Mochi好きなフランス人に、雪見だいふくをつくってみた話
よくフランス人はgluant(=ねばねばした感じ)なものを好まないというけれど、我が家のおこだわり星人、Otto氏がまさにそれだ。
片栗粉でつけたとろみ系のソースはダメ、とろみのある卵スープもダメ、揚げ出し豆腐もダメ、ゼリーっぽいものもダメ。でも、gluantの典型オブ典型ともいえる日本のモチはいけるらしい。まったくもって謎だ。甘いから?なお、彼にとっては団子も大福も饅頭も餅そのものも、もれなくすべて「Omochi」。
外に目をむけてみれば、明らかに日本の雪見だいふく発祥としか思えない「アイスを求肥のようなものでくるんだもの」が、「Mochi」と名前を変えてフランスのスーパーのアイスの棚に並び始めたのは確かコロナの頃。マンゴーとかココナッツとかピスタチオとかフランボワーズとか、それはまあマカロン並みにカラフル展開なのがフランス流。どうせ一過性のものだろうと思っていたけれど、いまだアイスクリームの棚に鎮座しているので、一定の市民権は獲得したのであろう。
スーパー最大手カルフールのサイトでモチ検索したらこんなにある(←クリック)。

いつも思いつきは突然に。
先日日本のものを大切に保管している倉庫整理をしていたら、何やらレトロなパッケージを発見した。白玉粉だ。
整理するたびに出てきては、「いつかみたらし団子を」と思い続けること幾星霜。コロナの時期に仕入れたものなので賞味期限は…ごにょごにょ。
過去のnoteを見返してみたら、秋分の日に米粉で作ったみたらし団子がイマイチだったことを受けて、いつかちゃんとみたらし団子をつくろうとその後日本食エピスリーで仕入れた白玉粉であることを思い出した。
この白玉粉を目の当たりにして、雷が落ちたかのように私はひらめいた。これ、雪見だいふくが作れるんじゃないか?ヤツは日本滞在中に雪見だいふくとUFOをコンビニで買って毎日リピートするほどの、雪見だいふく愛好家だ。なお、こちらのMochiアイスについては、一度試して「あのニッポンの白いモチとは違う!」とそっぽを向いていたことを覚えている。
ナイスなことに、先週はちょうど彼の誕生日ウィーク。せっかくなので、好きなものをつくってあげよう。
普段の私であれば、アイスから自作してしまうところ。過去にはチョコミントアイスをこだわり自作するなどしていたものだ。今読み返すとまったくもって狂気じみている。
ただみなさんご存知のように、先週は欧州に熱波到来で、北フランスも今回ばかりは大変だった。朝から暑く、いくら日本のあの夏を知っている私でも命の危険を感じるレベル。家の中はうまく対策したので日中は引きこもってそこそこ快適に過ごしていたけど、熱のこもる上階の寝室は常にサウナ状態。夜、なかなか眠れなくてそのせいか常にぼーっとしているため、とてもじゃないけどアイス自作なんてする気になれなかった。よって、アイスは市販品に頼ることにして、本格的に暑くなる前にスーパーまで保冷剤と保冷バッグ持参でひとっ走り。
アイスはバニラ一択だ。一応誕生日だしな・・・と、まず手に取ったのはハーゲンダッツバニラ。でもちょっと待て、本家本元ロッテの雪見だいふくはそんなこってりしてなかったよなあ?軽くてミルキーなアイスだった記憶。
しばし迷ったけど、あの懐かしの雪見だいふくにこってりプレミアム感は不要との結論に至る。ここはハーゲンダッツよりもライトなCarte d'Orのバニラを使うことにしよう。

Youtubeで検索したら上のほうに出てきたこの動画を参考につくってみる。要約すると、「白玉粉と水と砂糖を混ぜてレンジでチンして求肥をつくり、求肥を伸ばして型に入れてアイスを詰め込んで形づくって冷やして完成」とのこと。たしかにおうちで簡単にできそうな感じがする。
このビデオでは、雪見だいふくのパッケージを再利用して形を作っているけど、無論、本物のパケは北フランスの港町では入手不可なので、アイスを先に形作っておくことにした。


アイスの下準備ができたら、雪見だいふくの大福たるところの求肥を作ろう。レシピによれば「白玉粉40g、砂糖40g、水45ml」。アイスが4つあるから、少し分量を増やしたほうがいいかな?25%増やして白玉粉50g、砂糖50g、水56mlくらいでスタート。
まず白玉粉を耐熱のボウルに入れ、水を少しずつ混ぜて白っぽいとろとろな状態にしてから砂糖を加えて混ぜる、とのことだけど、白玉粉と水を分量どおり混ぜてもとろとろにはならないのですが。

多分水が足りないのだろうと踏んで、動画に出てくるくらいのゆるさになるまで少しずつ水を足していく。72mlくらいでちょうどよさそうなゆるさになった。

ここに砂糖を加えてよく混ぜたら、ラップをふんわりかけて1分半レンジにかける。

1分半レンジにかけたものをゴムベラで混ぜて、さらに30秒レンジへ。

まな板にコーンスターチを打ち、求肥をボウルから出したのち、まわりに粉をきちんとまぶしたら、4等分にする。

次に、4等分にしたそれぞれの求肥をアイスを包めるくらいの大きさに円形に広げる。ここが一番の難関かしらね。
なんといっても私はねばねばしたものを取り扱ったり伸ばしたりという作業がどうにもこうにも苦手だ。最初綿棒を使って伸ばしてみたけどどんなに粉をまぶしてもくっつくし生地は熱いしでムキー!となって、結局最後は生地がぬるくなってからピザ職人的に手で伸ばすという。ただでさえ暑いのに、モチ生地との格闘で汗びっしょり。

まあおくるみできればいいだけなので・・・ね
ここに、アイスをのせてくるんでいく。アイスは出してすぐに溶けていきそうな勢いなので、ひとつずつ冷凍庫から出してきては時間との勝負でくるんでいった。

イッタラのプレートは調理器具としても優秀

上下ひっくりかえしたらこのきゅっとした部分は見えなくなるからよし
4つ分、包んだら、タッパーに入れて冷凍庫で冷やし固めること2時間。おやつタイムにいただく。
こちらが自作・雪見だいふくの完成系。

見た目、あのぐちゃっとした皮からは想像もできない大福ぶりではございませんこと?

私の分をカットしてみたところ・・・おおおお!これはかなり、いい塩梅の仕上がり。

キッチンに近寄らないようにと指示して先にテーブルで待機していたOtto氏に、サプライズだと言って持っていく。最初は「ナニコレ?」という表情だったけど、すぐに気がついて、「ああ!あのコンビニの!」と。そうだよ、コンビニで毎日買ってたあのオモチだよ。
食べ物に対してかなり慎重派な、おこだわり星人のお作法。知らないものはまずくんくんと匂いをかぎ、あらゆる角度から物体を眺め、怪しげなものには「Cest quoi ça !?」と、警戒心を示す。あんたは犬なのか?
けれど、今回ばかりは違った。「あのコンビニのOmochi!」となった瞬間、中年スイーツ男児の顔が完全に緩みまくっている。
ひとくち食べる。
「…Umma !」
もう一口。
「Oishi! Oishi!」
持てる限りの「おいしい」日本語ボキャブラリーを乱発する中年5歳児。
雪見だいふく外交、完全勝利である。
ひとしきり彼の反応を楽しんだところで、どれどれと私もひとくち食べてみる。
……覚醒。
これはかなり本物に近い!求肥が完全にちょっと厚めで食べ応えのある雪見だいふくの皮だし、アイスが皮のモチモチ感と一体化している。口の中で皮と同時に溶けていく感じだ。
このnoteを書くにあたって、雪見だいふくとハーゲンダッツの成分を調べたら、案の定表示は雪見だいふくはアイスミルク。ハーゲンダッツはもちろんアイスクリーム。成分をみたら乳脂肪分が雪見3%、ダッツ15%だもの。
やはり私の舌の記憶と直感を信じてよかった。この皮に包まれるべきなのは、リッチなハーゲンダッツじゃない。こういうときは、ほどよく庶民派なCarte d'Orなのである。アイスクリームの選択を間違えなかった私にスタンディングオベーション。
外は絶望的な暑さだったけど、家の中では白いモチに包まれた小さな幸せができあがった。
熱波のなかの一筋の清涼感。
自作雪見だいふく、大成功。
