インタビュー|「つらい妊活が原点」アスリート妻・転勤族・3児の母サロン開業へ
「結婚したら、すぐに子どもができると思っていたんです。」
そう語るのは、温活サロン「HOT LEY」のオーナー、風間さん。
若くして経験した不妊治療と、そこから始まった3児の母としての日々。サッカー選手であるご主人の移籍に伴う転勤、育児、そして“自分のキャリア”との向き合いのなかで、彼女は少しずつ「自分の人生」を再構築してきました。
静岡から北九州、山形、沖縄、群馬へ。全国を転々としながら、3人のお子さんを育て、ご主人を支えながら、自分の「好き」や「できること」を仕事に変えてきた風間さんの歩み。
その一歩一歩には、今まさに家庭も大切にしたいけれど、キャリアも諦めたくないと葛藤しているママたちにとって、共感と勇気をもらえるリアルなストーリーが詰まっています。
思い描いていた未来と違った、20代の葛藤
風間さんが結婚したのは、まだ22歳の頃。
あの頃は「結婚=すぐ妊娠」だと自然に思っていたといいます。
けれど、現実は違いました。なかなか授からず、気づけば周囲は出産ラッシュ。気持ちはどんどん追い詰められていきました。
「当時、同じような悩みを抱えている人なんて身近にいなくて。誰にも話せないし、“妊娠できない自分の体はおかしいんじゃないか”って、ずっと自分を責めていました。」
病院に行くことさえためらっていたなか、後押ししてくれたのはご主人の言葉でした。
「何か原因が分かれば、できることがあるかもしれないよって言ってくれて…。それでようやく勇気が出たんです。」
病院での検査の結果、多嚢胞性卵巣症候群など複数の体の不調が見つかり、3年に及ぶ不妊治療生活が始まります。薬を飲み、ホルモンをコントロールしながらの通院は、身体的にも精神的にもつらいものでした。
「友人の妊娠報告があるたびに、心から喜べない自分が苦しくて…。
私、性格悪くなってるのかな…って、自分で自分を責めてばかりでした。
好きな人との子どもがほしいだけなのに、子どもを作ることが優先になってしまって、夫とギクシャクしちゃったこともあるんです…。」
ある日、思い切ってアスリートの先輩妻に相談したことが、風間さんの心を少し軽くしました。
「『実は…私も不妊治療してたんだよ』って。あの言葉、本当に救われたんです。
みんな口に出さないだけで、誰かしら悩んでいるって知れたことで、1人じゃないと思えました。」

母となって気づいた、仕事をする難しさ
辛くて長い不妊治療を経て、無事に妊娠・出産。
今では3児の母。
けれど、転勤を重ねる生活のなかで、新たな葛藤が浮かび上がります。
「サッカー選手って、突然移籍が決まるんですよね。だから、どの地域に住んでいても、次また引っ越しをすることが前提。保育園探しも、地域の人間関係も、毎回ゼロから。
そんな生活の中で“自分のやりたいことを仕事にする”なんて、無理だろうと思っていました。」
でも、心の中にはずっとあった“何かしたい”という気持ち。
「もし、あの頃の私のように辛い妊活に悩んでいる人がいたら…何か力になりたい。そう思ったんです。」
かつて学んでいたクラニアルセラピー(頭蓋骨や体全体のバランスを調整し、自律神経やホルモンを整える手技)を活かしながら、さらなる学びを重ねるうちに「温めること」の大切さに行きつき、よもぎ蒸しへと辿り着きました。
よもぎ蒸し講座を受け始めたのは、第3子の生後2ヶ月の頃。
乳腺炎と睡眠不足で体調も不安定な時期。それでも風間さんは自分が経験した辛さを、誰かの支えに変えたいと勉強に励みました。

“できることから少しずつ”が、未来につながった
活動の第一歩は、カフェの一角や薬局のスペースを借りてはじめました。
レンタル料が先にかかる中、集客がうまくいかず赤字になることもありました。
「やってみたい気持ちは強かったんです。でも、私にできるのかな…という不安もあって。
インスタでお知らせ投稿をするだけでも、すごく時間がかかって。結局、投稿ボタンを押せなかった日もありました。」
それでも今できることを少しずつと、毎日コツコツ発信を続けました。
「夫の移籍が急に決まることも多くて。お店なんて持てないって、ずっと諦めてたんですよね。
当時は沖縄に住んでいたんですが、移籍が決まればすぐに引っ越しだし…。テナントを借りてもすぐ退去になる可能性もあるから。」
そんななか、沖縄でシェアサロンという選択肢に出会い、タイミングよく空きがあり、初めて自分のサロンを持つことができました。
訪れるお客様の多くは、よもぎ蒸しが初体験という方ばかり。講座を受講し、さらに学びたいと希望してくれる方、赤ちゃん連れで通ってくれる方、自分でお店を開いた方まで現れたといいます。
「まさか、自分の一歩が誰かの挑戦の背中を押せるなんて…本当に嬉しかったです。」

完璧じゃなくていい、だから一生懸命やる
もちろん、すべてが順調なわけではありません。
「仕事を頑張れば家のことが回らなくなるし、家を優先すれば仕事が進まない。両方中途半端じゃないか…って落ち込むこと、今でもあります。」
子どもの体調不良で予約変更をお願いすることもあり、そんな時、心の中に小さな罪悪感が顔を出します。
「子どもが熱を出した時に、“キャンセルどうしよう”って思っちゃって…。まずは子どもの心配をするのが母親なのに…。
そんな自分が情けなくなることもあります。」
それでも、風間さんは自分の道を諦めません。
「100%じゃなくても、一生懸命やる。それだけは忘れないようにしています。お客様も、私の状況を理解したうえで通ってくださっていて。本当に感謝しています。」

私だからできたと思える未来へ
「転勤族でも、アスリートの妻でも、3児の母でも。“自分のやりたいこと”は形にできる。」
沖縄での成功体験を経て、群馬に移ってからも風間さんはサロンを再開。
”できた”という小さな自信が、新しい土地でのスタートを後押ししてくれたのです。
「正直、未来はまったく見えません。次の土地でサロンを持てるかもわからない。だから、明確なビジョンがあるわけじゃないんです。」
それでも、風間さんには大切にしている思いがあります。
「”今できることを一生懸命にやる”それだけは決めています。
この環境のなかで、好きなことを仕事にしようと決めたのは、自分自身。だからこそ、今できることを、家族にもお客様にもきちんと届けていきたいと思っています。
いつか本格的に働く時が来たとき『あのとき始めておいてよかった』って思えるように、その土台作りを今しているつもりです。」
転勤も、育児も、人生も。
流されるのではなく、自分で選びなおしていく。
風間さんの活動は、今日もどこかで揺れている誰かの背中を、そっと優しく押してくれるかもしれません。
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