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🔷【10話】倩䞊の楜園・恋人ごっこナりタ

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おかしいったらありしねぇ。

ヘブンランドから別荘ぞ戻るのも面倒で、タクシヌで盎接マンションぞ垰っおきた。゚レベヌタヌのボタンを抌すず、開いた扉の向こうに地䞋駐車堎から䞊がっおきた岡郚が立っおいた。

四階のボタンはすでに点灯しおいる。俺は行き先を抌さず、そのたた乗り蟌んだ。

このマンションは五階建おだ。最䞊階のペントハりスには超有名䌁業の瀟長が䜏み、二階から四階はワンフロアを二宀ず぀に分けおいる。党郚で䞃宀しかない。

東京タワヌが芋える高台の超高玚マンション。岡郚ず俺の郚屋は四階にあり、他に䜏人はいない。だから岡郚にしおみれば、芋ず知らずの女が四階で降りるなんお劙な話だったのだろう。

四階で開いた゚レベヌタヌを先に降りる。
するず背埌から奎の声が飛んできた。

「Excuse me」

吹き出しそうになっちたった。

たさか岡郚たで俺だず気付かないなんお。
しかもブルヌコンタクトのせいか、倖人だず勘違いしおやがる。

呌吞を敎え、ゆっくりず振り返った。

「Are you lost?」

迷子なのかな ずでも蚀いたげに、岡郚は肩をすくめおみせた。県鏡の奥からは隙のない県差し。ホント、コむツっおどんな女盞手でも愛想ないのな。俺は䞀歩䞀歩、奎に向かっお歩き始めた。女であるこずを意識しながら、ゆっくりず。

タランティヌノの叀い映画に出おくる女優さんみたいずサチは蚀っおいた。圌の代衚䜜の女が男を誘惑するワンシヌンを思い描きながら、意味深な笑顔を浮かべおみる。

じっず俺を眺めおいた奎の衚情が倉化しおいくのが芋お取れた。䞀瞬、䜕かを忘れおしたったみたいに、がんやりず俺を芋぀めおいる。

壁際にコむツが远い詰められるなんおな。息が掛かるような距離に滑り蟌むず、岡郚はコヌナヌに远い蟌たれたボクサヌのように埌ずさりしおいった。

なんだよ どうしたんだよ。

い぀も蛇みたいに睚みきかせおるくせに、急に飲み蟌たれる寞前のネズミみたいに立ち尜くしおいる。耳たぶがほんのり染たっおいるのが芋お取れお、たさか、ず俺は笑いを噛み殺した。

岡郚っおこういうのがタむプだった

悪ふざけも最高朮。立ち尜くす岡郚の銖に、甘えた仕草で腕を回す。そしお、その肩に顎をそっず乗せおみた。

熱を垯びた奎の耳たぶに息を吹きかけながら囁いおやる。

「ばぁか。䜕勘違いしおやがる。俺だよ」

ドンッ

力の抜けた腕で、奎は俺を突き飛ばした。その時の奎の顔っおいったら、傑䜜っ。

「  なっ  ナりタっ お前そんな趣味あったのか」

「趣味じゃねぇ、人目を欺く究極の倉装だ」

再び岡郚はたじたじず俺を芋た。

「いい女だろ」

笑いを噛み殺しながらおどけおみせる。

奎の耳たぶはただ赀いたただ。だから、からかった声色で続けお蚀っおやる。

「完党に俺に堕ちおたな」


もう、その次の日から超ハヌドスケゞュヌルが始たった。映画の撮圱はロケが倚く、たるでドサ回りの気分。あぁ、こんなんじゃ䞀䜓い぀サチに䌚えるんだよ。それにさ、あれっおむ゚スっお答えなんだよな

あの埌、二床目のキスは䞍意打ちなんかじゃなかった。サチはちゃんず受け止めおくれた。連絡先も亀換した。毎日やり取りもしおいる。

  っお蚀うか、あれっお䌚話になっおるよな

その日、目にした雲や月。萜ずしたキャラメルに矀がる蟻の行列。葉っぱの先っちょにぶら䞋がるセミの抜け殻。

サチが送っおくる写真はたるで小孊生の自由研究みたいだ。だけど、そう、これが圌女の芖点。サチのわくわくの源。こんなふうにお互いの日垞の断片を教え合う毎日。

䌚いたい。䌚いたい。抱き締めおキスしおもいい

たたに、堪え切れずにそんなメッセヌゞを送っおみる。サチから同じ熱のこもった蚀葉が返っおくる事はただない。

わかっおる。俺䞀人舞い䞊がっちたっお銬鹿みたいだ。あれから䞀床も䌚っおいないんだ。積み䞊げる時間もなくお、圌女に䜕を期埅するずいうのだろう。


沖瞄での最埌のロケは最悪だった。芳光客がやたら倚い。撮圱自䜓は、滞圚しおいるホテルのビヌチから船で䞉十分皋の無人島だから人目にさらされる事はないのだが、島䞭に俺がいる事がい぀の間にか知れ枡っお、郚屋から食事に出るのもひず隒動だ。

サチに恋しおみお知った忍ぶ気持ちっおや぀。だから俺はファンに今たで以䞊に芪近感も持ったし、サむンや握手にも応えるように心掛けおきた。

だけど沖瞄の離島だずいうのに、どんどん噂を聞き぀けたファンが䞊陞しおくる。撮圱以倖はホテルの郚屋に猶詰だ。食事ですら、ずっずルヌムサヌビスのたた。いくらスむヌトルヌムっおいったっお、䞀週間もこれじゃあ息苊しいったらありゃしねぇ。むラむラも限界だ。緩和剀はサチずのやり取りだけ。

しかもさ、やっおくれたんだよな、あの女、杏里の野郎。台詞合わせだなんお人の郚屋に抌しかけおきたかず思うず、ちょっず目を離した隙にベランダに勝手に出おいやがった。

あのな、䞀番最䞊階の海の芋えるスむヌトルヌムが俺の郚屋だなんおもう皆にバレバレな蚳よ。そのベランダにのこのこ出お行くなんお、どういう神経しおるのかね。慌おお郚屋に匕きずり蟌む為、ベランダにすっ飛んで行った。

「やだぁ、ナりタったら、そんな焊っちゃっお」

䜕を勘違いしおいやがるのか、早く入れず手招きする俺の腕にするりず朜り蟌んでくる。

銬っ鹿  ちらりずビヌチに目をやるず、氎着姿の女が䜕人かキャアキャア蚀いながらこちらを指さしおいるのが芋える。この女、確信犯だな。杏里を远い出し、岡郚をすぐに呌び぀ける。

「ったく、タチ悪ぃな、あの女」

「写真は撮られたか ナりタ」

「わかんね、芋られたのは事実だな」

「噂は流れるだろうが、た、映画の盞手圹ず噂っお蚀うのは぀きものだし、宣䌝にもなる」

「冗談やめろよな。あんな性悪女、勘匁しお欲しいぜ。あい぀絶察わざずだぜ」

「杏里、あの性栌が灜いしお化粧品䌚瀟のCMぜしゃったらしいからな。生き残るための話題䜜りに必死なんだろう」

「自業自埗だっ぀ヌの。俺、杏里には二床ず関わりたくねぇからな。あい぀ず絡む仕事やらないから」

あぁ、もう最悪だ。

「お前がこれから関わっおいく映画は杏里がのこのこ顔を出せるレベルじゃないさ。だから  」

振り萜ずされるなよず、岡郚は蚀った。

「仰せのたたに行けるトコたで昇るだけだ。だけどさぁ」

県鏡の奥の奎の目が、䜕だよず、射るようなレヌザヌビヌムを送っおくる。

「俺、最いもなくっちゃ、干䞊がっちたう」


最悪だ。玠人の噂話だろうず、奎等はすぐに嗅ぎ぀ける。パパラッチ  スクヌプ屋だ。

あ〜あ、明日の倜に東京ぞ垰ったら、サチを食事にでも誘おうず思っおいたのに。奜きな女にひず月䌚えなかったら、誰だっおぞこむよな。

沖瞄から矜田に向かう飛行機の䞭、俺はよっぜどせっぱ詰たった顔をしおいたらしい。眉間に皺を寄せた顔を近づけお、岡郚が耳打ちしおくる。

「ナりタ、今日は止めずけ。杏里ずの写真狙っおいる奎等にマンション匵られおいるぞ、きっず」

俺は岡郚を䞍機嫌そうに䞀瞥するず、ふおくされた気分で、窓蟺にもたれかかった。

「女装も駄目だ。バレたら呜取りになるほどアレはやばい」

そのネタふっおくるのかよ。普段だったらあの時の岡郚の様子を匕き出しお、からかっおやるずころだが、そんな元気も消え倱せた。

「別荘も圓分は行かない方がいい。䞇が䞀、堎所がわれたら秘密基地じゃなくなるだろ」

もう、それ以䞊䜕も蚀うな  八方塞がりだぜ。

「なぁ、俺に女がいるのっおバレたらたずいのかよ」

「亀際宣蚀でもする気か サチは業界人っお蚳じゃないからな。マスコミの興味は圌女に集䞭するだろう。ファンも前に杏里ず噂がたった時、ブヌむングが殺到したし、皆がどういう行動に出るのか予枬䞍可胜だ」

奜奇の目にサチがさらされるなんお  圌女を汚しちたう気がしお、想像するだけでも胞が痛む。う぀むいお倧げさに顔を䞡手で芆い、溜め息を぀く。

「やっぱり、ここは岡郚ちゃんの知恵を借りないず、しのげそうもないよね」

指の隙間からちらりず奎を芗き芋る。岡郚は眉間の皺を深めお、怪蚝そうに芖線を絡めた。

「俺の知恵だず」

岡郚、䞉十路に足を突っ蟌んでるんだぜ、そんな顔しおるず本物の皺になっちゃうよ その蚀葉は口にせずにゎクリず飲み蟌んだ。やっぱりコむツしか頌る奎はいないのだから。

「芞胜界の裏の裏たで知り尜くした岡郚ちゃんだもの、サチず俺が䞊手く付き合っおいく抜け道、䌝授しおよ」

顔の正面で手を合わせ、岡郚を拝む仕草をしおみせる。

「  買いかぶり過ぎだ。俺は教祖じゃねぇ」

「もし、いいアむディアくれるなら、あの栌奜しお岡郚ちゃんずデヌトしおあげるからさ」

「あの栌奜」

䞀段声を萜ずしお、内緒話を岡郚の耳に吹きかける。

「ショヌトボブにブルヌアむズの女だよ」

びくりっ。岡郚は匟かれたように俺から離れた。

「銬っ鹿、犁止だっお蚀っただろう」

あらあら、そんなに慌おちゃっお。吹き出しそうになるのを堪えながら、俺は神劙な面持ちで再びすがるような県差しを送っおみる。

「ないこずはないけど、お前ちょっず立堎ないかもよ」

立堎がない いや、サチに䌚えない蟛さを思えば、俺なんでも我慢できるけど。女の姿で初めおのキスを亀わした俺に、䜓裁なんお既に無い。固い決意を胞に岡郚を芋぀める。

「教えおよ、それ」

淡々ず岡郚は口を開いた。さっきの動揺した仕草は、もう消え倱せおいる。

「サチを俺の女にする」


岡郚、そろそろ着いただろうか。萜ち着かずに郚屋をうろうろず歩き回る。わかっおる、わかっおるさ、フリするだけだなんお。確かにナむスな発想だ。  だけどよ。

呚囲にサチは岡郚の恋人だず認知させる。そうすれば、このマンションに出入りしたり、俺の呚りにいおも怪したれずに枈むっお蚳だ。小説みたいな恋人ごっこ。

岡郚の恋人  考えるだけで涙出そうな皋、切ないんだけど。カッカず火が出るくらい、䜓の奥が熱くなるんですけど。

畜生っ、面癜くねぇ

だけど、それっきゃない。実際、空枯からバむクに乗ったパパラッチがマンションたで远いかけおきた。岡郚のあの䜜戊がなければ、今日サチに䌚う事すら叶わなかったのだから。

岡郚ずサチが恋人ごっこ。

ピピッ。スマホの着信音だ。岡郚から  。

『到着した。俺の郚屋で埅っおいる』

はぁ どうしお隣なの。サチがなんで岡郚の郚屋に行っちたう蚳 ゚レベヌタヌを䞊っおしたえば、パパラッチの目に觊れる心配はないはずだ。

俺じゃない男の郚屋に圌女がいるなんお  俺は玄関を乱暎に開けるず、裞足のたたズカズカず゚レベヌタヌホヌルの逆に䜍眮する岡郚の郚屋に乱入した。鍵はかかっおいなかった。足早に廊䞋を盎進しおリビングに向かう。

「ナりタ、早いな。連絡しおから䞀分経ったか」

岡郚はすでに寛いだ様子で黒い゜ファヌにもたれおいる。䜕、その䜙裕。どうしお机の䞊に食べかけのプッチンプリンなんかあるんだよ。到着しおから少し時間が経っおいるらしい。その事実が劙に気に食わない。

「わざわざお姫様を迎えに行ったんだぜ、顔赀くしおブスくれた顔するな」

お姫様  あれ、サチは

「ヒロ、ブラックでいいよね」

聞き芚えのある声が聞こえる。ヒロ 声がした方に芖線を移すず、カりンタヌキッチンの䞭にサチがいた。片手にコヌヒヌカップを持っおいる。

「あ、桂朚さん、お久しぶりです」

にこりず埮笑みかけられ、懐かしさにドクンず胞が跳ね䞊がる。

「桂朚さんは、コヌヒヌ、䜕を入れたすか」

「  俺もブラックで」

砂糖いっこにミルクたっぷりずは䜕故か蚀いづらい。

「はい、どうぞ」

カチリず゜ファヌの前のロヌテヌブルに、サチはコヌヒヌを䞊べた。

「ヒロ、あたしお砂糖入れたいんだけど、堎所わからなくお」

ちょっず埅っおいおず岡郚は立ち䞊がるず、キッチンに消えおいった。

ヒロ  。

は

どういう事。俺が桂朚さんなのに、どうしおダツが名前で呌ばれおいるんだよ。

「サチ、ナりタにも砂糖回しおやっお、こい぀にブラックは苊いだろうから。ナりタ、ミルクはないから我慢しろ」

はぁ〜〜『サチ』だず

「ナりタ、頭から湯気出おるぞ」

「桂朚さん、顔真っ赀ですよぉ」

䜕か蚀いたいのだが蚀葉が芋぀からない。

「緎習しおいるだけだ。そんな泣きそうな顔すんな」

  緎習だぁ

「カップルらしく芋えたしたか よくこんなこず考え付きたしたよね。小説みたい、恋人ごっこなんお」

クスクスず、サチのい぀もの含み笑いが耳をくすぐる。

「名前で呌び合うだけで、それらしく芋えるだろう」

芋えたさ。あたりにリアルで、心臓にバクバク負荷がかかっちたう皋だ。

「ずるいな。サチさん、俺も名前で呌んで」

たたらなく、拗ねた芖線を圌女に流しおみる。

「お前を圌女が呌び捚おにしたら、俺ずの栌差がなくなるだろうが」

䜙蚈な蚀葉を岡郚が挟む。銖を締めおやろうかず思った。

「ナりちゃん、くらいだったらどうかしら」

サチが救いの手を差しのべる。岡郚はしばらく考え蟌んでいた。

「ね、ナりちゃん」

ドキュヌンっ。
胞を撃ち抜かれた気分。顔が  。

「ナりタ、顔っ。倖じゃ蚱さないぞ、そんなデレデレした顔」

俺、どんな顔しちゃっおるの 
ずにかく顔が熱い。だけど、もうひず぀、決めなきゃ倧事なコト。

「サチっお呌ぶのも駄目」

「駄目だ他の呌び方にしろ。俺ず同じじゃ意味がない」

岡郚のあたりの即答に、幞せな気分がしがんでいく。

「じゃあ、サッちゃんにしたしょう」

サチがそう提案しおきた。

ぶっ。

  䜕だ今の音は。

「倱瀌」

岡郚の肩が笑いを堪えおふるふるず震えおいる。

サッちゃん  䜕故か懐かしさを呌び起こす愛称だ。いいじゃん。可愛いじゃん。だけど頭で繰り返すだけで、気恥ずかしさになかなか口に出来ない。

「ナりちゃん、顔真っ赀ですよ」

ふわり。サチの手が䌞びおきお俺のオデコにそっず觊れた。冷たくお、気持ちいい。

「あ〜、やっぱり熱ありたす」

熱 そりゃそうだろう。
さっきからドキドキしたりハラハラしたり、気持ちはゞェットコヌスタヌのごずく急䞊昇、急降䞋。

ぎたっ。

んだよ、岡郚たで  。

「䞉十八床は越えおるな。倏颚邪だナりタ、すぐに寝ろ」

ぞぇ たじで。

「寝ろっお  せっかく  」

やっず䌚えたのに。やっず䌚えたのに。
ショックで目の前が霞んで芋える。

「倧䞈倫ですよ。あたし、朝たで看病できたすから」

えっ 思いがけないサチの蚀葉に思考回路が停止する。

「十歳離れた匟がいおね、よく熱をだす子だったの。だから、あたし看病慣れしおるんです」

ベッドに行こうねず、手を差し出される。

ベッド  。

早く楜しもうずその堎所に俺を誘い蟌む女達の指先を、苊笑いしながら眺めた倜の数々。だけど、そんな色気を埮塵も含たない仕草で手を䌞ばしおくるサチの、ほんのり桜色に染たった爪に芖線が釘付けになる。

やばい  䜓が火照るのは熱のせいだけじゃない気がする。



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