書類審査のことを少しDuke-NUSでの経験
はじめに
2025年4月から、シンガポールのDuke-NUS Medical School(National University of Singapore)でAssistant Professorとして勤務することになりました。この記事では、そのオファーを受けるまでに経験した「書類の準備と審査のプロセス」の実際についてご紹介します。
※任期付きポジションのため、いわゆる「終身雇用」ではありません。念の為
日本ではあまり馴染みのない、海外の研究機関におけるAssistant Professorの選考、(書類選考だけですが)、今後、海外での研究職を目指す方の参考になれば幸いです。
きっかけは突然に
元々は、研究員(リサーチフェロー)として2025年3月までの任期でシンガポールに研究していました。(詳細は以前のnoteを見てください)
そんな中、Bossから「Assistant ProfessorのPositionに推薦しよう」と声をかけてもらったのが始まりです。
急ごしらえでしたが、2024年の12月に声をかけてもらい急いで書類の準備を進め、1週間くらいで作成して提出、審査を経て、無事オファーをいただくことができました。以下備忘録も兼ねて書類について書きていきます。
応募できる条件
まず応募できる条件として
PhDなどの学位を取得している
最低3年間のポスドク期間がある
ポスドク期間に筆頭著者として十分な学術業績がある
ポスドク期間に研究資金を確保した
が応募の条件としてありました。また、今回の職では「救急医療に関する疫学研究、機械学習に関する研究、ヘルスサービス研究をリードして遂行できる能力と経験」が条件として挙げられていました。
審査で求められた書類と内容
かなりの分量の書類が求められた印象です。夜中まで準備をしました。主に以下のような資料が必要でした。
CV(履歴書)
もちろんCVが必要です。必要項目を埋めていくと30ページ以上になりました。
必要項目を羅列すると、
Biography (自分の経歴の要約、A4で1ページ)
学歴・職歴・資格などのリスト
学会での役職や委員歴
学術業績(英語原著論文、総説、レター、ケースレポート等、各項目別)
学会での発表(Oral, poster, Invited speaker歴など)
教育歴(レクチャー・セミナーの記録、学生指導歴など)
編集・査読歴(Editorial BoardやReviewerとしての経験)
取得した研究資金一覧(テーマ、金額、役割)
国内外の共同研究・国際連携研究の実績
Teaching Philosophy(教育理念):英文500words程度
などが含まれます。
特に学術業績はたくさん書くことがあります。各論文のインパクトファクターをつけて、体裁を整えて文献をリストしないといけません。(自身の名前は太文字で強調しないといけない)これまでの英文原著で100本以上あるので、これがめちゃくちゃ時間がかかりました。また、トップ10の業績をピックアップして詳細を記載したり、Google Scholarのh-index等の指標も記載する必要があります。
業績は英文原著論文、総説、その他(EditorialやLetter, case report)など各項目に分けて書く必要があります。(混ぜてはいけません)
学会での役職、委員歴、学会発表の内容も内容、場所、学会名などをまとめる必要があります。また招待講演なのか、ポスターなのか口演かも分けて書く必要があります。
教育歴はこれまで指導した学生、大学院生、インターンなどをリストしてそれぞれ指導した内容やトピックを記載する必要がありました。
査読歴もORCIDとかに記録が残っているかもしれませんが、どんな雑誌を査読をしたかをかかないといけません。年間20本程度は査読しているので、リストを作るのが大変でした。
Intellectual Development Statement(自己推薦文みたいなもの)
自己推薦文みたいなものも書きました。過去の研究、自分の研究キャリアの強み、どんな研究をしているのか、今後どんな研究をしたいのかを書きます。英語でびっしりA4に6ページ書きます。また教育理念についても書く必要があって、大学生や大学院生をどのように指導するか、どういう指導の経験があって、何を重要視しているかなどを書く必要がありました。日本ではこういうstatementを書く機会があまりないので、これも勉強になりました。
カバーレター
これは自己推薦文の内容と近いですが、自分がAssistant Professorの役職の応募するにあたって、経歴とか業績を要約してA4で2枚くらいにまとめました。これをつけて申請お願いします、みたいなことを書きました。
推薦状(最低3通)
教授・准教授ランクからの推薦状が最低3通、必要でした。しかも推薦者はシンガポール国外の人である必要がありました。私の役職では関係性がある人からの推薦状でもOKだったのですが、他の役職では直接の友人、指導者などは不可で、関係性のない人からの推薦状が必要になる場合もありました。私の場合は日本での研究の指導者2人と海外の共同研究でお世話になった人、2人の推薦状をお願いしました。
提出後の審査プロセス(推定)
書類審査の詳細は不明ですが、以下のような流れだそうです。
公募
教授会による書類審査
投票による役職の承認可否の決定
日本同様に、公募がまずあって、私以外の人も応募することができます。実際に他からの応募があったのかはわかりません。その後に、申請した書類の審査がありました。この審査の過程で周りの研究者からは「申請見たよー期待してるねー」と声をかけてもらいました。審査が終わるまでは少しドキドキしました。2ヶ月くらいで審査が終わってオファーをいただく運びとなりました。
実際に経験して感じたこと
自分のキャリアを「言語化」する大切さ
研究・教育・資金獲得の実績を“書類”で表現するのは、想像以上に難しかったです。日本ではなかなかそういう機会がないのではないかなと思います。日本では「Assistant Professor 」は「助教」に相当しますが、ここまで細かい書類の審査はないんじゃないかなと思います(経験ないのでわかりませんが)。職階では同等になりますが、実際、なるのはかなり難しいなと感じました。日頃から記録を取っておくことが大事
論文はもちろんのこと、研究資金、学会発表、委員会での活動、セミナーでの登壇歴、レビューした論文、学生の指導実績など、すべてが後々必要になります。普段から準備しておかないとかなり大変なことになります。私もGoogle scholarやResearch Mapを活用して記録していたので、助かりました。人とのつながりが財産になる
推薦状は国際共同研究でお世話になっている海外の先生方にお願いできたことで、スムーズに対応できました。振り返って国際共同研究とか国際学会のネットワーキングの経験はとても重要に思います。日本人としては英語に自身がないのですが、国際学会でもしっかり存在感をアピールできればと思います。
まとめ
今回の申請で大切だと感じたのは、以下の3点です。
研究業績を日頃からまとめておく
研究/教育など理念を言語化する
国際的なつながりを築いておく
まだAssistant Professorレベルとはいえ、海外での選考プロセスを通じて、自分自身のキャリアを見直すよい機会にもなりました。
もし今後、海外で研究職に挑戦してみたいと思っている方がいれば、ぜひ一度「自分のCVを魅力的に書けるか?」という視点で振り返ってみてください。案外、新しい気づきがあるかもしれません。
