人生ベスト旅、更新したかも【フェロー諸島ひとり旅日記】
海外旅行には、世間の平均よりもすこし多く時間を使ってきたと思う。
だけどまだまだ「旅慣れてる人」には程遠いし、「最高、大満足!」と満面の笑みで帰ってきた旅なんて数えるほどしかない。
それでも今回、夫をアイスランドに残して決行したフェロー諸島へのプチトリップは「人生ベスト旅、更新したかも」と思える仕上がりだった。なにしろ絶景に次ぐ絶景で、都会に慣れた脳が混乱するような景色ばかりなのだ。

サウジアラビアに並ぶくらい推しの旅先となったので、ちょっと長めの日記を残したい。
▼前日までのアイスランド滞在記
【DAY1】9/9(月)レイキャビク→フェロー諸島
夫をアイスランドに残し、デンマーク自治領のフェロー諸島に向かう。
フェロー諸島はナショナルジオグラフィック誌によって「世界で最も憧れの島」に選ばれた島だ。「フェロー諸島なんてはじめて聞いた」という人がいたら、いますぐ画像検索してみてほしい。きっと「!」となるはず。

私はこれまで「一番感動した絶景は?」と聞かれたら「ウユニ塩湖」と即答していた。でも最近は「ウユニ塩湖とフェロー諸島」と答えている。
フェロー諸島はアイスランドとノルウェーの間に位置し、アイスランドの首都レイキャビクからは飛行機で2時間ほど。デンマーク領だが、独自の言語と通貨もあり、高度に自治されている。

フェロー諸島行きを確定させる前、私は迷っていた。フェロー諸島には行ってみたいけど、正直面倒くさい。下調べをし、ホテルや飛行機を予約する作業が苦手だからだ。
今回はやめておこうかなと思いかけた瞬間、偶然、Windowsの日替わり壁紙がフェロー諸島を表示してきた。これこそ私が見たい景色だ。

さすがにいまこんな写真を見せられたら行かずにいられないよ、というわけで、観念してチケットを取ったのだった。

出発当日。夜中の3時にレイキャビクのバス停からピックアップバスに乗り、空港へ行く。
9月上旬とはいえ、気温は3℃。風がびゅんびゅん吹いており、バスを待つ15分ですっかり体が冷えてしまった。
異国の深夜だろうと、もちろん夫は見送ってくれない。インドやサウジアラビアをひとり旅するような妻に、いまさら心配など無用なのである。

空港では搭乗が始まるまでのんびり過ごす。HAYとマリメッコで買いものをし、例のホットドッグ屋台があったので思わず一つ食べた。いま私の体は間違いなくホットドッグでできている。

ゲートにて、アイスランド初日のランチで隣の席に座っていた日本人らしき人を見かける。もしやあの方もフェロー諸島へ?いやいやまさかね……と思っていたけど、そのまさかのようだ。

しかも私が飛行機の席に着くと、その方が通路をずんずん進み、私のほうへやってくるではないか。まさかまさかの隣の席だ。
「窓側ですか、どうぞ」「あれ、日本の方ですか?」「はい。荷物あげましょうか?」「ありがとうございます。重いですよ」と言葉を交わした後、揃って狭い席につき、肩を狭めて前を向く。しばらく息を詰めたような沈黙を経て同時に「「あの」」と話し出したので、顔を見合わせて笑ってしまった。

お見かけするのは3回目ですよ。昨日ゲイシールで走っていませんでしたか、2日前のランチでは隣の席に……と伝えると、「ああ、あのランチのときの!でもお連れの方(※私の夫)がいらっしゃらなかったですか?」と聞かれたことから、お互いの旅遍歴を話す。
どうやら同世代であり、かつ同時期にバックパック旅に精を出していたようで、フライトの間は旅トークに花が咲いた。
最初は堅かったが、窓の外にフェロー諸島が見えてくるにつれ、その景色に「え〜〜?すご!」「うわうわ、やばいね!」と語彙力をなくし、一気に打ち解ける。

ぜひ訪れたいと思っていたスポット「lake above the ocean」は、空港から市内の間に位置している。空港発のバスかタクシーを降りた後、1時間ほどトレッキングする必要があるようだ。
アクセスに不安があったので「もしよかったらこのあとご一緒しませんか?」と誘い、快諾を得た。

目的地に向かうまでの景色がすでにすごい。


驚いたのは、自宅の最寄駅が同じだったことだ。
「駅前のジムに通ってるんですよ」「スーパーのそばの?駅のあっち側のイタリアンは行ったことあります?」「おいしいですよね〜あと、あのラーメン屋さんにもぜひ行ってほしい」なんて会話を、北緯62度の世界で繰り広げることになるとは。

1時間ほど歩くと、だんだんお目当ての場所が近づいてきた。

写真では伝わりづらいが、断崖絶壁の上に湖がある。ちょっと言葉を失うほどの景色だ。

正直、昨日アイスランドの絶景を見てしまったので「フェロー諸島では感動できないかも」と思っていたが、まったくもって杞憂だった。
行きのトレッキング中に「ぐきっ!!!」と音が鳴る捻挫をし、帰りもバスの時間にあわせて全力疾走するうちに再び派手に捻った(しかも初対面の人に気を遣わせまいと捻挫の事実を隠匿し続けてしまった)けど、本当に来てよかった。

バスの時間が迫っているのに、フェロー諸島の伝統的な草屋根を見かけるたびに立ち止まっては写真を撮ってしまう。


なんとかバスに間に合い、市内のホテルへ。これまた見たことのないような景色の連続で、無言でシャッターを切り続けた。通勤や通学で毎日こんな景色を見ている人がいるんだな。世界は広い。


市内中心部に到着し、私は「Hilton Garden Inn Faroe Islands」にチェックインした。ここにも草屋根デザイン。



散歩がてら、気になっていたカフェへ向かう。

私は海外旅行に「驚き」を求めるタイプだ。だけど旅行経験が増えるにつれ驚きを得にくくなり、どこに行っても「ああ、この感じね」「あの街に似てる」なんて思ってしまっていた。

その点、フェロー諸島には見たことのない景色がたくさんあった。「歩いててこんな楽しい街もなかなかないなあ」とひとり呟いてしまったほどだ。

これが気になっていた「Panama Café」。

メニューにhomemade hotchocolateを見つけた瞬間、「いま飲みたいのはこれだ」と確信した。

店員さんがきびきびと立ち働いている様子、ホットチョコメーカーがくるくる回っている様子を見ていると、海外にいるとき特有の緊張がふんわりほぐれた。北欧のカフェはこうでなくっちゃ。


かなり派手に腫れてきた足首をそっと撫でながらひとり眠った。
【DAY2】9/10(火)フェロー諸島のツアー参加
フェロー諸島のツアーに参加する日。
ツアーは苦手だが、アイスランド同様、フェロー諸島も自力でまわるのは厳しい。「行きたくないな~」と思いつつ日帰りツアーを予約しておいた。

朝、ホテルでのピックアップ時間まで少し余裕があったので、散歩がてらスーパーへ。気になっていたアイスランドのヨーグルト「SKYR」を購入する。チーズのような濃厚さがたまらない。

さて、ホテルのロビーでツアーバンにピックアップしてもらい、すごい景色の中をドライブする。

まず立ち寄ったのが刑務所。絶景自慢で、“ファイブスタープリズン”という別名があるんだとか。

以前、ここから脱獄した人がおり、しばらく羊小屋に隠れたあとバスで逃げようとしたものの、すぐに捕まったそうだ。こんなに人口密度が低そうな街だ、変わった動きをする人は目立って仕方ないだろう。

次にツアーバンを降りた公園で、ガイドさんがすっと私に近寄り、耳元で何かをささやいてきた。

よくよく聞いてみると「ツアー参加者でない人を連れてきてしまった」という。「ツアー参加者でない人」とはほかでもない、私のことである。
なんと、私のオンライン決済が失敗しており、申し込みがキャンセルになっていたとのこと。私と同じ場所でピックアップする予定の人を置き去りにし、その代わりに私を乗せてしまったらしい。そんなことある?乗る前にも乗った後にも自己紹介したやないの。
「それならここで帰ります」と言ってみたが、「大丈夫、ツアー終了後に支払ってくれればいいから」とのこと。自分が悪いくせにテンションが下がり、もはや帰りたくなっていたが、乏しい英語力でそれ以上言い募るのも面倒だからついていく。私の人生はたいていこんな感じである。

私と間違われた人がタクシーで到着し、その人を乗せて次のスポットへ。ああ、気まずい。この人が途中からしか参加できないのって私のせいやん。でも感じよく謝れるようなコミュニケーション力を持ち合わせていない。窓の外の景色を熱心に眺めている振りをしてごまかします。

もう一つ、悪いニュースがある。どうやらこのツアーバン、昨日行ったlake above the oceanに向かっているようだ。感動したけど2回は行かなくていいというのが正直な気持ちである。

昨日よりお天気もよくないし、捻挫した足も痛い。車の中で待っていようかとも思ったが、それを言い出す勇気もなくついていく。


結果として、来た甲斐はあった。お天気がよくないことが幸いして、虹を何度も見られたからだ。といっても、このあとフェロー諸島ではお天気がころころ変わり、3分に1回の頻度で虹を目撃することになるのだけど。

写真では壮大さがよく伝わらない滝や、フェロー諸島らしさあふれる村にも連れて行ってもらった。きっと個人ではたどり着けなかっただろう。ツアーに参加して正解だった。


さて、いったんホテルに戻ってツアー料金の支払いを済ませ、海沿いのカフェ巡りをスタート。

まずは、港を望む「Kaffi húsið」。地元民らしき人びとのおしゃべりをBGMに、チーズケーキでカロリー補給する。



続いては「Brell Café」。「もう閉店なんだけど、残っちゃいそうだからよかったら食べない?」とさくさくのクロワッサンを2つももたせてもらった。ぶぶ漬けならぬ、ぶぶクロワッサン?


最後に、昨日も行った「Panama Café」へ。昨日とは違う席に座り、ヒュッゲなひとときを過ごす。

フェロー諸島の国旗カラーのキオスクを見つけて思わず駆け寄ったりも。雪景色に映えそうなデザインだ。

遠回りしながらホテルまで歩いていく。坂道の途中でふと振り返ると、はっとするような景色が広がっていた。

ひんやりした風景にイヤホンから流れるあいみょんとスピッツがマッチしていて、何度も何度も振り返りつつ小さな声で歌いながら歩いた。

カフェでいただいたクロワッサンを食べ、もっとフェロー諸島にいたいなと思いながら寝る。赤く腫れた足首はまだまだ治りそうにない。

【DAY3】9/11(水)フェロー諸島→レイキャビク
アイスランドへ戻る日。名残惜しく、バス停までゆっくりゆっくり歩く。

すれ違ったおじさまに「どこから来たの?私はそこのオフィスに毎日通勤してるんだ」と声をかけられた。そちらに目をやると、「うらやましい」としか言いようのない景色が広がっていた。

バスで空港へ。次から次へと虹が登場する。「虹の始まり地点を目撃する」「虹の下をくぐり抜ける」という夢が一気に叶った。

チェックイン開始までは、飛行機が目の前に見えるカフェで過ごす。天気がころころ変わる様子を眺めていると、ここで過ごした2日間が五感を伴って思い出され、いっそう離れがたくなった。

同志社大学に留学していたという人に話しかけられて、ひとしきり日本語で盛り上がる。インスタを交換すると、その人のアカウントは京都の美しい写真でいっぱいだった。
機内からの眺めも、京都の美しさに負けていない。景色に見惚れていると、フェロー諸島からレイキャビクまでのフライトはあっという間だ。

レイキャビクのバスにすっかり慣れ、地元の人のような顔でホテルへ帰る。

さて、レイキャビクのラスト1泊。ここでやり残したことといえば、カフェめぐりだ。
夫が付き合ってくれるというので、まずは「Mokka Kaffi」へ。先日通りがかった際、私のカフェアンテナが反応したお店だ。午後の光がたっぷり差し込み、レトロな空間を照らしていた。


続けてもう一軒、「Café Rosenberg」へ。こちらも先日見かけて、好みだと確信していたお店。思い思いの時間を過ごす人たち、きっと常連さんで、各自のお決まりの席があるんだろうな。

夕食は気になっていたレストラン「SNAPS」へ。

マグロのタルタル、シーフードスパゲッティ、ムール貝を選ぶ。
フェロー諸島ではカフェのパンやケーキくらいしかとっていなかったので、ひさしぶりの食事らしい食事だ。

池のまわりを散歩し、お互いが不在の間の出来事を交互に話しながらホテルに戻る。ハットルグリムス教会は遠くから眺めても美しい。

今日はホットドッグを食べなかったな、と思いながらぐっすり眠った。
▼前日までのアイスランド滞在記
▼翌日以降のポルトガル滞在&スペイン日帰り記
▼いまのところ人生ベスト旅はこれ
