ブノウのAzusaと冬の黒松内 北限のブナ探索Day2 大ブナ参り
Day1の記事公開から少し時間がたってしまったが、Day2について書いていく!
当初Day1に予定していた黒松内No.1の大ブナ参りは悪天候で別プランに変更していたが、翌日寒波の勢いが少し緩んだおかげで行けることになった。
2026.01.22
探索隊長Azusaさん
ラッセル協力隊員Mさん
賢い可愛いタフガイむさし
わたし

同じ人工林でも?
雪原を突っ切って、人工林に入っていく。
蒜山で見慣れたスギ・ヒノキの人工林が、黒松内では寒さに強いトドマツ、カラマツに代わっている。
ここで今更ながら素朴な疑問が湧く。なぜ本州ではスギ・ヒノキがこれほどまでに「選択」されたんだろう。環境への適応能力か、当時の経済的な有用性か。北海道と本州の植生が異なる背景をもっと深く読み解きたくなった。

ちなみに、調査と全然関係ない話。この日私たちは、天気には追われていなかったが、別のものに追われていた。
それは、、
黒松内で大人気の蕎麦屋『蕎麦屋この花』のクローズ時刻だ。
前回の黒松内の旅で食べた「蕎麦がき」のもちもち感と「蕎麦(麺)」の歯応えや香りが忘れられなくて、今回も絶対食べに行きたいと思っていた。しかも冬限定「カレー南蛮蕎麦」を提供中だったから。カレーも蕎麦も好きな自分としては見逃せなかった。
大ブナも諦めたくないし、蕎麦屋でカレー南蛮も諦めたくない。なんとしてもクローズまでに滑り込みたい。それには遅くても13時までに下山だ!


千手観音のようなミズナラ
手を合わせたくなるねとつぶやくMさんの側で
カレー南蛮のことばっかり考えていて
完全に花より団子でした。笑



イケメン!!(木のはなし)

ざっくり計算で、大人が手を広げると平均1.5m、1人で手をつなげば約3m、3人なら4.5m。だから3人必要だね。ということでこの写真では2人は手をつなげていません
大ブナの樹形からわかること
ぐるりと一周見応えのある大ブナだ。枝ぶりは力強く、マッスルポーズのような枝もある。この木の周りには成育を競い合うようなライバルが少なかったから、日光は十分に受け取ることができた結果、上に伸びるより横に太くなったのではないか、とAzusaさん。稜線にあり風雪に晒される立地でライバルも少ないなら良さそうな話にも聞こえるが、逆に自分でもろに風雪を受けるしかない辛さもある。それで幹も枝も太く強くなっていったのかもしれない。
そういえば蒜山にもマッチョ系の枝ぶりのよいブナがある。津黒山山頂付近の稜線にあってライバル樹木は少ない、似たような環境に思える。



Day1で出会った巨木は谷地形にあり、光は当たりにくいような環境、かつ、ライバル樹木は多いような環境だった。そう考えていくと谷の巨木と尾根(稜線)の巨木を樹形で分類できるのかもしれない。
もう一つ、Azusaさんから重要な視点をもらった。不自然に太く、瘤(こぶ)を抱えた樹形は、雪の重みだけでなく、かつての「あがりこ(薪炭材としての継続的な伐採)」という人の利用圧力が作った形かもしれない。
実際、山乗(やまのり)の源流部にも炭焼き窯の跡が点在している。どんなに深く見える森もかつては誰かの「仕事場」だった。樹形と遺構をセットで記録することで、自然と人間がせめぎ合ってきた歴史が見えてきそうだ。
蒜山の森で、樹形という切り口での調査、情報整理はまだ行ったことがない(少なくとも私は)。面白い考えが浮かんだと思ったので、帰ってさっそく金山ガイドに話してみた。なんと同じようなことを考えていたという。大変ですよ、でも面白い切り口なので調査の雛形をぜひ作ってみましょうという話になった。雪が融けるまでの宿題だ。
木のフェイス
Azusaさんが、この写真の方向がNo.1の“フェイス”であり正面だと思っている、と教えてくれた。
“フェイス” それは、その木の魅力を最大限味わえるアングルだ。大ブナの正面はポセイドン三叉の槍にも見えた(🔱トライデントというらしい、今知ったのだが)。主幹部分に枝がなくすっきりとシンメトリーに見えるから、バランスが良く記憶に残りやすいのだろうか。
他アングルからも見てみよう。
マッスル系の枝が蛇行しクロスしながら、


蒜山の大ブナにも、私たちなりに思う“フェイス”があることを思い出した。そのアングルからは、マーメイドドレスのようなシルエットで根元で広がり、その上でくびれ、枝襟部分で膨らんでいる。和やかな気持ちになる曲線だ。
こうして考えてみると、その木を訪れる人たちに慣れ親しまれたフェイスが、どの木にもありそうだ。最も気持ちがストンと落ち着き安定感のあるフェイス。
間に合った!そば屋この花カレー南蛮
次はいつNo.1に会いに来れるかわからないな、と名残惜しさもありながら、カレー南蛮めがけて下山した。往路に1時間半かかったところ、復路はたったの40分で終わった。


そば屋この花のおふたり、あたたかく迎えてくださりありがとうございました。
これを読んでくれた皆様、黒松内に行く方はぜひお立ち寄りください。そばがきと季節の蕎麦を食べてみてください。
黒松内のブナの森探索での気づき
巨木まで生き延びること自体がすごいのだけど、そこに至るまでに風雪で折れたり、人に切られたりして、美しくのびのびと生きることは私たちが想像するよりはるかに難しい。だから、巨木であり且つ樹形も見応えがあったり美しかったりするのはかなり奇跡的なこと言えそうだ。実際森を歩いていても、美しい巨木に出会えるのは極めて少ない。美しいの基準だって大層主観的なものだから、議論にならないかもしれないけれど、ここではあえて主観的に話させてもらおう。
美しい巨木の背景にある物語を、Azusaさんは深掘りして見せてくれた。森の同期ライバルの数、気象、地形+人の手・利用圧力・逆に保護・伝承。
このような物語を読み解くには、自分にはもっと知識としてのロジックの引き出しが必要。金山ガイドもよく推理して森を観ているが、そのベースには一定の科学的な知識がある。
樹木の種類ももっとわかるようになりたい。今は温度帯とか種の名前とか大まかなグループさえもわからずに、樹皮や樹形、わかりやすい形状の葉をメインに森の雰囲気の違いを感じとっている程度だ。雰囲気や感覚を、根拠を持って語れるようになりたい。
ブナの森の空気や光は本当に心地よくて、特に新緑シーズンは中毒性がある。笑 その心地よさの正体は何なのか?構成員やバランス?森の密度?絶妙な心地よさの背景には数えきれない要素が絡み合っていそうだ。全部を洗いざらい知ろうとは思わないが、今よりは解像度を上げたい。
隠さず話せば、これが今のわたしのレベル。正直私は理科系出身じゃない。今になって学生時代にビリでも理科系専攻であればよかったのに、なんて思ったりする。が、科学の素地が人生で明確に必要となるタイミングが少し遅かっただけのこと、過去のことはおいて、今から始めていくことにする。
最後に
Azusaさん、森歩きをご一緒いただいた皆さん、この冬とても貴重な学び多い経験をさせていただいたこと、改めてお礼申し上げます。また季節を変えて、お邪魔させてくださぁーい!!
