれる人の人生預かっているから」
そんな彼の真剣さに、私も応援したいと思った。
「なんか本格的になってきたし、すごいね。でも、たまには息抜きして一緒におでかけしたりしよ!」
そう提案した私に、彼は思いもよらない答えを返してきた。
「一人で息抜きしてよ。俺は仕事中心で生きるし」
「なんか最近仕事ばっかりだから、うちらの関係って仕事の人で着地しそう」
「たしかにオレ飽きっぽいし、ビジネスパートナーになるかもな」
「え、飽きないっていったじゃん」
「恋愛脳すぎ。俺は今仕事が大切なんだから、支えてくれたりそれでも離れないでくれたらそりゃ好きって思うよ」
「私が恋愛脳なわけないでしょ」
「最近そうじゃん」
それでも支えたいと思った理由
その会話を聞いて、正直ショックだった。初期の頃は「俺が飽きないから大丈夫!」と言って向き合ってくれていたのに、なんで?
でも、私は彼を支えていこうと決めた。彼の挑戦を手伝ってくれる人もいるけれど、彼はたまに周りが見えなくなって1人で走ってしまうことがある。自我が強い彼に意見できるのは私だけだと思った。チームの雰囲気をよくするためのストッパーになろう、そう決めた。
違和感はある。仕事面での知識の薄さ、基本的なビジネススキルの不足、言葉と行動の不一致、そして「飽きっぽい」という発言。論理的に考えれば、おかしなことばかりだった。
でも、それでも彼を信じたかった。
恋愛感情と尊敬の気持ちが勝っていて、すべての違和感を「そんなもんなのかな」で処理してしまう自分がいた。後から振り返ると、これがすべての始まりだったのかもしれない。
でも、その時の私には見えなかった。見たくなかったのかもしれない。
しかし、8月に入り法人化が本格化した瞬間、私はとんでもない真実をしることになる。
