賞金総額5億5千万円―Future Vision XPRIZE動画コンテストでの気づき
こちらの投稿の続きです。
有利な応募者はいるのか
Future Vision XPRIZEの賞金総額は350万ドル(1ドル156.53円の現在、ざっくり5億5千万円)。うち250万ドル(約4億円)は優勝者の映画製作費用になります。
Future Vision XPRIZE応募者の背景は、ビデオ クリエイター、YouTuberなど様々。YouTuberの中には数十万人のフォロワーがいる人もいます。そういうインフルエンサーが有利なのか。その可能性は確かにあります。そして少なくとも映像面ではその実力がうかがえる人たちがいます。過去のXPRIZEでは潤沢な資金を持つ企業による参加がほとんどのようですが、今回はAIを含め、あらゆるツールを用いることが認められています。つまりAI動画での参加ができます(必須ではない)。何かに似ていませんか? そう、AIの参加も認められている日経「星新一賞」です。
応募者には映画を製作した経験があるとは限りません。応募作品はすべて公開されており、提出済みのものをいくつか見ました。現時点では、正直、映像も内容もいまひとつのものもかなり見られます。有力プレイヤーは8月15日の締め切り直前に出すのかもしれません。もちろん自分の作品にも現時点で自覚している問題点は多々あります。
何に気をつけるべきなのか
AI動画作成にあたり、自戒として何に気をつけるべきか少し考えてみたいです。
どこかで見た、ありがちな展開になっていないか
展開が遅すぎないか
情報を詰め込みすぎていないか
見せたい絵が先行して、視聴者が何を観たいか無視していないか
新鮮な驚きを与えることができているか
AIで「良い動画」は作りうるのか
今時、きれいなAI画像なら誰でも簡単に作れます。そして品質を問わなければ、最大3分のAI動画でも、だれでも、そして一人でも作れます。たとえば「AI使用禁止の短編小説コンテスト」などと比べると参加のハードルは低い。しかし、高品質のAI動画は、誰でも簡単に作れるわけではありません。
現状のAI動画は、以前よりは大きく進歩したものの、ツールの技術的限界がまだかなりあります。低予算でもひとまず映像は作れるが、品質を上げようとすると時間、お金、労力がどうしても必要になります。映像制作会社か、そこと組むチームが有利のようにも見えます。どこまで時間、お金、労力をつぎ込むべきかは難しいです。AIの大きな利点は、それらを減らせるということのはずなので。
なぜAI動画は嫌われるのか
動画サイトではすでにAIショート動画があふれています。映像も内容も低品質なもの、あるいは映像的には良くても内容が薄いものも多く、「AI動画はくだらない」というイメージはかなりあります。品質がどれだけ良くても、AI動画全般に対する嫌悪感、拒否反応も根強いように思います。Future Vision XPRIZE協賛企業であるGoogleが、AIで映像も内容も高品質な動画が作れることを示したい、と考える理由は分かります。
AI動画を見るとき、まずAI画像の違和感、いわゆる不気味の谷を感じます。そのほかに、AIが人間にとって代わろうとしている恐怖、そして通常は莫大な予算と労力が必要なはずなのに「制作者が楽をしている」という考え。こういったものが見る人の心に沸くのかもしれません。
物語と動画の質の両方が必要
関連情報をざっと見て気づいたのは、映像作成の経験にかかわらず「頭のいい奴にはチャンスがある」ということ。AIを活用すれば、知識や経験不足はある程度補えます。まず、物語がSF映画のシナリオとして面白いかという問題があります。しかし規則では物語そのものは人間が書くこととされているので、ここでAIに書かせることはできません。映像には詳しくてもSFはよく分かっていない、という参加者もいそう。
仮に面白いSFシナリオが書けたとします。次の段階としては、当然、動画の質も求められます。ここではやはり映像制作の経験がものを言います。単にAIツール全般に慣れているから、また、他の分野で成功しているから有利とはいえません。従来の映像制作手法に加えて、AI動画について理解したうえで、AI動画生成ツール、動画編集ツール、画像編集ツールを活用する必要があります。ただ、せっかくAIが使えるのに従来の映像制作手法にとらわれてしまう、ということもありそう。そして映像制作のプロは、AIに抵抗感が強いかもしれません。
小説家による映像化
作品執筆そのものはともかくとして映像化にAIを使う。これは小説家としては興味深い実験です。現実となったAIについてSF作家がどう接するべきか。これはAI小説家のパネルディスカッションでも考えたことではありますが、AI動画についても考えることができます。SFのAIと現実のAIはある意味では別物です。ただ私自身はSFでAIについて書いてきたので、現実のAIを無視することはできないと感じます。
今回の制作で役立ったのは拙作SF小説のためのミュージック ビデオの作成でした。歌詞を自分で書き、Sunoで生成した音楽のためのものです。
私のようにFuture Vision XPRIZEに一人で応募している人はけっこういます。AIを活用すればそれは十分可能です。ただ自分の不足スキルを知り、独りよがりにならないように注意が必要と感じます。
