「決済」ではなく「金融インフラ」の戦い ─ SoFiUSDの未来 Part7🚀
ステーブルコインを語るとき、「送金革命」と言う人も多い。
例えば国際送金では、複数の銀行や各国の決済ネットワークを経由して資金が移動する。その結果、遅い・高い・不透明といった問題が発生する。
そこにステーブルコインを利用すると、数秒〜数分で送金でき、コストも大幅に低下するため、「ステーブルコイン=送金革命」という説明がよく行われる。
しかし、これは変化の一部に過ぎない。現在起きている変化を正しく表現するなら、「送金革命」ではなく「金融インフラ革命」である。
<本当に変わるのは金融システムそのもの>
私たちが日常的に利用している金融サービスは、すべて「お金の移動」で成り立っている。
預金・貸出・決済・送金・証券取引・為替・保険、これらは別々のサービスに見える。しかし裏側では、「誰から誰へ資金を移転するか」という点においては、同じ仕組みの上に成り立っている。金融システムとは、巨大な資金移動ネットワークなのである。
<インターネットと同じ構造変化が起きている>
1990年代以前、電話、FAX、データ通信は、それぞれ異なる仕組みで運用されていた。
しかしインターネットが登場すると状況は変わり、すべてがIPネットワーク上に統合され、音声通話・動画・音楽・メール・SNSのすべてが同じネットワーク上で動くようになった。
現在の金融業界で起きていることも似ている。これまで別々だった「銀行送金、国際送金、決済、証券決済、為替取引」などが、ステーブルコインとブロックチェーンの上で統合されようとしているのである。
<「レール」を握る者が勝つ>
金融業界ではよく「レール」という言葉が使われる。利用者は意識しないが、資金が流れる経路そのものを意味する。
鉄道で例えるなら、本当に強いのは、列車の製造会社ではなく、「線路を支配する鉄道会社」である。すべての列車は線路(レール)を必ず通る。
金融も同じで、どれだけ多くの金融サービスが誕生しても、最後はインフラを通る。だから各社は「インフラ」を狙っているのである。
<Stripe、Visa/Mastercard、Circleが狙っているもの>
オンライン決済大手のStripeがBridgeを買収した理由もここにある。Bridgeは企業がステーブルコインを使った送金や決済を簡単に構築できるインフラ企業である。
しかし、Stripeが欲しかったのは、世界中の企業が利用する決済基盤である。Stripeは「ステーブルコインを売りたい」のではなく、「次世代の決済レールを握りたい」のである。
Visa/Mastercardも同様だ。多くの人は「カード会社」だと思っているが、実際には違う。彼ら自身は預金を集めない。貸し付けも行わない。それでも巨大企業になった。
それは世界中の決済ネットワークを支配したからである。
そして、Visaは、VTAP(Visa Tokenized Asset Platform)やステーブルコイン決済基盤の構築を進めている。
またMastercardもMTN(マルチトークンネットワーク)を構築している。これは単なる暗号資産プロジェクトではない。「法定通貨・銀行預金・ステーブルコイン・トークン化資産」を同じネットワーク上で扱う構想である。
Circleも同じで、目指しているのは、世界中の企業や金融機関が利用する共通インフラになることである。だからこそ、規制対応・監査・透明性・銀行との連携に莫大な投資を続けている。
つまり、次世代金融ネットワークの主導権を巡る競争が始まっている。
<SoFiが見ている世界>
ここでSoFiに戻ろう。SoFiUSDを見て、「ステーブルコインは既に飽和状態、後発のステーブルコインに勝ち目はない」と考える人も多い。
しかし本当にそうだろうか。SoFiは
・約1,500万人の会員向けに銀行・預金・融資・証券・決済機能を持つ。
・Galileo/Technisysでは、年間80億件の取引を処理し、1.3億アカウントを持つ。
・SoFi Big Business Bankingも存在する。
・Mastercardとも提携している。
・SoFiUSDはBullishへの上場も予定されている
つまりSoFiは、金融インフラ企業として既に実運用の金融サービスを提供している。
会員基盤と、銀行・決済機能を組み合わせることで、自社の金融エコシステム全体にSoFiUSDを組み込むことができる。さらに、Galileo/Technisysを通じて外部企業へ金融サービスを提供することもできる。
これは、単にステーブルコインを発行するだけの企業とは異なる。SoFiは、自ら発行したステーブルコインを「使う場所」「使わせる場所」まで持っている。
<送金の先にあるもの>
もし金融が完全にオンチェーン化(お金や金融資産の移動がブロックチェーン上で実行)されたら何が起きるだろうか。
現在は銀行、証券会社、決済会社ごとに分断されている金融取引が、将来的には一つのブロックチェーンという共通基盤の上で処理される世界である。その世界では、決済だけが重要なのではない。資金の流れそのものを支配することが重要になる。
つまり、
「決済の会社」ではなく、
「金融インフラの会社」が勝つ
ということである。
<次の戦いは「銀行vs暗号資産」ではない>
Circleは信託銀行免許を取得し、銀行に近づいている。PayPalのステーブルコイン「PYUSD」の発行体であるPaxosも同様である。
一方、SoFiは最初から銀行であり、ブロックチェーンを銀行に取り込み始めている。
この流れの延長線上で、将来的には、銀行と暗号資産の境界線そのものが消えていく可能性が高い。
<本当の勝者は誰なのか>
これからの競争は、誰が一番優れたコインを作るかではない。誰が一番多くのユーザーを持つかでもない。
本当の勝負は、どの金融インフラが世界中の資金の流れの中核となるのかである。そしてSoFiUSDは、「巨大な金融インフラ」をめぐる戦いへの参加表明なのかもしれない。
次章では、その延長線上にある「Bank of Banks(銀行を支える銀行)構想」について考えてみたい。
なぜSoFiが単なる銀行ではなく、金融業界そのものを再設計する可能性を持っているのか。その全体像を整理していく。
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