【オトナになることのうた】斉藤和義 その3●『青春ブルース』からのノスタルジックな叙情性
毎日のように檸檬堂を売っている店を探し、購入していましたが。その日々は終わりですわ。

お~いお茶は買ったものの、スムーズに進まず。さて、どうなる。
昨今は毎日どこかで激震が起きていますが、自分的には、バッド・バニーのスーパーボウルのハーフタイムショーの件。
これに大統領が絡むとは驚いた。
バッド・バニーは近年アメリカのチャートを席巻しているアーティストだけど、このニュースで気骨のあるところが確認できた。非常に意味のある一件でした。
そんな中、取材をあれこれこなしたりしている青木です。
発売中の『音楽と人』、最新の3月号には、僕が書いた吉井和哉の年末の武道館ライヴのレポートと、Enfantsという面倒くさいアーティストにインタビューした記事が掲載されています。ぜひご一読を~。

それでは今回は斉藤和義の3回目。
<大人になったらSUNDAY 強くなれるなんて 信じちゃいけないよ>
2000年代に入り、体調を崩すなどして、ちょっと不安定なところもあった斉藤和義。
彼がそんな状況から調子を取り戻してきたと思えたのは、2004年だった。この年はまず「ぼくらのルール」という印象深いシングル曲が出ている。
続いて、4月にアルバム『青春ブルース』をリリース。このアーティストのリリカルな魅力が発揮された一作である。
タイトルにある青春と、彼が好むブルースという言葉が、若さや青さと、加齢や渋みの両方を感じさせる。
僕がこのアルバムの直後に彼にインタビューをした時に「メロディに帰ってきた気がしますね」と語ってくれたことを覚えている。つまり、そこまでの何年間かはサウンドのほうに重きが寄っていたということか。
浜崎貴司とのコラボで、この栃木生まれ同士が宇都宮の光景を唄った「オリオン通り」もその1曲だろう。やはりノスタルジーがにじむ曲である。
同じ2004年のうちにはシングル「真夜中のプール」という、やはり秀作を発表。数年前までの苦しい時間からひと区切りがついたかのように、彼は叙情性の濃い曲をリリースするようになった。
「真夜中のプール」は、古い友達を介して<君>のことを思い出す、青春時代を回想する歌。ノスタルジーを下敷きにしたテーマ性は、のちの楽曲でも登場し、表現に活かされていくことになる。
そして<君>の結婚に思いを向ける主人公は、<知らないうちに僕ら大人になっていく>と唄う。
この時の斉藤は、38歳。すっかり大人の年齢と言っていい。
当時はシングルのリリースも多く、着々と曲を重ねている。その流れが続く中、翌2005年10月には「FLY~愛の続きはボンジュール!~」を発表(余談だが、この表題曲のレコーディングに、この頃に自分が知り合いだった女性が参加していて、ちょっと驚いたものだ)。
この「FLY」のシングルのカップリングとして「ため息の理由」という曲が収録されている。同曲は、変わろうとする<君>のことを唄っているが、そこでその相手のことを<ため息をつく度に大人になる>と表現した歌詞がある。
2006年6月にはオリジナルアルバム『俺たちのロックンロール』。先ほどまでのシングル曲を含む、これまた好調ぶりが出た作品だった。
この中の「SUNDAY」という曲には、<大人になったらSUNDAY 強くなれるなんて/信じちゃいけないよSUNDAY デタラメばかりだよ>と唄われている箇所がある(これと似た表現は後半でも出てくる)。この頃になると、大人になることについて、どこか達観したような表現が出てくるようになってきているのだ。迷いでも、戸惑いでもなく。
斉藤は40歳になっていた。
この後の2007年、かねてから斉藤のファンだという作家の伊坂幸太郎との対談が実現している。ふたりは2月26日に対話を残していて、どれも興味深いのだが。その中には、こんな言葉があった。
(デビュー当時の話からの流れで、現在の自分について)
斉藤 ちょうど30だったんですけど、あんま変わってない気がするし、どうでしょうね。基本的にはあんまり変わってないですね。
――こういう40歳になるんだろうなというイメージは?
斉藤 あんまり考えていませんでしたね。ただ、40ってもっとジジイだろうなとは思っていましたけど。気分もそんなに変わらないし、逆に「こんな自分でいいんだろうか」という感じはあります。まあ、しょうがないか、とは思ってますけど。

40代に入っても重ねられていく斉藤の【 #オトナになることのうた 】
この時期の斉藤はカバー曲のリリースも多く、2007年3月にはそんな楽曲や伊坂とのコラボ曲を含む企画盤『紅盤』を発表。本作に収められた「君は僕のなにを好きになったんだろう」という曲は、<僕が大人になったら なんになろうかなんて/いまでも考えてしまう>という唄い出しから始まる。
ただしこの作詞はコピーライターの一倉 宏によるもの。斉藤より11年も年上だが、こうした歌詞が斉藤にハマると考えたのだろう。
ここで蛇足だが……この『紅盤』が出た時に斉藤が渋谷のタワーレコードでインストアイベントを行っていて、実はその際に僕がイベントの司会を務めた。当日はもともと斉藤のファンである僕のカミさんも子連れで観に来て、終演後には3歳だったうちの娘と一緒に、斉藤あいさつ。すると彼が「ちょっとすいません~」と言って、娘のほっぺを人差し指でぷにぷにしてくれたものだ。
斉藤の調子の良さは、この後も続いていった。
2007年秋にはアルバム『I ♥ ME』を発表。このアルバム中のスローな曲「嫌いになれない」には<大人になれない ナルシスト>と、大人になれない心境をやや俯瞰で見つめたような歌詞が出てくる。
また、「男節」は本アルバムでも注目曲のひとつだった。この歌で唄われる、ちょっと古臭い男女観や昔気質の価値観は、斉藤というアーティストを理解する上で重要な要素ではないかと、僕は考える。
斉藤は決して古い常識や価値観の人ではないと、僕は思う。ただ、そのような伝統的な、古典的な物の考え方の良い部分やその意味をよく知っていると感じるのだ。
2008年には「やぁ無情」のカップリングに、ICEの宮内和之による楽曲「FOOLS」を収録。<立派な大人にならなくちゃ>という歌詞が印象深い歌である。斉藤と関係が近かった宮内は、残念ながらこの前年の12月に病気で亡くなっている。これ以前に僕も少しだけお話をしたことがあるが、とてもジェントルな人だった。
2009年8月には、シングル「COME ON!」をリリース。<涙を知って 大人になって あの日の空もブルー><メロディは言った/「大人になると 何でもわかっちゃうからきっと飽きちゃうのよ」>という歌詞からは、もはやこうしたテーマをナチュラルに織り込んでいる気配を感じるほどだ。
それにしても「COME ON!」のロック感は、プライマル・スクリームと同系列。古いロックが好きな斉藤は、プライマルのサウンドが好きなのだと思う。
快調に活動を続ける斉藤和義。やがて2010年には、4月にリリースした「ずっと好きだった」がチャートのトップ10に入るほどのヒットを記録する。
資生堂のCMソングだったり、またMVではビートルズをオマージュしていたりと、話題性がたっぷり。何より、先ほど書いたようなノスタルジーが混じった叙情性こそが、この歌の根底にはあったのだと思う。
ところが、この次の年の2011年。ご存じの通り、日本は東日本大震災に見舞われてしまう。
そこから起きたさまざまなことで斉藤和義は、自身の強いアーティスト性を見せることになった。この思わぬ事態によって、である。
<斉藤和義 その4 に続く>

四番町定食(チキンカツ・ショウガ焼)、850円。
主力メニューがチキンカツのようで、
モリモリ食べちゃいました
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