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La Story(Les Echos)解説:一人旅を後押しする「co-voyage」──見知らぬ人と旅する新潮流


2026年8月3日

概要

フランス経済紙Les Echosが配信する日次ポッドキャストLa Storyの今回のエピソードは、夏のバカンスを扱う5回シリーズの第1回として、一人で旅立ちたいという願望と、その受け皿となっている「co-voyage(共同旅行)」という潮流を取り上げています。

co-voyageとは、相乗り(covoiturage)になぞらえた言葉で、見知らぬ人同士が一緒に旅に出る仕組みです。「co-trip」とも呼ばれ、少人数のグループで冒険的な要素の強い旅をする、いわば団体旅行の新しい形です。2010年代に生まれたこの潮流は、完全な単独行に踏み切れない人たちの選択肢として、ここ数年フランスで支持を広げています。

この回では、実際にco-voyageを利用してきた旅行者と、それを企画する旅行会社の双方の声を通じて、一人旅市場の実態に迫っています。SNS上で女性を中心に一人旅のノウハウ動画が広がる一方で、安全面への不安から「女性だけの旅」を選ぶ層も厚く、市場が急速に構造化されている様子が語られます。

一人旅を望む人が増えている

番組の冒頭では、SNSで一人旅への憧れを語る若い声が紹介されます。「誰にも気兼ねせず、完全に一人でバカンスに行きたい」「そういう動画を見れば見るほど、自分も試したくなる」といった声です。フランスでの週末旅行から、アジアを半年かけて巡る旅まで、単独行の形は多様化しています。

もっとも、完全に一人で旅立つことに踏み切れない人も少なくありません。そうした人たちが選ぶのがco-voyageです。同じ日程、同じ旅の希望を持つ相手を自分で探すのは難しく、周囲の都合を待っていてはいつまでも旅立てない、という現実がその背景にあります。

何度も一人旅をしてきたValérie Jarny氏の体験

52歳のValérie Jarny氏は、フランスのco-voyage草分けの一つである旅行会社Les Co-Voyageursを利用して、幾度も単独で旅立ってきた経験を語ります。同社を初めて利用したのは、記憶では2014年のことです。

彼女がco-voyageを始めたきっかけは、喪失の時期に「遠くへ、本当に環境を変えて旅立ちたい」という強い必要を感じたことでした。当時は匿名でいられる環境を求めており、自分の身の上を必ずしも語らずに済む点が、見知らぬ人たちとの旅に向いていたと振り返ります。

これまでにキューバ、ケニア、マデイラ島のトレッキングなどを経験し、最も印象に残っている旅として、現在は催行されていないミャンマーを挙げます。参加者が5人と少人数だったことが良かったと言います。翌月にはサルデーニャ島へトレッキングで再び旅立つ予定です。

一人旅と団体旅行、それぞれの長所と短所

Jarny氏は、組織を介さない完全な単独行の魅力を、時間に縛られず自分のペースで動ける点にあると語ります。一方で、年齢を重ねるにつれ一人旅がやや難しくなってきたとも打ち明けます。とりわけ夜に一人で食事をする際の孤独感や、夜間に治安の良くない場所で一人になるリスクを挙げ、「自分のためにブレーキをかける瞬間がある」と述べます。

同時に、家族連れ同士が固まってしまいがちな一般的なパッケージツアーには馴染めなかったとも語ります。co-voyageであれば、グループの中にいながらも自分のために旅を体験でき、一人でいたければ一人でいられ、できたグループに加わりたければ加わることもできる、その自由さが魅力だと言います。

旅を通じて生まれた友情もあります。会社を介さず二人、三人で自分たちの旅を組み立てて再び出かけた相手や、WhatsAppで連絡を取り合い続ける相手もいるそうです。

「女性だけの旅」を掲げる会社での経験

Jarny氏は、女性限定を掲げる別の会社Les Copines de Voyage(旅の女友達)も利用しています。ストックホルム、マルタ、バルト三国などを旅した経験を語りますが、女性同士だからといって必ずしも常に円滑とは限らず、買い物中心で目的の異なる参加者とはグループが分かれてしまった経験もあったと言います。

一方でバルト三国の旅では、30歳から68歳まで年齢層は幅広かったものの、非常に相性の良いグループになり、最年長の参加者のペースに全員が合わせるなど、うまく調整できたそうです。彼女自身は、女性限定よりも男女混合の方を好むと述べています。

草分けLes Co-Voyageursの創業者が語る市場

一人旅市場を理解するため、番組はモンペリエにあるLes Co-Voyageursを訪ねます。同社を2013年に共同創業したSarah Lopez氏とAude Parlebas氏が、当時の動機を語ります。

きっかけは、冒険旅行のツアーオペレーターで働いていた頃、一人で参加する客から「他に一人参加者はいるか、年齢は、男性か女性か」と必ず同じ質問を受けたことでした。そこで、一人参加者だけが集まり、カップルや家族の中で孤立感を覚えずに済む専門の旅行会社を作ろうと考えたのです。もう一つの動機は、一人部屋追加料金という負担を回避することでした。同性同士で相部屋を分け合う仕組みにより、この追加料金を避けられます。

同社は開業直後から急成長しました。当時は一人参加者向けの専門サービスが皆無で、市場を独占していたためです。現在は14名の従業員を抱え、4〜14名のグループで、フランス語ガイド付き・全食事付き・航空券や宿泊込みのツアーを提供しています。創業から13年で、およそ2万人が同社を通じて旅立ちました。

顧客像と料金、そしてコミュニティ

Lopez氏によれば、同社にはカップルでの申し込みはできません。全員が同じように友人関係を求める客であるという「約束」を守るためです。ただし恋愛目的の紹介サービスではないと強調し、配偶者が旅行しないために一人で参加する既婚者もいると説明します。

顧客層は平均年齢52歳で、35〜55歳が中心、女性が約6割、男性が約4割です。創業当初はさらに女性比率が高かったといいます。女性が多い理由として、そもそも組織を介して旅行する女性が多いことに加え、一人で旅立つ女性にとって組織を通じた企画旅行の方が安全に感じられる点を挙げています。

料金は、航空券・宿泊・送迎・観光・食事・現地フランス語ガイドをすべて含めて、ヨーロッパや中距離の1週間の旅で1000〜2000ユーロ(約18万〜36万円。1ユーロ=182.25円換算)、アジアなど長距離の2週間の旅で2000〜3500ユーロ(約36万〜64万円。1ユーロ=182.25円換算)です。アメリカ方面は航空券が高く3000〜4000ユーロ(約55万〜73万円。1ユーロ=182.25円換算)、最も高いのはポリネシア方面だといいます。

同社はサイト上にSNS機能を設け、出発前に誰が申し込んだかを見て交流できる仕組みを整えています。サイトには10万人のco-voyageur(共同旅行者)が登録しており、リピーターが約5割に上るため、旅先で顔なじみと再会することも多いそうです。提供先は世界90以上の地域、300以上の旅にわたります。

ひとり親向けサービスと市場の変化

同社は数年後、ひとり親家庭向けのサービスLes Petits Co-Voyageurs(小さな共同旅行者たち)も立ち上げました。フランスにひとり親家庭が200万世帯以上あることに着目したもので、親同士が交流し子ども同士も一緒に遊べる点が、solo層以上に強い支持を集めたといいます。

創業から6〜7年は市場を独占していたものの、近年は共同体的な側面を打ち出す専門会社が数多く現れ、SNS機能を取り入れるところも増えました。ただしLopez氏は、共同体的側面だけに集中する競合と異なり、自社は旅そのものの質にも同等に注力している点で差別化していると語ります。

業界拡大と新規参入の動き

一人旅市場は今後も有望だと創業者たちは見ています。実際、新たなコンセプトを掲げる会社の参入が相次いでいます。2017年設立でAirbnbが支援するイタリアのWeRoadは、今年、アメリカ展開のため5800万ドル(約92億円。1ドル=158.00円換算)を調達したと発表しました。オーストラリアのIntrepid Travelはフランスでの存在感拡大を狙い、Les Copines de VoyageやLes Aventureursを傘下に持つHello Travelを一部保有するAltai Groupを買収しました。

Hello Travelが語る「女性だけの旅」の進化

Hello Travel(Les Copines de VoyageとLes Aventureursを束ね、従業員約50名、年間およそ1万5000人が旅立つ)の副社長に就任したばかりのAlexiane Emard氏が、この分野の変化を語ります。

Les Copines de Voyageは10年前に大西洋の向こう側で創業されました。3〜10名の女性グループで世界各地を旅する仕組みで、ホテル滞在型から2〜3週間の周遊型まで形式は多様です。Emard氏は、対象は独身女性ではないと強調します。顧客は既婚で子どもがいたり友人が多かったりしても、「もう他人の都合を待たずに、自分が行きたい旅に出たい」と一人で決断する女性たちだと説明します。

背景には安全面への需要があります。フランスでは2人に1人が一人旅を経験し、また一人旅を好んでいますが、女性ではその割合がさらに高く、3分の2の女性が一人旅を望む一方で、安全性への配慮から「女性同士」を選ぶ傾向が男性よりずっと強いといいます。

男女双方を対象とするLes Aventureursは、より遠く、より道なき道を行く冒険色の強い旅を提供します。最大12名のグループで、参加者はやや若く、女性が6割ほど、多くは経験を積んだ旅慣れた層だといいます。

「プランB」から「積極的な選択」へ

Emard氏は、Les Copines de Voyageの顧客は現在平均37歳で、創業時より10歳高くなったと述べます。既婚・母親といった典型像はなく、購買単価は平均約2200ユーロ(約40万円。1ユーロ=182.25円換算)、旅の平均日数は9日です。70歳までの顧客もおり、それに伴いやや高級路線への移行も進んでいます。

同氏がこの1年半で取り組んだのは、「グループで旅する」という発想だけでは市場に通用しなくなったという認識のもとでの、サービスの抜本的な見直しでした。人々は一人だからグループを求めるのではなく、旅への欲求から相性の合う相手と旅立つのだという発想の転換です。co-voyageを、一人旅ができないときの「プランB」から、この経験をしたい・この国を発見したいという「積極的な選択」へと位置づけ直すため、1年足らずで提供内容の4割を刷新したといいます。

その一環として、没入型の周遊を志向する層に向けたLes Éclaireuses(女性の先駆者たち)というシリーズを拡充し、これが今や顧客の7割を占めているそうです。Emard氏は「今日の女性は多面的で、一人の女性が複数の欲求を持つ」と語り、4月にはイタリアの島でモダンな海洋療法を、11月にはベトナムで自転車と民泊の旅を、といった多様な希望に応える半オーダーメイド化を進めていると述べます。

2026年夏の見通しと生まれた友情

2026年の夏について、Emard氏はインフレ、燃油価格、中東情勢の影響で観光業界が打撃を受けたと認め、とりわけ運営面で厳しい年だったと振り返ります。もっとも、年初の1〜2月の商況は良好で、6月以降は業界全体が回復しており、同社では6月の最初の3週間で前年同期比25%以上予約が伸びたといいます。直前予約が中心で、夏の出発分の遅れを取り戻せたほか、好調が見込まれる秋の助走にもつながったと語ります。

最後に、10年の間に生まれた友情の一例として、ほぼ創業当初からの顧客Magali氏の話が紹介されます。バリでの初めての旅で出会った相手が親友となり、結婚式の証人にまでなったといいます。Magali氏はその後、これまでに20回以上同社の旅に参加し、観光業への転職を決めて、今では同社の小さな仕事を手伝っているそうです。

Emard氏によれば、Hello Travelは母親が子どもと一緒に一人旅できるようにするための「Kids Friendly」なサービスにも取り組んでいるといいます。

▶ 同じシリーズの前回: La Story(Les Echos)解説:オンライン銀行が変えるフランスの銀行地図──Boursobank・Revolut・Trade Republic https://note.com/yondo/n/n09ac48902a25

▶ このテーマの記事をまとめ読み: マガジン「日本語で読めない海外ビジネス番組」 https://note.com/yondo/m/mefd2fd5a305c

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