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No.3【2026年10月改正・判断編】現物給与評価改正で借上社宅制度は見直すべきか?

― 自己負担額・家賃設定・社宅規程は変更が必要? ―


※本記事は借上社宅制度の改正に関する解説です。

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【ご留意事項】
本記事は、借上社宅制度に関する一般的な情報提供および制度理解を目的として作成しています。記載内容は、一般的な制度上の考え方や実務上の整理を説明するものであり、特定の状況に対する税務・法務・労務上の判断、助言または保証を行うものではありません。
 
実際の運用にあたっては、会社ごとの制度設計・契約内容・運用実態等によって取扱いが異なる場合があります。個別案件については、必ず税理士、社会保険労務士、弁護士、または管轄の行政機関等へご確認・ご相談ください。
 
また、制度改正や行政解釈等により、将来的に取扱いが変更される可能性があります。最新情報については、国税庁・厚生労働省等の公表情報をご確認ください。
内容の正確性には十分配慮しておりますが、本記事に基づいて生じたいかなる損害等についても責任を負いかねます。



■ はじめに

2026年10月から、
社会保険における住宅の現物給与評価方法が見直されます。

第1弾では改正内容を整理し、
第2弾では社会保険料への影響やコスト面について解説しました。

その中で、多くの実務担当者が次に疑問に感じるのが、
「借上社宅制度そのものを見直す必要があるのか?」
という点ではないでしょうか。

結論から言えば、
今回の改正だけを理由として、
一律に制度を見直す必要があるとは限りません。

重要なのは、
制度全体への影響を整理したうえで、
本当に見直しが必要な部分を判断すること
です。


■ 結論:まず制度変更ありきで考える必要はない

今回の改正は、
・評価方法の変更
・評価対象範囲の変更
であり、

借上社宅制度そのものが変更されるわけではありません。
 
そのため、
「改正があるから制度を変えなければならない」
という考え方ではなく、

「現在の制度にどの程度影響があるか」
を確認することが出発点になります。


■ 判断① 自己負担額・家賃設定は見直す必要があるか

今回の改正を受けて、
「自己負担額を引き上げた方がよいのではないか」
と考える会社もあるかもしれません。
 
しかし、
社会保険の評価方法が変わったからといって、直ちに自己負担額や家賃設定を変更する必要があるとは限りません。

自己負担額を引き上げれば、社会保険上の評価額や保険料への影響を抑えられるケースも考えられます。
 
一方で、
従業員の手取りが減少する可能性
福利厚生制度としての魅力が低下する可能性
採用・定着への影響
など、別の側面にも影響が及ぶことがあります。
 
また、借上社宅制度では、
税務上の「賃貸料相当額」と、社会保険上の「現物給与評価額」は、
それぞれ異なるルールで評価されます。

そのため、自己負担額や家賃設定は、社会保険だけを基準に判断するもの
ではありません。

 
会社負担額、従業員負担、税務上の取扱い、社会保険上の評価などを
総合的に踏まえ、自社の制度目的に照らして検討することが重要です。

[参考]自己負担額をどのように設定すべきか、課税・非課税の基準や
              実務上の考え方は、こちらで詳しく整理しています。
▶【第2回:借上社宅の従業員負担家賃の決め方】
         ― 賃貸料相当額と税務上の考え方を整理 ―

[参考]家賃設定の考え方や、会社負担・自己負担をどのように
               設計するかについては、次の記事で詳しく解説しています。
【Q&A:借上社宅で家賃上限を超えた場合どうなるのか?】
         ―「家賃超過分」の扱いと制度設計の考え方―


■ 判断② まず「現状への影響」を把握しているか

制度を見直すかどうかを判断する前に、
まずは今回の改正によって、
自社へどの程度影響があるのかを把握することが重要です。

 
例えば、
・改正前後で現物給与評価額がどの程度変わるのか
・標準報酬月額に影響する可能性があるのか
・社会保険料への影響はどの程度見込まれるのか
・月額変更届(随時改定)の対象となる可能性があるのか

などを確認することで、
 制度を変更する必要があるのか、
それとも現状のままで対応できるのかを判断しやすくなります。

 
まずは会社全体として影響の有無や規模を把握し、その結果を踏まえて、
次に影響が大きい対象者を確認していく流れが効率的です。


■ 判断③ 社宅規程・運用ルールは整合しているか

今回の改正は、社会保険における評価方法の変更であり、
社宅規程の改定が一律に必要となるわけではありません。
 
一方で、今回の改正を機に、
社宅規程と実際の運用が一致しているかを確認することは有効です。
 
また、
社宅規程だけでなく、社宅管理の運用ルールや実務フローについても、
現在の運用実態と整合しているか確認しておくと、
改正時の対応漏れを防ぎやすくなります。
 
例えば、
社宅使用料の決定方法が規程どおり運用されているか
自己負担額を変更する場合の取扱いが整理されているか
給与控除の方法と運用が一致しているか
社宅規程・運用ルール・実際の運用にズレがないか
などは
確認しておきたいポイントです。


[参考]社宅規程だけでなく、給与控除や同意書など運用面まで含めて
               整理したい方は、こちらも参考になります。
▶【第20回:借上社宅の給与控除で見落とされる労務リスク】
         ― 賃金控除協定・同意書・制度運用の基本整理 ―


重要なのは、
「社会保険改正だから規程を改定する」という発想ではなく、
社宅規程・運用ルール・実際の運用が整合しているかを確認することです。


■ 判断④ 一律対応ではなく「影響が大きい対象」を確認する

今回の改正は、すべての従業員に同じ影響が出るわけではありません。
 
そのため、
まずは影響が比較的大きいと考えられる対象を把握することが重要です。
 
例えば、
面積が大きい社宅を利用している従業員
自己負担額が比較的低い従業員
都道府県単価が高い地域の事業所
標準報酬月額の等級境界付近にいる従業員
短時間労働者
などは、
影響を確認しておきたい対象となる場合があります。
 
そのうえで、
評価額がどの程度変わるのか
標準報酬月額への影響があるのか
・月額変更届(随時改定)の対象となる可能性があるか確認することも
   考えられます

などを
確認していくことが考えられます。
 
会社全体への影響を把握したうえで、
影響が大きい対象者を優先して確認することで、より効率的に実務対応を
進めることができます。

[参考]借上社宅制度全体の仕組みを整理したい方は、教科書シリーズで
               制度設計・税務・労務まで体系的に解説しています。
▶【完全版】借上社宅制度まとめ(手取り・税務・リスクを一気に理解)


■ 判断⑤ 制度設計全体で整理できているか

ここまで見てきたように、今回の改正では
自己負担額や家賃設定、社宅規程など、さまざまな論点があります。

しかし、本当に重要なのは、
それぞれを個別に判断することではなく、
借上社宅制度全体として整合性のある制度設計になっているか
という視点です。

 
借上社宅制度では、
福利厚生としての魅力
会社負担と従業員負担のバランス
税務上の取扱い
社会保険上の評価
採用・定着への影響
日々の運用負荷
など、
さまざまな要素を総合的に考える必要があります。
 
例えば、
社会保険料だけを意識して自己負担額を引き上げた結果、
従業員満足度や制度の魅力が低下する可能性もあります。
 
一方で、
制度を全く見直さないことで、
社会保険料への影響が想定より大きくなるケースも考えられます。
 
重要なのは、今回の改正をきっかけとして、
一つひとつの論点を個別に判断するのではなく、制度全体として整合性が
取れているかという視点で整理することです。

 
自己負担額、家賃設定、社宅規程、運用ルール、税務・社会保険の取扱いが、それぞれ矛盾なく設計・運用されているかを確認することで、
自社に合った制度設計につながります。


■ まとめ

今回の改正は、
借上社宅制度そのものを変更する改正ではありません。
 
そのため、
「改正があるから制度を変更する」のではなく、
「自社への影響を確認したうえで、必要な範囲を見直す」という考え方が
重要です。

 
実務上は、
自己負担額・家賃設定
現状への影響
社宅規程・運用ルール
影響が大きい対象者
制度設計全体
 
という5つの視点から確認することで、
自社の状況に応じた対応を整理しやすくなります。
 
今回の改正は、
制度を全面的に変更するためではなく、
自社の借上社宅制度が現在の運用実態に合っているかを改めて確認する
良い機会ともいえるでしょう。


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著者
Yoshihiko Tagawa|借上社宅制度の研究家
 
借上社宅制度について、制度運用や社宅管理の観点から情報整理・発信を行っています。
毎月3000戸超の社宅運営に携わる中で、借上社宅制度の運用面・管理面に関する情報整理を行ってきました。
 
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