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詐欺を研究したら、大事なものを失った【SUNmaruのミス】

はじめに

昔の私は、詐欺に対する防御力が驚くほど低かった。

海外の富豪から届いた寄付の依頼を信じ、カード情報の再登録を求める偽メールにも入力した。

大学生の頃には、少しエッチな刺激的なネットサーフィンをしていたところ、父親のパソコンの画面を海外の裸の女性に占拠されたこともあった。

何度か痛い目に遭い、ようやく詐欺への免疫がついた。

普通なら、ここで怪しいものから距離を置く。

しかし私は違った。
次に生まれたのは警戒心ではなく、好奇心だった。
「詐欺は、どの段階でお金を取ろうとするのだろう」
そこで私は、あえて騙されたふりをしてみた。

結果として、お金を失うことはなかった。

しかし、大切なものを失った物語。


父親のパソコンを海外の女性に占拠される
大学生の頃、私は父親のパソコンを借りてインターネットを使っていた。

レポートを作る。
音楽を聴く。
基本的には健全な使い方だった。

ほとんどは。
ある日、私は少しエッチで刺激的なネットサーフィンをしていた。

詳しい内容は伏せる。

大学生には、学問以外にも探究心があるとだけ言っておきたい。

いくつかのページを渡り歩いた、そのときだった。

突然、画面いっぱいに海外の裸の女性が現れた。
慌てて閉じようとした。
閉じれない。
×を押しても消えない。

さらに画面には、
「解約料を支払えば、この画面は消えます」
という表示と、謎のカウントダウンが出ていた。

数字が一秒ずつ減っていく。

こちらの冷静さも、一秒ずつ減っていった。

問題は、裸の女性が表示されていることだけではない。

このパソコンが、父親のものだということ

数時間後には父親が帰宅する。

父がパソコンを開く。
画面いっぱいに海外の裸の女性が現れる。
そして、私を見る。
母にバレる。姉にもバレる。

この未来だけは避けなければならなかった。

私は必至の想いで再起動した。

消えない。。。
強制終了もした。。

それでも、電源を入れるたびに彼女は戻ってきた。

「I'll be back.」と言っているようにすら感じた。

パソコンは強制終了できても、彼女との関係は終了できなかった。

私は預金通帳を開いた。

表示されている解約料と残高を見比べた。

足りない。。。

詐欺に遭っていることより、払えるお金がないことに絶望した。

もし残高が十分にあれば、私は確実に支払っていたと思う。

追い詰められてパニック状態の私は、なぜか110番した。

電話の向こうから、落ち着いた声が聞こえた。
「事故ですか、事件ですか?」

私は迷った。

詐欺なら事件かもしれない。

しかし原因は、私のネットサーフィンである。

どちらかといえば、自分で起こした事故にも思える。
悩んだ末に答えた。
「どちらかといえば……事故ですかね」と。

私はすべてを話した。
少し刺激的なサイトを見たこと。
裸の女性が消えないこと。
あと数時間で父親が帰ってくること。

警察の方からは、
「110番は、緊急性の高い事件や事故のための番号です」
と優しく諭された。

いやいや、こちらとしては十分に緊急だった。

ただ、社会的な緊急性と、息子として私の緊急性は違うらしい。

ネット詐欺の相談窓口を教えてもらい、そこへ電話した。
担当者は最初に言った。
「まず、落ち着いてください」

個人情報や口座情報を入力していなければ、お金を払う必要はないと。
そんなこともわからないのかとなんかあきれた雰囲気だったのを覚えている。

解決方法を聞くと、パソコンを数時間前の状態に戻す機能があると教えてもらい、無事に復旧した。

父親が帰宅する前に、海外の女性にはお帰りいただくことができた。

この出来事から私は学んだ。

怪しい画面が出ても、お金を払ってはいけない。
そして、裸の女性が消えなくても、110番してはいけない。


海外の富豪から届いたメール
それからしばらく経った頃、私のもとに一通のメールが届いた。

「海外の富豪が、日本の被災地へ多額の寄付をしたい。しかし、海外から直接送金すると税金がかかるため、一度あなたの口座で受け取り、代わりに寄付してほしい」

今なら、明らかに怪しいと分かる。

なぜ海外の富豪が、面識もない私を選ぶのか。
なぜ寄付の仲介を、一般人に任せるのか。
しかし当時の私は疑わなかった。

「私でよければ対応します」

そう返信し、何度かやり取りを続けた。

困っている人の役に立てる。
海外からの寄付を日本へ届けられる。
私は少し誇らしい気持ちになっていたのだと思う。

相手の話だけではない。
「誰かの役に立っている自分」を信じていたのである。

しかし、職場の先輩にこの話をすると、すぐに言われた。
「あなたは馬鹿か」

続けて、
「そんなの詐欺だから、今すぐやめなさい」

そこで初めて、詐欺だと気づいた。

幸い、お金を支払う前だったため被害はなかった。

詐欺は、欲深い人だけを狙うものではない。
誰かを助けたい。
役に立ちたい。
そんな善意も、立派な入口になるのである。


詐欺を研究したくなった
何度か失敗し、詐欺への免疫がついた頃、私はある疑問と勇気を持った。

詐欺に反応し続けると、相手はどこでお金を求めてくるのだろう。

最初から振り込みを依頼するとは限らない。

何気ない会話から信頼関係をつくり、どこかで支払いへ誘導するはずである。

その流れを、自分の目で確かめたくなった。
今考えれば、完全に余計な好奇心である。

しかし当時は、
「もう自分は騙されない」
と思っていた。

過去に何度も騙されかけた人間が、なぜか詐欺研究家のような気分になっていた。

免許を持っていないのに、教官席へ座ろうとしているようなものだ。

そんなとき、ショートメッセージが届いた。
「〇〇さんですか?」
「昨日はありがとうございました」
私は返信した。

「私は〇〇ではありません。間違っていますよ」
すると相手は丁寧に謝った。

ここで終わると思った。

しかし、すぐに次のメッセージが届いた。

「失礼しました。これも何かの縁なので、少しお話ししませんか」
出た。

詐欺の教科書に載っていそうな「何かの縁」である。

普通なら無視する。
しかし私は詐欺研究科だ。
「いいですよ」
と返した。

この時点で、研究対象へ自分から入場料無料で飛び込んでいる。


気づけば女性になり、恋人になっていた
相手は、アイドルを目指して養成学校へ通っていると話した。

レッスンが大変なこと。
それでも夢を諦めたくないこと。

内容は少しずつ具体的になっていった。

私は、
「大変ですね」
「頑張ってください」
と返した。

研究のつもりだったが、気づけば普通に応援していた。

相手からは毎日のように連絡が来た。
「今日もレッスンだった」
「歌がうまくいかなかった」
「あなたと話すと元気が出る」
少しずつ距離を詰めてくる。

詐欺師なのかもしれないが、連絡はマメだった。

しばらくすると、会話に奇妙な変化が起きた。

相手が私を女性だと思い始めたのである。

なぜそうなったのかは分からない。

私の文章が優しかったからか。

それとも、相手の設定上、女性である必要があったのか。

途中から相手の一人称は「俺」になった。
相手は男性。
私は女性。
誰の確認もないまま、性別が決定した。

私は訂正しなかった。

詐欺の流れを見届けるため、そのまま女性を演じることにした。

研究者として必要な役作りだった。

そのうち相手は、
「あなたには何でも話せる」
「ずっとそばにいてほしい」
と言うようになった。

私は、
「応援してるよ」
と返した。

ある日、相手からオーディションを受けると連絡が来た。

後日、
「合格した」
という報告が届いた。

私は素直に、
「よかったね」
と返した。

すると相手は、急に深刻な話を始めた。

これからアイドルとして活動する。
スキャンダルには気をつけなければならない。
事務所に知られたら困る。

でも、あなたとは別れたくない。

私は画面を見ながら固まった。

いつの間にか、私たちは付き合っていたらしい。

告白された記憶はない。
私が「はい」と答えた記憶もない。
初デートもない。
手もつないでいない。

それでも私は、デビュー前の男性アイドルと交際する女性になっていた。

恋愛のスピードが速すぎる。

こちらが詐欺研究ノートを取っている間に、相手は交際まで進めていた。

しかも、すでにスキャンダルを心配する段階である。

私にはフライデーに追われる予定もなかったが、相手の中では秘密の恋が完成していた。

私はいつの間にか、会ったこともないアイドルを陰で支える年上女性のような立場になっていた。

設定が多い。


詐欺の目的が見えた瞬間
やがて相手は言った。
「このメールで連絡を続けると、事務所に知られるかもしれない」
「安全な場所で話したい」

案内されたのは、別のチャットサービスだった。

調べると、有料サイトである。

ここで、ようやくすべてがつながった。

間違いメールを装う。
偶然の出会いを演出する。
夢を語る。
毎日連絡する。
相手を特別な存在にする。
告白を飛ばして恋人にする。
芸能活動を理由に秘密の場所へ誘導する。
そして、有料チャットで課金させる。

見事な流れだった。

裸の女性の「I'll be back.」より丁寧な流れである。

恋愛感情を育ててから、お金が必要な場所へ移動させる。

いきなり「払ってください」と言うのではない。
「二人の関係を守るため」という理由をつける。

ロマンス詐欺の怖さは、お金を求められる前に、断りにくい物語が完成していることなのだと思う。

私は登録を断り、塩対応でやり取りを終えると伝えた。
すると相手から、
「別れたくない」
「少しだけでも話してほしい」
「君がいないと頑張れない」
と、かなり引き止められた。

会ったこともない男性から、ここまで必要とされた経験はなかなかない。

一瞬、少しだけ申し訳ない気持ちになった。
詐欺かもしれない相手に、罪悪感を持たされている。

これが手口なのだろう。
しかし私は断った。

ある意味、私はデビュー前のアイドルを振ったことになる。

もしかすると、今頃とんでもない人気アイドルになっているかもしれない。

そして歌番組の裏側で、
「あのとき僕を振った女性がいたから、今の僕がいます」
と語っているかもしれない。

もちろん、その人物が本当に存在したのかは分からない。

いや、ないな(笑)


詐欺師には勝った。でも電話番号を失った
私は有料サイトに登録しなかった。

お金も払わなかった。
相手の目的も見抜いた。
完全に勝ったつもりだった。

しかし、その後、状況が一変する。

その後から迷惑電話や怪しいメールが猛烈に増えた。

料金が未払いである。
大金に当選している。
荷物が届いている。

私は知らないうちに借金を抱え、宝くじに当たり、毎日のように荷物を受け取れずにいた。

スマートフォンの中だけ、人生が忙しすぎる。

おそらく、返信したことで、
「この番号は使われている」
「この人は返事をする」
と判断されたのだと思う。

私は詐欺を調査していたつもりだった。

向こうからすれば、会話が続き、性別設定まで受け入れ、恋人役までこなしてくれる、非常に反応の良い見込み客だった。

詐欺業界の新人発掘担当がいたら、かなり高く評価されていたと思う。

最終的に私は、長年使っていた電話番号を変更することになった。

詐欺師には1円も払わなかった。

その代わり、番号変更に伴う時間と手間を、たっぷり支払った。

授業料は、現金だけとは限らないらしい。


最後に
詐欺の手口を知ることは大切です。

ただし、仕組みを知るために自分から近づく必要はありません。

私は、
「騙されたふりなら大丈夫」
「途中でやめれば被害はない」
と思っていました。

でも、返信した時点で、
「この番号は使われている」
「この人は反応する」
という情報を相手へ渡しています。

詐欺への一番の対策は、相手より賢く立ち回ることではありません。

反応しないことです。
返信しない。
リンクを開かない。
個人情報を入力しない。
不安になったら、一人で判断せず誰かに相談する。

私が海外の富豪の詐欺に気づけたのも、先輩に話したからでした。
「あなたは馬鹿か」

今振り返ると、あれほど短く、正確で、即効性のある助言はありません。

人生には、ときどき必要です。
愛のある、
「あなたは馬鹿か」
が。

私は父親のパソコンで海外の裸の女性に出会い、110番し、海外の富豪を助けようとし、カード情報を入力し、詐欺を研究し、女性になり、アイドルと交際し、最後は電話番号を変えました。

文字にすると、かなり忙しい人生です。

しかも、ほぼすべてパソコンとスマートフォンの中で起きています。

社会勉強は大切です。
好奇心も大切です。

ただし、身を挺して勉強すると、思わぬ形で授業料を請求されます。

皆さんは、怪しいメールが届いても研究を始めないでください。
裸の女性が画面から消えなくても、預金通帳と相談しないでください。
知らない人から突然、恋人にされても、愛を育てようとしないでください。

返信せず、削除する。
できればブロックする。

困ったときは、適切な相談窓口へ連絡する。

そして、何事もなかったようにお茶でも飲む。

それが一番安全で、一番安く、一番平和な社会勉強です。


くだらないエピソードを最後まで読んでいただき、ありがとうございました。詐欺について調べていたはずなのに、最後に失ったのはお金ではなく、長年使ってきた電話番号でした。

「自分は大丈夫」と思った瞬間が、いちばん危ないのかもしれません。
この記事が、怪しい連絡に少し立ち止まるきっかけになればうれしいです。

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SUNmaruでは、大学職員やサッカー、フットサルチーム運営の経験をもとに、人や組織の成長、言葉の魅力、そして時々こうした自分の失敗について発信しています。
「SUNmaruは、どんな人なのだろう」

そう思っていただけた方は、ぜひ自己紹介記事も読んでみてください。

これからも、いつでも心に太陽を。


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