La Story(Les Echos)解説:Frédéric Rouzaud──シャンパーニュ・ルイ・ロデレール250年の家族経営と写真・音楽・環境への文化メセナ
2026年8月12日
概要
フランス経済紙Les Echosの日次ポッドキャストLa Storyの今回のエピソードは、夏の特別シリーズ「経営者と文化(全5回)」の第3回です。文化メセナと芸術を専門とするMartine Robert氏が、経営者たちのオフィスを訪ね、彼らが遺産や文化にかける情熱を聞き出していきます。
今回のゲストは、Roederer CollectionのディレクターであるFrédéric Rouzaud氏です。シャンパーニュの名門Louis Roederer(ルイ・ロデレール)を率いる第7代当主として、家族経営・独立を守り続けながら、世界に約10のワイナリーを擁するグループへと発展させてきた人物です。
エピソードでは、フランス国立図書館(BNF)への20年にわたる写真支援に始まり、15年前に設立した財団を通じた新進アーティストへの支援、音楽・映画・環境をテーマにした賞の創設、ワイナリーでのアーティスト・レジデンスまで、Rouzaud氏が展開する多彩な文化メセナが語られます。彼にとって文化とは「人生であり、エネルギーであり、創造性であり、他者と世界への開かれ」だと言います。
Roederer Collectionという企業グループ
Rouzaud氏によれば、Roederer Collectionは、Louis Roedererを中心に集まったワイナリー群を束ねる包括的なブランド名です。歴史的で家族的な本家であるChampagne Louis Roedererを核に、時間をかけて数々のワイナリーを収集してきました。
現在では世界中に10近いワイナリーを抱えています。ボルドーのシャトー・ペデスクロー、シャトー・ピション・コンテス、プロヴァンスのオット家のドメーヌ、ローヌ渓谷のメゾン・デュラス、ポルトガルのドウロ地方で偉大なポートワインを造るRamos Pinto、そしてカリフォルニアのナパ・ヴァレーにある4つの所有地などです。
規模としては、約1,000ヘクタール、1,000人の従業員を擁し、いずれも少量ながら偉大なワインを造ることを使命とする所有地です。これらのワイナリーに加え、流通会社、文化を支援する財団、そして開発中のホスピタリティ(ホテル)事業も傘下にあります。
第7代当主として受け継いだもの
第7代当主であることは「重くもあり、重くもない」とRouzaud氏は語ります。20年間このメゾンを率いてきた今、当初こそ不安の瞬間もあったものの、それはもう過去のことだと言います。
むしろそれは大きな幸運であり、責任であり、使命であり、情熱でもあると彼は表現します。ワイナリーは長い時間軸、長期的なビジョンの中で明日の偉大なワインを生み出す家族の野心と使命に応えなければならず、日々自然と向き合う仕事だからです。今年でシャンパーニュ・ロデレールは創業250周年を迎えます。
Rouzaud氏はランスの街で育ちました。9月末(当時)の収穫を父に連れられて手伝った週末の記憶、しばしば雨の中で行われた収穫の思い出が原点だと言います。のちに圧搾機の管理を担うようになり、若いピノ・ノワールという素材との肉感的な接触、ブドウやワインの試飲が、このメゾンで役割を果たしたいという思いを育んだのだそうです。
芸術を愛してきた一族の歴史
ワイン造りそのものが、毎年新しいヴィンテージという作品を通じて自然を再解釈する芸術的な営みだとRouzaud氏は語ります。ワインを造るだけなら簡単ですが、感動を与える偉大なワインを目指せば、はるかに多くの投資と細部へのこだわりが必要になります。芸術家がブドウの木を剪定し、適切なタイミングで葉を摘み、庭のように手入れするのと同じだと言います。
一族は代々、文化に関わってきました。19世紀には、Louis Roedererがシャンティイに次ぐほど美しい古書のコレクションの一つを築いていました。相続の過程で散逸してしまい、その多くが現在アメリカにあると言いますが、書物・読書・書き言葉への愛は世代を超えて受け継がれてきました。Rouzaud氏自身も、芸術は今日と明日の世界を照らし、物事を別の見方で捉えさせてくれるものとして、常に必要としていると語ります。
父のJean-Claude Rouzaud氏は作家Saint-Exupéryの愛好家で、自身も飛行機のパイロットでした。第二次世界大戦中に地中海のマルセイユ沖で撃墜されたSaint-Exupéryの機体を探す試みに2〜3年を費やしたそうです。当時は発見に至りませんでしたが(後に見つかったとされます)、この作家に光を当てる試みでした。
フランス国立図書館(BNF)への20年の写真支援
20年以上前に始めたメセナは、フランス国立図書館(BNF)を通じた写真への支援でした。BNFの地下で眠っていた写真史の素晴らしいコレクションを、約20年にわたって展覧会を通じて一般に紹介する手助けをしてきたと言います。
20年間で少なくとも年に1本、合計約20の展覧会を実現しました。最も対照的で驚くべき100枚の写真を集めた「Contraste(コントラスト)」展、Guy Debord展、現代アーティストとされがちなAnselm Kiefferによる展覧会などが記憶に残っていると言います。
さらに強く支援しているのが、BNFの「研究奨学金」です。BNFの写真遺産や文学遺産に光を当てる若手研究者に、毎年賞を授与するものです。
2011年の財団設立とその使命
BNFとの直感的に始まったメセナは、Rouzaud氏のディレクター就任とともに構造化され、2011年に財団の設立へと至りました。財団という形にすることで、長期的な取り組みとして自らをより強く律すること、そして理事会を持ち、財団の使命について本格的に議論する体制を整えることが目的でした。
財団の使命は、創造と記憶を支援し、すでに広く認められた才能よりも、むしろ若い才能を支えることにあります。3年前に着任したアーティスティック・ディレクターのAudrey Bazin氏のもとで、BNFやCannesの批評家週間といった従来の支援に加え、ワイナリーの中核でも多くのプロジェクトが展開されるようになりました。
BNF支援10年目の2011年には、文化省から「文化の偉大なメセナ」の勲章がFrédéric Mitterrand氏によって授与されました。予算の慎ましい小さな財団であっても、独創的で特異なメセナを掲げ、文化環境の中でしかるべき位置を占められることを実感できたと言います。
新進の才能を支えるという哲学
財団の年間予算は現在90万ユーロ(約1億6535万円。1ユーロ=183.72円換算)です。以前は60万ユーロ(約1億1023万円)でしたが、アーティスティック・ディレクターがもたらした活気とエネルギーに応えるために増額されました。
Rouzaud氏は、新進の創造に対する感受性を大切にしていると語ります。それはより刺激的であり、また身の丈に合った、より取り組みやすいものでもあるからです。Bazin氏はこれを「文化支援のレース編み職人」という言葉で表現します。写真を基点に、映画、文章、そして音楽へと、異なる媒体でありながらも一貫性のあるプロジェクト群です。
音楽分野では、ボルドー・ポイヤックのシャトー名を冠した「Pichon-Comtesse賞」がパリのフィルハーモニーで発足したばかりです。実験音楽を支援する、勇気ある試みだと言います。
ワイナリーごとの個性から生まれた賞とレジデンス
Pichon-Comtesse賞は、現場のチームに文化プロジェクトを押し付けるのではなく、それぞれの所有地のチームの感受性から出発するという発想で生まれました。シャトー・ピションの責任者Nicolas Glumineau氏は、醸造家であると同時にオペラ歌手でもあり、若い頃は山岳猟兵だった多彩な経歴の持ち主で、審査員としてこの賞を担っています。
プロヴァンスのドメーヌ・オットでは、Hott家の末裔Jean-François Hott氏のもと、海の名作を扱うフェスティバル「Mobilis in Mobili」を開催しました。コメディ・フランセーズの俳優らを招き、海辺のテントの下で2時間、海にまつわる名作を朗読するという、記録には残せない儚い体験だったと言います。2年に一度開催されています。
文化と環境を結ぶ賞として「Thinking Sustainability賞」も自ら創設しました。5大陸から集まった審査員のもと、環境や生態をテーマにした作品が提案され、研究者たちが作品と対話する文章を寄せます。作品とテキストは、1年前に開設された財団のウェブサイトで公開されており、財団はコレクションの構築も始めています。
ワイナリーではアーティスト・レジデンスも実施しています。シャンパーニュのLouis Roederer、カリフォルニアなどで、若い才能に自由な創作の場(カルト・ブランシュ)を与えてきました。造形作家Johan Nanduc氏は、シャンパーニュの地下を成す白亜(チョーク)から素晴らしい作品を制作したと言います。
企業コレクションとホスピタリティ事業
財団設立から15年を経て、毎年少しずつ作品を取得し、財団のコレクションを広げています。これは活動の記憶を残すためでもあり、いつか披露する機会を見つけたいと考えていると言います。19世紀の一族の蔵書とつなげる形で、ロデレール本社に「創造性の図書館」を作る構想もあります。
ホスピタリティ事業も開発中です。Val d'Isèreの歴史あるファミリーホテル「Christiania」を改装中で、年末に開業予定です。各ワイナリーで一般非公開のゲストハウスを改装し、ワインやメゾン、生活の芸術(アール・ド・ヴィーヴル)をめぐる体験を提供する計画で、企業コレクションもこれらのブティックホテルに分散して展示される可能性があります。
買収したワイナリーに刻まれた芸術の記憶
買収した所有地の多くには、それぞれ芸術と交差した独自の歴史がありました。ポルトガルのRamos Pintoには、20世紀初頭のアール・デコ風のポスターの美しいコレクションがあり、一族はポルトガル有数の財団であるSerralves財団も支援してきました。
同じくRamos Pintoが持つ3つのキンタ(ぶどう園)のうち、スペイン国境に最も近い一つでは、水力発電ダムの計画によって水没の危機に瀕していました。しかしRouzaud氏の父とチームが川沿いを散策中に古代の岩絵を発見し、ダム計画を完全に止めることに成功しました。その岩絵の背後には博物館が作られ、今も見学できると言います。
メセナのネットワーク化と個人的な意味
各メセナ活動を相互に結びつけることを、Rouzaud氏は非常に重視しています。支援している「ジュ・ド・ポーム」の映画館は、財団のメセナによって再開され、Cannesの批評家週間で受賞した作品がそこで上映されます。ランスの邸宅の改装では、Villa Médicisの元寄宿者だった自然をテーマにする造形作家を招き、3週間かけて作品を制作させ、来訪者や顧客に公開する予定です。
財団は専門家であるAudrey Bazin氏が率いていますが、Rouzaud氏自身も会長として関わり続けています。ジュ・ド・ポーム、Cannes映画祭、BNF、Deauvilleのアメリカ映画祭、パレ・ド・トーキョー、Villa Albertineなど、支援する institutions は多岐にわたります。自らを「一介の愛好家」と称するRouzaud氏は、真の専門家であるBazin氏の着任によって、財団の芸術的取り組みがより一貫性を持つようになったと語ります。
メセナが個人的にもたらしてくれたものを問われ、Rouzaud氏はこう答えます。「それは人生であり、エネルギーであり、創造性であり、他者への開かれ、世界への開かれです」。芸術を必要とし、そうした開かれをなお許してくれる国に生きられることは非常に貴重であり、大切に守るべきものだと締めくくりました。
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