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『ソース原理[入門+探求ガイド]』読書会レポート:本を通して新しいパラダイムの組織を学ぶ〜ティール組織ラボブッククラブ

今回はティール組織ラボが主催した、ステファン・メルケルバッハ著 『ソース原理[入門+探求ガイド]―「エネルギーの源流」から自然な協力関係をつむぎ出す』を扱ったオンライン読書会のレポートです。

ステファン・メルケルバッハ著『ソース原理[入門+探求ガイド]』

今回の企画は『ティール組織ラボ』のラボメンバーである山本彩代さんの主導で企画され、株式会社コパイロツトに所属するABD認定ファシリテーターの長谷部可奈さんをファシリテーターとしてお招きして実施されました。

また、今回の読書会には『ティール組織ラボ』編集長であり『ソース原理[入門+探求ガイド]』翻訳・監修を務めた嘉村賢州さんも参加され、著者であるステファン・メルケルバッハ氏との対話など、本に書かれていない内容も含め紹介いただくなど、ソース原理(Source Principle)の実践についてより深めていく時間となりました。


本企画に関する前提共有

ティール組織ラボとは?

2023年12月、『ティール組織ラボ』というティール組織(Reinventng Organizations)をはじめとする進化型組織の情報ポータルサイトが公開されました。

2018年1月のフレデリック・ラルー著『ティール組織』出版以降、国内では新しい働き方・組織運営のあり方に関するムーブメントが巻き起こり、『ティール組織』をはじめとする様々な情報が積極的に発信されるようになると同時に、実際に書籍などの情報もとに実践する企業・団体が多く現れました。

そして、2024年現在。国内における『ティール組織』の概念の急速な広がりや実践の増加によって生じたさまざまな状況について、落ち着いて振り返る時期が訪れつつあります。

さまざまな状況の例としては、以下のようなものが挙げられます。

世に発信される多くの情報には『ティール組織』の中で取り上げられた3つのブレイクスルーや組織形態の発展の5段階などの概念的な部分だけを扱ったものが多く、具体的な実践例が乏しい。

フレデリック・ラルー氏に直接当たらず、書籍のみを断片的に、かつ独自解釈して実践した結果、組織内で大きな混乱が生じたといったケースが散見されるようになった。

一方で、海外に目を向けてみると、まだまだ日本では一般的になっていない『ティール組織』に関するウェブサイトや、企業における豊富な実践事例が多数存在しています。

このような背景のもと、国内の状況にもどかしさを感じていた嘉村賢州さんはフレデリック・ラルー氏に『ティール組織』に関する情報を統合して閲覧できるメディアづくりについて提案し、ラルー氏もこの提案に賛同されたことから、ポータルサイトづくりが始まったとのことです。

なお、『ティール組織ラボ』とは、情報ポータルサイトの名称でもあると同時に、ティール組織やソース原理(Source Principle)などの新しいパラダイムに基づいて運営される組織・コミュニティのあり方を研究する有志の研究団体の名称でもあります。

有志の研究団体としての『ティール組織ラボ』は、2020年頃からティール組織に関する講座作り・実施や、国内外の情報を集めるポータルサイトのオープン・情報発信を行ってきました。

今年からは定期的な読書会や月に一回のラジオ番組なども実施されている他、ティール組織ラボ編集長・嘉村賢州さんによる『「進化型組織」を考える8つの視点』と題したブックフェアが紀伊国屋書店、蔦屋書店(幕張代官山)、丸善ACADEMIAなどで開催され、そこで扱われている書籍も以下の記事で紹介されてきました。

今回、実施されたアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)形式での読書会も、上記のような取り組みの1つです。

従来の延長線上にはない新たな組織運営のパラダイムの視座が得られ、解像度が高まるような本を選んでABDを行うことで、共通言語を作り、皆で学んでいこうという思いのもと、今回のブッククラブも企画されたとのことでした。

なお、このブッククラブのシリーズは、これまで第1回『ヒューマノクラシー』第2回『フリーダム・インク』第3回『関係の世界へ』第4回『コーポレート・レベルズ』全3回の「パーパス探求」読書会シリーズに続く企画に当たります。

ソース原理(Source Principle)とは?

ソース原理(Source Principle』とは、イギリス人経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威影響力創造的なコラボレーションに関する洞察を体系化した知見です。

国内ではトム・ニクソン著『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』出版を機に初めて体系的に紹介され、本書は日本の人事部「HRアワード2023」書籍部門にて入賞を果たすなど、ソース原理(Source Principle)は緩やかにその認知が広がりつつあります。

そして、ソース原理におけるソース(Source)とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、初めの無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割を指します。

The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.

Tom Nixon「Work with Source」p20

また、『ソース原理[入門+探求ガイド]』では以下のように表現されています。

ソースとは、何らかのイニシアチブを始めた、つまりその「源」となった人のことを指します。その人物を「ソースパーソン」と呼ぶ場合もあります。

ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]』p24

どんな形であれ、イニシアチブを取るために一歩踏み出したときに、その人は今まで入っていなかったスイッチを起動しています。その瞬間に、イニシアチブのソース、つまりソースパーソンになるのです。

ステファン・メルケルバッハ『ソース原理[入門+探求ガイド]』p24-25

そして、朝食を作ることや休日の予定を立てること、恋人に結婚を申し込むことから大きなビジョンを抱いて起業することに至るまで、人生のさまざまな場面で人はソースになり得ます。

振り返ってみれば、私たちはこれまでの人生で既に、何らかの活動のソースになったことがあるとがわかるでしょう。

ステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)

ソース原理[入門+探求ガイド](原題:A little red book about source)』の著者であるステファン・メルケルバッハ氏は、スイスに拠点を置くオーディナータ社(Ordinata)を2001年に起業したソース原理の実践者です。

ステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)

オランダに生まれ、スイスのフリブールで育ったステファンはフリブール大学、ジュネーブ大学で哲学を研究しており、このことは現在の彼の肩書きである「哲学する経営者(philosopher-manager)」にも通じています。

現在、ステファンはコーチング、コンサルティングを行うオーディナータ社(Ordinata)において、ソシオクラシー(Sociocracy)をルーツに持つ組織運営体系参加型ダイナミックス(participatory dynamics)』の提供を企業やチームに行うとともに、トム・ニクソン氏の立ち上げた情報ポータルサイトworkwithsource.comにも名前を連ねています。

また、ステファンは上記の活動に並行して2000年に小学校の設立に携わり、2021年まで小学校設立・運営プロジェクトのソースおよび小学校の校長として活動していた、教育者としての顔も持っています。

ステファンがソース原理、そしてピーター・カーニック氏に初めて出会ったのは、2013年のことでした。

"The Source Person" training dayと題されたその日のトレーニングでの出会いをきっかけに、自社の提供する企業を対象としたトレーニングやプログラムにおいてソースの概念は欠かせないものになったと、ステファンは書籍の中で述べています。

Curious about the title of "The Source Person" training day, on 25 September 2013 I innocently turned up, completely clueless as to just how much this experience would transform my professional life and my organization. Although only three participants were registered, Peter John Koenig, the moderator, surprised us by deciding to hold the day-long workshop anyway. A stroke of luck for us, as we got his full attention—just as he had ours. (…). Based on what I discovered that day I signed up for a longer program, a master class he organized the next year to transmit his findings. Since then the notion of source has become integral to the support and training we provide at Ordinata, a company I started in 2001.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p11-12

また、ソース原理の発見・体系化によって新たな「言語」を生み出したピーターへの敬意を示しつつ、ステファン自身もソース原理の発展に努めており、その知見を日本にも届けてくれています。

昨年12月〜1月にかけて初めて来日ワークショップや講演会を実施された後、今年10月には日本全国各地をパートナーでありオーディナータ社の同僚であるクローディーヌさんと巡られました。

今年10月に実施されたステファン来日企画については、以下のリンクもあわせてご覧ください。

加えて、英治出版オンラインでは現在、今回の読書会で扱うこととなった『ソース原理[入門+探求ガイド]』の訳者まえがきが公開されています。

この本の位置付けや構成、ステファンがどのような方か?についてはこちらもご覧ください。

アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎(ABD)とは?

アクティブ・ブック・ダイアローグ®︎の概要

現在、Active Book Dialogueの頭文字を取ってABDの愛称で親しまれているアクティブ・ブック・ダイアローグ®︎は、ファシリテーションの技法・哲学を読書会に活かす形で生まれた新しい読書手法です。

一冊の本を複数人の参加者同士で分担して読み、要約し、プレゼン発表を行なった後、パワフルな問いをもとに対話を進めるという、参加型ワークショップ的な進め方が特徴です。

現在のABDの原型は2013年、現・一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会代表の竹ノ内壮太郎さんがエドワード・デシ『人を伸ばす力―内発と自律のすすめ』の読書会を継続的に実施している際に、参加者の間でより生成的な学びを生み出していくためにさまざまな試行錯誤を続ける中で生まれたと言います。

一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会は、このABDという読書法を通じて『草の根の集合的な学びの広がり』と『書籍の叡智を誰もが分かち合い、対話し、繋がりあえる未来』を実現していくために設立されました。

現在は、今回実施する認定講座の実施の他、出版社や大学など様々なセクターとの協働、ABDに関する情報提供、書籍への寄稿などを行っています。

どのような場面で活用されているか?

2017年、アクティブ・ブック・ダイアローグ協会はABDの実施方法についてのマニュアルの無料公開を開始しました。以降、現在に至るまでさまざまな場所で実施事例が報告・紹介されています。

大学のゼミ活動・研修会、中学・高校の国語や総合学習の授業、まちづくり現場での勉強会、有志の読書会など、全国各地で新しい学びや読書の体験として受け入れられられている他、最近では企業内での研修・勉強会やグループ企業の経営会議の場に応用し、共通体験を通したチームビルディングや共通言語作りといった目的でも実施されています。

さらに、近年のコロナ禍においてオンラインでのコミュニケーションおよび学びの場づくり、ワークショップ実施の需要が高まったことから、対面だけではなく、オンライン上でABDを実施する事例も増えてきました。

ABDに関するお問合せ等は、こちらをご覧ください。

今回のABDのプログラム構成

ABDはその目的、選書、参加者の集まり方、活用できる時間などにより、さまざまなバリエーションの実施方法が存在します。

今回のプログラムは以下のように構成されていました。

  • 趣旨説明(山本彩代さんより)

  • チェックイン(全体で今の気持ちなどを共有)

  • どんな問いを探求したいか?や、興味関心を書き込む

  • リレープレゼン(3人ごとに1分ブレイク)

  • ギャラリーウォーク(ペアになって感想共有)

  • ダイアログ(小グループで行い、その後全体で)

  • チェックアウト(全体で感想共有)

今回、扱った範囲は『訳者まえがき』『序文』『探求ガイド編』などを除く『ソース原理[入門+探求ガイド]』の『入門編』の本文全編。

書籍の購入と担当部分のまとめを当日までにGoogleスライドに入力しておき、サマライズ(読み込みと要約)を事前に終わらせておくスタイルであり、ABD本編はリレープレゼンからスタートしました。

以下、今回の読書会に参加しての印象的な気づき、学びについて抜粋して紹介できればと思います。

読書会の中で扱われたテーマや視点

レスポンシビリティの質感とは?

全体の質疑応答の中で出た初めの問いが、レスピンシビリティに関するものでした。

responsibilityは一般的な日本語訳の場合「責任」とされ、類義語には「説明責任」などと訳されるaccountabilityがあります。

賢州さんは翻訳の際、responsibilityを「責任」と訳すことはミスリードになってしまうのではないかと考え、カタカナで表記したとお話しされていました。

responsibilityの原義に立ち戻ると、「応答する」「反応する」と訳されるresponseです。

人が何らかの活動のソースになる前には、さまざまなアイデア、直感、インスピレーションを受け取っており、それらはソースとして一歩踏み出すことへと誘うコール(the call)です。

このコールに応えて一歩踏み出し、何らかの活動のソースとなることは内発的なプロセスであり、「責任」や「説明責任」のような他者視点ではなく、自分の内側から現れる自分視点のものです。

人は誰しも自分の人生のソースであり、ある人が誰かが始めた活動に参加する場合も、自らの自由、創造性を表現する存在として参画するのであり、従属関係や「やらされ仕事」とは異なる協力関係が築かれます。

あるソースが別の誰かを自らの活動(イニシアチブ)のフィールドに招き入れるとき、招き入れる側であるソースはイニシアチブのビジョン、価値観といったイニシアチブのDNAを共有し、イニシアチブのある領域を担うことになったその人(サブソース)とレスポンシビリティを受け持ちあっていくこととなります。

このような質感の共有が、まず全体対話の中で行われました。

グローバルソースとサブソースの関係

次に大きく扱われたのが、グローバルソースとサブソースの関係性についてでした。

先ほど、あるイニシアチブを始めたソースが、他の誰かを自分のイニシアチブのフィールドに招き入れる時の例がありましたが、この時招き入れる側はグローバルソース、新しく参加する側がサブソースという関係になります。

ある会社の共同創業の場合、明確なグローバルソース(初めに一歩踏み出してイニシアチブを始めた人)がわかりづらいということがあったり、一緒にやる中で誰がグローバルソースやサブソースなのかわからなくなる、という場合もあります。

このような場合、どのようにグローバルソースを見つけていくことができるのか?という議論も生まれました。

賢州さんからは大きく3点、お話がありました。

1点目は、そもそもグローバルソースには、あるスキルや能力がなければなれないというわけではない、というお話です。

ステファンがよく使う表現として賢州さんが紹介してくれたのは、「私たちは誰もがparent universityを修了してから親になるわけではない。誰しもまず子どもを迎えると決め、いざ生まれてからは試行錯誤しながら親になっていく」というものでした。

2点目はグローバルソースの見つけ方。1つの方法として賢州さんが紹介してくれたのは、イニシアチブのみんなが受け持っているありとあらゆる仕事を洗い出した上で、その全体がうまく調和したり、成り立つよう目を配ったり、配慮しているのは誰か?というものでした。

3点目はグローバルソースによる、サブソースへの委ね方のパターンについてです。

大きく2パターンあり、1つはグローバルソースがサブソースを指名したり、積極的にコミュニケーションを取りながら役割・権限を渡していくパターン。もう1つは、サブソース側から積極的にグローバルソースへと新たな提案や役割についてのリクエストを行い、グローバルソースが認めていくというパターンです。

このようなさまざまな視点が、グローバルソースとサブソースの関係に関連して場に展開されました。

ABDそのものの価値の発見の機会に

今回は、ABDという読書会の運営法そのものへの言及も普段より多く行われたように思います。

それは、今回扱った『ソース原理[入門+探求ガイド]』は出版直後に対面でのABDも長谷部可奈さん主催で開催されていたということや、そこに参加されていた方がもう一度オンラインで今回参加されていたということ等も手伝って、参加者の多様性がとても高い場になっていたことも関係しているように思います。

今回のABDには上記のように既にソース原理やABDについてある程度の前提知識がある方に加え、ABDやソース原理に初めて触れるという方や、読書好きの方・ついつい積読してしまいがちな方など、『ソース原理[入門+探求ガイド]』を読むという一点で集まった多様な方々が参加されていました。

そして、最後に一人ひとりが感想を述べるチェックアウトの時間には、「初めての自分も優しく迎え入れてもらえた」「ABDへの解像度が上がった」といった感想も聞かれました。

今回の企画者である山本彩代さん(さよぽん)もまた、可奈さんについて「信頼のおけるABD実践者であり、(上記のような)多様な参加者をホールドしながら、対面・オンライン共に安心安全の場の進行をしてくださる方」と冒頭に紹介されており、今回はABDそのものの価値の発見や、実践の裾野の広がりも感じられた会になったように思います。

終わりに

ピーター・カーニック氏が見出したソース原理は、私の人生を一変させたアイデアであり、『ソース原理[入門+探求ガイド]』を用いたABDに参加し、皆さんと対話を深められたことはとても嬉しい出来事でした。

ソース原理と私の初めての出会いは父からの家業の事業承継の頃と重なっており、これまでにも『すべては1人から始まる』著者のトムや、『ソース原理[入門+探求ガイド]』著者のステファンとも事業承継とソースに関して対話を重ねてくることができました

今回の読書会で改めて感じたのは、ソース原理の哲学・人間観に込められている一人ひとりの存在への尊重、愛です。

今後もまた、さまざまな形でこの叡智の紹介と実践を進め、仲間たちとの協力やコラボレーションを生み出していければと思います。

さらなる探求のための参考リンク

国内におけるソース原理(Source Principle)探求の潮流を概観する:2025年1月時点の現在地

ティール組織ラボによる関連企画

12/12(木)ティール組織の概要をつかむ!「概論編」講座

2024年12月12日(木)「ティール組織」概論編講座

12/19 (木)嘉村賢州が振り返る!2024年「次世代組織の重要トピック」トークイベント

大きなアイディアを実現させる創造の源「ソース原理」とは何か|Forbes JAPAN

場とつながりの大冒険〜ソース原理探求編①キング・オブ・スラッカー(怠け者)の気づき|ティール組織ラボ

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