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会社を辞めるカウントダウン 第3話:その日、洗濯機だけが回っていた。

退職の一ヵ月前から、なにかがおかしくなった。

今まで当たり前にできていたことが、急にわからなくなる。
仕事中、確認作業が抜けるようになった。小さなミスが増えた。時間の管理がうまくいかない。 新しい知識が入ってこない。
気がつくと、仕事中ぼんやりする時間がこま切れに発生した。

そして、意思決定に、妙に時間がかかるようになりました。

大きな判断の話ではなく。
たとえば、休日に掃除と洗濯をしようと思ったとき、どちらから手をつければいいのか、それがわからなくなったり。
いつもなら、洗濯機を回している間に掃除機をかける。そのくらいのことが、できなくなっていました。
どうしたいかよりも先に、体が止まってしまうから。

うまく起動しない頭で考えているうちに、気づいたら全然関係ない動画を見ていたことも。
まるで逃げているみたいだ、と心のどこかでうっすら思っていました。
でも、できない自分を言葉で認識するのが嫌で、考えないようにしていました。

結局その日は、洗濯機だけが回っていました。掃除機は、部屋の片すみで静かに眠ったままで。

部屋が少しずつ荒れていく。身だしなみにも、気が回らなくる。
全部が億劫で、どこから手をつけていいのかわからない感覚が、日常のあちこちに広がっていきました。

そのころ、創作へのモチベーションだけは、不思議と消えませんでした。
休日にはこれを調べたり、描いてみよう。退職したら、あれをつくろう。これもやってみたい。
頭の中だけは、いつも大忙しだったんです。

でも、休日になって実際に手を動かそうとすると、体と頭がガチっと固まってしまいます。 まるで電池切れのおもちゃみたいに。
アクセルとブレーキを同時に踏んでいるって、このこと。
そんな状態が、退職後もしばらく続くことになります。


よく休まずに行ってたなと思います笑

変わらず続く忙しい日々。 退職したら休めるから、その時まで頑張ろう。 ただの疲れ。そう思っていました。

あとから思えば、あれはサインだったのでしょう。
体が「もう限界だよ」と言っていたのかもしれない。でも、その時の私にはわからなかったんです。
ただ、自分がどんどん不甲斐なくなっていくような気がして、焦るだけでした。

・・・いや、どこかでは分かっていたけれど、今認めてしまったら一気に崩れてしまう。だから、気づかないふりをしていたのかもしれません。

いつの間にか、意識しないと笑顔を作れなくなっていました。

無理をしていると、こういうことが起きるのです。

気力や体力より先に、静かに、そして確実に、なにかが壊れていく。

続く



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碧乃よしえ@やさしいエッセイマンガ 最後まで読んで下さりありがとうございます。いただいた応援は、マンガや文章など、誰かの心がほっとする作品づくりに使わせていただきます。これからも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。