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疑わしいメンタルヘルス記事。こんなタイトルにご用心

「あのとき、あの記事を信じていなければ、私はもっと早く前に進めたのかもしれない……」

そんな後悔を抱えたことはありませんか? ネット上には、心の悩みを抱える人々に向けたメンタルヘルス記事が溢れています。しかし、その中には信じない方が良いものも少なくありません!

下手なことを言うと、自分に跳ね返ってくるんですが……。今回は、自戒を込めて、「ヤバい」記事タイトルとその問題点を振り返ってみたいと思います。

なぜこの記事を書くのか

私も日頃からメンタルケア系の記事を書いています。金曜日にお送りしている「こころの健康」シリーズでは、私の経験や主観に基づく内容が多いですが、有料のメンバーシップマガジンの方では、本や論文など、なるべく典拠が明らかで客観的な記事を提供するように心がけています(さりげなく宣伝です)。

なお、もしかしたら私のフォロー/フォロワーさんでこれから挙げるのと似たような記事を書いたことがある方がいるかもしれませんが、その方を攻撃する意図はありませんので、あしからずご了承ください。私は多分それを読んだことがないです。

信じない方が良い記事タイトル例とその理由

「たった1日でうつ病を完全克服!驚きの新療法」

1日でうつ病が克服できるなら社会問題にはなりません。そんな魔法のような治療法は存在しないのです。もし稀なケースでそんなことが起きたとしても、一般化できる内容とはならないでしょう。

近いもので言えば、脳への磁気刺激(TMS治療など)がありますが、これは一部のうつ病患者に保険適用となっているものの、エビデンスや治療実績が十分とは言えません。

しかも、今のところ大きな病院でしか施術できず、「1日で」治療が終わるわけでもなく、全員に効果があるわけでもありません。

「この性格診断であなたの潜在能力が100%引き出せる!」

そんなわけありません。性格診断は自己理解の一助にはなりますが、エビデンスが疑わしいものも多いうえ、潜在能力を100%引き出す魔法のツールではないのです。

※私がたまに記事として提供しているのはお遊び企画で、それを明記しています。

「専門家も驚いた! 不安を一瞬で消す魔法のテクニック」

何言ってるんだ。人間の精神は、一瞬で気分を変えられるような単純な仕組みにはなっていません。可能だとしたら麻酔や違法薬物です。

「恋愛心理学で誰でも必ずモテる方法」

誰がやっても「必ず」モテる方法なんてありません。個別の状況や条件が違うのに、極端な例で言えば、アメリカで日本人がモテる方法と日本で日本人がモテる方法は違いますし、年齢が10代か50代かでも全く異なります。人間はゲームのキャラクターではないので、フラグなんてありません。夢は捨てよう。

「ストレスはこうしてゼロになる!知らなきゃ損する簡単メソッド」

具体的に「ストレスがゼロ」というのがどういう状況を示しているのか不明です。ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールは、量は変わるけれど常に分泌され続けています。何らかの活動をしていれば、人間は多かれ少なかれストレスを感じます。何をしたって、ストレスがゼロになるということはありません。人間の心はスイッチを切るようにはいかないのです。

「夢をコントロールして未来を変える方法が明らかに!」

何を言っているのでしょうか。引き寄せの法則的な感じでしょうか? それはメンタルヘルスではなくスピリチュアルの領域です。

「サプリメントでIQが急上昇? 科学が証明した脳力アップ法」

サプリメントでIQが上がるといった直接的な効果はありません。もし摂取するだけで簡単にIQを上げる物質があるならノーベル賞モノ。今頃みんな飲んでいます。

栄養のバランスが記憶力などを向上させることはあるかもしれませんが、民間企業が好き勝手作っているサプリメントに具体的な効能を求めてはいけません。あれはイワシの頭よりちょっと上等なお守りでしかないのです。

「瞑想だけで全ての悩みが解決する理由」

瞑想は多くの悩み事に効果的な方法ではありますが、全ての悩みが解決するというのは言い過ぎです。

昔の僧侶は火に巻かれながら「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんて言いましたが、だからって火が消えたわけじゃないでしょう。

「ネガティブな感情を一瞬でポジティブに変える秘密の言葉」

ああ、ポジティブ信者ですね!!!
いるんですよ!!
悩んでる人に「ネガはだめよ! ポジでなきゃ!」って言う人!!

(ちょっと私情が出ました)

私はなんでも「ポジティブに考えよう!」というのは反対派です。

だって、ポジティブに考えられないから苦労しているのに、念仏みたいに「ポジティブに考えよう!」なんて言われても困ります。あんたはそれができるんだろうけど、こっちはね……。

それに、脳科学的にも、「ネガティブはだめだ、だめだ」なんて考えていると逆にネガティブになってしまうということが明らかになっています。

私は自分のマガジンで「ポジティブ心理学」について紹介していますが、それは空虚な「ポジティブに考えよう!」というものではなく、実際に「ポジティブである」とはどういうことか、どうすればそうなれるのかという見地に立っています。

共通する問題点

こうした記事に共通するのは、「過度な一般化」や「簡単に問題が解決すると誤認させる煽り文句」です。

一部の人にしか効果がないものを、いつでも、どこでも、誰にでも効果があるかのように吹聴しているのです。メンタルヘルスに限らずそうなのですが、私たちは困っていれば困っているほど、考える力が低下し、「簡単な解決策」が喉から手が出るほど欲しくなってしまいます。

以前は「くだらない」と思っていたような「簡単に治る」「誰でも稼げる」という言葉に飛びついてしまう。そんな経験はありませんか?

科学的なエビデンスがあれば安全?

一般に、情報を調べる際は「典拠となる論文などが明らかだと信頼性が高い」と言いますね。

でも、参照している論文と記事を見比べると、数字のマジックが隠れていることがあるんですよ。

例えば、論文には「条件によって5~80%の被験者に効果があった」と書いてあるものを、記事では「最大80%の被験者に効果があった」と書いてあったりします。

まぁ、嘘じゃないんだけどさぁ……。

私も参考にする論文に「70~80%」と書いてあったら、最大80%と書いて、より効果的であると見せるくらいのマジックは使いますが、だからといって、上記の書き方はちょっとやり過ぎでは?

このように、論文などの明確な典拠を元に書いていても、結局、どのように切り取るかって書く側のモラルなんですよ。だから、書く側のリテラシー×モラル=情報の信頼性なんじゃないかと最近は思います。

書き手として、読み手として

私も文章を書く以上は誰かに読んで欲しいと思うので、興味を引くような記事タイトルを考えるんですが、「嘘っぱち」にならないように気を付けて書いています。書く側として、自戒を込めて振り返っておきたいと思います。

そして、読む側の方にご注意いただきたいのは、メンタルケア/メンタルヘルスの分野において「難しいことが簡単にできる」「誰にでも効く」ということを謳う情報は疑ってかかってほしいということです。

(余談:逆に、IT業界だと、「らくがきを一瞬で美しい線画に!」みたいなサービスが本当に存在するので、この法則は当てはまりません…)

人間の体や心に関して近道はなく、少しずつ良くしていこうと継続することだけが効果を発揮するものです。当たり前のことですが、忘れないようにしたいですね。


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