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AIに追いつかなくていいー追いつこうと頑張らない人が、結果的に追いついていく

また、新しいAIが出ました。

先週も出ました。
たぶん来月も出ます。
タイムラインには
「乗り遅れるな」
「使わない人は淘汰される」
という言葉が流れてきて、夜中にそれを眺めながら、焦りだけが積もっていく—そんな感覚に、覚えはないでしょうか。

30年以上ITの現場にいて、いまはAIリテラシーの講座をしている私が、今日お伝えしたいのは、その真逆のことになるでしょう。

追いつこうとしなくて、いいんです。

これは精神論ではありません。
前編で書いた「感性が削られる」話の、続きであり、答えです。

第1章 余白は、人によって逆向きですらある


前編で、私は機械と向き合い続けて感性が削られ、音楽で自分の状態に気づく、という話を書きました。


面白いのは、これが人によってまったく逆になることです。
接客業の方から、
「一日中人と向き合ったあと、PCの前で無言になれる時間が一番ほっとする」
という話を聞いたことがあります。
私を削るものが、その人を回復させる。
私を回復させる静けさが、別の誰かには孤独かもしれない。

つまり、「何が余白になるか」は、誰にも一般化できないのです。

ここでいう余白とは、一言でいうと:思いを言葉に変えるための、心と知恵・知識が安定する時間のことです。予定が空いている時間、という意味ではありません。手帳が真っ白でも、頭の中がタイムラインの速度で回り続けていたら、それは余白ではないのです。

第2章 振り落とされるのは、知識が足りない人ではない


AIの進化に「ついていけなくなる」のは、どんな人でしょうか。

講座やご相談の場で多くの方を見てきて、実感していることがあります。
振り落とされるのは、知識が足りない人ではありません。
思いを言葉に変える時間を失った人です。

多忙な時期、頭の中に言いたいことの文字は、ちゃんと存在している。
でも、意識に反映されずに、くすぶってしまっている—そんな状態に心当たりはないでしょうか。
経験値と理屈で、機械的なことはこなせてしまう。
でも、そのあいだ、自分の考えは一歩も言葉になっていない。

AIは、言葉を渡してはじめて動く道具です。
だから、思いが言葉になっていない人にとって、AIがどれだけ速くなっても、その速さは空回りします。

逆に、余白の中で自分の考えを言葉にできている人は、道具が変わっても、すぐに乗れる。
新しいAIの使い方など、触れば数日で身につきます。
でも、涸れた思いは、数日では戻りません。

だから、逆説のようですが、こうなります。

追いつこうと頑張らない人が、自分のやり方で余白を使っている人が、結果的に追いついていく。

時間ができれば、同じ人が、違う考え方にたどり着くこともあります。

くすぶっていた文字が、ある日ふっと言葉になる。
それを待てるだけの余白を、自分に許しておくこと。
それが、この変化の速い時代の、いちばん堅実な「ついていき方」だと私は思っています。

第3章 答えは一つじゃない——プロンプトが教えてくれたこと


余白の効用を、私は意外な場所で確認しました。
自分の書いたプロンプトです。

調子のいい日に書いたプロンプトと、悩んで言葉を探しながら書いたプロンプト。
同じことを頼み、同じゴールを目指しているのに、読み返すと、まったく違う言葉が並んでいるのです。

以前の私なら、「正しい書き方はどちらだろう」と考えたかもしれません。

でも今は、こう思います。
どちらも正しい。
その日の自分が、その日の言葉で書いた。
それだけのことで、それがいちばん人間らしい。

私が『プロンプトの呪文は、もう捨てていい』という本を書いたのは、まさにこの実感からでした。

決まった呪文を暗記するのではなく、その日の自分の思いを、その日の言葉にする。
答えは一つではないのです。
そして、その「その日の言葉」が出てくる場所こそが、余白なのだと思います。

第4章 実は、いちばん多い使われ方


最後に、少しだけ先の話をします。

AIの話題は業務効率化ばかりが目立ちますが、実際には、悩みや気持ちの整理にAIを使っている人は、とても多いと感じています。

そして中には、思うような答えが返ってこず、「AIにまで見放された」と感じてしまう人もいる。

使い方が悪いのではありません。
誰も「話し方」を教えていないだけです。
AIに答えを求めて頼るのではなく、歩みを合わせていく—この話は大切なので、稿を改めて、じっくり書きます。

ただ、ここでも土台になるのは、やはり余白です。
自分の奥にあるモヤモヤに気づけるだけの静けさがなければ、AIに差し出す言葉も、一番手前の言葉だけになってしまうからです。

おわりに


「人間が主役、AIは最強の右腕」—私がずっと言い続けてきたことです。

右腕が速くなればなるほど、主役には余白が必要になります。

指示を出すのは、判断するのは、そして「これは違う」と言えるのは、思いを持った主役だけだからです。

前編の音楽も、今回の余白も、言っていることは一つです。

追いつこうと焦る時間を、少しだけ、自分に戻してあげてください。

それは遠回りに見えて、たぶん、いちばんの近道です。


📖 あわせて読みたい
前編はこちら →『「思いが浮かばない」——感性が削られた日、音楽は治してくれない。ただ、気づかせてくれる。』


言葉になる前の時間について →『人間は、急いで処理されてはいけない』


AIとの付き合い方の土台は、ゆめみの森アカデミーの講座でも → [講座ページリンク]

💬 あなたにとっての「余白」は、どんな時間ですか?人によって全然違うはずなので、よかったらコメントで教えてください。


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