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双極性障害って、なんだろう?                 波のなかで生きているあなたへ

双極性障害ってどんなもの?

双極性障害は、氣分の波がとても大きくなる脳の病氣です。
わたしたちは誰でも、元氣な日もあれば、落ち込む日もありますよね。 それは自然なことです。
でも、双極性障害では、その波が日常生活に支障が出るほど大きくなります。
「躁(そう)」の時期は、氣分がぐんと高くなります。 エネルギーがあふれて、眠らなくても平氣な氣がして、次から次へとアイデアが浮かんで、「なんでもできる!」という感覚になることがあります。話すスピードが速くなったり、考えが次々と浮かんで止まらなくなる「観念奔逸 」と呼ばれる状態になることもあります。
「うつ」の時期は、反対に、深く沈みます。 何をする氣力もなくなって、ベッドから起き上がれなくなったり、好きだったことにも興味が持てなくなったり、自分を責めてしまったり、「消えてしまいたい」と感じてしまうこともあります。
この二つの波が繰り返し現れるのが、双極性障害の大きな特徴です。
また1日の中でも気分や症状が変化する日内変動もあります。
日本での有病率はおよそ100人に1人前後と言われていて、決してめずらしい病氣ではありません。また男女差はほとんどないとされています。
また1日の中で気分や症状が大きく変化する日内変動もあります。

「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があります
双極性障害には、大きく分けて二つのタイプがあります。
双極Ⅰ型障害は、躁の波がとても大きいタイプです。 周囲の人が明らかに「いつもと違う」と感じるほどの躁状態が現れます。衝動的に大きな買い物をしたり、ほとんど眠らずに活動し続けたり、社会的なトラブルにつながることもあります。入院が必要になるケースもあります。
双極Ⅱ型障害は、躁の波が比較的おだやかな「軽躁」のタイプです。 「最近調子がいいな」「やる氣が出てきたな」くらいに感じることも多く、ご本人も周囲も病氣だと氣づきにくいのが特徴です。軽躁のときはむしろ「本来の自分に戻った」と感じる方もいらっしゃいます。その一方で、うつの時期はⅠ型と同じくらい深く、つらいものになることがあります。

Ⅱ型は見逃されやすいぶん、「ただのうつ病」と診断されたまま長い間過ごしてしまう方も少なくありません。実際に、双極性障害の方が最初の受診から正しい診断にたどり着くまでに、平均して数年以上かかるとも言われています。

見落とされやすい「混合状態」のこと
あまり知られていないのですが、躁とうつが同時に現れる「混合状態」というものもあります。
たとえば、氣分は深く落ち込んでいるのに、頭のなかはぐるぐると考えが止まらない。イライラして焦りがあるのに、体は動かない。エネルギーはあるのに、そのエネルギーがすべて自分を傷つける方向に向かってしまうような状態です。
この混合状態は、ご本人にとってもっともつらく、もっとも危険な時期のひとつです。 「死にたい」という氣持ちと、それを実行に移すエネルギーが同時に存在するからです。
もし、こうした状態に心当たりがある方は、どうかひとりで抱え込まず、早めに専門家に相談してくださいね。

「うつ病」との違い
双極性障害のうつの時期は、うつ病ととてもよく似ています。 だから、最初は「うつ病」と診断されることがとても多いのです。
でも、双極性障害とうつ病では、治療の方針が大きく異なります。
うつ病の治療で使われる抗うつ薬を双極性障害の方が単独で服用すると、躁状態への急激な切り替わり(「躁転」といいます)を引き起こしたり、氣分の波がかえって不安定になることを招いてしまうことがあります。
だから、「お薬を飲んでいるのになかなかよくならない」「よくなったと思ったら急に調子が崩れる」という経験がある方は、一度主治医に相談してみることも大切です。
これは、あなたの努力が足りないのではありません。 お薬の種類が合っていなかっただけかもしれないのです。

「躁」のときの自分を、あとから責めないでください
躁の時期に関して、自分の言動を、あとから深く恥じて、自分を責めてしまう方がとても多いです。
「あのとき、なんであんなことを言ってしまったんだろう」 「あんな大きなお金を使ってしまって」 「周りの人に迷惑をかけてしまった」
そういう後悔が、うつの時期にどっと押し寄せてきて、さらに自分を追い詰めてしまうことがあります。
でもね、それは「あなたの人格」のせいではないのです。
双極性障害は、脳の中の神経伝達物質セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのバランスが乱れることで起きる、脳の機能的な病氣です。躁状態のときは、脳が「アクセル全開」の状態になっていて、ブレーキをかけたくてもかけられない。それは意志の弱さではなく、脳の状態がそうさせているのです。
もちろん、起きてしまったことへの対処は必要です。 でも、自分を「ダメな人間だ」と裁く必要はありません。

治療について
双極性障害の治療は、薬物療法心理社会的アプローチの両輪で進めていく場合が多いです。

お薬のこと

薬を使用することにより「波をなくす」のではなく「波を小さくする」というイメージになります。
お薬については、 「調子がいいから、もうお薬はいらないかな」と感じるときが来るかもしれません。とくに躁の入り口では、「もう治った」という確信を持ちやすくなります。でも、自己判断で服薬をやめてしまうと、再発のリスクがぐんと高くなります。お薬の調整は、必ず主治医と一緒に行ってくださいね。

心理的なサポートのこと

お薬と同じくらい大切なのが、心理的なサポートです。
認知行動療法では、氣分の波に振り回されやすい考え方のクセに氣づき、少しずつ柔軟な捉え方を育てていきます。
対人関係・社会リズム療法という、双極性障害にとくに有効とされるアプローチもあります。これは、毎日の生活リズム(起床時間、食事、活動、就寝時間など)を整えることで、体内時計のリズムを安定させ、氣分の波を予防しようとするものです。双極性障害と体内時計の関係は研究でも注目されていて、睡眠リズムの乱れが躁やうつのきっかけになることがわかっています。
そして、心理教育もとても大切です。 自分の病氣を正しく知ること。自分の波のパターンやサイン(「最近眠れなくなってきた」「お金を使いたくなってきた」など)に早めに氣づけるようになること。こうした「自分を観察する力」は、再発を防ぐ大きな武器になります。

「氣分の記録」をつけてみませんか
私がカウンセリングのなかでよくお勧めしているのが、毎日の氣分と生活リズムの記録です。
むずかしいことではありません。 その日の氣分を10段階で記録する。睡眠時間を書く。「いつもと違うな」と感じたことがあればメモする。それだけで十分です。
続けていくと、「自分はどういうときに波が来やすいか」が少しずつ見えてきます。季節の変わり目、仕事が忙しくなったとき、人間関係でストレスを感じたとき等、きっかけは人それぞれです。
自分のパターンがわかると、「あ、今ちょっと上がってきているな」「ここは少しペースを落とそう」と、波が大きくなる前に対処できるようになっていきます。
これは、病氣に「コントロールされる」のではなく、自分から「付き合っていく」ための第一歩です。

周囲の方へ
もしあなたの大切な人が双極性障害を抱えているなら、知っておいてほしいことがあります。
躁のときの言動は、その人の「本心」ではないことがあります。 うつのときに「迷惑をかけてごめんね」と繰り返すのは、本当につらいからです。
「しっかりして」「氣の持ちようだよ」という言葉は、どうか飲み込んでください。 その代わりに、「そばにいるよ」「一緒に考えよう」と伝えてあげてほしいのです。
もしできるなら、ご本人が元氣なときに、「波が来たときにどうしてほしいか」を一緒に話し合っておくのもよい方法です。たとえば、「躁っぽくなってきたら声をかけてほしい」「うつのときはそっとしておいてほしい」など。あらかじめ決めておくと、いざというときにお互いが楽になります。

そして、支えているあなた自身も、疲れてしまうことも、 しんどくなることもあると思います。あなたにも、助けを求められる場所が必要です。 ご家族のための相談窓口や家族会も各地にあります。ひとりで抱え込まないでくださいね。

波があっても、あなたはあなたです
双極性障害と生きるということは、大きな波のなかで生きるということです。
波が来るたびに、「またか」と思うこともあるでしょう。 波に飲まれそうになることもあるでしょう。
でも、波のなかにいても、あなたという存在は変わりません。 調子がいいときも、沈んでいるときも、あなたはあなたのままです。
波をなくすことはできなくても、波との付き合い方を学んでいくことはできます。 そしてその道は、ひとりで歩かなくても大丈夫です。
あなたの話を聴きたいと思っている人が、きっといます。
どうか、波のなかで溺れそうなときは、手を伸ばしてくださいね。

おわりに

この記事は、双極性障害について「知る」きっかけのひとつとして書いたものです。ここに書かれていることがすべてではありませんし、おひとりおひとりの状態や経過は異なります。
「もしかして自分もそうかもしれない」と感じた方、今まさに波のなかにいる方は、どうかおひとりで判断せず、精神科や心療内科など専門の医療機関を受診してみてください。正しい診断と、あなたに合った治療やサポートにつながることが、いちばん大切な一歩です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
この記事が、あなた自身のためでも、大切な誰かを理解するためでも、少しでもお役に立てたらうれしいです。




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