【連載②】データの種類、検定の種類
検定名を暗記するより、問いの形を見る
統計の本をチラ見したら、よく分からない解析方法がたくさん出てきました。
t検定
分散分析
χ²検定
Fisherの直接確率法
相関
回帰分析
ロジスティック回帰分析
オッズ比
相対リスク
待って待って??????
初対面の人が多すぎる。
しかも、名前だけ見ても何をしているのか分かりにくい。
「χ²検定」なんて、字面だけでこちらの心を折りにきています。
カイ二乗検定って読むらしいです。読めてもまだ分からない。
ただ、少しずつ勉強していて思ったのは、最初から検定名を丸暗記しようとするとしんどい、ということです。
先に見るべきなのは、検定名ではありません。
まず見るのは、
何を知りたいのか
どんなデータと、どんなデータの関係を見たいのか
です。
料理でいうなら、いきなり「低温調理」「乳化」「湯煎」「ブランチング」みたいな技法名を覚えにいく前に、
「肉を焼きたいのか」
「野菜をゆでたいのか」
「ソースを作りたいのか」
を見た方がいい、という感じです。
統計も同じで、まずは材料を見る。
今回の材料は、データの種類です。
まず見るのは「目的変数」と「説明変数」
統計で何かを調べるとき、多くの場合は、
結果として見たいもの
と
その結果に関係しそうなもの
があります。
たとえば、薬の効果を調べたいとします。
「薬を使ったかどうか」で、
「有効だったかどうか」が変わるのかを見たい。
この場合、

です。
目的変数は、ざっくり言うと「結果として見たいもの」です。
説明変数は、ざっくり言うと「結果に影響しそうなもの」です。
ここを見ずに解析方法の名前だけ追いかけると、
「t検定?分散分析?ロジスティック回帰?どれ?全部おいしそうだけど何料理?」
みたいになります。
統計のメニュー表で遭難します。
なので、まずは
目的変数は何か
説明変数は何か
を見ます。
そして次に、それぞれが
名義データなのか
連続データなのか
を見ます。
名義データと連続データの見分け方
まず、名義データとは、名前や分類で表されるデータです。
たとえば、
有効/無効
死亡あり/死亡なし
男性/女性
試験群/対照群
喫煙あり/喫煙なし
血液型A型/B型/O型/AB型
アンケートの満足/不満足
のようなものです。
名義データは、ざっくり言えば「分類」です。
カテゴリデータと呼ばれることもあります。
ここで少しややこしいのが、数字で書かれていても、名義データの場合があることです。
たとえば、こんなデータがあったとします。

この表を見ると、患者IDも性別コードも数字で書かれています。
でも、性別コードの1と2を平均して、1.5にしたいでしょうか。
1.5性別。
新たな性別を作らないでほしいですよね?(今の時代はそうでもない…?)
つまり、数字で書かれていても、計算するための数字ではないものがあります。
この場合の数字は、単なるラベルです。
なので、
数字で書かれていても、平均を出したりする意味がないものは、名義データとして考える
と見分けやすいです。
一方、連続データとは、数値として大きさを持つデータです。
たとえば、
血圧
年齢
身長
体重
検査値
血糖値
テスト点数
アンケートスコア
のようなものです。
連続データは、
平均を出す
差を計算する
1増えたときの変化を見る
といったことに意味があります。
たとえば、血圧が120と140なら、140の方が高い。
テスト点数が60点と80点なら、20点の差がある。
身長が150cmと170cmなら、170cmの方が高い。
このように、
大小関係や差に意味があるものは、連続データとして考える
と見分けやすいです。
データの組み合わせで、解析方法の見通しが立つ
代表的な組み合わせは、次の4つです。

これだけ見ると、まだ少し硬いですね…
「なるほど、表は見た。で?」となります。
表を見ただけで分かった気になるなら、私はこんなに統計で足止めされていません。
なので、1つずつ見ていきます。
1. 名義 × 名義
数を数えて、割合やオッズ比を見る
たとえば、薬の有効・無効を、試験群と対照群で比べる場合です。

これは、典型的な 2×2表 です。
目的変数である「有効・無効」は名義データです。
説明変数である「試験群・対照群」も名義データです。
つまり、これは
名義データ同士の関係を見る解析
です。
見たいことは、
群によって、有効・無効の割合が違うか
です。
たとえば、
試験群の方が有効率は高いのか
対照群と比べて、どれくらい違うのか
その違いは偶然でも起こりそうなのか
を考えます。
このときに出てくるのが、
有効率の差
相対リスク
オッズ比
χ²検定
Fisherの直接確率法
です。
ここでやっていることは、かなり大きく言えば、
数を数えて、割合やオッズ比で比べる
ということです。
料理でいうなら、まず材料を数えています。
有効が何人、無効が何人。
試験群が何人、対照群が何人。
そこから、
「割合は違う?」
「どれくらい違う?」
「この違いはたまたまでも起こりそう?」
を見ます。
χ²検定やFisherの直接確率法は、主に
割合が違うと言えそうか
を見る方法です。
一方で、オッズ比や相対リスクは、
どれくらい違うのか
を見るための指標です。
つまり、検定だけではなく、差の大きさも一緒に見ると解釈しやすくなります。
2. 連続 × 名義
グループに分けて、平均値を比べる
次は、血圧のような連続データを、試験群と対照群で比べる場合です。

この場合、目的変数は血圧です。
血圧は数値として大きさを持つので、連続データです。
説明変数は、試験群か対照群かです。
これは分類なので、名義データです。
つまり、
目的変数:連続
説明変数:名義
です。
このとき見たいことは、
群によって平均値が違うか
です。
2群を比べるなら、代表的には t検定 です。
3群以上を比べるなら、代表的には 分散分析 です。
たとえば、
試験群と対照群で血圧の平均が違うか
男性と女性で検査値の平均が違うか
A群、B群、C群でテスト点数の平均が違うか
を見たいときです。
ここでは、名義データは「グループ分け」に使っています。
そして、そのグループごとに、連続データの平均を比べています。
つまり、
名義データで分けたグループ間で、連続データの平均を比べる解析
です。
「群で分ける」
「平均を見る」
この組み合わせが見えたら、t検定や分散分析が候補になります。
3. 連続 × 連続
片方が増えると、もう片方も変わるかを見る
次は、年齢と血圧のように、どちらも連続データの場合です。

この場合、目的変数も説明変数も連続データです。
見たいことは、
年齢が上がると、血圧は上がるのか
です。
このときに出てくるのが、相関や回帰分析です。
相関は、
2つの連続データが、どれくらい一緒に動いているか
を見る方法です。
たとえば、年齢が高い人ほど血圧も高そうか。
勉強時間が長い人ほどテスト点数も高そうか。
身長が高い人ほど体重も重そうか。
このように、2つの連続データの動き方を見ます。
一方、単回帰分析では、たとえば次のような式で考えます。
血圧 = β0 + β1 × 年齢
ここで大事なのは、回帰分析は、
説明変数が1増えたとき、目的変数がどれくらい変わるかを見る方法
だということです。
年齢が1歳上がると、血圧が平均してどれくらい変わるのか。
勉強時間が1時間増えると、テスト点数が平均してどれくらい変わるのか。
「一緒に動くか」を見たいなら相関。
「1増えたとき、どれくらい変わるか」を見たいなら回帰。
ここは似ていますが、見たいことが少し違います。
4. 名義 × 連続
0/1の結果を、確率やオッズとして見る
最後は、死亡あり・なしのような名義データを、年齢のような連続データで説明したい場合です。

この場合、目的変数は「死亡あり・なし」です。
これは分類なので、名義データです。
説明変数は年齢です。
これは数値として大きさを持つので、連続データです。
つまり、
目的変数:名義
説明変数:連続
です。
このとき、普通の回帰分析ではなく、ロジスティック回帰分析を使います。
見たいことは、
年齢が1歳上がると、死亡ありのオッズがどれくらい変わるか
です。
ここで普通の回帰分析を使いたくなる気持ちはあります。
年齢が連続。
死亡あり・なしを0/1にする。
よし、直線でいけるのでは?
いけそうな顔をしています。
でも、ここで一旦止まります。
死亡あり・なしのような結果は、0か1です。
確率として考えるなら、0から1の間に収まってほしい。
普通の直線で予測すると、場合によってはマイナスの確率や1を超える確率が出てしまいます。
死亡ありの確率が1.3。
元気よく飛び出さないでほしい。
そこで使うのが、ロジスティック回帰分析です。
ロジスティック回帰では、0/1の結果そのものを直線で予測しているわけではありません。
Y=1になる確率を考え、その確率をロジット変換して説明する
と考えます。
式で書くと、次のようになります。
log{p / (1 - p)} = β0 + β1 × 年齢
ここで p は、「死亡ありとなる確率」です。
ロジスティック回帰では、
説明変数が1増えたとき、Y=1となるオッズがどれくらい変わるか
を見ます。
たとえば、
年齢が1歳上がると、死亡ありのオッズは何倍になるか
のように考えます。
ここで、2×2表で出てきたオッズ比とつながります。
名義 × 名義では、2×2表からオッズ比を計算しました。
名義 × 連続では、ロジスティック回帰によって、説明変数が変わったときのオッズの変化を見ます。
つまり、急に別世界に飛んだわけではありません。
数を数える解析から、モデルで説明する解析へ進んでいる
と考えると、少し見通しがよくなります。
どの解析を使う?全体チャート
ここまでを整理すると、次のようになります。
解析方法の名前に殴られる前に、この地図を見ます。

まとめ:検定名を暗記するより、問いの形を見る
統計の本を読むと、いろいろな検定名や解析方法が出てきます。
でも、最初から名前を全部覚えようとすると、かなり苦しいです。
まず見るのは、名前ではありません。
見る順番は、こうです。
目的変数は何か。
説明変数は何か。
それぞれ、名義データか、連続データか。
見たいのは、割合か、平均か、関係の強さか、変化量か、確率・オッズか。
この順番で見ると、解析方法は少し選びやすくなります。

もちろん、実際の解析では、もっと細かい判断も必要です。
対応のあるデータか。
正規分布を仮定してよいか。
分散は等しいと考えるのか。
説明変数は1つなのか、複数なのか。
交絡を調整したいのか。
こういう話も出てきます。
ただ、最初から全部を一気に持つと重いです。
料理を始めたばかりなのに、いきなり全調理器具を抱えてキッチンに立つようなものです。
包丁、フライパン、圧力鍋、低温調理器、バーナー。
待って?今日は目玉焼きよ???
統計も、まずは入口の見取り図で大丈夫です。
検定名を暗記するより、問いの形を見る。
目的変数と説明変数を見る。
名義か連続かを見る。
何を比べたいのかを見る。
そこまで見えると、統計の本に出てくる解析方法は、少しずつ地図の上に並んで見えてきます。
