時をかけるネカマ
時をかけるのは少女だけではない。
誰でも時をかけられる。
そう教えてくれたのは去る6月30日に
没後1,080年を迎えた紀貫之。
現代noterの先駆者である。
【紀貫之】(キノちゃん・ツラタン)
生年月日:貞観8年または貞観14年
天に召された日:天慶8年5月18日
幼名:阿古久曽
実は3児のパパ。
現代のnoterの先駆者。 男性でありながら女性のふりをして書いた
平安式note「土佐日記」が創作大賞935を受賞し、 書籍化される。
伝説のネカマ。
通称:トキカマ
何はともあれ、まずは彼…いや彼女…いや、やっぱり“彼”の記念すべき1投稿目がこちら。

〈原文〉
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。
〈現代語訳〉
男の人がこぞってやってるという日記を、女の私もやってみようと思って書くことにしたの。
男性にしてキラキラ女子の先駆け。
さすが、つかみばっちり。
なおこの時のツラタン、アラカン。
↑
バスに乗っていた女性が“アラカン”をあらぬ方向で勘違いしてブチギレていた話。
担任のT田先生が授業開始第一声、
「今日はァ、ネカマの話をしまーす!」
と、こちらもつかみばっちりで開幕した『土佐日記』の授業。
ツラタンとT田先生がスクラムを組んで私のおふざけ心にトライしてきたというわけだ。
トライされた当時JKだった私は、
トキカマが“してみむとて”したように、
DKのふりをしてブログを“してみむとて”した。
まずは本家“してみむとてした”『土佐日記』を確認したい。
【土佐日記】
「土佐から地元に55日費やして帰ってみた話」
全3部構成
─第1部 12月21日〜1月1日
─第2部 1月2日〜2月5日
─第3部 2月6日〜2月16日
日本文学史上、おそらく初めての日記文学。
当時男性は漢字を使用することが常。
でも、和歌プロの紀貫之は、平仮名で文章を書いてみたくなった。
だから女性として書くことを決行。
これが“トキカマ”爆誕の真相である。
─第1部 12月21日〜1月1日
◽︎12月21日PM8:00 国府出発
「みんなが見送りに来てくれて泣く。めっちゃうれしい。」
知ってる人から知らない人まで“総出”で見送り。
↓
◽︎12月21日〜26日 大津滞在
22日:「藤原純友の乱とか起きてて危ないから
とりあえず和泉までは無事に
帰りてェ」と願う。
「船で帰るって言ってんのに、
藤原時実が
“馬の餞”とかふざけたこと
言ってて草」
ブチ上がり過ぎて参加者ほぼ全員潰れた。
23日:八木ちゃんが厳粛な感じでお疲れ様会
してくれた。
24日:レペゼン国分寺僧侶まで別れのリリック
届けに来てくれた。
無礼講でブチ上がりすぎてみんな酩酊。
25日:新任の国守からクリスマスプレゼント的な
イカしたメッセージをもらう。
↓
◽︎12月27日 浦戸
↓
◽︎︎︎︎12月29日 大湊
1月1日「あけおめ」@大湊
─第2部 1月2日〜2月5日
◽︎1月7日:雨やばすぎて足止め@大湊
歌下手過ぎる奴と歌上手い子ども来た。
さながら「歌うま子どもの雨と雪」
◽︎1月9日 宇多の松原
「夜の航行怖過ぎん?」
◽︎1月10日 奈半の泊
↓
◽︎1月11日 羽根
↓
◽︎1月12日 室津
13日:天候不順により足止め@室津
17日:出航した途端また天候不順→再びの室津
ツラタン、雨男or雨女説浮上
20日:月を見てアベちゃんに想いを馳せる。
21日:♪ムロツタウンにさよならバイバイ
22日:「もしもし神ー?私だけどォ、
海賊くると困るから足止め頼むよ!」
◽︎1月29日 土佐の泊
↓
◽︎1月30日 阿波の水門
〃 沼島
〃 和泉の灘
先月(12/22)の祈りが通じ無事和泉到着。
◽︎2月1日 黒崎の松原
〃 箱の浦
4日:「船頭さんが天気予報外した。マジドンマイ。」
◽︎2月5日 石津
「遭難マジ勘弁」と明神に神頼み。
〃 住吉
─第3部 2月6日〜2月16日
◽︎2月6日 難波
◽︎2月8日 鳥飼の御牧
◽︎2月9日 渚の院
そういえばナリピ、
「世の中に たえて桜の咲かざらば 春はのどけからまし」
とか言ってたっけ…知らんけど。
〃 鵜殿
◽︎2月11日 八幡の宮
〃 山崎
◽︎2月16日 島坂
桂川を渡る。三途の川じゃなくて安心。
〃 京到着
まるで人生を表すかのような遠回りっぷり。
現代の交通網を使って、
ツラタンに職場から地元に帰ってもらうとするとこうだ。
①国府から
とさでんバス「国衙入口」バス停
所要時間:徒歩10分
②とさでんバス「国衙入口」バス停から高知駅
所要時間:20分(乗車)
運賃:240円
③JR土讃線高知駅から南風2号岡山行乗車→岡山駅
所要時間:2時間38分(乗車)※12駅分
運賃:2,200円
④岡山駅からJR山陽新幹線「のぞみ」東京行き乗車
→京都駅
所要時間:1時間1分
運賃:3,400円
④京都駅(2番ホーム)から京都市営烏丸線各駅停車
国際会館行乗車→丸太町駅
所要時間:7分(乗車)※4駅
運賃:260円
⑤丸太町駅から桜町まで徒歩10分(750m)
─────────────
所要時間合計:4時間26分
運賃合計:6,100円
─────────────
約4時間半で済むものを55日かけてやる。
55日もの間、自分ではない“誰か”を演じ続けた。
平安時代を生きた彼がそうしたように、
平成を生きた私もまた別の“誰か”になりたかった。
─「今日はァ、ネカマの話をしまーす!」
隣の席の一平ちゃん《ヤキソバ》の
「(小声)それ、なんか意味ある?テスト出ないよ多分。」
という至極真っ当な指摘に、
私「すべての指標がテストに出るか出ないかなんてロマンのない人間だなァ…時をかけちゃってるんだよネカマが。」
と返す、珍しく眠くない1時間目。
T田先生「じゃあこれ、現代語訳してみてねェ!3分後に聞きまーす。」
【これ】
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。
一平ちゃん「先生が言ってるやつわかった?」
私「男がやってる日記とかいうやつを女もやってやんよ。」
一平ちゃん「圧やば!現代語訳の圧やば!え!やんよ?え!初音ミク?え!」
私「日記やってる?男だから。」
一平ちゃん「やってない。男だけど。」
私「いや、やってんじゃん。」
一平ちゃん「これ日誌だから!日記じゃないから!学級日誌!」
私「55日間書くの?」
一平ちゃん「やだよ、約2ヶ月も日直やり続けるのは…」
「男がやってる日記とかいうやつを女もやってやんよ」
と答えたかったのに当たらなかったAM9:20である。
私「一平ちゃん、ワシ、ブログやるわ。男として。」
一平ちゃん「いや、よもちゃん。男としてって女じゃん?生物学的には女じゃん?それともマインドは男?どっちでもいいけど…」
私「生物学的には女、マインドもたぶん女。」
一平ちゃん「でもまた何で急に?」
私「決まってんじゃん、触発されたんだよ…」
一平ちゃん「もしかして…」
私「時をかけるネカマに!」
こうして始まった、
DKのふりをしてブログを“してみむとてするなり”ブログ。
【DKのふりをして“してみむとて”したブログの一部】
著者:アオイくんstarringよもぎ
1.クセツヨトースト
2.匂わせの先駆け
3.下ネタも“してみむ”
1.クセツヨトースト
─朝は断然パン派の俺は、全粒粉ブレッドをエスプレッソ級に焼き上げた。
そしてその消炭と化したパンの右上に、今にもその生涯を終えようとしている俺の消しゴムと同サイズのバターを乗せる。
ゆっくりと溶かし広げたかったが、あっという間に吸い込まれた。
パンの右上は全てを吸い込むブラックホールのようだ。
なんと恐ろしい…
次はフィリピンから極秘に取り寄せた例のブツ。
そう、バナナだ。
あれをパンに乗せる。
まるで油絵でも描くように、バターナイフで塗りつける。
俺はあのバナナってもんの筋だけを食べるのが好きだ。
だが、あれは希少部位。
死闘を制してこそ喰らえる部位。
バナナをまとい、やや白みを帯びた消炭に最後
わさびを絞る。
そして塗る。
ひたすらに塗る。
もし手に入るのなら最後にパルミジャーノの雪をを降らせる。
エスプレッソを口に含み、喉に落とした瞬間かじりつく。
まず、鼻に抜けるわさび。
悲しみが走馬灯の如く駆け巡るように、じんわりと涙が滲む。
そこをバナナが甘く抱きしめにくる。
右端をかじったが最後、俺は闇の中に堕ちていく。
これが贅沢な朝の楽しみなのだ。
─ある日のブログ「闇堕ちトースト」
実際の私は“米派”である。
2.匂わせの先駆け
特に隠すでもなくやっていたDKのふりブログ。
クラスのギャルたちもなぜか乗り気。
もちろん不動のセンターサオリンもだ。
↑
常に燃えている女サオリ。
空気に触れると自然に燃える|リン(元素記号P)》が人間の姿に化けたものだと私に勘違いされていた。
サオリン「弁当の写真とか載せたらよくない?」
私「あ〜、いいかも。」
サオリン「で、ほら私のリプトンを端っこに写り込ませて〜」
私「?」
サオリン「ちょっとぼやけ気味に私の弁当も写して〜」
カシャッ!
サオリン「どう?“アオイくん彼女持ち設定”!」
ここからどんどんいろんな人々からの
「私のシュシュ写して!」
「うちの手ェ写り込ませよう!」
などという出演希望が続出。
加えてネタ提供者も続出。
今日はレナとカフェデート、明日はエリカとカラオケ…
いつの間にか
“クセツヨトーストの男”改め“クズ男”に成り下がってしまったアオイくん。
だがしかしだ。
これが後の“匂わせ文化”の先駆けになろうとは知るよしもなかった。
3.下ネタも“してみむ”
トキカマも『土佐日記』で結構な下ネタをぶちかましていた。
〈原文〉
それは海の神に怖ぢてといひて、何の蘆蔭にことづけてほやのつまのいずしすしあはびをぞ心にもあらぬはぎにあげて見せける。
〈現代語訳〉
(風呂に入るために服を着ていない状態の女性に対して)目隠しとして全く機能していない葦をくっつけているけど、
ホヤを挿れるアワビを知らず知らずのうちに海の神にもろに見せつけちまってるんだよな。
“トキカマ”がやたらどストレートな下ネタでバズっていたので、
アオイくんは学術的な下ネタで攻めていきたい。
もはやクズ男と化している彼を引き上げるのも中の人である私の使命である。
─インドのエロ本『カーマ・スートラ』に、
アスパラガスフラペチーノがいいと書いてあった。
でも別に俺自身が特段困っているというわけでもない。
16世紀、イギリスのニコラス・カルペパーが
「アスパラガスの根っこを煎じてワインに入れて飲めば、老若男女に重宝する媚薬になる」
と言っていた。
正確に言えば書いている。
『薬草大全』の中に。
ニコラスは決して友人ではない。
会ったこともなければ顔も知らない。
そんな奴の言うことをそう簡単に信じるわけ…
いや。
少しは気になる。
…でもだめだ。
大人の味を知るにはまだ早い。
ワインは飲めない。
アスパラガスフラペチーノ、これ明日の放課後、レナとスタバ行って試してみるしかない。
─ある日のブログ「媚薬としてのアスパラ」
トキカマは55日間、女性を演じた。
私は高1の夏頃から高3の終わりまでアオイくんとよもぎ本人としての二足のわらじで生きた。
「高校の制服が明日からはコスプレになってしまう」
と思ったら何故か名残惜しくなって
「“コスプレじゃない私”と電車」
とか
「“コスプレじゃない私”がバンホーテン飲み終わって箱潰してる瞬間」
の写真を撮りまくった。
その制服のポケットの中では
「“コスプレじゃないアオイくん”が卒業式を終えてクラスメイトと激辛担々麺を食べて」いた。
この日の私とアオイくんは、
今後増えるわらじの存在をまだ知らなかった。
─時をかけたのは紀貫之だけではない。
この記事もだ。
約1ヶ月、屍として眠っていた。
6月30日の彼の命日に、
「#沼落ちnote」
このタグは彼のためにあると言っても過言では…ないかどうかは知りませんが
命日ですからね。
「#毎日note」改め「#命日note」ですね。
“まいにち”を“めーにち”と発音すると、
江戸っ子になった気分です。
という文言と共にアップしたかった。
という裏話付きで、お送りしました。
好評につき(私に)、続編鋭意製作中。
時をかけて待っていてください。
【参考資料】
◽︎青空文庫
『土佐日記』
◽︎土佐日記 ― 全文全訳(対照併記)
◽︎まっぷる
◽︎南国市
紀貫之邸跡・古今集の庭
◽︎公益財団法人日本交通社
土佐国分寺
◽︎ホンシェルジュ
5分でわかる『土佐日記』!作者や内容、冒頭についてわかりやすく解説!
◽︎桜町(桜町屋敷跡・紀貫之邸跡) (京都市上京区)
◽︎4travel
桜町
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